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タイトル:609studio No.742 ◆<私と放射能>「日常の空気の中で萎縮するジャーナリズム」:渡辺幸重    2016/01/19


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【609 Studio】メール・マガジン 2016・1・19 No.742
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身氏
の現代時評、ロシアやサハリンの話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載! 
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◆現代時評《年の初めに・・・》:片山通夫
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 サウジアラビアとイランが一触即発の危機。一部には原油価格が低迷している
ので、ある種のやらせとみる向きもあるが、そうも言っておれない。中東はきな
臭い年の初めとなった。そういえば安倍首相は「ホルムズ海峡大変のとき」には、
自衛隊を派遣してなんて「たわごと」言ってたけどあれどうなった!?。
                                   ◆
 「たわごと」ついでに、北朝鮮が「水爆作って実験した」というニュース。こ
との真贋はともかく、少なくともマグニチュード5,5だかの人工地震を起こす
能力のあることはわかった。自衛隊幹部は「寝耳に水」だって。あたふたするの
はわが政府。腹が座ってない!
                                   ◆
 昔、「パリは燃えているか」という米仏合作映画を見た。1944年のパリで
の対独レジスタンスを描いた映画。ヒットラーがパリを破壊するよう命令したが、
ドイツ軍司令官はその命令に従わずパリの炎上を防いだという話。
 そのパリが今テロの脅威に晒されている。パリの警察署が襲撃を受けた!
 しかし晒されているパリはナチスのような「侵略者」ではないところが悲劇だ。
とても「テロリストはレジスタンス」とは言えない。
                                   ◆
 NHKの長寿番組「クローズアップ現代」のキャスター・国谷裕子(くにやひ
ろこ)さんの公判が決まったと。NHK上層部(これが臭い)の意向だとか。ま
すます強まるのか。安倍官邸の圧力。そういえば報道ステーションのキャスター
も公判が決まったとか。我が国のテレビ番組から報道番組が消える日が近いぞ!
  モノ言えば唇ならぬ首涼し。
                  ◆
 高市総務相がたわごと。「個人番号カードのICチップの空き領域を活用して、
民間企業のポイントカードやクレジットカードなどそれぞれのサービスに連携で
きる仕組みを総務省で構築してみたい」だと。いよいよ買い物まで国家管理。お
よそ自由競争の原理から外れる。
 ソ連時代や北朝鮮でもあるという自由市場は、我が国では?
                  ◆
  日本経済の先行きが見通せない。外的要因では北朝鮮核問題、中国経済の失速、
原油価格の低迷、中東の不安定、イラク難民問題を抱える欧州などなど。国内で
は株価低下による年金4兆円が霞に。
                                   ◆
  《北方領土解決へ対話促進高村副総裁、ロシア外相が一致》と報道。もう何年
も膠着状態といって良い北方領土問題。ロシアの公式見解は「二島返還」で領土
問題の幕を引く案。日本では「4島一括返還論」が幅を利かせている。旧島民の
要求は通るのか?なんだか韓国における慰安婦問題に似てきた。
                                   ◆
  膠着状態といえば北朝鮮による拉致問題。安倍首相の専権事項のように本人は
言ってきたが・・・。蓮池透氏の著書と真っ向対決。同氏はその著書・『拉致被
害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)http://ur0.work/qnEQ
で明かした。
 《官房副長官だった安倍氏は小泉純一郎・元首相とともに訪朝したが、安倍氏
はそのときのことを「北朝鮮側、金正日総書記から拉致問題について謝罪と経緯
の報告がなければ、日朝平壌宣言にサインをせず、席を立って帰るべきだと自分
が進言した」と触れ回った。しかし、同氏は「そういうことになっているが、ウ
ソ。それは、みんなの共通認識だったんだから」》

 筆者の感想:「あの安倍首相のいうことは信じられない」・・・。
                                  ◆
軽井沢のバス事故、大惨事になった。なんでも格安バスツアーで一か月前に雇っ
たという65歳の運転手がなぜかコース変更しての大惨事。さっそく国土交通省
は監査や関係者の聴取を実施し、運行停止や業務停止などの行政処分を検討する
方針だという。杜撰な経営をしていたバス会社に対してはやむを得ない措置だが、
規制緩和という名のもと、競争社会を煽ってきた政府にも責任はある。そういえ
ば廃棄処分したはずの食材が流通したというニュースにも「社会の貧困」を感じ
させられる。
 首相の言うように「月収25万」のパートタイマーがすべてという時代が早く
来ないかな。
                                  ◆
 年明けから株が暴落。黒田日銀総裁が緊急帰国!ついに「株価死守ライン168
00」を巡る攻防だとか。黒田日銀総裁はパリで開かれたフランス銀行と国際決済
銀行共催のクリスチャン・ノワイエ総裁退任記念シンポジウムに出席したものの、
予定していたスピーチを行わず急きょ帰国したという。
 これは株価が死守ラインを割り込む可能性が出たため、首相官邸が呼び戻した
との観測がもっぱらだ。しかし打つ手はあるのか。
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     「追跡!あるサハリン残留朝鮮人の生涯」 片山通夫 著

