メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.619 ◆現代時評「原発、このままでいいのか?」:片山通夫  2013/07/30


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  【609 Studio】メール・マガジン 2013/7/30  No.619
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   フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。Lapiz編集長・井上
  脩身氏の現代時評、ロシア唯一の韓国語新聞「セ・コリョ」の日本語翻
  訳版、ロシアやサハリンの話題編集長のコラムなど多彩な話題満載!
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◆現代時評「原発、このままでいいのか?」:片山通夫
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 異常な選挙だったと筆者には思えた。まだ収束からほど遠いと国民の
90%ほどが考えている福島の現状が選挙の争点にならなかった。昨年
末に行われた総選挙では、少なくとも自民党も原発に関していささかで
も触れていたように記憶する。


 安倍政権が打ち出した経済政策(アベノミクス)は、円安で電力会社
の経営を直撃している。だから電力会社としては原発再稼働が必至とい
う理屈になる。そこには、決して国民の安全という視点はない。
 はたして、原発再稼働がわが国の経済に好効果をもたらすだろうか。
国民の生活にプラスになるだろうか。
 
 原発の再稼働は先に述べたように短期的には電力会社の経営を助ける
かもしれない。我々が支払う電力料金を引き下げる可能性も否定できな
い。ところがその裏では、非常に苛酷な状況が待ち構えている。安倍政
権も電力会社もそしてほとんどの国民もそのことを知ってか知らずか目
をそむけている。それは、原発を稼働することによって生じるリスクだ。

 政府は再稼働によって生じる、また現在ある使用済み核燃料を、再処
理してMOX燃料として原発で再利用する方向で考えている。このMOXとは
プルトニウムとウランの混合酸化物だ。プルトニウムは原発で生じた使
用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出しウランと混合、MOXと
して再利用するという。これをプルサーマルと名付けている。

 プルサーマルが考えられたのは、本来、高速増殖炉もんじゅで全量燃
やすはずだったが、もんじゅの数々の事故でこの計画はとん挫している
からだ。一体わが国にはどの程度のプルトニウムが存在するのか御存知
だろうか。原子力委員会によると、国内に約9トン、フランス・イギリ
スに約35トンのプルトニウムを抱え込んでいる。長崎型の原爆(プル
トニウム239を使用する原子爆弾)の5000発分に相当するという。6
月25日、毎日新聞が報じたところによれば、昨年9月には、民主党政
権はアメリカ側から、核兵器の原料となるプルトニウムの保有を減らす
ために、プルサーマル発電を行う密約をしていた。

 また、使用済み核燃料を再処理するのに、わが国は青森県六ケ所村に
1993年から約2兆1900億円の費用をかけて再処理工場を作った。
日本原燃は今年5月27日、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工
場の性能試験が着工から20年を経て、終了したと発表した。青森県や
六ヶ所村は稼働の条件として《全量再処理の堅持》をあげている。六ヶ
所村で《一時保管中の使用済み核燃料はほぼ満杯》だという。政府は《
プルサーマル》へ突き進むしか道はないと強弁している。六ヶ所村は《
再処理をしないなら一時保管中の燃料を運び出せ》と声高に叫んでいる
状況だ。
 このように、使用済み核燃料の後処理は莫大な費用と技術が必要だ。

 一方、東京電力福島原発で起こった事故も、地域社会に深刻な影響を
及ぼしている。メルトダウンした原子炉から今後出るであろう莫大な汚
染物の処理はここでは置いておく。ただ最近の民間の調査では、除染作
業だけで5兆円かかるという。  

 今問題なのは《除染に伴って生まれた汚染ゴミ》の処理である。現在
環境省が、栃木県など5県に最終処分場を設ける予定でいるが、候補地
の選出にもまだ入れていない状況だ。今年3月末現在で12万トン超の
《除染で出た汚染ゴミ》は、行き場を決められなくて現在仮置きされて
いる。
 こんな問題を抱えながら、先の参議院選は自民党の圧勝で終わった。
マスコミなどでも分析は色々されているようだが、筆者には納得できる
ものが見当たらない。それほど《異常な選挙》だったと言えるのではな
いだろうか。つまり国民は「原発の再稼働による危険」というものに余
り関心がないのだとしか考えられないのだ。ひとたび事故が、地震が起
こったら、福島の例をとるまでもなく、町は壊滅的な被害を受ける。今
なお15万人もの人々が家を追われて生活しているというのにだ。

 また、原発を再稼働するということは、すなわち使用済み核燃料を《
生産》するということである。これを、《再生産》してまた原発で使お
うという《核燃料サイクル》という悪夢である。なぜ悪夢かと言えば、
話は簡単である。問題は危険性もさることながら、その費用である。運
転停止中の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)と関連施設の研究
開発に総額約1兆810億9500万円を支出している。(会計検査院
調べ)また原子力機構は2010年度までに要した研究開発費を約92
65億円と公表しているが、これには人件費、施設の固定資産税、19
79年度以前のもんじゅ建設準備段階の経費などが含まれていない。ま
た、もんじゅは、運転をしていない状態でも、維持費が1日あたり約5
千万円ほどかかるという。先の述べたように青森県。六ヶ所村にある再
処理工場も莫大な費用をかけている。これも国民の税金だ。

