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タイトル:609studio No.731 ◆現代時評《地方創生の妙技》:片山通夫  2015/11/03


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【609 Studio】メール・マガジン 2015・11・3 No.731
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身氏
の現代時評、ロシアやサハリン の話題、編集長のコラムなど多彩な話題満載!
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◆現代時評《地方創生の妙技》:片山通夫
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 このほど高橋はるみ北海道知事がサハリンを訪れた。ロシアからの報道によれ
ば「ロシア連邦サハリン州のオレグ・コジャミャコ州知事は、北海道の高橋はる
み知事に対し、両地域間のビザを廃止する問題を検討してはどうかと提案した。
日本代表団のサハリン訪問中、双方は、この問題を討議したとの事だ。サハリン
州政府報道部が伝えた。」とある。

 筆者も長年にわたってサハリンを訪れているが、必ずビザが必要なので面倒だ。
おまけに滞在先のホテルなどの証明も必要でパスポートを持って内務警察に届け
出なければならない。この夏に戦後70年のイベントでユジノサハリンスクを訪
れたときは、招待元の大学がビザフォームを手配してくれたので、それをもって
在日ロシア領事館でビザの発給を受けた。同じ時期にサハリンへ渡った韓国人は
ビザは不要だという。

 ロシアと日本の間には平和条約が結ばれていない。これが最大の原因だ。つま
り外務省のHPから読むと「北方領土の我が国へ返還されないから平和条約は結べ
ない」ということだ。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/hoppo_rekishi.html

 サンフランシスコ条約で日本が独立した時の韓国との竹島問題、中国との尖閣
列島問題も同じくその帰属ははっきりしない。それでもそれぞれが「実効支配」
している状況は北方領土と同様だ。
http://cccpcamera.photo-web.cc/Ryoudo/Takeshima/Ullundo/HeiwajouyakuTakeshima.htm

 戦後、一貫してアメリカの影響下にあったわが国は、アメリカの意向を無視し
て、中国や韓国、ソ連(当時・現ロシア)との国交交渉などはできなかったよう
に感じる。それが現在の沖縄問題や原発問題、そして北方領土問題に大きく影響
しているわけである。

 話はビザ問題に戻る。済州島(韓国)は180か国を対象にビザなし渡航を認
めている。これは韓国中央政府からの権限移譲で実現した。そして国際自由都市
としての機能を優する韓国の地方都市でもある。

 さてサハリン島と北海道が「ビザなし渡航」を相互に認めることができれば、
経済交流はもとより、文化的にも大いに発展する可能性がある。日本人がサハリ
ンへ行くのに、そしてロシア人が北海道に来るのに面倒なビザを必要としなかっ
たとすれば・・・。

 おそらく中央官僚上がりの高橋知事は柔軟な頭脳を持ち合わせていないだろう
し、我が国の外務省も安倍政権もおそらく「自らの権限を縮小する」ような政策
は決してできまい。「地方創生はここから始まる」と打って出れば歴史に残る政
権になるのだが…。
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◆「ふろむ京都山麓」抜粋抄 《隠れキリシタンと天皇制 第4回》
                         :みなみうら・くにひと                                                
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 <堀田善衛とクロ宗>

 ところで堀田善衛の小説のクロ宗記述は、部外者が書いたとは思えぬほど詳し
い。離島の山中の秘密の寒村について、なぜ彼はここまで知ることができたので
あろう。実に不思議である。
 鬼行にたとえられる伝承の葬送儀式など、また登場人物の言動など、当然だが
堀田の創作である。しかしそれらを差し引いても、堀田の記述はあまりにも現地
の事情に通じ過ぎているほどだ。鹿児島にも甑島にも接点をもたないはずの堀田
が、なぜこの作品をつくりあげることができたのであろう。

 堀田は本式にキリシタン小説を書くために九州を訪れた。しかし彼は、さまよ
い歩いて鹿児島まで流れて行ってしまい、とうとう薩摩半島南端の野間岬という、
本土のドンジリまで行って、そこの網元である山本家に一月近くも世話になった。
「この野間岬からポンポンで四十分行くと、甑島がある。上と中と下の三っの島
にわかれている。ほんとうにさびしい岩ばかりの離島である。そこの東シナ海側
の断崖にかこまれた某村にクロ教というものがある、と聞いたので別に、それほ
どの関心をもってではなくて、山本家の若旦那といっしょにポンポンで行ってみ
た。…クロ教というものが、キリシタンの土俗化したものであろうという小説『
鬼無鬼島』の設定は、これは要するに私の設定というものであって、その正体は、
これはわからないというよりほか仕方はないであろう」

