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タイトル:609studio No.745 ◆現代時評《甘利前大臣の毒饅頭体質》:井上脩身  2016/02/09


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【609 Studio】メール・マガジン 2016・2・9 No.745
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身氏
の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! 
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◆現代時評《甘利前大臣の毒饅頭体質》:井上脩身
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 「松の廊下賄賂」。甘利明・前経済再生担当大臣の閣僚辞任のニュースにとっ
さに浮かんだ言葉である。現金を受け取ったとする週刊文春での報道を受けて、
1月28日、甘利氏は記者会見し、大臣室や神奈川県大和市の地元事務所で、菓
子折りとともにのし袋に入っていた現金それぞれ50万円を受け取った、と認め
た。その報に私は子どもの時にみた忠臣蔵の漫画の中の、吉良上野介が菓子箱の
中の大判を数える場面を思いだしたのである。甘利氏は法に従って処理したとい
う。だが、広い意味で賄賂であることには変わりはない。金を受け取ることに平
然となれる感覚を私は「毒饅頭体質」と呼んでいる。一見おいしく見える饅頭。
その中に潜む毒が政治を腐敗させる、という意味である。
 報道によると、甘利氏は千葉県の建設会社から13年11月に大臣室で、14
年2月に地元事務所で現金50万円を受け取った。さらに、13年8月、秘書に
1000万円を持ちこまれたが、「高額だ」として500万円を返した。残り5
00万円のうち300万円を秘書が私的に消費した。さらに秘書は多額の飲食接
待や現金供与も受けた。

 甘利氏本人が受け取った計100万円については「政治資金として適切に処理
するよう指示した」と述べ、違法性はないとの認識を示した。結局、秘書の金の
受け取りについてのみ「監督責任がある」として閣僚を辞した(1月29日『毎
日新聞』)。平たく言えば「オレは悪くないが、秘書がバカなことをしたので責
任を取る」というのである。

 秘書が300万円を勝手に使った、というのなら横領罪の疑いが濃く、論外で
ある。甘利氏に監督責任があるのは言うまでもない。むしろ問題は2回の各50
万円の受領だ。大臣室でのやり取りについて、「建設会社社長が大臣室を訪問し、
これはお礼です、と現金50万円入りの封筒をようかんと一緒に(甘利氏に)渡
した」というのが週刊文春の記事。これに対し甘利氏は「社長退出後、秘書から
『紙袋の中にのし袋がある』と報告があった」と弁明した。

 仮に甘利氏の説明通りだとしても、社長が立ち去った直後、甘利氏は現金入り
のし袋に気付いたことになる。50万円なら相当の厚みがあるが、「返さねばな
らない」とは考えなかったのだ。「1000万円は高額だから500万円を返し
た」ことを甘利氏は認めている。50万円は甘利氏にとって高額ではなかったの
だ。

 建設会社社長と甘利氏の現金授受場面から冒頭に述べたように、こどものころ
の漫画の一場面が私の頭によみがえった。どこかの大名から贈られた菓子箱を開
けると、お菓子の下に大判がぎっしり。「よし、よし」と吉良は喜び顔。浅野匠
内匠頭も菓子折りを持ってきた。開けてみると菓子だけで、大判も小判もない。
怒った吉良は内匠頭にいじわるをして礼儀作法を教えない。ついに切れた内匠頭
が松の廊下で刃傷に及ぶ、といった次第。
 もちろん史実ではない。何とも吉良には気の毒な物語だが、これが賄賂の典型
とされてきた。庶民にはほとんど縁がない。庶民に賄賂を贈るメリットはないの
だ。

 その庶民も選挙では立ち場が逆転する。私は30年余り前、四国のある町議選
の運動員に成りすましたことがある。陣営幹部が過去の実例を教えてくれた。立
候補の挨拶回りとして、候補者名入りののし紙に包んだタオルを各戸に配る際、
その内側に現金をしのばせた。「受け取る方も現金があることは分かっている。
『挨拶代わり』なら受け取りやすいのだ」という。

 地元の政治学者にこの話をすると「毒饅頭体質です」と解説した。言い得て妙
だと思った。菓子折りののし紙や袋と現ナマ。金権選挙のパッケージなのだ。
「クリーンな選挙をやる」といっていた私の陣営の候補者も「票が足らない」と
焦りだし、“実弾”に手を染めた。落選し、12年後にようやく当選した。とこ
ろが汚職で逮捕され、議員をやめさせられた。

 甘利氏の今回の現金授受が30年前の田舎の町会議員選挙と構造がそっくりで
あることに驚くほかない。今ではすっかり大物政治家になった甘利氏だが、当初
から毒饅頭体質に染まっていたのではないか、と私は疑う。
 甘利氏は「いい人だけと付き合ってちゃ選挙に勝てない。小選挙区だから」と
述べた。皮肉にも、現在の政界の本質を見事に言い当てているではないか。この
選挙制度によって当選した議員ばかりの国会自体「毒饅頭体質」に染まり切って
いるのではないのか。そして、こうした政治家が選ばれる日本の社会も毒饅頭体
質が蔓延しているのではないのか。

 吉良は赤穂浪士によって首を切られたが、甘利氏が大臣をやめただけで済むな
ら、毒饅頭の毒ははびこり続けるだろう。毒は政治の隅々にまで回って腐敗させ、
挙句、この国を戦争にまで突きこませるのではないか。私は毒饅頭国になること
を恐れる。
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◆不条理ショートストーリー 4−2
「食文化における動物愛護精神の発展的展開と葛藤事例の研究」証:白石 阿光                                               
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これは、高い山がたくさんある南の島の遠い昔のお話です。

