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タイトル:609studio No.747 ◆現代時評《「歯舞」が読めない北方担当相》:井上脩身  2016/02/23


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【609 Studio】メール・マガジン 2016・2・23 No.747
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身氏
の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! 
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◆現代時評《「歯舞」が読めない北方担当相》:井上脩身
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 安倍晋三政権の閣僚のレベルの低さは目を覆うばかりだ。丸川珠代環境相が7
日、長野県松本市での講演で、福島第一原発事故後に定めた除染の長期目標であ
る「年間被ばく線量1ミリシーベルト以下」について、「何の科学的根拠もなく
決めた」と無知ぶりを現せば、その2日後の9日、島尻安伊子沖縄・北方担当相
が「歯舞」を読めないという、信じがたい欠陥大臣ぶりを露わにした。マスコミ
から揶揄される安倍チルドレンの無能大臣たち。もはや「アホ政権の末期症状」
というべきだろう。

 島尻氏の問題を考えてみたい。
 報道によると、島尻北方相は閣議後の記者会見で、北方領土の元島民がつくる
「千島歯舞諸島居住者連盟」が取り組む「北方領土ネット検定」の活動を、資料
を見ながら紹介。この団体名を読み上げる際、「はぼ、えー、何だっけ」と詰ま
り、秘書官に「はぼまい」と助け舟を出してもらった。(10日付毎日新聞)
 「歯舞が読めない大臣」の報に世代間ギャップを覚えた。私が小学校の時、ラ
ジオから何度も「はぼまい、しこたん」の言葉が流れ、耳にこびりついてしまっ
た。「はぼまい」が「歯舞」であり、「しこたん」が「色丹」であることを学校
で教わった。
 今振り返れば、1956年、日ソ共同宣言がなされたころのニュース放送だっ
たのだろう。その年、私は小学6年生だった。同年7月の日ソ平和条約交渉で重
光葵全権は四島返還を主張。ソ連側の態度が硬く、歯舞、色丹の二島返還で交渉
し直すことを決意。しかし、政府が重光提案を拒否したため、交渉は暗礁に乗り
上げた。結局、共同宣言で歯舞、色丹を平和条約締結後に日本に引き渡すことと
なった。

 小学生の私に交渉経過まで理解できるはずはなかったが、「歯舞、色丹」が重
要な政治課題であることくらいはわかった。
 北方領土問題に関しては、現在わが国には政府公式見解である「四島返還論」
のほかに、「二島先行返還論(2プラス2方式)」、「三島返還論(フィフティ
ー・フィフティー論)」「面積2等分論」、「共同統治論」などの意見がある。
いずれの論をとっても、根室半島先端・納沙布岬の目と鼻の先にある歯舞群島は
基本の基本だ。

 麻生太郎副首相が首相時代の09年1月、「踏襲」を「ふしゅう」と読んで、
多くの国民にばかにされた。中学生程度の漢字能力がなくても首相になれる国だ
から、「歯舞」が読めない大臣がいても不思議ではないが、ことは深刻である。
北方領土問題の打開のためにはロシアと交渉が必要だ。4島しかない北方四島の
名をまともに読めない者が日本の担当大臣なのだ。ロシア側になめられるに決ま
っている。それでなくともロシア側は日本に歩み寄る気配は全くない。これでは
交渉にすらなるまい。

 島尻氏は仙台市出身。04年、那覇市議選に当選し、民主党系会派に所属。0
9年、参院沖縄補欠選で、自民党と公明党の推薦を受けて当選。10年の参院選
で自民党から立候補して再選した。安倍首相が「辺野古基地反対運動つぶし」の
ために沖縄担当相として入閣させたのは誰の目にも明らかだ。実際、大臣就任後
、沖縄には9回、公務として出かけている。しかし、北方領土関連出張は1度だ
けだ(前掲紙)。
 こうして見ると、「歯舞」が読めなかった、というより「歯舞」に関心がなか
ったのだ。それは、北方領土に関心がなかったことであり、日露問題に関心がな
かったことを示している。担当相になって付け焼刃的に官僚から北方領土問題の
基本は勉強した(それも疑わしい)としても、身にはついていなかった、という
わけだ。
 いま、日露の外交官レベルでプーチン大統領の訪日が検討されている。プーチ
ン大統領との直接交渉で、北方四島問題の何らかの道筋をつけたい、というのが
安倍首相の目論みだろう。「あんな大臣で何ができるというのか」。
 プーチン大統領の高笑いが聞こえてくる。
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◆不条理ショートストーリー 4−4
「食文化における動物愛護精神の発展的展開と葛藤事例の研究」証:白石 阿光                                               
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昔々少年だった少年は、今でも少年だった。

 少年が昔見た風景の中を歩いていると、横から白い豚が飛びかかってきた。
 花子だった。
 林のなかをシカがゆったりと歩いて消えた。
 見慣れたヤギが子どもを連れて草を食べている。子ヤギが親しげにエサをねだ
ってきた。

