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タイトル:609studio No.713 ◆現代時評《朝日新聞の記事》:片山通夫  2015/06/16


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【609 Studio】メール・マガジン 2015・6・16 No.713
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身氏
の現代時評、ロシア唯一の韓国語新聞「セ・コリョ」の日本語翻訳版、ロシアや
サハリン の話題編集長のコラムなど多彩な話題満載!
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◆現代時評《朝日新聞の記事》:片山通夫
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 先日(15年6月9日)付の朝日新聞に次のような記事が掲載された。
 この記事は《RE.お答えします》というタイトルの記事で読者の質問に答える形
になっている。この日の質問者(東京都、パート、40代)は《「報道の自由度
ランキング」で日本が61位と低い順位だったのはなぜですか。自由度が乏しい
とどんなデメリットがありますか。》というものだった。この「報道の自由度ラ
ンキング」は国際NGO「国境なき記者団」(RSF)が毎年発表しているもの。
 http://ecodb.net/ranking/pfi.html

 この質問に対して朝日新聞パリ支局の青田秀樹氏はおおむね次のように答えて
いた。繁雑になるので、箇条書きにする。
1)ランキングはパリに本部を置く「国境なき記者団」が毎年発表。
2)日本は福島第一原発事故の情報開示や取材制限などが問題で12年の22位
から13年は53位に急落。そして15年は61位。
3)RSF でアジア太平洋地域を担当のジャマン・イスマイール氏は「日本の情況
はますます悪くなっている」と見ている。
4)特定秘密保護法の制定、外務省からドイツ紙に対する抗議、自民党がテレビ
局幹部を呼びだして説明を求めたことなどがあげられる。
 朝日新聞の記事はざっとこんな具合だと思う。

 しかしこの記事には二つの大きな事柄が書かれていない。そのことに関して書
いてみたい。無論特定秘密保護法の制定に関しても言及すべきだが、ここでは述
べない。

 先ず一つは恐らくRSFでも問題になっているだろうし、東京の「日本外国特派員
協会」でも度々指摘しているように、日本の記者クラブ制度に対する言及がない。
「報道の自由」を見る場合、記者クラブ制がどれほどその自由を奪っているか、
朝日新聞もクラブを構成する一員だから「既得権益を守る」という姿勢に終始し
ているのではないか。だから青田記者はこの件に関して言及できないでいるのだ。
青田記者を筆者は存じ上げないが、パリ支局詰めと言うから、フランス政府への
取材を当然行っているはずである。そのフランスにはおそらく日本のような排他
的な記者クラブはない。だから外国の新聞社の青田記者も、国内紙の記者と同様
に取材に制限はないはずだ。ただ記者証の有無は制限の可能性があるようだ。

 いまひとつは「安倍政権に対する姿勢」である。青田氏はよそ事のように「(
政権にとって)都合の悪い事は時には隠されたり」と書いている。
 筆者が言いたいのは「ジャーナリストが時の政権の首相などと会食をともにす
る」などはもっての外だということである。今年になってからでも、朝日新聞の
木村社長が、2月7日に、そして曽我政治部長が4月4日に安倍首相と会食をと
もにしている。

 この時点で日本の大手マスコミは「ジャーナリストたる矜持を捨てて、安倍広
報紙」になり下がった。常識的に考えて、これじゃ書けないはずだ。政権批判を。
 
 RSFもこのあたりをもっと問題視すべきだと思う。
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◆「ふろむ京都山麓」抜粋抄《アメリカと中国、どっちの政府が安泰?》
                                             :みなみうら・くにひと
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 世界を震撼させた米連邦債のデフォルト(債務不履行)の危機は、今日になっ
てやっと回避されました。暫定予算も可決され、閉鎖されていた政府機関も再開
されます。アメリカの政治は一体どうなってしまったのか? 世界中の眼が注が
れました。

