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タイトル:609studio No.730 ◆現代時評《「1億総活躍」愚劣発想の根源》: 井上脩身  2015/10/27


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【609 Studio】メール・マガジン 2015・10・27 No.730
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身氏
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◆現代時評《「1億総活躍」愚劣発想の根源》: 井上脩身
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 安倍晋三首相は「1億総活躍社会」を実現する、として10月7日に行った内
閣改造で「1億総活躍担当相」を設けた。「一億総玉砕」など、戦時中の“火の
玉精神”を思い浮かべる時代錯誤なスローガンを臆面もなく掲げる安倍首相。そ
の愚劣な発想の根源は、首相の故郷・山口県北部にある「松下村塾」にあるので
はないか。といっても吉田松陰の高邁な思想を首相が理解しているとは思えない。
同塾で学んだ長州藩士の流れをくむ明治政府の政治を理想としているように私(
筆者)には見える。首相が目指しているのは、天皇中心の中央集権体制による富
国強兵国家づくりである。

 昨年、「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録された。同遺産は、
「軍艦島」と呼ばれる長崎県の端島炭鉱など8地区23件の遺産から構成されて
いる。このなかに、「松下村塾」が入っていることに私は強い違和感を覚えた。

 松下村塾がある萩市は、安倍首相の出身地の長門市の東隣だ。安倍家の故郷(
首相自身は東京生まれ)の人々の自慢は松下村塾であろう。登録申請の際、強引
に理屈づけて産業革命遺産に結び付けた、としか思えない。

 今年のNHKの大河ドラマ「花燃ゆ」は、「松下村塾」がテーマだ。松陰とそ
の愛弟子の久坂玄瑞、高杉晋作らの倒幕運動から富岡製糸場を中心とした明治新
政府の富国政策までを、主人公である松陰の妹の目を通して展開させている。な
ぜ今松下村塾なのか。何者かの強い要請があった、とみられてもやむをえまい。

 世界文化遺産にしても、また「花燃ゆ」にしても、首相の差し金があった、と
いえる証拠はない。ただ、明治以降、この国の政界に脈々と息づいた長州閥の流
れの中にいる首相としては、「松下村塾」に学んだ志士やその後継者がつくり出
した近代政治に強い関心を抱いていたに違いない。

 吉田松陰は常々、「武士は守死であるべきだ。守死とはつねに死を維持してい
ることである」と語った。(司馬遼太郎『世に棲む日日』文春文庫)。高杉晋作
は農民らを組織して奇兵隊をつくり、後の徴兵制のもととなる。幕府が倒れ、や
がて伊藤博文、山縣有朋ら長州出身者が明治政府の中枢を担う。彼らは「欧米列
強と肩を並べる」ことを目標に、富国強兵政策を強力に推進。その一方で、藩を
廃止して中央集権体制を構築し、天皇を中心とする立憲君主国家を目指した。

 安倍首相は靖国神社の今年の秋の例大祭で真榊(まかき)を奉納した。同神社
が天皇の名で戦場に送られて死んだ人の霊をまつる神社である、との性格をみれ
ば、首相は戦前の天皇中心国家への思いを内に秘めている、とみることができる
だろう。また「地方創生」といいながら、辺野古問題では沖縄県民の意思を全く
無視する強硬な姿勢は、中央集権的国家観の持ち主であることを如実に示してい
る。

 集団的自衛権行使は、本欄で何度も述べてきたように、アメリカの戦争を、ア
メリカと共に、またはアメリカに代わって戦争をするというものだ。軍事費が増
大するのは火を見るより明らかだ。さらに、首相は「新三本の矢」と称して国内
総生産(GDP)を600兆円に拡大して「強い経済」の国にするという。要す
るに「富国強兵国家」にまい進しよう、というのである。

 こうした中での「1億総活躍」表明である。子どもから老人まで、退職しての
んびり休みたいと思っている者はもちろんのこと、病に伏している人も欠けるこ
となく「国のために活躍せよ」というのである。

 災害が起きれば誰もが、可能な範囲で生きるために頑張らねばならない。だが、
1億人みんなが災害に遭うことはない。ならば、国が全国民に求める活躍の場面
は「戦争」しかないではないか。活躍とは「死を維持する」こと、つまり「国の
ために命を懸ける」ことであろう。国民皆兵と銃後の守りの時代の、「一億一心
」して「一億総特攻」精神。そんな70年前を思い起こすスローガンを掲げ、「
中国に負けてはならじ」と国民を鼓吹しようとしている。