  日本の植民地統治が生んだ一家離散「二重徴用」「急速転換」「樺太
    への逆密航」を語る貴重な証言!!

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◆<私と放射能>「日常の空気の中で萎縮するジャーナリズム」:渡辺幸重                                               
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 私が放射能に対して恐怖を持った原点は、大学での体験ではなかったかと思う。

 高校のときに湯川秀樹博士に憧れを持った私は理論物理学者を夢見たが、事情
があって果たせなかった。それでも基礎科学関係の学科におり、放射線に関わる
実験もやった。放射線の干渉実験(ラウエ斑点)をしたとき、聞いた言葉がある。
「昔は実験台の下に鉛板を巻かなかったので被曝して生殖機能がなくなった先輩
がいた」
 確かに実験台の上では鉛板が粘土細工のような不器用さで機器を取り巻いてい
た。私は見なかったが、足下にも同じような物があったのだろう。「男でも生殖
作用がなくなるのか」と思ったが、冗談ぽい言葉の中にも未知の恐ろしさを感じ
たものだった。

 1年後、私は卒業研究に打ち込んでいた。テーマはなぜか“植物ホルモン”。
炭素の放射性同位元素を吸い込ませて、植物ホルモンの形成過程を追跡するとい
うものだった。麦の芽をすりつぶしては6時間おきにシンチレーションカウンタ
ーで放射線を測ったが、そのたびに放射能管理区域に入るのでバッチを渡された
が、それを付けて入ることはなかった。指導教員も「測っていたら実験はできな
い」と言っていた。当時の研究者はそんなものだったと思う。このときは放射能
を恐ろしいとは思わなかった。

 ただ、私は「人類は放射能をコントロールすることは不可能だ」と感じつつあ
った。それは上記のようなささやかな経験と同時に、尊敬する湯川先生の平和活
動から原爆の恐ろしさについて考えるようになったからだろう。

 新聞記者になって浜岡原発を取材するようになったとき、私はすでに“反原発”
だった。それは学問を学びながら得た結論であり、ごく自然なものであったから、
自分のなかでは何があっても変わるものではなかった。でも、他者を説得できる
ほどの理論的な裏付けを持っていたわけでもなかった。

 一年生記者のとき、先輩記者と一緒に浜岡原発で働いている人を取材しようと
したことがあった。地元に住んでいる人のリストを手に入れて一軒一軒回ったが、
誰一人として取材に応じてくれなかった。私は人影のない通りを何することもな
く歩きながら、ここは“原発帝国”ではないか、と思った記憶がある。

 その後も取材を続けたが、こんなこともあった。あるとき、中部電力の広報を
通じて浜岡原発の話を現地で聞いたあと帰ろうとしたら広報課員がじゃあとばか
りに私の車のトランクに何かを投げ込んだ。見ると袋井特産の高級メロンだった。
私は、それを打ち捨てて走り去った。

 定期的に中部電力は記者会見を開き、浜岡原発周辺の放射線モニタリングの数
値を発表した。それは補正後の数値だけの公開だった。たぶん、各地域の自然放
射線量を引いた数値ではなかったかと思うが、どのような補正をしているかわか
らないことと実測値が知りたかったので、中部電力の担当者に「生の計測数値が
欲しい」と要求すると「出せません」とそっけなく言われてしまった。理由は、
実測値が一人歩きしてしまい、社会に誤解を撒き散らすからということだ。「補
正の方法を知った上で正確に理解したい」と食い下がったが、「皆さんには理解
できないでしょう」という態度で、とりつく島もなかった。

 取材を続けながら、自分では社会的使命を果たそうと意識していたはずなのに、
常に後ろめたいものを感じていた。それは、自分で「おかしい」と思っているこ
とでも、どこかで妥協をしていたからだと思う。「一人だけがんばっても何もで
きない」「今の世の中では仕方がない」と自分を納得させていた。それは自分の
弱さであることは自覚していた。そして、周りから感じるプレッシャーのせいで
もあった、と思う。実際にこんなことがあった。