 興味深いのは中国の反応です。ベンジャミン・カールソン氏は次のように記し
ています。「アメリカ人は、今回の閉鎖は政府の機能不全の証とみている。しか
し中国では、ある種の強さの表れとして捉える評論家が少なくない。今回のよう
な状況は、強い経済力と国民の意思を反映する政治力を備えた民主主義国家でし
か起きない……そのような羨むような声が、中国のソーシャルメディア上にはあ
ふれている」
 ある中国人はこう語っている。アメリカのシステムでは、共和党と民主党と大
統領が議論を戦わせるのはごく普通のことであり、どこの国でも本来はそうある
べきだ。
 中国の多くのひとは「中国で同じような事態が起きたら、すぐに国全体が大混
乱に陥ってしまう。だから絶対に起きない」
 また最大の驚きは、政府機関閉鎖後もアメリカの州や自治体レベルの政府は平
常通りに機能していること。アメリカ在住のある中国人は「閉鎖されて何日も経
つのに、驚いたことにアメリカ人は誰も心配していない。連邦政府が閉鎖されて
も、地方政府は機能し続けている」
 中国の一党支配体制では、アメリカのように極端な論争や、開かれた議論が行
われる余地はない。

 大澤真幸氏は「エコノミスト」誌上で次のように語っておられる。資本主義社
会では、経済制度よりも政治制度の方が、基本的に重要な要因である。だから中
国の将来には、懐疑的にならざるを得ない。
 「中国では、政治制度に多元性がない。こういう制度のもとでは、経済成長の
キャッチアップはできても、追いついてしまった後の発展は難しい。強力な国家
が自由なイノベーションを望まず、その抑制を図るからである」

 アメリカの上下両院のネジレは「決められない政治」体制を産んでしまいまし
た。一方の日本では国会のネジレは解消し、「何事でも決めやすい政治体制」に
急変してしまいました。
 日本はアメリカ型ではなく、一党独裁の中国型に似て来たとも言えます。注意
すべき危険な状態かもしれません。

参考『ニューズウィーク』電子版10月15日 ベンジャミン・カールソン「アメリ
カ政府機関閉鎖をうらやむ中国人―閉鎖危機は政府の機能不全のせいではなく、
成熟した民主主義国家を見る人々もいた」
『週刊エコノミスト』10月22日号 大澤真幸・橋爪大三郎・保坂俊司鼎談「近代
資本主義のあり方と日本経済への示唆」
 <2013年10月17日>
「ふろむ京都山麓」 http://blog.goo.ne.jp/0000cdw
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◆セ・コリョ新聞日本語翻訳版: 2015年6月12日号
 本紙(韓国語・ロシア語)は下記へ!
http://www.609studio.com/html/sekoryo/index.html
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新任総領事との懇談

 さる9日、新任のユジノサハリンスク駐在日本総領事と州知事代理が会って、
両国間協力問題で話し合った。州知事代理は道路建設、農業、水産加工分野への
協力をより広げたいと述べ、日本総領事もこれに同意すると表明。また、日本総
領事は終戦70周年記念共同行事やフォラムの開催を構想中だと伝えた。また、
二人は青年交流の重要性についても意見を交わした。

農業開発視察

 先週末、サハリン州知事代理と農場代表らが、農業開発が進んでいる大陸地方
を訪問するほか、サハリンとの共同事業についても話し合ったことがわかった。
サハリン代表団は穀物倉庫、肉類と乳製品加工、物流問題について高い関心を持
っている。

MARS拡散防止対策

 韓国で急速に広がっているMERSがサハリンへと拡散されるのを防ぐために
州政府も対応策を講じている。サハリンー韓国間航空機乗客を対象に検疫を行う
ほか、アンケート調査をも実施している。

サハリン韓人歴史記念建立後援会組織

 11日、サハリン韓人歴史記念館の建設を進めている釜山わが民族助け合い運
動本部が、後援会を組織すると伝えてきた。後援会発足会には100人程が参加
すると予測している。

障害者に職業世界を知ってもらおう

 障害児自活センター「プレオ レニエ」が今月5日、職業博覧会を開催。専門
学校、職業学校、公共機関、社会団体などが参加して、直接体験もできる説明会
を開いた。

国際人形劇フェスティバル

 第3回サハリン国際人形劇フェスティバルが10月6〜16日まで開催される。
ロシア文学の年である今年はこれに準じたテーマで行うとのこと。

韓日協定再交渉を要求する

 2015韓日協定再交渉推進大学生委員会(BEYOND 1965)がさる3日、駐ソウ
ル日本大使館前で「韓日協定50年、歴史の真実と正義を追求する両国間再交渉
を求める」記者会見を開いた。
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◆「スプートニク」 >>> 引用元    http://jp.sputniknews.com/
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◆情報通信・ラジオ「スプートニク」(HOME)
 http://jp.sputniknews.com/