 こんなに国民の税金を浪費して、国民を危険にさらした福島第一原発
メルトダウン事故の収束はおろか、廃炉の手順も技術的に可能かどうか
未知数の部分が多々ある中で、《原発問題が争点にならなかった》いや
、意識的に避けてきた政府・与党の戦略は卑怯だ。
この点が異常だと筆者は考える次第だ。

 最後に、最近円安や原油価格の高騰で、国内で使用するオイルの価格
が上がってきている。漁船などは漁に出られないで悲鳴をあげている。
電力会社も火力発電の燃料費を電気料金に上載せしようとして躍起だ。
もんじゅの維持費用、一日5千万円を高騰する原油や天然ガスの輸入価
格の補助に使うだけで、相当国内経済は安定するのではないかと思う。
 

《参考》石油情報センターの資料によると、石油製品の年間消費量は約
2億8000万kl(2005年度)であり、天然ガスの年間消費量は日本ガス
協会の調べで1055億立方メートル(2011年度)となっている。
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◆セ・コリョ新聞日本語翻訳版:2013年7月26日号
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9月に石油ガス国際会議開催

 ユジノサハリンスクで今年の9月23〜26日まで「第17回石油ガ
ス国際会議」が開かれる。今回のテーマは「サハリンと極東:東への動
力戦略」。ガスプロム社代表、日本資源エネルギー庁長、ロシア駐在シ
ェル社の社長をはじめ多くの石油ガス採取関連企業の指導者が参加する
予定。

ヨーロッパ復興開発銀行から融資

 ヨーロッパ復興開発銀行が「ユジノサハリンスク暖房システムの近代
化事業」のためにサハリンスカヤコムナルナヤ社へ4億5千万ルーブル
を融資することにした。返済期限は10年だという。

州人口減少

 2013年6月1日現在、サハリン州人口は49万2300人。昨年
に比べ3097人減少。

コンクール「花祭り」への参加者募集

 サハリン州郷土博物館は「オランダ年」を記念し「花祭り」を開催し、
その一環としてコンクールを行う。8月15に花の展示会を行うため、
8月14日まで作品を提出し、参加申込みは8月9日まで。

海岸の清掃にボランティア50人が参加

 7月20日、サハリン州天然資源環境保護局が主催する海岸の清掃作
業に50人のボランティアが参加し、3時間数十袋のゴミを拾った。

春の徴兵100%達成

 今年4月〜7月15日までの徴兵業務が100%目標達成し、700
人が兵営へ向かった。新兵の70%はサハリンで勤務する。

クリル住民35人が無ビザで札幌訪問

 クナシリ・シコタン・イトルプに住む青少年35人が今月19〜24
日まで札幌を無ビザで訪問した。クナシリでは7月18〜27日まで日
本の植物学者が滞在している。彼等は立ち入り禁止地域へ入り動植物生
態と火山の研究を行っている。7月19〜22日までは日本人36人が
墓参りのためシコタンへ滞在した。他の39人の墓参団は24〜26日
までクナシリ島で泊る。今年は無ビザ交流事業で日本からは30回、サ
ハリンからは18回相互訪問が行われる。クリル住民は訪問の際、日本
の病院で健康診断と治療も受ける。 
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 ◆「ロシアの声」が伝える「ロシアからみた日本・世界」>>>
           引用元 http://japanese.ruvr.ru
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◆日本関連

◇日本政府、海洋汚染防止を東電に要請
日本政府は東京電力に対し、福島第一原発から海洋への放射性物質の流
出を防止する措置を即座に講ずるよう、要請した。菅義偉官房長官が述
べた。
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_23/118393122/

◇日本 TTP交渉に参加
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_23/118397509/

◇日本の代表者 北朝鮮と拉致被害者について協議
日本の飯島勲内閣官房参与は先週、北京を訪問し、北朝鮮の代表者らと
会談した。会談では、北朝鮮に拉致されたとみられる日本人について話
し合われた模様。日本のマスコミが伝えた。
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_23/118398180/

◇安倍首相 障害はのぞかれたか
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_23/118402940/

◇日本人に必要なのは「三本の矢」ではなく「一つの自由」
日曜日21日に行われた参議院選挙では、予想されたとおり、自由民主党
を中心とする連立与党が、議席の過半数を獲得した。しかし、これは、
安倍首相が始めた改革が最後まで行われ、選挙で勝利を得た事を意味し
ない。日本的考え方に特有の保守主義が、その成功を邪魔する可能性が
あるからだ。
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_23/118414839/

