メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.696 ◆現代時評 《裁判員裁判の問題点》:井上脩身  2015/02/10


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【609 Studio】メール・マガジン 2015・2・10 No.696
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身氏の現
代時評、ロシア唯一の韓国語新聞「セ・コリョ」の日本語翻訳版、ロシアやサハリン
 の話題編集長のコラムなど多彩な話題満載!
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◆現代時評 《裁判員裁判の問題点》:井上脩身
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 裁判員裁判で死刑を言い渡された2件の強盗殺人事件について、最高栽第2小法廷
は3日付で、死刑を求めた検察側の上告を棄却する決定をした。「死刑にするしかな
い」との裁判員の判断を否定したもので、裁判員裁判のあり方に問題点を投げかける
結果となった。私(筆者)はかねて、裁判員の判断は有罪か無罪かの事実認定にとど
めるべきで、量刑の判定にまで加わるべきでないと考えていた。職業裁判官の判断を
超える極刑を市民の裁判員が選んだ今回の事例をみると、「感情に流されない判断」
との観点に基づいた制度改革が求められる。

 2件の事件は、53歳の被告が千葉県松戸市で2009年、女子大学生を殺害して
放火した強盗殺人放火事件と、妻子殺人罪で20年服役して出所した64歳の被告が
09年、東京・南青山で74歳の男性を殺した強盗殺人事件。1審の裁判員裁判では、
松戸事件について被告が殺人に加えて強盗強姦を繰り返した点を重視、南青山事件で
は妻子殺害という前科を重くみて、それぞれ死刑を選んだ。東京高裁は2件とも無期
懲役に減刑しており、最高栽の判断が注目された

 死刑について、連続4人射殺事件の永山則夫元死刑囚事件で最高裁は1983年、
判断基準を示し、動機、計画性、殺害被害者の人数などの考慮項目を挙げた。この結
果、何人殺しかが問題となり、殺されたのが1人だけの場合、被告が死刑になること
は余りなかった。しかし、1999年に18歳の少年が23歳の主婦を殺害後屍姦し
たうえ、生後11カ月の幼児も殺した光市母子殺害事件を機に、被害者の人権が叫ば
れ、「極悪犯人に極刑を」との声が高まった。

 裁判員裁判は09年に施行された。殺人、強盗、危険運転到死などの重大犯罪につ
いて、衆院選の有権者から選ばれた6人の裁判員が3人の裁判官とともに裁判をする。
私は最近、大阪地裁で開かれた傷害致死事件の裁判員裁判を傍聴する機会があった。
弁護人の尋問に答える20歳代のまだあどけない被告の言葉に耳を傾ける裁判員の真
剣な表情が強く印象に残った。

 こうした裁判員の市民感覚、市民的常識を裁判に持ち込む最大の意義は、職業裁判
官の誤りをただす点にある。司法試験を優秀な成績でパスし、裁判官に任官後も、閉
鎖された世界の中で法律づけになって過ごしてきた裁判官はおうおうにして世間知ら
ずだ。事件のほとんどは世間のしがらみの中で起こる。その機微のわからない裁判官
は検察官のいいなりになり、結果として冤罪を生む。世間の中で生きる市民の常識が
求められるのは冤罪防止に少しでもつながる、との期待からだ。

 一方で、市民は感情に流されやすい。被害者にとって、肉親を殺した犯人を八つ裂
きにしてもなお足りないほどの憎しみだろう。その思いをくめば、死刑にすべきだ、
と裁判員が判断するのは当初から予想された。それでは新たな冤罪をつくりだす危う
さがつきまとう。

 今回の事件で最高裁は「死刑は究極の刑罰で、過去の裁判例の検討が不可欠。死刑
の選択がやむを得ないという具体的で説得的な根拠を示す必要がある」と指摘した。
過去の事例からみれば、この2件は死刑にはならない、と判断したのだ。最高栽が人
権を守り、冤罪防止に熱心であるとは思えない。その最高裁以上の重い刑を裁判員が
科すのがまかり通るのでは、裁判員裁判制度は誤りだった、と言わざるを得ない。