 少年はまだ事情を理解していなかった。

 そこに現れた少年は、まさに一卵性双生児といった少年そのものの姿だった。
 その少年は語った。それは次のような内容だった。

 私たちの島は、実は世界万物保存機構によって1万年もの間、遺伝情報を採取
するための、選ばれた島でした。
 対象地区は世界の他の地域にも徐々に拡大されたのですが、その情報は厳格に
保存されるはずでしたし、実際にあるときまではそうだったのです。
 400年ほど前、世界のあらゆる場所でバイオテロが激しくなり、世界万物保
存機構が破壊され、遺伝情報は拡散してしまいました。
 その後まったくコントロールできていない状態が続いています。

「その結果、どうなったと思いますか?」−−少年は少年にたずねた。
「いまどの時代にあなたはいると思いますか?」−−少年は、答えを期待してい
ないことが明らかな質問をしたあと、さらに説明を続けた。

 拡散した遺伝情報をもとに、世界各地区の研究機関がさまざまな生物を複製し
ました。
 その結果、何百年も違う時代の生き物が同時に発生し、もはや横にいる生き物
が元はどの時代に存在していたのかさえもわかりません。この世界には、いくつ
もの時代が存在しているのです。いまや時間という概念が意味をなさず、時間の
ない世界になってしまいました。

「いくつもの宇宙が同時に存在している」−−少年はそう思った。
「まるで宇宙創生期だ」
 しかし、違うのはいくつもの宇宙が一つの空間に錯綜して同時に存在している、
ということだった。
「どうしてこうなったんだ」−−少年は少年に聞いた。

 この世では、「生物の基本的権利を最優先する世界条約監視機構」がもっとも
権力を持っています。といっても、混乱によって組織というものがすべてなくな
ったので、もちろん世界条約監視機構も存在しないんですけどね。
 組織がないということは、規則を変えるところがないということですから、監
視機構があった時代の規制やルールがそのまま続いているのです。
一番力を持っているのが「自然に死んだものしか食わない」というルールです。
 子牛、子羊、子豚の料理はめったにありません。子どもの時に自然死すること
が少ないからです。
すなわち、動物愛護が絶体的原理になったので、人々は死んだ動物しか食べては
いけないのです。また、死んだ生き物は徹底して社会の役に立てなければなりま
せん。それが生物の尊厳を守ることとされています。
人間を火葬にするのも禁止で、土葬にしたあと10年したらそこの土を畑に撒くこ
とになっています。いい野菜が取れますよ。

 少年は思った――時間を失ったこの地球上にはすばらしい循環系環境が実現し
ていた!

 そのときその社会では、生物の基本的権利だけでなく、無生物の生存権につい
ても議論が続いていた。やがて、地球の自決権、そして宇宙の権利のあり方につ
いても話題になるだろう。
 しかし、少年はわかっていた。議論は進んでも何も決まらないことが。なぜな
らそこは、時間というものがなく、秩序もなくなっている社会だったからである。
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◆「ふろむ京都山麓」抜粋抄:みなみうら・くにひと                                                
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 今週は休載です。
「ふろむ京都山麓」 http://blog.goo.ne.jp/0000cdw
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆一口メモ 【歯舞(はぼまい)】            
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  ウイキペディアによると「歯舞」の由来は、アイヌ語の「ハ・アプ・オマ・イ
(覆っている氷が退く・小島・そこにある・所→流氷が退くと小島がそこにある
所)」から。ロシア名はハボマイ諸島(Острова Хабомай)、
英語表記は Habomai。

 今週の現代時評に井上脩身氏が取り上げられているが、かなり恥ずかしい事態
だ。プーチン・ロシア大統領の高笑いが聞こえてくるようだ。なにしろ英語表記
でも Habomai なんだから…。
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◆編集長から: 片山通夫
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 今度は自民党の丸山和也・参院議員が「黒人・奴隷がアメリカ大統領になって
いる」と発言。そして陳謝。何しろ軽い首相にもとには軽すぎる大臣や議員が集
まっている。よく言ったものだ。類は友を呼ぶって。
 ばかばかしくって論評に値しない。こんな輩が国を亡ぼすんだろうな。

 歯舞を読めない担当大臣(現代時評参照)や、丸川環境相の《年間1ミリシー
ベルトの除染の長期目標をめぐり、「何の科学的根拠もない」》と発言する連中
はおよそ議員の質を疑う。即刻辞めるべきだ。国民のために。

 トルコでまた爆発。まさにテロの時代だ。社会を不安定にすることが「理にか
なう」という考え方がわからない。

 米大統領がキューバ訪問とか。実績創りに躍起の大統領なんてうがった見方は
やめてここは素直に喜ぼう。キューバ人のためにも…。

 それにつけても我が国の首相は!金ばかりばらまいていないで、一極に集中し
た外交政策をとるべきだ。差し当たって朝鮮半島などはいい対象だと思うが…。
 まあ、行く度胸も何もないわな。
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  発行     2016年2月23日  No.747
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