 県政を担当していた私は、知事との定例記者会見である問題について質問し、
回答に納得いかないので食い下がってしつこく質問を続けたことがあった。会見
が終わったあとで他社のベテラン記者から怒られた。「会見であんなことを聞く
もんじゃあない。知事に失礼だ」。こんなことも言われた。「そういうことは知
事の家に行って聞くんだよ」

 それは親切心だったのだろうか。特ダネは夜討ち朝駆けで取材し、抜け駆けを
して勝ち取るものだ、と教えてくれたのかもしれない。しかし、私はそういう考
えはできなかった。密室で情報をもらうことをするから権力に振り回され、利用
されるのだ。

 もちろん、私も知事公舎に夜討ちに行ったこともある。だが、そんなことでジ
ャーナリストの使命が果たせるとはとても思えなかった。適当なネタか宣伝情報
をありがたく握らされて利用されるだけだろう。
 そんな雰囲気にも負けて、私は縮こまっていったような気がする。

 東電福島第一原発で事故が起きてから、マスコミへの不信感が増大した。私は
福島を歩きながら、政官財学のすべての権威を失墜していくのを感じていた。同
時に住民の誰もがマスコミをも信じなくなっていた。一方で民主党政権の下で東
電の記者会見にフリージャーナリストが参加できるようになり、彼らがするどい
質問を投げかけ、情報公開が進んでいるのを見て、ジャーナリズムが成長してい
るようでうれしかった。

 安倍政権になってジャーナリズムが抑圧され、マスコミへの不信感は続いてい
るが、私はマスコミに対して“マスゴミ”という言葉を使って批判する気にはな
れない。マスコミの中にも良心的なジャーナリストは確実に存在するからだ。そ
の人たちが萎縮するようなことは言いたくない。組織ジャーナリストもフリージ
ャーナリストものびのびと取材をし、権力の暴走に警鐘を鳴らすことができる状
況を作りたい。そのために応援できることは精一杯応援し、批判することは正確
に内容を伝え、よりよい社会を共に作る姿勢でいようと思う。
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◆「ふろむ京都山麓」抜粋抄:みなみうら・くにひと                                                
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 今週は休載いたします。

「ふろむ京都山麓」 http://blog.goo.ne.jp/0000cdw
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆一口メモ 【ジャカルタ】            
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 インドネシアの首都。最近テロに襲われた。ジャカルタは古称はジャガタラと
呼ばれて、我が国とも縁が深い。徳川幕府の鎖国政策によって、唯一開かれてい
た長崎の出島にはオランダ商館があった。そのオランダはジャカルタを支配し現
在のジャカルタをバタヴィアと呼んでいた。日本ではジャガタラと現地式の呼称
だった。
 そのジャカルタがテロの見舞われた。日本人も多く住む町のテロは衝撃的であ
る。
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◆編集長から: 片山通夫
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 安倍首相が対ロシア政策に熱心だ。熱心なことはいいのだけれど、どうも彼の
本心は単なる「名誉欲」でしかないように感じる。それは対北朝鮮政策に関して
「拉致問題」を一人自分の手柄のように吹聴しているように思えるからである。
 拉致問題に関しては、蓮池さんの著書を読んでいただきたい。この件に関して
は次のサイトが詳しい。http://lite-ra.com/2015/12/post-1803_5.html

 対ロシア政策に関してだが、安倍首相は「北方領土問題」で過去の首相と同様
自分の時代に何らかの進展を見いだせるようにしたいのだ。
 北方領土問題はすでに両国とも案は出尽くした感がある。筆者は「ロシアは決
して北方領土を手放さない」と思う。なぜならこの問題がある限り、日本は安倍
首相のように西側がロシアに対して封じ込めるような政策をとっても、日本は完
全に欧米の対ロシア政策に同調しないと踏んでいるからである。見透かされてい
るということをわかっていて訪露しようとする安倍首相は功名心に毒された馬鹿
首相だ。

 ネットで言われていることがある。
女子高生の間で「アベ過ぎる」と言う言葉が流行しているとか。意味は「他人の
話が聞けない、聞かれたことに答えないそしてごまかす」というほどの意味。

 女子高生にまで(まもなく選挙権を持つ)揶揄される総理大臣って・・・。
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  発行     2016年1月19日  No.742
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