メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.756 ◆ショートストーリー10:白石阿光  2016/04/26


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【609 Studio】メール・マガジン 2016・4・26 No.756
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身氏
の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! 
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◆現代時評《驚愕!止められない原発そしてその周辺》: 片山通夫
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 周知のように強烈な地震が熊本県を中心に九州各地を襲った。テレビや新聞、
そしてネット上を駆け抜けるニュースは、どれも驚愕のニュースばかりだ。

 曰く。「【気象庁】「熊本地震がいわゆる『前震』で、16日の地震が本震だと
みられる」。「日夜の地震は実は前震で、16日深夜1:25にM7.3の本震と思われる
地震が発生。以降、大きな余震が続いており、震源が徐々に益城→阿蘇→大分と
東部へ移動中」、「【気象庁】ここまで大きい地震になるのは近代観測史上、聞
いたことがない」、「【気象庁】北東方向に地震活動の領域が拡大していて、大
分県西部、大分県中部でも地震活動が活発化している」「【地震予知連絡会会長
・平原和朗・京都大教授】仮に中央構造線断層帯がどこかで動けば、長期的には
南海トラフ巨大地震に影響を与える可能性があるかもしれない」などなど・・・。

 そんな中、九州電力、原子力規制委員会はもちろんのこと、政府も稼働中の川
内原発を止める気はないようだ。《丸川珠代・原子力防災担当相は4月166日、
熊本地震の非常災害対策本部会議で、稼働中の九州電力川内原子力発電所につい
て「現在のところ、原子力規制委員会は停止させる必要はないと判断している」
と報告した。観測された地震動が、自動停止させる基準値を下回っていることが
理由》、また規制委員会の田中委員長は「今の段階で、ずっと見ている限りでは
安全上の問題はありません」と。

 しかしこれはおかしいのではないか。全く福島以前に帰ってしまっている考え
だ。口をそろえたように(いや事実、相談の上だろうが)「今の段階では」、「
安全だと判断」ということのようだ。

 ちょっと待ってもらいたい。稼働中の原発を「止める」のにどれくらいの時間
が必要なのか?通常午前10時に着手した場合、午後8時ごろに停止するようだ。
つまり「緊急停止」でない場合はこれだけの時間がかかるのではないか。いやそ
れよりも、原発って、動いていようが、停止中であろうが《危険にあまり差がな
い》のではないか。
 

 平時の場合は、そんなにリスクはないと思いたい。しかし隣の県であのような
大きな地震が連続して起こった場合でも「今のところ、問題はない」では済まな
いのではないか。
 簡単に言うと「異常があってからでは遅い」のだ。それをたった5年前の福島
で我々は十分経験してきたのではないのだろうか。
 安倍首相をはじめ、丸川担当大臣をはじめとする政府の面々、それに規制委員
会、九州電力は責任を取れるのか?「想定外」や「不可抗力」では済まない。ま
た稼働を認めた鹿児島県知事やさつま川内市の市長はどのように責任を取れるの
だろうか。聞けば「万一の時には九州新幹線で避難」なんて馬鹿げたことを言っ
てのけた輩のいると聞く。新幹線は動いていない。それでも「稼働の継続を認め
る」のだろうか。

 自然に対する「畏敬の念」がなさすぎだ。先週、所用で札幌へ行ってきた。時
間があったので、北海道博物館へ行った。そこには自然に対する畏敬の念を多々
持っているアイヌ民族の歴史や民族性などが丁寧に説明されていた。北海道やサ
ハリン、千島など厳しい自然の中で生きて来た民族の理念は「自然と共生」つま
り「自然に対して畏敬の念を持ちながら、共生する姿」が今風に言うと「男前」
だった。
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◆ショートストーリー10
《「疫学的生活因果律による政治風日常絵巻図(部分)」 》:白石阿光
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「行ってくるよ」
 竜馬は靴ひもを結び終わるとそう言って立ち上がった。
 
