メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.692 ◆現代時評 「椿発言とジャーナリズム」:井上脩身  2015/01/13


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【609 Studio】メール・マガジン 2015・1・13 No.692
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上脩身氏の現
代時評、ロシア唯一の韓国語新聞「セ・コリョ」の日本語翻訳版、ロシアやサハリン
 の話題編集長のコラムなど多彩な話題満載!
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                ごあいさつ

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 
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◆現代時評 「椿発言とジャーナリズム」:井上脩身
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 昨年12月の衆院選で自民党が291議席を獲得、公明党と合わせて与党議席は
3分の2を上回り、安倍政権は信任された形となった。だがその陰で、自民党が選
挙前、テレビ各社に「公平中立」を求める文書を配り、事実上、選挙報道に圧力を
かけたことを見逃してはならない。この結果、選挙番組時間は4割も減少、戦後最
低の投票率になった。権力に迎合するジャーナリズムが安倍政権を支えているとい
って過言でない。

 自民党が各テレビ局に宛てた要請文書の中で注目されるのは、椿発言を暗に取り
上げている点だ。同文書では「過去にあるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向
報道を行い、大きな社会問題になった事例も現実にあった」としている。

 椿発言は、1993年9月、東京・千代田区の放送会館で開かれた民放連の放送
番組調査会で、テレビ朝日報道局長(当時)、椿貞良氏が述べた内容を指す。同年
7月の衆院選で自民党は単独過半数に達せず、細川護煕政権が誕生。55年体制が
崩れる歴史的な選挙となった。同調査会は「政治とテレビ」をテーマに取り上げ、
椿氏に報告を求めた。

 椿氏は85年に同局が久米宏氏を起用して始めた報道番組「ニュースステーショ
ン」への自民党議員からの圧力を証言。「大臣が『スポンサーの商品をボイコット
すべきだ』と述べた」などと具体例を挙げたうえ、「郵政省の幹部から『選挙中は
ご注意なさった方が』と警告された」と、政官の癒着ぶりも暴露した。

 さらに椿氏は「自民党を敗北させないといけない、と局内で話し合った。55年
体制を突き崩して細川政権を生み出した原動力となった力はテレビだと確信してい
る」と語った。(嶌信彦『メディアの影の権力者たち』講談社)

 調査会の委員会には半藤利一氏ら外部委員5人と、在京キー局の編成局長ら計1
3人が出席した。椿氏の発言はたちまち自民党に流れ、同党は国会の証人喚問を要
求。椿氏は「常識を欠いた暴言」と述べたものの「一部の政党や特定候補を当選さ
せるために報道したことは断じてない」と、不公平報道疑惑を否定した。

 この間、産経新聞が椿発言を「非自民政権を意図して報道」とスクープ。読売新
聞の渡辺恒雄社長(当時)は「椿発言は違法性が強い」と述べるなど、マスコミの
なかに、自民党を肩入れしたと思われる報道や発言もあった。

 21年がたち、過去の記憶の箱の底から椿発言を引っ張りだした自民党の狙いは、
「自民党に不利な報道をすれば証人喚問ものだ」との脅しであることは明らかだ。
その背景にはテレビと新聞の系列化が進み、読売や産経グループの民放が政府与党
化した点が挙げられる。

 放送法3条に「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人か
らも干渉され、または規律されることがない」と定められている。自民党の要請は
本条に抵触する可能性を否定できない。しかし、マスコミ界から自民党を批判する
動きはほとんどみられなかった。自民党の暴走を食い止めるという、ジャーナリズ
ムの役割を投げ捨てたといえるだろう。。

 ジャーナリズムの弱体化は国民の知る権利を阻害する要因である。ジャーナリズ
ムが戦争への道の加担者とならないか。戦後70年のいま、ジャーナリズムは岐路
に立っている。
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◆「ふろむ京都山麓」抜粋抄《金正恩氏の老人虐待?》:みなみうら・くにひと
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 産経ニュースが1月2日に報じた記事をダイジェストで紹介します。「『飛び込め
!』金正恩氏“高齢幹部いじめ疑惑”浮上…80代元老級に10メートルダイブ強
要、人心離反の証言」
  全文は以下をご覧ください。
http://www.sankei.com/premium/print/150102/prm1501020

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が高齢の幹部をいじめているとの疑
惑が浮上している。肝いりで造らせたプールやスキー場で、飛び込みやスキーを強要
し、元老幹部らが負傷するケースが相次いでいるとの見方があるためだ。子供じみた
発想から遊戯施設の建設指示を乱発する金第1書記だが、父の代からの側近らの忠誠
心を損ないかねない事態を招いているという。(桜井紀雄)

 金第1書記の側近が朝鮮労働党や朝鮮人民軍の主要行事にたびたび姿を見せないこ
とがあり、さまざまな憶測を呼んできた。だが、労働党元老級幹部と交流のある中朝
関係者の証言で、その「原因」の一端が浮かび上がった。