 そして堀田は、天皇制の成立基盤について、つぎのように問いかけている。日
本の土俗の奥の方にあるらしい、無限に不気味な怪物がそれを成立させているの
ではないか。「それ」は「天皇制」である。天皇制とは何か、それが存続しうる
いちばんどん底の理由はなにか、とその解答を求めて模索していた時期の作品が
『鬼無鬼島』であった。
 また堀田は、自分のなかには、戦中戦後を通じて天皇制の問題が、鋭く自分を
つきあげるものとして存在しつづけていた。「天皇制とは何か、それが存在しう
るいちばんどん底の理由とは何か、天皇制というものは、日本の、たとえばピラ
ミッドの頂点にあたるものなのか、それともそれはなにかの頂点などというもの
ではまったくなくて、日本の、どん底の何物かなのか、なぜそれがアリガタイモ
ノなのか、それは現代世界とどういう関係にあるものなのか、それはいかなる理
由によって肯定されなければならぬものなのか、またいかなる理由によって否定
されなければならないか、もし否定されるとすれば、いつ否定されるものなのか」

 天皇制をめぐっては、疑問は山のようにあって、疑問だけが存在するのである。
しかもなお天皇制は存在するのである。堀田にととのった答えがない。「誰にあ
ろう?」しかし「この問題に答えることが出来ないで、疑問を疑問のままで放っ
たらかしておいて、どうして現代の日本で文学者であることが出来るか、それが
悪夢のように私について来た。…私はいろいろに考えた。結論は、ない……。そ
ういう頃に、私は『鬼無鬼島』を書いた。」

 真継伸彦は堀田善衛全集解説でこのように記している。「天皇制というものに、
何ら実体はない。鬼無き鬼とは、実体がない幽霊が民衆をおびやかしているとい
うことの象徴である。天皇という権威は、私たち日本人が生きるために、『考え
れば不要』のものなのだ」。小説ではサカヤを村では「山の天皇」と呼んでいる。
(1974年版第4巻『鬼無鬼島』収載)

 鈴木昭一は帝塚山短大紀要「宗教とその土俗化」において、「『鬼無鬼島』は、
クロ宗の実体の考察のなかで、日本における神・信仰・思想の土俗化とそれに密
着したものとしての天皇制の根源を追及しようとしたものである」と記している。

 先に紹介した旧制川内中学校の「甑島のクロ宗」に「最近に行われた鹿児島県
当局の調査によれば……」と記されている。川内中が刊行したのは昭和11年であ
る。昭和初年にクロ宗の現地調査が行われたのである。

 この詳細な報告書を堀田は読んだのであろう。それにしても、なぜこのような
特殊な官制の文書を知ったのか? 戦後間もないころ、おそらく昭和31年かその
前年に堀田はクロ宗報告書を読んだとしか考えられない。甑島へはたぶん三度通
っている。

 当時の鹿児島県立図書館館長は、久保田彦穂という。動物物語で有名な児童文
学者の椋鳩十が、久保田の筆名である。昭和30年のころ、堀田は鹿児島に椋を訪
ねた。そして甑島のクロ宗の話を聞いて驚いた。当時、鹿児島図書館が所蔵して
いた昭和初年に県が実施したクロ宗調査報告書を読み込んだ。わたしの勝手な推
理だが、おおむね正しいであろうと信じている。

 <2015年10月18日>
「ふろむ京都山麓」 http://blog.goo.ne.jp/0000cdw
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆一口メモ 【地方創生】            
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 国内の各地域・地方が、それぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会をか
たちづくること。魅力あふれる地方のあり方を築くこと。

 つまり政府が旗を振った場合、何でもありの利権まみれ政策といえる。
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◆編集長から: 片山通夫
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 ロシアの中東への攻勢がすごい。先日、シリアのアサド大統領をモスクワへ秘
密裏に招き、プーチン大統領と会談した。会談の内容は詳しくは述べられていな
かったが、「ISに対する戦闘」や「シリアの反体制派に対する考え方」などが話
し合われたと想像する。
・・・と思っていると、次のようなニュースが舞い込んできた。
 「自由シリア軍」の代表らはロシアに対し、シリア危機解決を共同で行うことに
ついてカイロで会談するよう申し込んだ。「自由シリア軍」創始者のひとり、フ
ァハド・アル・マスリ氏の言葉をリア・ノーヴォスチが伝えた。『自由シリア軍
』はロシアとの対話に用意がある。我々は、我々の立場を表明し、共同行動につ
いて討議するため、新たな会談を必要としている。ロシアが『自由シリア軍』に
どのような支援を施し得るかについて、共通の決定を会談の中で策定するだろう」
 
 安倍首相が「対テロ対策」で巨額の支援金を出した。シリアから難民に対して
もまだ何も対応していない。しかし世界の情勢はどんどん目まぐるしく変わる。

 手をこまぬいていては世界の情勢から取り残されると思うのだが。
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  発行     2015年11月3日  No.731
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