◆日本関連
 http://jp.sputniknews.com/japan/

◆国際───────────────
 http://jp.sputniknews.com/world/

◆ロシア国内───────────────
 http://jp.sputniknews.com/russia/
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◆ウイキペディアにみる一口メモ 【MERS】             
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  現在韓国で猛威をふるっているMERSは、MERSコロナウイルス(マーズコ
ロナウイルス、英: Middle East respiratory syndrome coronavirus, MERS-CoV)
は中東呼吸器症候群 (Middle East respiratory syndrome, MERS) の病原体であ
り、SARSコロナウイルスに似たコロナウイルス(ベータ型)で、2012年にイギリ
スロンドンで確認された。
 2015年5月30日現在の合計では、1149人感染(韓国12人を含む)、431人死亡。
感染地域は2015年5月に韓国、中国に広がった。

 韓国大統領府は10日、14日からの朴槿恵(パク・クネ)大統領の訪米を延期す
ると発表した。感染が拡大している中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)の早
期終息に全力を挙げ、国民の不安解消に努める狙いだ。早期に日程を再調整する
としている。
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◆[編集長から]: 片山通夫
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 ここ何日か「潮目が変わった」と言う言葉を聞くようになった。自民党推薦の
参考人として国会で安全保障関連法案を「違憲」だと指摘した長谷部恭男早稲田
大大学院教授など3人の憲法学者が「違憲」だと口をそろえた。その瞬間から、
「潮目が変わった」と言うことになる。これに先立ち、200人余りの学者も潮
目を変える発言を繰り返した。
 これを受けてか、マスコミも動きが活発になった。女性自身という女性週刊誌
までもが「あなたの子供が戦争で死ぬ」、「あなたの子供が“アメリカの戦争”
に命を捨てる!」と安保法案を批判。

 この動きに焦ったのか。ドイツでのG7後の記者会見で、安倍首相が安保法制
違憲論に反論し、「砂川判決」を持ち出した。「砂川判決」の最高裁判決のどこ
に「集団的自衛権」を認めたと書いてあるのか一向に理解できない。

 政権内ではもう「破たんしている」ことを理解していることだろうが、安倍首
相と彼を支える菅官房長官の二人が今更「破たん」を認めることはできないのだ
ろう。およそ論理的に無理がある理屈をいくらごり押ししても、もう国民は騙さ
れないだろう。そう「潮目が変わった」のである。

 「軍艦島で強制労働に苦しめられた朝鮮人のハン(恨)多い生を扱った大河小説
『カラス』の著者である韓水山氏(69)が先月15日、かつての取材の舞台だった島
を見て回った」という記事が韓国の独立系新聞ハンギョレに掲載されていた。
 http://japan.hani.co.kr/arti/politics/20976.html

 記事のタイトルは《[現地ルポ]観光の島と化した“朝鮮人の地獄島”…笑い声
を聞くのが苦痛だった》というものだ。
 軍艦島(端島)は世界文化遺産に登録されると最近ニュースになったことは知
られている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%AF%E5%B3%B6_%28%E9%95%B7%E5%B4%8E%E7%9C%8C%29
 一方、長崎市は観光資源としての位置づけで保存などを試みている。
http://www.at-nagasaki.jp/spot/51797/
 軍艦島に関してハンギョレの記事は日本人の軍艦島に対する姿勢が全く違うこ
とに気がつく。それは我が国の場合、《歴史を無視している》ことに尽きる。
 
 戦後、あの戦争に対する政府は勿論国民も総括をしてこなかったことが、原因
だと考える。歴史を知らない、もしくは教えられなかった日本人は、沖縄であれ
軍艦島であれ、また昨今国会で問題になっている集団的自衛権の問題にしろ、事
の本質に迫るということをしないで、上っ面だけで物を見る。

 安倍首相以下軍艦島の観光客の嬌声がこだまする日本の何とおぞましい事よ。
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  発行     2015年6月16日  No.713
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