メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.765 ◆現代時評《首相と知事の恥さらし》:井上脩身  2016/06/28


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【609 Studio】メール・マガジン 2016・6・28 No.765
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   フォト・ジャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身
氏の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! 
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◆現代時評《首相と知事の恥さらし》:井上脩身
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 舛添要一東京都知事が政治資金の私的流用疑惑問題の責任を取り、21日、辞
職した。舛添氏にかかわる様々な疑惑のなかで、最も集中砲火を浴びたのは、2
013年と翌年の正月、千葉県木更津市のホテルに家族で宿泊したにもかかわら
ず、ホテル代を会議費として政治資金から支出たことだ。確かに舛添氏の行為は、
首都のトップとしては余りにも恥ずかしい。だが、恥の質でいえば、安倍晋三首
相がG7の首脳会議で「リーマン・ショック前と似た状態」と述べたことの方が、
はるかに問題だろう。世界の首脳から「そこまでの危機ではない」と指摘される
と、今度は「新しい判断」を持ち出して消費増税再延期の理由にした。恥の上塗
りというほかない。舛添氏以上に責任を問われるべきなのは、安倍首相の厚顔無
恥政治である。

 舛添氏は疑惑の追及を受け、元検事の弁護士に調査を依頼し、6月6日、調査
報告書を公表した。それによると、10年から14年までの家族旅行の宿泊費の
うち、木更津市の2件を含め6件(計80万2841円)の、また家族との飲食
費については、09年から14年の間、14件(計33万6495円)の不適切
な支出があった。ほかに、『ピザの本』など、政治活動と直接かかわるとは思え
ない数多くの書籍の購入に政治資金が充てられた。

 弁護士は政治資金規正法上の違法ではないとしたが、国民・都民からは「恥知
らず」の声が飛び交った。学者としても政治家としても成功した著名人にしては、
誰の目にもやることがさもしい。都議会各会派は不信任決議をすると舛添氏に迫
った。
私は調査報告書をインターネットでみて、舛添氏の政治団体が政治資金で購入し
た書籍のなかに『アベノミクス批判』『アベノミクスの終焉』『自民党憲法改正
草案にダメ出し食らわす』『自民党政治の変容』があることを知った。報告書公
表後の都議会で、アベノミクスや憲法、安倍自民党についての舛添氏の見解をた
だしたうえで、舛添氏の恥ずべき行為が辞任させるに当たるか否かを判断すべき
だった、と私は考える。だが、都議会議員がそうした検討をした、との報道はな
かった。舛添問題で浮かびあがったのは政治とカネよりもむしろ政治家の恥さら
しである。そうした政治的恥のなかでも悪質なのは、選挙公約を一言の釈明もな
く180度変えることである。

 安倍首相は14年10月、消費税の10%への引き上げを1年半延期すると表
明した際、「再び延期することはない。はっきり断言する」と言い切り、その後
の国会答弁でも「リーマン・ショックや大災害のような重大な事態が発生しない
限り、実施する」と繰り返し述べた。アベノミクスによって経済は好転する、と
の強い自信の表明ともいえた。

 だが、その自信とは裏腹に、個人消費は伸びず、アベノミクスが頓挫しかかっ
ていることは今や歴然としている。消費増税を再延長するしかない、と判断した
安倍首相。アベノミクスの失敗を隠ぺいするためにはリーマン・ショックを引っ
張り出すしかない、と考えたのだろう。安倍首相は伊勢志摩サミットでリーマン
・ショック時に近い数値を集めた資料を提示した。だが、アメリカのGDP実績
では09年がマイナス2・8であるのに対し、16年4月(予測値)は2・4の
プラスになると見込まれているなど、リーマン・ショック時とは大きく異なって
いる。はたして各国首脳から、「危機とまで言えるのか」と疑問の声が出た。
(5月27日付毎日新聞)

 リーマン・ショック的経済状態が否定されると、消費増税再延期の根拠がなく
なるはずである。ところが安倍首相は6月1日の記者会見で、消費税の引き上げ
について、19年10月までさらに延期することを表明。「これまでの約束と異
なる新しい判断」と述べた。「はっきり断言」した約束事を、「新しい判断」で
反故にしたのである。

 政治家が「はっきり断言」して婚約したのに、「新しい判断」で別の人を結婚
すれば、大バッシングにあうだろう。しかし、所詮は個人レベルのことだ。税は、
国の在り方、国民生活の在り方に直接かかわる政策上の最も重大な課題だ。「新
しい判断」の一言ですむ問題では毛頭ない

 アベノミクスの失敗を覆い隠すために口から出た「新しい判断」。こんな愚劣
な言葉をぬけぬけと公の場で述べて恥ずかしいと思わないならば、もはや首相と
して失格である。

 最近の世論調査によると安倍首相の支持率は42%(6月20日付毎日新聞)
だ。舛添氏は恥だが、安倍首相は恥とは思わない、という国民が約4割いるのだ。
安倍政権は国民の「無恥」の上に立っているに過ぎないのである。
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆《News Digest》:609studio編集部
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 《気になるニュースをひとまとめ》にして、過去一週間分をピックアップして
お届けします。当編集部の独断と偏見でコメント付きで。芸能や経済などは、わ
からないので極力避けておりますというか、全くスルーしますのでご理解くださ
い。なお、記事を掲載したサイトがその記事を削除されている場合があります。
 私どもでは責任を負いかねますので併せてご了解ください。