 少年が小学5年になって、クラスの先生と友だち4、5人で大きな滝を見に行
ったときのことです。
 滝の水がはげしく落ちて水けむりが立っているところになにかが浮かんでいま
した。
 シカです。
 先生が岩から身を投げ出し、先生の手を子どもたちが引っ張ってシカを引き上
げました。
 シカは傷ついていました。
「犬に追われて滝から落ちたのかもしれない」
先生が言いました。
「学校で飼おう!」
子どもたちが言いました。
 そこで、先生の家まで運び、教育委員会に電話をして飼ってもよいという許可
をもらいました。
 でも、シカは傷ついて弱っていました。そしてとうとう死んでしまいました。

 先生の家の下に住んでいた男の人が包丁を持ってきて「食べよう」と言いまし
た。
 少年たちは「いやだ!」と言いました。

 そのあと、大人たちはなにやら相談をし、どこかに連絡をしたりしていました。
 少年たちは家に帰りました。

 その夜、それぞれの家にシカの肉が配られました。
 少年は食べませんでした。

 少年はホテルの社長になりました。
 そのころ、ジビエ料理が流行ったそうです。

 あるとき、ホテルの試食会でジビエ料理が出ました。社長はいつも味を厳しく
チェックします。その日のテーマは野生の鹿肉でした。
 社長はすぐに気がつきました。ちょっと躊躇したようでしたが、横にいた料理
長と2、3言葉を交わしたあと、一気に口に入れ、二口噛んだあと飲み込みました。
 その鹿肉は、北の島で獲れたものでした。
 
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「昔はよかったなあ」
「ああ、コンビニで賞味期限が切れそうな弁当をいくらでもくれた」
「おれはたくさんもらってホームレス仲間に配ったよ」
「俺は売ったりもしたな」
「あのころは賞味期限が切れた弁当を売った業者が告発されて、つぶれたところ
もあった。厳しかったなあ」
「でもそれで俺たちは飢えなくてもすんだんだぞ」
「それが、もったいない、厳しすぎるとなって規制緩和だ。賞味期限後も管理が
しっかりしていれば売れるようになった」
「安くしてね。俺たちは買えなかったけど」
「賞味期限後食品を食べる運動も起きたよね」
「格差がひどくなって、食事を満足に食べられない子どもたちや独居老人が増え
たので、大量に福祉団体が引き受けているという話も聞いたぜ」
「どっちにしろ、俺たちのところには回ってこなくなったんだもんな」

「いや、俺たちだって団体を作ればいいんじゃないか?」
「お前、新顔だな。ホームレスにしてはアグレッシブすぎる。だけどな、団体を
作るには住民票がいる。住所がないとダメなんだよ」
「あれ、知らないの? これ」
「なんだ、それ? 金ぴかだな」
「マイナンバーカードプレミアムだよ。ホームレスでもこれを持てば、住民票が
なくても大丈夫」
「へえ、そんな便利なものができたんだ。それは俺でももらえるのか?」
「もらえるよ。役所で申請すれば。ただ、お尻に注射を一本打つだけ。1ミクロ
ンの居所チップを埋め込むだけですむんだ」
                        ー次週に続くー
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◆「ふろむ京都山麓」抜粋抄:みなみうら・くにひと                                                
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 今週は休載です。
「ふろむ京都山麓」 http://blog.goo.ne.jp/0000cdw
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆一口メモ 【PAC3】            
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 米レイセオン社製 MIM-14 ナイキ・ハーキュリーズの後継。PAC−1からPAC-3
まで改良を重ねられているパトリオットミサイル。湾岸戦争時にイラク軍が発射
したスカッドミサイルを撃墜したことにより有名た。
 北朝鮮の「ミサイル発射」の報を受けて自衛隊が迎撃に備えている。
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◆編集長から: 片山通夫
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 春節のこの時期に台湾南部で大地震。被害の少ないことを祈る。

  韓国の朝鮮日報7日付電子版で《韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は7日、
北朝鮮が人工衛星打ち上げと称し事実上の長距離弾道ミサイルを発射したことを
受け、国家安全保障会議(NSC)を召集した。青瓦台(大統領府)が伝えた》
と報じた。韓国のマスコミはもちろん、我が国の大手新聞なども速報や号外で同
様のニュースを報じている。(2016年2月7日午前11時現在)
  その後、北朝鮮の朝鮮中央テレビはミサイル発射の写真を放送し「光明星4号
を自らの軌道に正確に進入」させたと伝えた。
 幸いにして我が国や韓国などに被害はなかった模様だが、安倍政権とその支持
者を勢いつかすことになり、ますます右傾化が進むのではないかとを懸念する。

 先日、京都府舞鶴市の市立舞鶴引き揚げ記念館へ出かけた。ユネスコ記憶遺産
に登録されて、全面リニューアルされた記念館は、正直なところ「きれいごと」
すぎる感を持った。昭和20年(1945年)10月7日に最初の引揚船・雲仙丸
の入港から昭和33年9月7日の最終引揚船・白山丸まで国内で唯一13年間に
わたり約66万人もの引揚者・復員兵を迎え入れたと、そのホームページにある。

 実際に見ると感じられると思うが、もっとドロドロした愛憎が俘虜になった日
本人同士の間にも、勿論ロシア人との間にもあったはずだが…。
 えてして日本人は美徳なのか知らないが、史実までも隠そうとするきらいがあ
る。果たしてそれが正しいことなのかは慰安婦問題や対大陸侵略問題に関しての
現状の認識を見ればおのずから明らかだ。それがこの引き揚げ記念館の展示にも
感じられるのが残念だ。
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  発行     2016年2月9日  No.745
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