 先に裁判員は事実認定にとどめるべきだ、と述べた。どうしても量刑も裁判員に判
断させるなら、死刑を廃止し最高刑を終身刑にするほかない。
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◆「ふろむ京都山麓」抜粋抄《イスラエルのアイアンドーム》
                      :みなみうら・くにひと
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 ガザでの戦争終結はやっと実現する気配です。この1ヶ月間、ガザの犠牲者は約1
900人といいますが、ほかにも世界ではいたるところで戦争が続いています。シリア
やイラクでは、痛ましいことにもっとたくさんの死者が出ています。

 紛争やテロ事件が相次ぐ中東諸国で、今年7月だけで死者が計約9000人に上った
ことが分かった。2011年の民主化要求運動「アラブの春」以降、1カ月の死者とし
ては最悪となった。シリア内戦やパレスチナ自治区ガザ地区の紛争に加えて、イラ
ク、リビア、イエメンで紛争が拡大。エジプトやチュニジアでもイスラム過激派に
よるテロや軍との衝突が頻発した。8月に入っても各地で武力衝突が継続しており、
中東の混迷は深まっている。

 国連や各地の保健当局・人権団体によると、7月の紛争に関連した死者は
▽シリア5342人
▽イラク1737人
▽ガザ地区約1400人(註:7月8日開戦から8月一時停戦までの死者は、ガザ1900
人以上。イスラエル兵士64人、民間人3人)
▽イエメン約300人
▽リビア約120人。【8月6日 毎日新聞カイロ 秋山信一】

 イスラエル軍がガザからのロケット弾を迎撃するミサイルシステム、驚愕の「ア
イアンドーム」の記事を先日紹介しましたが、伊吹太歩さんの解説も詳しくわかり
よい。ダイジェストで紹介します。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1407/31/news018.html(7月31日)


 「なぜ、ガザに比べてイスラエルの死者数は圧倒的に少ないのか?」(伊吹太歩の
時事日想)

  報道を見ていて不思議に思うことがある。死者数で取り上げられるのが、ガザ地
区にいるパレスチナ人ばかりということだ。もちろん米国に支援を受けたイスラエル
軍がハマスを圧倒しているのは間違いないが、ハマスも負けじと反撃の砲撃を激化さ
せている。にもかかわらず、イスラエル側にガザのような多数の死者が出ているとい
うニュースは見ない。
  実際に、イスラエル側の死者数が圧倒的に少ないのは数字を見れば一目瞭然だ。
30日時点でイスラエルは3289発のミサイルをガザに着弾させ、1221人を殺害した。
一方のハマスは、2612発のミサイルをイスラエルに放っているが、死者数は56人。
その多くはイスラエル軍の兵士である。
  この圧倒的な差の裏には、イスラエル軍が誇る「アイアンドーム(鉄のドーム)
」の存在がある。アイアンドームとは、イスラエルが世界に誇る迎撃ミサイルシス
テムのことだ。このアイアンドームは、その正確性についての議論から、紛争のあ
り方すら変えてしまう可能性を持つ兵器として物議をかもしている。

  アイアンドームは、弾道軌道の無誘導ロケット砲をミサイルで撃ち落とすもの
だ。そうすることで、イスラエルに向けられたミサイルが自国内に着弾することな
く被害を防げる。いわゆるミサイル防衛だ。
  アイアンドームは可動式で、発射を発見するレーダーユニットと、弾道と着弾
点を計算する戦闘管理・コントロール車両、そして迎撃ミサイル3発を発射できる
ランチャーからなる。どんな天候でも迎撃が可能で、複数の砲撃にも対応が可能だ。
しかも予想着弾点に人的被害がない場合には、あえて迎撃しないコスト意識も備わ
っている(迎撃ミサイルは1発5万ドル=約510万円)。
  例えばガザ地区からミサイルが発射されると、レーダーがミサイルを感知し、
コントロール車両が弾道を計算し、迎撃ミサイルの発射を命じる。ミサイルを返り
討ちにするまではあっという間だ。アイアンドームの守備範囲は約64キロ。近隣か
らの砲撃を想定する短距離型の兵器である。人口が密集する都市部のエルサレムや
テルアビブなどに向けて放たれたミサイルを中心に迎撃しており、イスラエルの重
要地域は、ほぼ完全にドームに覆われて守られていることになる。
 