「行ってらっしゃい」
 妻はいつものようにさらりと送り出す言葉を口にした。そしてすかさず
「これ、ゴミ」
と言って白いビニール袋を突き出した。 
 
「ハイッ」
 竜馬は反射的に答え、人差指にゴミ袋の結び目を引っかけてドアのノブを回し
た。
 
 その朝は雨が降っていた。
 
(まったく!バスはどう5して来ないんだろう。雨の日はいつもこうだ。ダイヤ
は3分か5分おきに来るようになっているのに今日はもう10分は待たされてい
る。道が混んで遅れたとしても次々にバスは出ているのだから30分遅れ0のバ
スが目の前にいてもいいはずだ。通勤時間が終わって混雑が解消されると遅れた
バスが連なって走るのだろうか。いや、それとも間引き運転となり、バス会社は
効率のよい運行にほくそ笑むのだろうか。いやいや、バス路線には国や県が補助
金を出していて、しかもダイヤや運賃も運輸省の認可事項になっているはずだか
らそんなことはするまい。客が一人もいなくても子供の電車ごっこのようにつな
がってバスは走るのだ。)
 
 やっと5、6軒先の家の影にバスが見え、竜馬はほっとした。これで職場には
20分ほどの遅れですむだろう。緊張がほぐれた瞬間、彼の左手の人差指の先で
何かがかすかに揺れた。いつものカバンは小脇に抱えている。一体、この重さは
なんだろう。考えようとしたその瞬間、「アッ」という声が竜馬の口から漏れた。
 
 あー、やられた。ゴミ袋だ。
 
 このままバスに乗って行って駅のごみ箱に捨てようか。だが、朝のラッシュの
なかでこのゴミ袋を押し込む余裕があるだろうか。ウーム…‥。
 
 竜馬は意を決して我家への道を歩き始めた。
 これじゃ、だいぶ遅くなってしまうぞ。……マッ、いいか。どうせ雨の日は遅
れるんだ。ゴミ袋をぶら下げながらバス停で突っ立っている自分の姿を思い出し
ながら竜馬はウフッと三遊亭円生のように含み笑いをした。
 
 うつむきながらウフッ、ウフッと手で口を抑える竜馬の横を近くに住むサラリ
ーマンがバス停に向かって急ぎ足で通り抜けた。
 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ソーリ、ソーリはゴミ出しをしたことがおありでしょうか」
「委員長」
「はい、環境大臣」
「首相公邸にはゴミ出しという概念は存在しません。一般のゴミ収集システムと
は違います」
「環境大臣に聞いているのではありません。ソーリご自身に答えていただきたい。
ソーリはゴミ出しをしたことがありますか」
「委員長」
「国家公安委員長」
「官邸や公邸の中でどのようなシステムが動いているかにつきましては、最高レ
ベルの国家機密に当たるため情報公開はできません」
「私はソーリに聞いているんです。ソーリがゴミ出しをすることについて奥さま
はどうおっしゃっていますか」
「委員長」
「官房長官」
「家庭内のことについてはプライバシー侵害に当たる恐れがございます」
「あんたは女房気取りしていればいいってもんじゃないでしょ。私はソーリに聞
いてるんです」
「委員長」
「はい、官房長官」
「私が女房役と言われていることについては答弁可能です。そもそも、官房長官
たるものは…‥」
「ソーリ、ソーリ、ソーリ。私はソーリに聞いてるんです。ソーリ、ソーリ、ソ
ーリ、答えてください。ソーリ、ソーリ、ソーリ、ソーリ、ソーリ、奥さんを参
考人として呼びますよ。いいんですか」
「委員長」
「総理大臣」
「そう興奮しないでください。だいたい、妻を呼ぶなんて何てことを言い出すん
ですか。あんただって私の家庭の事情を知ってるでしょ。意地が悪いよ。大体、
質問が悪い。人の家庭のことを聞くときには自分のことを先に言いなさい。あん
たの旦那はゴミ出してんの?」
「私は独身です」
「早く結婚しなさいよ。そもそもあんたの党はずるいよ。独身の女性に私の家庭
の事情を聞かせるなんて」
「ソーリのゴミ問題について国民の関心を無視する態度は許せません。関連して
引き続き原発のゴミ問題について質問します」
「委員に申し上げます。すでに質問時間は過ぎております。直ちに質問を終えて
ください」
 