 関係者によると、一昨年10月、平壌の「紋繍(ムンス)プール」の開園式で、最
初の“惨事”が起きたという。金第1書記が子供時代に留学したスイスにある有名ウ
オーターパークを模して造らせた、波の出るプールやウオータースライダーを備えた
大規模プールでのことだ。
 金第1書記は李雪主(リ・ソルジュ)夫人や側近らを引き連れ、開園式に訪れたが、
金己男(ギナム)党書記(85)と呉克烈(オ・グンリョル)国防副委員長(83)、崔
竜海(チェ・リョンヘ)党政治局常務委員(64)の元老級の3人に対し、突然、高さ
約10メートルのダイビング台から「飛び込んでみろ」と命じたという。

 3人はぶるぶると後ずさったが、金第1書記は周囲に「ご老体でも、俺がしろという
通りにやるんだ」と豪語し、自らの権威を見せつけようとしたとされる。
 結局、このダイブで呉氏が大腿(だいたい)部を骨折し、しばらく動けなくなった
という。呉氏は金正日(ジョンイル)総書記時代からの側近で、軍内部に絶大な影響
力を保持してきたとされる。だが、このときのけがが元で、年末の「金正恩最高司令
官推戴(すいたい)2周年」を記念する集会にも参席できなかったという。


 続く惨事も、金第1書記肝いりの施設で起きたといわれる。東部江原道(カンウォ
ンド)に一昨年12月に完成した「馬息嶺(マシクリョン)スキー場」でのことだ。
 10コースを持ち、一般国民向けには初の本格スキー場で、こちらもスイスに留学
した子供時代の思い出を反映させたとみられる。

 子供時代の金第1書記と過ごした経験のある金正日ファミリーの専属料理人、藤本
健二氏の著書によると、10代後半になった金第1書記はある日、こう口にしたとい
う。「われわれは毎日のように馬に乗ったり、ローラーブレード(スケート)をした
り、バスケットをしたり、夏にはジェットスキーやプールで遊んでいるけど、一般の
人民たちはどう過ごしているのかなあ」
 いわば、「プールやスキー場を造れば、人民皆が喜んでくれるはずだ」と当時の思
いを純粋に実行に移したわけだ。熱意を傾けたスキー場の早期完成に向け、発破を掛
け、10年かかる難工事を1年余りで成し遂げたとたたえる「馬息嶺速度」というス
ローガンまで流布させた。

 北朝鮮は2018年の韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪の会場にスキー場を提
供する「用意がある」とラブコールを送ったが、韓国側から「実現不可能だ」と一蹴
された経緯もあった。
 このスキー場のオープン行事で、70代の金養建(ヤンゴン)党統一戦線部長が金
正恩第1書記から初滑りを命じられ、揚げ句、くるぶしを骨折。入退院を繰り返した
が、昨年4月にけがが再発し、結局、中国・北京の病院でひそかに手術を受けるはめ
になったという。
 金養建氏は、健康悪化説が流れたものの、10月に崔竜海氏や、金正恩第1書記の
最側近に急浮上した黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長とともに、仁川(イン
チョン)アジア大会の閉幕式に合わせ、韓国を電撃訪問した。
 金第1書記に忠誠心を示す「名誉の負傷」を負ってまで、最側近の地位を保持して
いるのであれば、あまりに切ない。

 昨年7月にも、50・60代の海軍幹部らに海で水泳をさせ、金第1書記が監督す
る姿が国営の朝鮮中央テレビで放映された。
 自慢げに内外に宣伝していることからも、金第1書記が老幹部らにスポーツを強い
るのは、悪気もなく、自分の少ない経験から導き出した「スポーツは楽しいに決まっ
ている」という天真爛漫(らんまん)さから来ていることが分かる。故意でないだけ
に、“高齢者虐待”はとどまることを知らず、幹部らにとってはたまったものではな
い。

 一連のエピソードを耳にした中国の高官の一人は「10代の学生らが年老いた党幹
部らを暴行し、あざけた中国の文化大革命(1966ー76年)当時を思い出し、胸が痛む
」と吐露したという。北朝鮮社会は、社会主義を掲げながら、長幼の礼を重んじる儒
教的伝統の影響を色濃く残す。父、金正日総書記も権力を掌握する際、年長の幹部ら
に細心の敬意を払ったし、金正恩第1書記自身、最高指導者に就任当初は、年長者を
いたわるようなそぶりを見せてきた。
 だが、権力基盤を固めるに従って力を注ぐようになったのは、義務教育期間の延長
といった次世代育成に向けた諸政策だ。取り巻きは全て自分より年上で、自分と同じ
か、下の世代の側近を早く育てたいといった焦りもあるのだろう。
 加えて、先に見たプールやスキー場のほか、子供のころに親しんだローラースケー
トの専用リンクといった「子供向け娯楽施設」の建設ばかりに執心している。

