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────────────────────────────────────── 【609 Studio】メール・マガジン 2016・9・13 No.776 ────────────────────────────────────── フォト・ジャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身 氏の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! ────────────────────────────────────── お知らせ Lapiz2016年秋号好評発売中! 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日本政府はロシアとの間の領土問題の解決に進展を待たずして、両国の経済協 力の拡大への意気込みを見せている。共同通信が複数の消息筋からの情報として 報じた。共同通信はこれを、日本がロシアとの協力をクリル諸島の解決如何にお いていた従来の論争原則的な立場から退かせたことを示すと評価している。 http://jp.sputniknews.com/opinion/20160831/2712558.html ⇒共同通信の報道を引き合いに出して、スプートニクは「日本はすでに北方領土 の解決を第一義的に考えていない。日本政府はロシアとの経済協力の拡大を臨ん でいるという意味合いだ。先に述べたロシア共産党のジュガーノフ党首の言「も し日本が協力したいなら、彼らには全ての可能性がある。我々は極東に300の プロジェクトを持っているのだから、この分け前を頂くご飯の時間に遅れないよ うにさせておけばよい」と言う言葉を付け加えておきたい。その他以下のような 様々な報道があることを知ってほしい。 *ロシア サハリン州と色丹島を結ぶ航空路線開設へ http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160905/k10010669941000.html *色丹に定期空路 サハリン州計画 実効支配を強化 どうしんウェブ http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/international/international/1-0312917.html *2島返還論を主張=制裁下でも対日関係発展−ロシア大統領 http://www.jiji.com/sp/article?k=2016090500859&g=soc *色丹島で幅を利かせる中国資本…知られざる北方領土の今 http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/189233] *ロシア担当相まで新設 北方領土“電撃返還”本当にあるのか http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/189076 *プーチン大いに語る:政治そして将来の指導者及び自分の娘について http://jp.sputniknews.com/politics/20160906/2737051.html *クリル問題が初めて日露首脳会談のアジェンダから除外されたー政治学者 http://jp.sputniknews.com/politics/20160904/2724547.htm *クリル諸島の今後について、ロシア人への世論調査結果が発表 http://jp.sputniknews.com/world/20160907/2739050.html *プーチン大統領 日本の木造耐震住宅のロシアでの需要を語る http://jp.sputniknews.com/politics/20160902/2721943.html *シリアで共同の人道援助を提案 | ロシアNOW https://jp.rbth.com/news/2016/08/26/624385 *国後島進む「ロシア化」インフラに加え教育環境充実 現島民も「ふるさと」 http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/international/international/1-0309665-s.html *ロシアは領土を売り買いなどしないが、日本とのクリル問題の解決を見つける ことを望んでいる―プーチン大統領 http://jp.sputniknews.com/politics/20160902/2719547.html *「クリルは私たちのものだ!」露日国民の世論は両政府の立場より強硬 http://jp.sputniknews.com/opinion/20160901/2717713.html *夢の可視化:JAL機内誌によれば「クリルは日本のもの」 http://jp.sputniknews.com/opinion/20160830/2707964.html *プーチンが領土問題で妥協を示唆 https://jp.rbth.com/news/2016/09/02/626339 *サハリンとクリルの軍事的整備 2016年6月3日 ニコライ・リトフキン、ロシアNOW https://jp.rbth.com/politics/2016/06/02/599701 *安倍首相訪露の目的は 2016年5月5日 フョードル・ルキヤノフ https://jp.rbth.com/opinion/2016/05/05/590499 以上の報道は良くても歯舞・色丹の2島返還でしたありえないことを強く示唆 しているのではなかろうか? 