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タイトル:609studio No.790 ◇現代時評《トランプ政権下の太平洋》:井上脩身  2016/12/13


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【609 Studio】メール・マガジン 2016年12月13日 No.790
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   フォト・ジャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身
氏の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! 
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◇現代時評《トランプ政権下の太平洋》:井上脩身           
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 トランプ氏がアメリカの次期大統領に選ばれて1カ月がたった。選挙中、差別
発言で物議を醸しだしたトランプ氏は「アメリカ第一」を唱えて保護主義を強調。
オバマ大統領が進めてきたTPPについても「大統領に就任するとただちに脱退
する」と表明、太平洋に関するオバマ氏のリバランス戦略を見直す方針を鮮明に
した。中国が急速に台頭するなか、「オバマノー」は太平洋に荒波を引き起こす
元になる、と私は不安感を覚える。日本はどうすべきなのだろう。
 思いのままにつづってみた。

 「21世紀はオバマ氏が大統領選に当選したときに始まる」と私は考えている。
 アメリカでは1964年に公民権法が制定された後も黒人差別がまかり通り、
91年、黒人男性のロドニー・キング氏がスピード違反でロサンゼルス市警に逮
捕された際、約20人の白人警察官がロドニー氏に殴る、蹴るの暴行を加える事
件が起きるなど、 黒人差別は根強くはびこっている。そうしたなかで、黒人が
大統になったことは世界の歴史の上でも画期的なできごとであった。「前世紀で
はあり得ないことが起きた」という意味で、21世紀の幕開けと私は評価した。

 世界史を概観すると、ギリシャ・ローマの地中海世界に始まって、スペイン、
ポルトガルがジブラルタル海峡を超えて大西洋に飛び出す。やがてイギリスが世
界の覇権を握り、20世紀にはアメリカが参入。ソ連が崩壊した20世紀の終わ
りにはアメリカは世界を圧倒する強国になった。このように考えると、歴史の中
心軸が西へ西へと動いていることがわかる。

 黒人大統領の誕生によって中心軸がさらに西に動き、21世紀の少なくとも前
半は太平洋の世紀になると私は予想した。実際、中国が09年にGDP5兆12
10億ドルと日本を抜いて世界第2位に躍りだし、太平洋を隔てて世界1位〜3
位の経済大国が並び立つ形になった。

 こうした観点に立てば、オバマ氏が太平洋でのアメリカの優位性を確保するた
めに軍事的にはリバランス政策を打ち出し、経済政策としてTPPを重視したの
もうなずける。

 リバランス政策は日本、韓国、オーストラリアなどとの同盟関係を強化し、軍
事力の効率的再編をしようというものだ。一方のTPPは、関税の壁をなくすこ
とにより農産物の輸出や新薬の市場拡大などを図るものだ。対中国政策の一環と
して、ミリタリーパワーとエコノミックパワーによってチャイナパワーとのバラ
ンスを図ろうという戦略である。

 トランプ政権がリバランス政策をやめ、TPPから抜け出したならば、当然の
ことながらオバマ氏が築こうとした太平洋のパワーバランスは崩れる。トランプ
氏が「日本は自分で自分を守れ」との考えを貫く限り、アメリカ一辺倒の日本の
太平洋政策は暗礁に乗り上げざるをえない。それは日米安保体制を基盤にしてき
た戦後の日本の立ち位置が音を立てて崩れることでもある。

 世界史の流れを変えるのは容易ではない。トランプ氏がどのような政策をとろ
うと、もはや太平洋の世紀から元のアメリカの世紀に戻ることはあるまい。むし
ろ、中心軸がさらに西に動き、東アジアが世界の中心になる可能性が強まったと
言えないだろうか。そうなれば、中国の存在感が一段と高まることは必至である。

 安部晋三首相はトランプ政権下でも引き続き「日米の絆」を旗印に、在日米軍
駐留経費負担(思いやり予算)を増やすなどしてトランプ氏の顔色をうかがうだ
ろう。さらに「中国に対抗するため」として防衛予算も大幅に増やすに違いない。
だが、それは中国との関係を悪化させるだけである。日中間が緊張状態になると
世界中を不安定にする。中心軸が東アジアにあるということは、日本も中国も世
界への責任が飛躍的に大きくなるということなのだ。日中間で紛争を起こすよう
なことは断じて許されない。