◇分離独立の気運を高める沖縄
沖縄が再びざわめき立っている。沖縄で活動中の政党「かりゆしクラブ
」(旧琉球独立党)が毎度のごとく、かつて琉球諸島は独立国家であり
、1879年、大日本帝国に強制的に併合されたのだ、と主張しているのだ
。この動かしがたい事実を分離主義政党が叫ぶことの中には、いつまで
たっても米軍基地の移転問題を解決できない本土政府への、県民の大い
なる不満を、いわば代弁する、という側面がある。これまで県民の怒り
は主に米国に向かっていた。しかし基地移転を公約にしながら永年問題
を先送りにしてきた日本政府についに業を煮やして、沖縄県民は本土政
府をもやり玉に上げだした。「独立はこれまで理念に過ぎなかったが、
今や現実味を帯びてきている」と前沖縄県知事太田昌秀氏は語っている
(NYタイムズ紙より)。
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_25/118548611/

◆国際───────────────

◇スノーデン氏のプランB
エドワード・スノーデンのシェレメチエヴォ空港トランジットゾーン滞
在が無期限延長された。多くの人の予想に反して、24日、ロシア連邦移
民局(FMS)がスノーデン氏に一時亡命の認定を下すことはなかった。
スノーデン氏の担当弁護士クチェレナ氏は、それがいつの日のことにな
るか、正確な予測を控えている。クチェレナ氏はさらに、もしもFMSが亡
命申請を却下した場合には、裁判所に訴える、との意向を明かした。な
らびにクチェレナ氏は、スノーデン氏が現在ロシア語の勉強に励み、今
後の出方について計画を練っている、と述べた。
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_25/118549998/

◇オバマ大統領 ケネディ元大統領の娘を駐日大使に指名
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_25/118511897/

◇フランス、殺人鬼のゲイがムショ内でウェディング
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_25/118484972/

◇ソマリア沿岸から姿を消す海賊達
アデン湾やソマリア沖を航行する商船及び客船に対する海賊行為は沈静
化し、攻撃は稀になってきている。国際海事機関(IMO)の専門家ら
は、そうした結論に達し、海賊行為が収まったのは、この海域の状況を
コントロールしている国際船団の行動によるものだと指摘した。
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_20/118241035/

◇アサドの恩赦をきっかけにシリア蜂起軍の一部、政権側へ
 シリア紛争が突然の転換点を迎えている。蜂起勢力の一部が武器を下
ろして政府軍、すなわちアサド大統領支持派に寝返りだしているので
ある。
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_25/118556878/

◆ロシア国内───────────────
 
◇ロシアの大規模軍事演習はアジア情勢に関係しているか?
 先週、シベリア・極東で行われたロシア軍の大規模演習について、軍
事アナリストらがさまざまなコメントを寄せている。これら演習は、
外国人専門家諸氏には、ロシアはその軍隊の強力さを誇示しているの
だとか、中国や日本の軍事的伸張へのロシアの危惧が表されているの
だとかと、受け入れられた模様だ。
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_22/118350698/

◇ラヴロフ外相「シリア国内のテロリストの一掃という点で政府派・
反政府派は一致できるはず」
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_22/118325571/

◇シャラポワ、「ロシアの著名人 」ランキングで首位
 テニスのマリヤ・シャラポワ選手がフォーブス誌の「ロシアの著名
人2013」ランキングで2年ぶりに首位に返り咲いた。
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_26/118540005/

◇ロシアの誇る王朝コレクション
VORがロシアについて知る新コーナー「ロシアの人々、出来事、習慣
、謎」をスタートする。今日はその第1回目。    ロシア帝国の誇
った力の大きさがわかるのはそれが占めた広大な領土だけではない
。帝国が集めた芸術コレクションの価値にもよく表れている。ロシ
アの王朝のコレクションは世界の巨大な芸術コレクションの一隅を
なす。
http://japanese.ruvr.ru/2013_07_25/118535745/

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  ◆[編集長から]              片山通夫
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 夏たけなわだ。熱中症も全国で。まだまだ夏は続く。ご自愛ください。

日本の右傾化を知る一つの例にあの橋下従軍慰安婦発言がある。橋下市長
が外国特派員協会で記者会見したときに同席したという日本維新の会の桜
内文城衆院議員が従軍慰安婦問題を研究する中央大の吉見義明教授(日本
現代史)に訴えられた。議員は「吉見さんという方の本を引用されており
ましたけれども、これは既に捏造であるということがいろんな証拠によっ
て明らかとされております」と発言したようだ。

 筆者も「樺太に残された朝鮮人」を取材していたが、やはり同じような
中傷に悩まされた経験がある。
 ネット右翼と言われる人々も同じだが《自らが実際に取材しないで》誹
謗中傷するケースが多いように思える。

 たとえば桜内文城衆院議員がいうところの「捏造であるということがい
ろんな証拠によって明らか」だというその証拠だが、彼が実際に自分で研
究したのだろうかという疑問が残るわけだ。
 インターネットなどで《自分の考えに合った》情報だけを取り上げて、
「いろんな証拠」だと話しているのではないだろうか?

 やはり重大かつ疑義のある歴史の上での出来事には真摯に向き合って事
実もしくは事実に近い発言をするべきだろうと思うのだ。
 このあたりが右傾化していると危惧する。
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  発行     2013年7月30日   No.619
  編集・発行  609studio Michio Katayama
  発行     毎週火曜日  購読料無料
  配信 まぐまぐ配信システム ID:0000052236
  MailuX配信システム ID:MM3E1B97842E020
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