 特筆すべきは迎撃の成功率だ。イスラエル軍によれば約86%だという。軍事専門
家の中には成功率を“盛っている”と指摘する者もいるが、イスラエル軍は、アイ
アンドームが迎撃するのは都市部を狙った砲撃であり、迎撃する必要がないものも
少なくないと反論している。

  イスラエルを「ドーム」で防衛するこのシステムは、イスラエルの3企業が開発
したものだ。開発費は、米国政府からの9億ドルを越える財政支援が大部分を占め
ている。レーダーユニットはエルタ社、戦闘管理・コントロール車両はインプレス
社、そして迎撃ミサイル「タミル」を開発したラファエル先端防衛システム社だ。
ラファエル社が制作したプロモーションビデオでは、ナレーションが「技術的なブ
レークスルーだ」と絶賛している。
  かつてイスラエルのエフード・バラク国防大臣(当時)が「ほぼ完ぺきだ」と
絶賛したアイアンドームは、2011年3月に導入されてからイスラエルのアラブ勢力
との戦い方を変えたと言っても過言ではない。今回のハマスとの戦いでもアイアン
ドームがイスラエルへの砲撃を防いでいるために、民間人への被害は圧倒的に少な
く済んでいる。

 それでも、アイアンドームに課題がないわけではない。例えば、破壊された砲弾
はどうなってしまうのか。破片は地上に落ちてくるはずで、それによって被害を受
ける人が出る可能性はある。このリスクについては開発者も認識しているが、現時
点ではどうすることもできないという。
 コストの問題もある。ハマスが放つカッサーム・ロケットは1発1000ドル(約10万
円)。これを迎撃するアイアンドームの迎撃ミサイルが1発5万ドル(約510万円)で
は高過ぎる。戦闘が長引けば長引くほど、イスラエルも財政的にどんどん首が絞ま
っていくことになるだろう。

  欧米ではアイアンドームの存在により、紛争のあり方についての議論を起こす
までになっている。英エコノミスト誌は、この迎撃システムへの確度や信頼性が高
まれば「イスラエルは、紛争を早急に終わらせようとする国内世論や軍事的なプレ
ッシャーに逆らって、ガザへの攻撃をいつまでも継続させることが可能になる」と
警鐘を鳴らす、元政府高官のコメントを紹介している。
  自陣に犠牲を出さないため、紛争を長引かせて「ハマス戦闘員をせん滅させる」
という大義のもと、死者数を無駄にどんどん増大させることにつながりかねないと
いうのだ。恐ろしいシナリオだ。ちなみにガザ地区は人々が密集して暮らす地域で
あり、砲撃を受ければ巻き添えになる人が出る。それも、現在民間人の死者数を増
加させている要因の1つだ。
  アイアンドームという優れた自衛の軍備が、結果的に敵陣にいる民間人を大量に
虐殺する現実には、複雑な思いを抱いてしまう。今後、迎撃ミサイルの守備範囲が広
がって確度がますます上がれば、「相手が先に攻撃してきた」という“専守防衛”と
いう大義をかざして、敵陣を攻撃しまくることも可能になりかねない。
  イスラエルで今まさにそんな事態が発生している。自衛が無差別殺人を生む――
“専守防衛”を掲げる日本でも自衛そのものについて、こうした角度から考えてみる
視点も必要だろう。

 <2014年8月9日 オバマ大統領はイラク空爆開始を承認し、米海軍FA18戦闘攻撃機
2機が空爆を開始。日本時間8日午後7時45分、現地午後1時45分>
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◆セ・コリョ新聞日本語翻訳版:2015年2月6日号
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予算支出の効率化を図る

 さる2日の危機克服政府会議で州知事は予算支出の優先順位を決め、自動車や家
具、装備など急がない分野への支出を後送りするように指示した。また、一部の行
事の取り消し、建築事業の予算削減などできるだけ支出を減らす反面、経済現実を
踏まえ追加予算の必要な社会福祉分野への支出は増やしていくと対策を発表した。