 トランプ氏が予期に反して大統領になる、という現実を直視するならば、日中
間に信頼関係を築き、不測の事態を未然に防ぐ手だてをしておくことが喫緊の課
題として浮かび上がる。いたずらに中国脅威をあおりたてるのでなく、あらゆる
チャンネルを通じて政治、経済、文化、スポーツなど様々な面で官民一体となっ
た友好の絆を太くすることが求められるのだ。当選して間なしのトランプ氏に大
慌てで会いに行った安部首相だが、むしろ今何よも大事なことは中国の習近平主
席とのルートをつくることである。首相にその認識がなければ、日本の今後は危
うい。
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆《News Digest》:609studio編集部
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◇◇ニュースな一口メモ 【弾劾裁判】
 弾劾(だんがい)とは身分保障された官職にある者を、義務違反や非行などの
事由で、議会の訴追によって罷免し、処罰する手続きをいう。
 詳しくは https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%BE%E5%8A%BE
 
◆◇News Digest◇◆

◆世界の話題・日本のニュース◆

国政介入:200票に懸かった「大統領の座」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/12/08/2016120802994.html

わずか4・7kmの路面電車、100m延伸計画
https://goo.gl/38EyFY

北朝鮮、核弾頭小型化成功か=再突入技術は未完成−米当局者:時事ドットコム
http://www.jiji.com/sp/article?k=2016120900088&g=int

トランプ氏「心配の必要ない」、企業介入懸念の払しょくに躍起
https://goo.gl/cBu1Si

北方領土返還やっぱりプーチンに騙された“お坊ちゃま首相” (3/3) 
〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版
https://dot.asahi.com/wa/2016120100092.html?page=3

◆ロシアからのニュース◆

クリスマスに向けて準備する世界のさまざまな都市
https://jp.sputniknews.com/photo/201612083097833/

太平洋ソロモン諸島海域でM7,8の地震 津波の危険性発表
https://jp.sputniknews.com/incidents/201612093104408/

ロシアの東方政策は長期的国益の帰結
http://jp.rbth.com/politics/2016/12/01/652609

「プーチン訪日で露日関係にはずみ」
http://jp.rbth.com/politics/2016/12/03/653267

「露日外相会談は経済協力を中心に」
http://jp.rbth.com/news/2016/12/02/653103

モルグロフ外務次官「日本は第二次大戦の結果を認めるべき」
http://jp.rbth.com/news/2016/12/02/653075

露日「共同経済活動」、5月に日本側が提案した
https://jp.sputniknews.com/world/201612053083761/

帝国時代に建てられた首都の駅 | ロシアNOW
http://jp.rbth.com/arts/2016/12/03/653011
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◆編集長から:片山通夫
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 韓国の朴大統領の弾劾裁判が今日(9日)韓国国会で開かれる。この稿を書い
ている時点ではまだその行方は分からない。
 しかし、朴大統領も馬鹿なことをしたものだ。すでによく知られているように
朴大統領は、母親が凶弾に倒れてから、父である朴正煕大統領をよく補佐したと
記録にある。いわゆるファーストレディの役目を担ってきたとか…。

 韓国の近代史で悲劇的な部分は多々あるが、独立後の大統領の行く末は悲惨だ。
初代の李承晩大統領はハワイへ亡命。
 その後の大統領も、朴正煕(暗殺)、崔圭夏(クーデターで追われる)、全斗
煥(粛軍クーデターや光州事件等により、退任後に死刑判決、高裁で無期懲役に
減刑され、後に特赦)、盧泰愚(粛軍クーデター・光州事件及び大統領在任中の
不正蓄財により、退任後に軍刑法違反で懲役刑)、盧武鉉(在任中の収賄疑惑に
より退任後に捜査を受け、自殺)とあり、あまりいい最期を迎えていない。

 そして現大統領は、今日国会で裁かれる。結果は読者諸氏のご存じの通りだ。
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  発行    2016年12月13日 No.790
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