安倍さん、クリミアを併合するしたたかなプーチンを相手に手玉に取られるよ うな姿だけは国民は見たくないと思っている。 ────────────────────────────────────── ◇白石阿光の不条理ストーリー 16 「火と水と 我が身世にふる ながめせしまに」 :白石阿光 ────────────────────────────────────── 死臭がする。 満員電車の扉が閉まり、わずかな風が鼻を通りすぎるとき ふわっと鼻腔に広がる臭いは 私の体の内部のものだ 死臭だ、確かに。 婆さんが死んだときは乾いた臭いだった 親父のときはやや重い湿った臭いだった 私の臭いは、鼻腔の一部によどんでおり、わずかな風で感覚細胞にひっかかり瞬 間、消える 続きを読む http://609studio.com/?p=3078&preview=true ────────────────────────────────────── ◆「スプートニク」 >>> 引用元 http://jp.sputniknews.com/ ────────────────────────────────────── ◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME) http://jp.sputniknews.com/ ◆日本関連 http://jp.sputniknews.com/japan/ ◆国際─────────────── http://jp.sputniknews.com/world/ ◆ロシア国内─────────────── http://jp.sputniknews.com/russia/ ────────────────────────────────────── 新刊ガイド《なぜヨーロッパで資本主義が生まれたか》 西洋と日本の歴史を問いなおす 関曠野 著 聞き手 三室勇 発売日:2016.05.30 定価:2,592円 サイズ:四六判 ISBNコード:978-4-7571-4346-3 http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002384 ────────────── 新刊ガイド《「大大阪」時代を築いた男 評伝・関一(第7代目大阪市長)》 大山勝男 著 定価(本体2,600円+税) 2016年2月10日発行 http://koujinnotomo.com/ ────────────────────────────────────── ◆《News Digest》:609studio編集部 ────────────────────────────────────── 今週は休載いたします。 ──────────────────────────────────── ◆編集長から: 片山通夫 ──────────────────────────────────── 北朝鮮が核実験を行った。安倍首相は早速非難声明を出した。オバマ大統領も 非難した。朴大統領も中国も非難している。ロシアも微妙な立場にある。 そんな中、ちょっと考えてみた。北朝鮮の目と鼻の先で米軍は韓国軍と大々的 に軍事演習を行っている。日本も負けじと軍備を増加させている。中国も海洋へ の進出に余念がない。そんな中北朝鮮だけがじっとしているのは不可能ではない かと。それらに対抗出来るには「核」という武器だけではないのかと。 「朝鮮半島の非核化」は重要だ。しかしなぜ「朝鮮半島だけ」なのか。北朝鮮 と国交のある国は世界では162カ国ある。国連に加盟している国は、2016 年1月現在193か国。そのうち核保有国は米、英、露、仏、中国の5か国と、 NPT非批准国のインド、パキスタンそして北朝鮮。他に怪しいのはイスラエル。 たった5か国が世界の核を牛耳っている形だ。インドアパキスタンはアメリカ の認知(?)を得ている。そしてイスラエルは、アメリカの後ろに隠れて見えな い。こうしてみると、北朝鮮はまさに「鬼っ子」という存在である。 「朝鮮半島の非核化」が中国やアメリカから声高に叫ばれる理由も、単に平和 と言う目的だけとは思えない。 193カ国中、162カ国が国交を結んでいるということの重さも知ったうえ でこの問題を考えてみたい。ちなみに我が国と国交のある国は世界では194カ 国ある。国連非加盟の国との国交を数えたためである。 なお北朝鮮は国連加盟国である。 ロシアの放送局のサイト、スプートニクは「韓国 北朝鮮完全消滅計画を練り 上げる」と次のように伝えた。 《韓国国防省は、北朝鮮が核兵器を使用する兆候、あるいは南北間で戦争が始 まった場合に北朝鮮の金正恩第1書記と北朝鮮指導部を攻撃する作戦概念を練り 上げている。聯合ニュースが韓国軍当局の話を引用して報じた。》 http://jp.sputniknews.com/politics/20160911/2759058.html 第二次朝鮮戦争が近い?? ──────────────────────────────────── 発行 2016年9月6日 No.776 発行 毎週火曜日 購読料無料 FB https://www.facebook.com/michio.katayama.5 配信 まぐまぐ配信システム ID:0000052236 MailuX配信システム ID:MM3E1B97842E020 contact us http://www.609studio.com/html/mailform.html website http://www.609studio.com/ 投稿 http://www3.ezbbs.net/06/609studio/ 購読 解除 http://archive.mag2.com/0000052236/index.html ◇禁・無断転載◇ ──────────────────────────────────── |