 後日、情報公開法に基づいた請求により、資料が届いた。1枚の新聞記事のコ
ピーだった。そこには「首相日々」として次のように書かれていた。
「5月2日(月)6時00分、ゴミ出し」
 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
(煙害日記その1)
 井の頭線の駅ホームのベンチに座っているとき、斜め後ろの方から風が吹いて
きたかと思うと太股の一点が急に熱くなり、「アチッ」と小さい声を上げてしま
った。風とともに灰が飛び散り、とっさに足の上に落ちた灰まで払い落とした。
 学生がホームの吸いがら入れにタバコの灰を落とそうとしたらしく、こちらが
事情を把握する前に「ごめんなさい」と言われてしまった。怒るタイミングを逸
してしまったこともあるが、青少年をあたたかく見守ろうと呼びかけている身と
しては、言いたくなる気持ちを押さえてグッと我慢したのだった。
 
 馬鹿野郎!この野郎!ホームなんかでタバコを吸うなってんだ!! ヂグショー。
ズボンに穴があかなくてよかったナァー。
 
(煙害日記その2)
 高田馬場駅のホームに降り立った途端、目の前を老人が走った。彼は手に持っ
ていたタバコの火を消しもせず、ホームに投げ捨てて列車に走り込んだのだった。
 ホームでくすぶったままのタバコを見てなんだか怒りがこみ上げてきた。が、
老人福祉と老後の問題を深く考え小生としてはその怒りをグッと押し殺したので
あった。しかし、しかし、である。
 
 馬鹿野郎! この野郎!列車に飛び乗るくらいなら走りながらタバコを吸うな
ってんだ!!
 
(煙害日記まとめ)
 本当にタバコには腹が立つ。火のついたタバコを手にぶらぶらさせながら歩く
な! なんで、タバコが嫌いなオレがすれ違う度によけて歩かなければならない
んだ。どっちが気を使わなければならないか、よ〜く考えろ!
 本当にこの国の喫煙者はマナーが悪い。いや、500年前のコロンブスが悪い。
いやいや、吸っていたアメリカ先住民が悪い。いやいやそもそもタバコが悪い。
いやいやいや、植物の存在そのものは悪くないんだからやっぱり栽培した人間が
悪い。いやいやいや……。ええーい、こうなりゃタバコ会社が悪い!! 税金取っ
ている国が悪い。とにかく、責任者、出てこい!
 
【いずれも、数十年前の出来事である。今では愛煙家は肩身の狭い思いで過ごし
ているという。愛煙家に愛情と憐れみを覚えつつも、タバコがなくなる日が早く
来ることをただひたすら祈る。】
 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ソーリ、たばこ税による収入と喫煙による健康被害は、どちらが国家財政にと
って大きいと思いますか」
「は? 何ですか」
「税金として国に入る金額とタバコを吸って病気になるために国が負担する保険
料額は、どちらが大きいと思いますか」
「国にとって税収は入ってくるお金だし、保険料負担は出ていくお金だから比較
なんかできんだろう」
「タバコを吸わない人が増えて病気になる人が減ると医療費支出が減るので国庫
が助かるのです。健康増進法で禁煙活動を義務づけていますが、罰則がありませ
ん。強化すべきではありませんか」
「タバコを吸わない人が減ると国の収入が減る。タバコ農家も困るのでバランス
を考えながら進めたい」
「タバコの値段を2倍以上にし、禁煙活動を強化すれば医療費は減ります。たば
こ税の減収は取り戻せるのです」
「収入が減り、支出も減るということは財政規模が縮小するいうことです。経済
はお金を回さなければ疲弊してしまう。景気も悪くなり、国民の生活も苦しくな
るのです。ここは必要のない事業でもやるべきです。第一、財政を担っている者
として旨味が出ませんよ」
「既得権を守り、利権に執着するソーリらしい答弁です。でもね、タバコによる
健康被害は放射線被曝よりも大きく、証拠もはっきりしているという専門家もい
るくらいなんですよ」
「ほうら、ご覧なさい。放射線はそのくらい安全なんですよ」
 