◆◆ニュースな一口メモ 【EU】

  いま最もホットな言葉である。日本語では欧州連合と訳されている。 
European Unionのこと。連合は人間の尊厳に対する敬意、自由、民主主義、平等、
法の支配、マイノリティに属する権利を含む人権の尊重という価値観に基づいて
設置されている。これらの価値観は多元的共存、無差別、寛容、正義、結束、女
性と男性との間での平等が普及する社会において、加盟国に共通するものである。
 以上が普遍的な欧州連合の存在価値だとうたわれている。
 その欧州連合に亀裂が走った。英国の離脱が24日に決まった。今後、参加国
の間でも同様の動きが懸念されている。またスコットランドのニコラ・スタージ
ョン(Nicola Sturgeon)自治政府首相は「スコットランドの未来はEUの一部
となることだ」と発言し、独立を目指す可能性を示唆した。

◆◆News Digest

⇔国内⇔

◇自民党の「憲法改正草案」、今こそ読むべきだ
http://toyokeizai.net/articles/-/123685

◇6/21「報道ステーション」での安倍首相の出演拒否発言について
http://ameblo.jp/n-kan-blog/entry-12173306944.html

◇リストに邦人も「イスラム国」殺害呼びかけ
http://www.news24.jp/articles/2016/06/23/10333393.html

◇沖縄慰霊の日、翁長知事が「不安と強い憤り」
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160623-OYT1T50122.html

◇【社説】参院選 党首第一声 福島でなぜ原発語らぬ
http://goo.gl/4HfKK0

◇東電「メルトダウン隠蔽」の背後にもいた、舛添氏の逆ギレ弁護士
http://goo.gl/Mnu6lv

◇日経平均株価が1200円超下落。一時、1万5000円を割り込んだ
 http://www.asahi.com/skh/201606240006.html?ref=flashmail

◇東電が隠していた福島原発事故直後の詳細記録が公表!菅直人元首相「死んだ
っていい、俺も行く」「社長、会長も覚悟を決めてやれ」
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-891.html

⇔海外⇔

◇日銀、財務省英EU離脱受け協議、6月25日
http://jp.sputniknews.com/japan/20160625/2367861.html

◇英国民EU離脱を選択:Brexit支持派 国民投票で勝利
http://jp.sputniknews.com/europe/20160624/2361131.html

◇プーチン大統領:露はEUの前向きな行動には前向きに応える
http://jp.sputniknews.com/politics/20160625/2367792.html

◇露首相、英EU離脱と露経済への影響について
http://jp.sputniknews.com/europe/20160625/2367449.html

◇英EU離脱交渉今すぐに、待つ意味まったくない=欧州委員長(ロイター)
http://goo.gl/Axjl5T

◇スコットランド独立めぐる2度目の住民投票、可能性高い=行政府
http://jp.reuters.com/article/britain-eu-scotland-idJPKCN0ZA2BO

◇ロシアへの波及警戒=制裁緩和に期待も−プーチン政権:時事ドットコム
http://goo.gl/I4bq0F

◇英国民投票:「独立回復」支持者歓喜 残留派に衝撃
http://mainichi.jp/m/?HzvO8s

◇イギリスがEU国民投票で離脱を決断へ──疑問点をまとめてみた
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/06/post-5386.php

◇キャメロン英首相が辞意表明。10月の党大会めど。国民投票「敗北」で引責
http://www.asahi.com/skh/201606240007.html?ref=flashmail

◇ NYのトイレ、男女の区別は廃止へ
http://goo.gl/mBPFXv

◇「活字の国」朝鮮、82万の活字よみがえらせる
http://goo.gl/BSV8fw

◇米カリフォルニア州立大学、学生の多くにホームレスと飢えの問題
http://www.afpbb.com/articles/-/3091317                             
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◆編集長から: 片山通夫
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 青天の霹靂ともいえるが、起こるべくして起こったのではないだろうか。
 英国のEU離脱である。聞けばとても官僚的なEUの運営だったとか。多民族
国家とはいえアングロサクソンが中心の「誇り高い大英帝国」の国民にしてみた
らラテン系やゲルマン民族と同様には物事を考え、そして進められなかっただろ
うことは、自明の理である。
 無論、イラクなどからの難民問題や、トルコのEU参加に関しての危惧も大い
にあったかもしれない。しかし筆者が思うに、やはり民族の違いは、思考過程の
違いであり、帰結するところも違って当たり前。それを一緒にしてしまおうとい
うのだから、かなりの無理があるように思える。
 結局のところ、理想と現実の乖離ではなかったか。
 しかし、気になるのは、スコットランドの独立や、イタリアの動き、それに各
国内での極右の動向だ。一挙に不満が噴出して、EU全体が不安定になりそうな
気がする。
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  発行     2016年6月28日 No.765
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