 テレビが普及し始めた1957年、評論家の大宅壮一が「一億総白痴化」と、
番組の低俗化に警鐘を鳴らしたのを思い出す。「1億総活躍」などという首相し
か持てないのは、国民が「一億総白痴化」しているからであろうか。
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◆「ふろむ京都山麓」抜粋抄 《隠れキリシタンと天皇制 第3回》
                         :みなみうら・くにひと                                                
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 <カクレキリシタン>

 隠れキリシタンはいまでは長崎県にしか存在しないといわれている。甑島や摂
津の高槻、そして奥州など全国の何ヶ所かにも隠れキリシタンが近現代に存在し
たという説があるが、それは正しくない。古野清人は『隠れキリシタン』におい
て、現代においても集落をなして、キリシタン信仰と行事とを多少とも持ち続け
ているのは長崎県下のほかには確認されていないとする。

 長崎県以外の現代の隠れ信者たちは、自身がキリシタンの末裔であるという認
識や記憶が一切ない。単なる土俗宗教らしきものを護持しているだけであって、
カクレであっても、彼らはキリシタンではない。

 宮崎賢太郎著『カクレキリシタン』によると、たくさんの人たちがカクレキリ
シタンに興味や関心を抱く理由をつぎのように説明している。
 キリスト教という世界最大の信徒数を擁するメジャーでグローバルな普遍宗教
が徹底的な迫害を被り、仏教や神道や日本の民俗信仰と深く融合しながらも、二
百数十年間厳しい弾圧に耐えて信仰を守り続けた驚異的な強さに人々が心動かさ
れるからであろう。さらに深く私たちの好奇心をかきたてるのは、現代では信仰
の自由が認められているにもかかわらず、なぜ今日にいたるまでカトリックに戻
ることなくその信仰を守り続けているのだろうか、という素朴にして根源的な疑
問によるものであろう。

 現存のカクレキリシタンは、いまだに隠れてキリスト教を守り続けているとい
う、幻想的にしてロマンチックなイメージによって生み出されている。宮崎は「
現在のカクレキリシタンはもはや隠れてもいなければキリシタンでもない。日本
の伝統的な宗教風土のなかで年月をかけて熟成され、土着の人々の生きた信仰生
活のなかに完全に溶けこんだ、典型的な日本の民俗宗教のひとつである…カクレ
キリシタンにとって大切なのは、本来のキリシタンの教えを守っていくというの
ではなく、先祖が伝えてきたものをたとえ意味は理解できなくなってしまっても、
それを絶やすことなく継承していくことであって、それがキリスト教の神に対し
てではなく、先祖に対する子孫としての最大の務めと考えているのである。カク
レはキリスト教徒ではなく、祖先崇拝教徒なのである」
 <2015年10月10日>
「ふろむ京都山麓」 http://blog.goo.ne.jp/0000cdw
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆一口メモ 【高速増殖原型炉もんじゅ】
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%82%E3%82%93%E3%81%98%E3%82%85             
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 高速増殖原型炉・もんじゅは「文殊菩薩」からその名前は付けられた。文殊菩
薩はその名の通り智慧を司る仏さまとして知られる。しかし残念ながら高速増殖
原型炉のほうはまったく智慧を働かせることなく終えそうである。何度も、故障
やトラブルに巻き込まれた。ほとんどが人災であるところが悲劇だ。

 そして規制委員会は「もう期待するのは無理」とさじを投げた形になっている。 
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◆編集長から: 片山通夫
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 たしか昨年の夏の終わりだったと記憶する。日本維新の会と結いの党が合併し
たのは…。それが一年後には御覧のような修羅場を迎えている。いろいろ原因は
あろうが修羅場が終わらない原因は「橋下人気」だけに集ってきた政治家たちに
責任がある。
 古来選挙には「地盤と看板そしてカバン」が必要とされてきた。
 その「法則」に従えばこの維新騒動もこれらの争奪戦だと理解できる。維新の
議員たちすべてとは言わないが、地盤と看板を橋下人気に頼ってきたのだから、
あの「強引だが胸のすく言動」も錆が浮いてきた今となっては、頼りになるのは
「カバン」だけなのかもしれない。
 それがあの見苦しい「政党助成金争奪戦」なのだ。

 24日、橋下一派は「臨時党大会」を開催し、「当の解散を決議」した。が、
「党執行部」は無効を、総務省は「事前協議が必要」とし、法廷闘争に発展する
可能性が高い。

 未熟な政治家とも言えない輩が権力を握るとこうなる。嗚呼…。
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  発行     2015年10月27日  No.730
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