 中国を訪れた北朝鮮の老幹部の一人は、金第1書記の年長の幹部に対する態度に、
「孫みたいな分別のないやつの前で、侮辱されるとは。やつをやって、自分も死んで
しまいたい心情だ」と金第1書記への不満を思わず漏らしたとも伝えられる。
 この言葉が事実なら、現在の自分を支える老幹部の心が離れていることを示し、事
態は深刻だ。北朝鮮の「裸の王様」は、自分の好み通りの遊びに興じているうちに、
北朝鮮社会で最も大切だとされるものを見失いつつあるのかもしれない。
 <2015年1月6日>
ふろむ京都山麓 http://blog.goo.ne.jp/0000cdw
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◆セ・コリョ新聞日本語翻訳版:休刊です。
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 ロシアの正月休暇で休刊日となっています。次週号をお他にしみに。
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◆「ロシアの声」が伝える「ロシアからみた日本・世界」>>>
           引用元 http://japanese.ruvr.ru/
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《609studioが選んだTOPIX》

◇金正恩第一書記 核兵器を使用する韓国軍事侵攻計画承認 
鮮民主主義人民共和国の指導者金正恩第一書記は、韓国に対する軍事侵攻計画を承
認した。それによると、韓国の領土占領には、米国の介入が間に合わなかった場合、
7日間かかるとされ、プランは核兵器の使用も含めた速戦即決式の非対称戦争(戦
争の形態のひとつで、両交戦者間の軍事力、あるいは戦略または戦術が大幅に異な
る戦争)を示唆している。
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_01_08/281952422/

◇キリル総主教 モスクワ救世主ハリストス大聖堂で降誕祭 の礼拝を執り行う
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_01_07/281933001/

◇専門家:パリ襲撃事件は「イスラム国」の欧州への帰還を意味する可能性がある
フランスの風刺週刊誌「シャルリー・エブド」の本社襲撃事件は、欧州でシリアとイ
ラクにおける紛争のブーメラン効果を生み出す恐れがあるとみなす根拠を与えている。
ボストンにあるノースイースタン大学で教鞭をとるテロの専門家マックス・エイブラ
ムス氏が、Sputnikのインタビューで述べた。
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_01_09/281957650/

◇プーチン大統領:「シャルリー・エブド」本社襲撃事件は野蛮な行為
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_01_08/281957173/

◆日本関連
http://japanese.ruvr.ru/russia_japan/

◆国際───────────────
http://japanese.ruvr.ru/world/

◆ロシア国内───────────────
http://japanese.ruvr.ru/russia/

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◆[編集長から]              片山通夫
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▲新春から痛ましいニュースが海外からも届く。
 仏週刊新聞「シャルリー・エブド」の事務所が襲撃され12人が犠牲となった。
同紙は奔放な漫画でイスラムだけじゃなく、極右・カトリックも風刺の的としたフ
ランスの伝統である「権威を笑い弱者にやさしい編集方針」を売りものとしたよう
だ。

▲「権威を笑う」ということは権力を監視するということに通じる。この痛ましい
事件にフランスのオランド大統領は現場に駆けつけ、「新聞社、つまり表現の自由
への攻撃だ」と厳しく批判。「野蛮なテロ行為にほかならない。フランスは団結し
た国だと示さねばならない」と呼びかけた。

▲国連の潘基文(パンギムン)事務総長は、「卑劣な襲撃に激しい憤りを表明する」
と強く非難した。またカイロにあるイスラム教スンニ派の最高権威機関アズハルは
7日、「イスラム教は、あらゆる暴力を非難する」との声明を出した。
(以上朝日新聞、毎日新聞など参考)

▲また朝日新聞によると《「私はシャルリー」怒る10万人 仏新聞社襲撃、各地
で追悼集会》とある。テロの犠牲を自分のものとする大抗議集会だ。

▲一方安倍首相は「報道の自由に対するテロ」と強く非難した。痛ましい事件なの
で、あの安倍首相の口からも「報道の自由」という言葉が聞かれるのは当然のこと
だ。各国の首脳が同様のコメントを述べているようだし。
 しかし彼の口から「報道の自由」という言葉を聞けるとは思わなかった。

 願わくば、我が国の報道機関も「事件の顛末の垂れ流し」だけでなく、我が国政
府と大手マスコミの「癒着を断ち切って」健全なジャーナリズムに衣替えしてもら
いたいものだ。首相と寿司なんぞつまんでいないで・・・。

 また《犯行を受けた週刊紙のほうにもイスラムという宗教に対する敬意が感ぜら
れなかった。ムスリムが嫌がるのを承知で風刺画を掲載するのは一種のハラスメン
トだ。欧米諸国はテロに遭えば、テロを非難するが、イラク戦争などそれ以上の犠
牲をもたらすことを過去に行ってきたことも自省すべきだ》という考え方も我が国
には散見される。格差や社会的疎外が犯罪を生むという点では、日本も他山の石と
するべきだ。韓国や中国の人々に対する偏見には目に余るものがあることも事実だ。
政権はこの事実に目をつぶっているが・・。

 いずれにしても痛ましい事件だ。犠牲者のご冥福を祈りたい。
ただこのような事件が起こるのには原因があるはずだ。その原因を探り和解する努
力が肝要である。この点も我が国の国民や政権そして大新聞などには欠けている姿
勢だと思う。
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  発行     2015年1月13日 No.692
  発行     毎週火曜日  購読料無料
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