 国会が終わってソーリはすぐに指示を出した。原子力発電所の掲示板には、新
しく次のような通知が加えられた。
「放射線を浴びてもタバコほどはガンにならないことがわかったため、タバコを
吸う廃炉担当労働者の許容被曝線量(上限値)を10倍に引き上げます」
 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 だんごむしは丸まっていた。ポーンと投げ出された感覚のあと、しばらく丸ま
っていた。まわりは落ち葉で埋まっていた。やがて、だんごむしはごちそうに気
がつき、ひたすら食べ始めた。不思議なことに競争相手は一人もいなかった。
 また、ポーンという感覚がしてだんごむしは丸まった。すぐに静まったあと、
バサッ、バサッと何かが重なる圧力を感じたが、だんごむしはすぐに背伸びした
あと落ち葉を食み続けた。
 次に感じたのはガサガサッという音がして宇宙全体が震動するほどのめまいの
あと、押しつぶされるような危険な空気だった。周りの落ち葉もろとも押し潰さ
れそうで、かろうじて滑り込んだ隙間で周りの落ち葉を食べ、自らの体を落ち着
かせる空間を作り出した。
 だんごむしはしばらく小さな震動を感じながらより小さく丸まっていた。食べ
物はいっぱいあったが、だんごむしはそれを食べることはなかった。
 だんごむしは丸まったまま灼熱地獄に落ちた。だが、だんごむしは罪を犯した
わけではなかった。ただ、人間社会のゴミ処理システムに巻き込まれただけだっ
た。
 罪深きは、だんごむしをつまんでゴミ袋に放り込んだ私であったろう。
 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ソーリ、ソーリはゴミ出しをしているではないですか。新聞にはっきり書いて
あります」
「委員長」
「はい、厚生労働大臣」
「ソーリがゴミを出した事実があったかどうか回答を控えさせていただきます」
「実際に書いてあるじゃないですか」
「書いてあることが真実であるかどうかも含めてノーコメントとさせていただき
ます」
「ソーリ、これは大きな問題なんですよ。環境問題、エネルギー問題、性差別問
題、動物愛護問題につながる国家的かつ国際的なテーマなんです。ソーリご自身
が国民に対してお答えいただきたい。それが民主主義であり、国民主権というも
のです」
「委員長」
「はい、外務大臣」
「それでは申し上げましょう。かつて、領土の返還交渉の中で相手国との間に密
約があったという問題をご存じでしょうか。我が国は相手国の公文書が出ても、
また我が国の元外交官が秘密を暴露しても、さらに裁判で事実認定がなされても、
密約問題そのものが存在しないものとして一切コメントしておりません。それが
国益に沿ったものであり、国体護持というものなのです。
 国民主権というものは公共の福祉、すなわち公共の秩序を維持する範囲内で許
されたものであり、総理には黙秘権という基本的な権利があります。ゴミ出しの
事実があったかどうか、なんて密約問題と比べれば小さなもんです。しかし、ソ
ーリの家庭という公的空間における秩序維持のためにはお答えできない場合もあ
るのです。よって、政府見解としてはソーリのゴミ出し問題は存在さえしていな
いということです」
「ソーリ、外務大臣はああ言っていますが、ソーリとしても同じ考えかどうか、
お答えください」
「委員長」
「内閣総理大臣」
「まずは、家庭は国家の基本組織であり、家庭がしっかりしないと国家も危うい
ということをご理解いただきたい。その上で申し上げますが、個人の家庭で由緒
正しい家系と深刻な嫁姑問題によって重い病気を患っている家長たる人間が余人
をもって代えがたい国家の要職を担っているとき、公職中に多少の休養をとるこ
とがあっても国益のためにはあってしかるべきと考えております。よって、応援
ヤジは除きますが、委員会質疑において安眠妨害になる大声は人権侵害になる可
能性があることを申し添えさせていただきます」
 
