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タイトル:609studio No.786 ◇現代時評《夫婦げんかもできない改正草案》:井上脩身   2016/11/15


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【609 Studio】メール・マガジン 2016年11月15日 No.786
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   フォト・ジャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身
氏の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! 
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◇現代時評《夫婦げんかもできない改正草案》:井上脩身           
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 11月3日に憲法が交付さてれて70年を迎えたのを機に、その前日、横浜市
で弁護士11人による自民党憲法改正草案模擬シンポジウムが行われた。同草案
の推進派と反対派に別れて議論し合う形式をとりながら、同草案の問題点を浮き
彫りにしようというのが狙いだ。主催したのは「九条かながわの会」。私は改正
草案について「天皇を中心とした明治憲法復古案」と、当「現代時評」の中で指
摘してきた。シンポジウムを聴いているうち、改正草案に表された明治憲法的天
皇観は国の守りや基本的人権、さらには夫婦・家族の在り方にまで及んでいるこ
とに気づいた。自民党は「野党の協力を得て、可能なところから改正する」とい
っているが、彼らにとっての本丸は天皇条項なのである。

 これまで書いてきたことと重なるが、改正草案の天皇条項は次の通りだ。

 前文で「日本国は長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を
戴く国家」とうたいあげ、1条(天皇)で「天皇は日本国の元首」と規定。逆に
99条の憲法尊重擁護義務の規定から天皇を外した。 言い換えるならば、我が
国固有の長い歴史を持つ天皇は憲法を超えた国民から崇められるべき元首、とい
うことになろう。奉戴、元首、超憲法が改正草案における天皇3原則である。
 現行憲法との違いをどう読み解くか。現行憲法は国民主権を基本とし、天皇は
象徴としている。改正草案も同じ文言を用いており、一見、相似ているように装
っている。しかし、「長い歴史と固有の文化を持つ天皇」とは、明治憲法の「万
世一系ノ天皇」をやさしく表現しただけのことだ。「戴く」とは「頭の上にのせ
る」ことで、要するに崇めたてまつることにほかならない。国民の頭の上にのる
天皇は明治憲法のいう「神聖ニシテ侵スヘカラス」存在といえるだろう。こうし
て超憲法的地位に立つ天皇が「元首」として行う権能は、「統治権ヲ総攬」にほ
かならない。では、改正草案のいう「国民」とは何か。それは天皇を戴く国民、
つまり臣民に近いものであり、「象徴」は「国体」として尊崇し帰依する心の拠
り所という、信仰に近い精神性を帯びたものとなる。

 ところで改正草案は随所で「公益」と「公の秩序」という文言を使用している。
例えば9条の2(国防軍)の第3項で「国防軍は(中略)公の秩序を維持」を国
防軍の任務に含め、12条(国民の義務)は「常に公益及び公の秩序に反しては
ならない」と規定。13条(人としての尊重)でも「公益及び公の秩序に反しな
い限り、最大限に尊重されねばならない」とした。さらに21条(表現に自由)
では「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動は認められない」と制限
した。

 この「公益」と「公の秩序」の意味は、明治憲法的憲法観からみれば明白だ。
公益は天皇中心国家としての利益であり、公の秩序は、天皇を崇める社会として
の秩序である。こうした国にするには、国民のだれもが天皇を敬うようにならね
ばならない。そこで改正草案は「国旗・国家の尊重」と「家族夫婦協力」を明文
化した。

 まず3条で「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」と規定。
これによって、君が代を歌い、日の丸を掲揚することは教育現場にとどまらず、
広く国民の義務になる可能性が高い。家族については、前文で「和を尊び、家族
や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」とし、24条で改めて「家族は
互いに助け合わねばならない」と定めた。

 家族の規定があることについて、「家族の在り方は人それぞれ。憲法で縛るこ
とではない」との批判がある。その通りだが、改正草案のいう家族は、こうした
一般的な縛りにとどまらず、天皇を崇める上での社会の最少単位ととらえている
点を見落としてはならない。平たくいえば、家族は助け合って、祝日には日の丸
を揚げよ、ということなのだ。お父さんが玄関の前に揚げた日の丸の旗を息子が
「日の丸は天皇賛美。オレは反対だ」と言って引き下ろすと、3条(国旗・国歌)、
24条(家族協力)違反だけでなく、「非国民」として、12条(国民の責務)、
21条(表現に自由)の違反に問われかねない。

 70年余り前、天皇の名で多くの人が戦場に連れ出されて散った。それをめぐ
って夫婦げんかをしただけで憲法違反になる――それが自民党の憲法改正草案で
ある。これが安倍晋三首相が狙う究極の憲法であることはいうまでもない。
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆《News Digest》:609studio編集部
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◇◇ニュースな一口メモ 【トランプ・ショック】