冬季スポーツの日を制定

 連邦政府はソチオリンピック1周年を迎え、この歴史的なできことを記念する意
味で、開催日の2月7日を「冬季スポーツの日」と制定した。この日、国内各地で
冬のスポーツを楽しむ大会が開催される予定であり、サハリンでも7日から両日間
多様な行事が予定されている。

ユジノサハリンスク市立オーケストラ、韓国演奏者らと共演

 ユジノサハリンスク市立オーケストラが韓国人演奏者らと共演を行う。2月18
日はホルムスク、翌日はユジノサハリンスクで公演。

ポロナイスクで1世らと対話

 サハリン韓人らのために特別制作したカレンダーを渡すために来島したKIN
(Korean International Network)代表団は22日、ポロナイスクを訪問し、永住
帰国せず残留している1世らに会い、彼らの状況や気持ちを聞く時間を持った。

サハリンスキー場人気5位

 Booking.comがロシア国民を対象に行った調査によると、サハリンのヴォズドフ・
ゴルヌイ山のスキー場が人気5位を占めた。最も人気のあるスキー場はケメロヴォ
州のセレゲスイだった。

多民族青少年公演への招待

 サハリン民族連合会が主催する「多民族青少年公演」が2月7日、ユジノサハリ
ンスク市青少年創作会館で開かれる。世界的に偉大な詩人らの紹介、各民族の伝統
文化公演など多様なプログラムが用意されている。入場は無料。

雇用主、巨額の年金滞納

 ロシア連邦年金基金サハリン支部によると、過去5年間、サハリン及びクリルの
雇用主らが支払っていない年金及び健康保険料が10億ルーブル以上に達している。
不動産や賃貸業、サービス(交通、通信など)関連企業が多く、これらの企業に対
して法律的対応をすると支部は明らかにした。
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◆「ロシアの声」が伝える「ロシアからみた日本・世界」>>>
           引用元 http://japanese.ruvr.ru/
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◆日本関連
http://japanese.ruvr.ru/russia_japan/

◆国際───────────────
http://japanese.ruvr.ru/world/

◆ロシア国内───────────────
http://japanese.ruvr.ru/russia/

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◆[編集長から]              片山通夫
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 昨年オバマ大統領がキューバとの国交回復のための交渉を始めると発表し、今年
に入って交渉が始まった。現在アメリカはとは別にキューバと国交を結んでいない
国に韓国とイスラエルがある。

 イスラエルの事情はよくわからないが、およその見当はつく。筆者が1973年
頃に取材でベイルートへ行ったことがある。パレスチナ難民キャンプの取材だった。
難民キャンプでは《野戦病院》様の病院があった。そこの医療班にはキューバ人の
医師たちが勤務していた。つまり《イスラエルと敵対する勢力側》にキューバは居
たわけである。

 さて韓国である。キューバは北朝鮮と国交がある。1960年以来のことであり
その関係は親密である。なんでも在ハバナ大使館には50人ものスタッフを送り込
んでいる国だ。そういえばのベトナムの革命家、政治家であり、植民地時代からベ
トナム戦争まで、ベトナム革命を指導したホー・チ・ミンの葬儀があった時、筆者
はハバナにいた。カストロ首相(当時)を中心に大規模な追悼集会がハバナで開催
されたことを覚えている。その折には在ハバナ朝鮮民主主義人民共和国大使館も多
いに弔意を表した。

 そんな緊密な北朝鮮とキューバだが、アメリカとキューバが国交を回復した場合
韓国政府はどのような対応をするのだろうか。いや出来るのだろうか。アメリカに
追従して国の政策を誤った事にはならないかとよその国の事ながら心配する。
 なぜなら、キューバはソ連が崩壊した前後以降、ソ連からの支援は激変した。そ
んな折に金日成北朝鮮主席が小銃10万丁と弾薬を無償で送ったという。義理でもキ
ューバは北朝鮮に冷たい仕打ちは出来ないし、しないだろう。

 韓国と北朝鮮、キューバをめぐっての戦いは深く静かに起こっている。
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  発行     2015年2月10日  No.696
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