「そうだったのか」−−テレビの前で国民は一斉に膝を叩いた。国民はやっとわ
かったのだ。ソーリが病気になった原因と、答弁拒否を続けたり、途中で長時間
抜け出す理由が。
 ただ、そのことによって内閣支持率が急上昇するとは、国民の誰一人として予
想だにできなかった。
 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 その日は電車は混みに混んでいた。私は乗換駅で私鉄から地下鉄の階段を走り
下りてホームに達した。やがて入ってきた電車も混んでいた。私は、足とカバン
をホームに残しながら体を乗客に無理に押し付け、続いて扉が閉まると同時に足
とカバンを瞬時に車内に引き入れた。華麗な職人技で見事に乗り込んだとふっと
力を抜いた途端、再び扉が開いた。扉に押し付けられていた私の体は見事にホー
ムに投げ出され、一瞬にしてホームに横倒しになった。何があったのか、しばら
くわからなかった。ただ、そのときに見えた光景は新鮮だった。「この光景もい
いな」ーーそう思ってそのままの姿勢でじっと見ていた。
 座った姿勢のままの乞食は、低い視線で世間を見ている。それは我々が見てい
る世界とはまったく異なる次元の宇宙だ。横倒しになって初めて見えたこの世界
も同じようなものだった。
 林家正蔵(彦六)師匠は、二度続けて転んだとき起きあがることをせず、「ま
た転ぶならさっき起きなければよかった」とつぶやいたという。私は「彦六師匠
はすごい人だ」と思いながら、ホームに横たわっていた。
 
 駆け寄る人の足音や叫び声はリズム感もなく、遠く頭上を駆け抜ける雲のよう
であった。                                               
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆一口メモ 【エコノミー症候群】
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  静脈血栓塞栓症とは、肺血栓塞栓症(Pulmonary embolism:PE)と深部静脈血
栓症(Deep vein thrombosis:DVT)を併せた疾患概念である。飛行機内などで、
長時間同じ姿勢を取り続けて発症することがよく知られており、エコノミークラ
ス症候群あるいはロングフライト血栓症と呼ばれることもある。(ウイキペディア)

 熊本の震災でもこのエコノミー症候群が原因で死者が出た。新潟県中越地震で
も発症が相次ぎ、問題になった。専門家は「水分をしっかり取り、意識して歩く
などの心掛けが必要だ」と注意を呼び掛ける。避難所の環境整備も重要だ。
東京新聞
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016041902000254.html
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◆編集長から: 片山通夫
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 「想像を絶する」という言葉がある。筆者くらいの年になると大抵のことでは
驚かないのだが、これには驚いた。昨今の政治家の軽薄かつ無責任なこと。無論
すべての政治家だとは言わないが、目に余ることがある。
 まず「東京都知事の外遊」だ。何でもあらかじめ決められた予算を大幅に上回
る乱費ぶりだという。もっともこれは首相の海外でのバラマキ振りを見ていると
都知事といえども「負けてられんわな」。それにしても劣化している政治家ども。

 この稿を書いている時点(24日・日曜日)午前、札幌で補選が行われている。
勿論結果はまだ出ていない。ただ野党が選挙協力をした最初の国政選挙だ。それ
に夏の参議院選をにらむ形で、与野党とも力の入った補選となった。
 結果を注視して、今後の検挙協力の在り方を検討してもらいたい。安倍政権の
独裁だけは阻止したいものだ。
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  発行     2016年4月26日  No.756
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