 政治的には無名だった男が、大国アメリカの次期大統領に選出された。各国の
政治家や財界人は「先の読めない大統領」に右往左往。株価も為替も乱高下。
 トランプ・ショックである。安倍政権にも!このメールマガジンが出る二日後
に安倍首相はニューヨークで同氏に「慌てて」会うという。
 
◆◇News Digest◇◆

◆世界の話題・日本のニュース◆

クリントン当選を予想していた世論調査は何を間違えたのか
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/11/post-6263.php

米政治の行き詰まり映す=大統領選
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161109-00000102-jij-n_ame

ロシアのプーチン大統領、トランプ氏に祝意
http://www.cnn.co.jp/world/35091906.html

「さらば民進党」もはや愛想が尽きた
分裂・消滅のプロセスに足を踏み入れた。今度ばかりはほとほと愛想が尽きた。
民進党のことである。参院選、都知事選から党代表選に至る迷走ぶりは、完全に
分裂・消滅のプロセスに足を踏み入れたと思わざるをえない。
http://president.jp/articles/-/20478

岩手の業者が択捉渡航か ロシア報道、日本は自粛求める
http://www.sankei.com/world/news/161108/wor1611080041-n1.html

うんざりする「上命下服」文化=韓国
https://goo.gl/p9cpFe

韓国野党が朴大統領に辞任を要求しない理由
朴槿恵大統領を巡るスキャンダルで、野党第一党の「共に民主党」はすでに権力
を手にいれた気分だ。与党のセヌリ党は茫然自失の状態で次期大統領候補を誰に
するか、その見通しも立たない。政治は、外交も内政も機能停止状態に陥ってい
る。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/230558/110600010/

日サハリン、送電線で結び電力輸入…構想検討へ
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20161102-OYT1T50157.html

◆ロシアからのニュース◆

トランプとプーチンの露米関係
第45代アメリカ合衆国大統領当選者となったドナルド・トランプ氏の外交政策は
どのようなものとなるか?これは全世界が興味を持つ問題だが、ロシアとプーチ
ン大統領は、露米関係の行方にはるかに多くの関心を寄せているだろう。
http://jp.rbth.com/opinion/2016/11/09/646377

ロシア国内のバーガーキングに特別メニュー「トランプ・バーガー」出現
https://jp.sputniknews.com/entertainment/201611102994906/

美人元検事のナタリヤ・ポクロンスカヤ氏はツイッターなどの公式アカウントを
作成
・https://twitter.com/PoklonskayaNV
・https://www.facebook.com/PoklonskayaNV 
・https://vk.com/poklonskaya_nv 
・https://ok.ru/poklonskayanv 
・https://soundcloud.com/poklonskaya_nv

 https://jp.sputniknews.com/world/201611082985711/

露経済発展省次官「ロシアとの協力は日本にとって重要」
プーチン大統領は12月に日本を訪問するが、訪問中何が話されるのか、二国間関
係はどう発展してゆくのかについて、ロシア経済発展省のスタニスラフ・ヴォス
クレセンスキー次官は、テレビ「ロシア24」のインタビューの中で次のように語
った。
https://jp.sputniknews.com/politics/201611092993612/

日本、福島の放射能汚染木材を燃料に
 https://jp.sputniknews.com/japan/201610272946500/

ロシアの菓子や飲み物がアジアへ
http://jp.rbth.com/business/2016/11/07/645461

メドベージェワ、GPカナダ大会を制す
フィギュア女子シングルの世界および欧州王者、エフゲニア・メドベージェワが、
カナダのミシソーガで開かれたグランプリシリーズ第2戦「スケートカナダ」で2
位以下に大差をつけ優勝した。
http://jp.rbth.com/news/2016/10/30/643451


ソ連風ビーフストロガノフ
上流階級にルーツを持つ「ビーフストロガノフ」。伝統的なロシア料理だと考え
る外国人も多い。ソ連人の多くは、食堂の食べ物とイメージする。
http://jp.rbth.com/arts/cuisine/2016/11/06/644791

英ドラマ「戦争と平和」の露宝飾品
http://jp.rbth.com/arts/2016/10/02/634639

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◆編集長から:片山通夫
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  アメリカはトランプ次期大統領によって「よみがえる」のか?確かに選挙期間
中の威勢は良かった。とても公約とも言えない項目が並んだ。曰く、メキシコと
の国境に壁を作る、その費用はメキシコも地だ。曰く、日本や韓国に展開してい
る米軍の駐留費用を大幅に負担させる。出来なければ米軍を引き上げる。曰く、
TPPは米国内の雇用を奪う。だから離脱する。etc,etc・・・・

 そんな御仁が次期大統領だ。困ったのは安倍政権。新自由主義を掲げて、TP
Pの内容を国民に隠してまで批准したい政権だ。早速開票の翌日には電話会談、
そして17日には首脳会談…。

 心ある政治家はトランプ氏の「出方」を見極めてから動く。欧州の首脳たちだ。
慌てる乞食はなんとやら。「早いが勝ち」はこの世界では通用すまい。
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  発行    2016年11月15日 No.786
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