メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio 号外 ◆取材手帖「レポート「大延坪島は今」  2011/03/09


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【609 Studio 】メール・マガジン 2011/3/9 号外
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  フリージャーナリスト片山通夫のメールマガジン。ロシア唯一の韓国語
新聞「セ・コリョ」の日本語翻訳版、ロシアやサハリンの話題、投稿、
編集長のコラムなど多彩な話題満載!
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              【お知らせ】

  昨日お届けできなかったセコリョ新聞日本語翻訳3月4日号を
  お届けします。

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                        【著書案内】
             
       
       「追跡!あるサハリン残留朝鮮人の生涯」
   
 日本の植民地統治が生んだ一家離散「二重徴用」「急速転換」「樺太
 への逆密航」を語る貴重な証言!!

      片山通夫 著
      凱風社 刊 http://www.gaifu.co.jp/index.html 
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◆セコリョ新聞日本語翻訳版:2011年3月4日号
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戦争老兵らの住宅問題

 先週のロシア連邦地域発展省会議で戦争老兵らへの住宅供給問題が議
題に上がった。会議によると多くの地域で根拠もなく住宅提供を要求す
る戦争老兵が増えつつある。しかし、サハリン州ではこのような事例は
なかった。ロシア連邦政府は大統領令で2011年10月まで登録済み
の戦争老兵全員に住宅を供給することを決めている。所はサハリン州で
は5月9日―戦争勝利の日まで当課題を遂行することを検討中である。

クリル地域発展に主力

 先週のロシア連邦地域発展省会議に出席したア・ホロシャヴィンサハ
リン州知事が地域発展相にクリル発展事業案実行には130億ルーブル
の追加予算が必要であると提案したことがわかった。大統領はクリル住
民の暮らしが大陸に劣らないようにすべきだと強調しており、既に肯定
的な兆候が現れていると州知事は話す。

英語版「サハリンウイルタ」発行

 さる2月24日、サハリン州立図書館で英語版「サハリンウイルタ」
の紹介式があった。少数民族の中でも最も人口の少ないウイルタ族はサ
ハリン中央と北部に約350人が居住することが分かっている。ウイル
タについての唯一の書籍は96年ロシア語で発行、その10年後日本語
で、今回は英語版が出るようになった。米国エプソン社職員らの協力の
下で英語版が発行された。発行部数が少なく一般書店では購入できない
のが残念だ。

失業者の悪戯

 先日、ユジノサハリンスク市裁判所が一人の市民に1年執行猶予判決
を下ろしたことがわかった。昨年8月15日酒に酔った一人の男性が警
察の建物に地雷が設置されていると嘘の通報をした。警察が調べたが地
雷は発見されず、犯人がすぐ逮捕された。裁判で犯人はすべてのことを
告白した。失業者の犯人は地雷調査に費やされた費用を返済しはければ
いけない。

韓日議員「サハリン同胞補償促す」決議

 さる25日、日本東京で開催された「サハリン問題解決のための韓・
日国会議員会議」に参加した議員らは、サハリン残留韓人問題解決のた
めに基金設立などの解決策を講じるように両国政府に強く要請する旨の
決議文を日本総理と韓国大統領宛に送ることにした。会議の終った後、
韓国国会人権フォーラム代表の黄・ウヨ議員はサハリン韓人問題解決の
ために長期間力を注いできた高木弁護士に国会人権賞を授与した。

婦人デーを祝賀するメッセージ

 サハリン州知事を始め、サハリン韓人関連社会団体などがセコリョ新
聞を通じて婦人デーを記念して女性らのご健康と幸せを祝うメッセージ
を送る。
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◆取材手帖「レポート「大延坪島は今」:片山通夫(写真も)
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昨年(2010年)11月23日14時34分、北朝鮮が韓国・大延坪
島(テヨンピョン)に砲撃を行ったことは記憶に新しい。筆者はこの砲
撃事件後100日を数えた同島を3月5日訪れた。

 島は仁川港から高速船で約2時間の距離だ。定員318名の高速船に
は100人余りが乗り込んだ。皆かなりの荷物を抱えている。聞いて見
るとまだ島の生活は通常ではないと言う。穏やかな春の海を思わせる航
海だが、船内は重苦しい空気が漂う。事件前の人口(1780人、うち
小中学生は100人ほど)の80%しか帰島していない。
 大延坪島は韓国本土へよりもNLL(北方限界線)を挟んで北朝鮮の
方が近い所(N37度40分、S125度41分)に位置する。島の周
辺の海はアワビやワタリガニの宝庫として名高い。漁船40隻、漁業従
事者300人を有し半農半漁の島でもある。

 筆者は砲撃の後も職場を守るために島に残った郵便局長の鄭昌権(チ
ョン・チャングオン)氏(56歳)に会い話を聞いた。
 「あの時の砲撃で韓国軍人2人と民間人2人が死亡、軍人16人民間
人3人が負傷、全壊家屋38戸、半壊家屋200戸という被害を受けた
。北朝鮮からの砲撃は、170発、うち80発(うち40発が住宅地に
)が着弾、他は海に落ちた」と話す。
 「どうして島に残ったのですか?」
「農協がすぐに撤収したので、島の金融機関は郵便局だけになった。そ
れに、私を含めて20人ほどが島に残っていたので、印チョン使徒の連
絡や被害の状況の把握など、やるべきことはいくらでもあった。それに
郵便局を守るという大きな仕事がありましたから」
また「この島も高齢化が進んで、50%が60歳以上の人たちでそのう
ちの半分ほどの人たちが、朝鮮戦争の時にこの島に逃れてきて住み着い
た人たち、つまり失郷民(シヒャンミン)です」
「表で窓枠に網を入れている作業していますね」
「あれは砲撃で島のアルミサッシの80%が直接の着弾以外に振動や被
弾した破片などで被害を受けたので」
いわゆる爆風の被害も相当あったわけである。
「実はうちも被害を受けたのですよ」
インタビューの最後に局長はこう話した。
「郵便局ですか」
「いいえ、ここです」と言って筆者が座っていた後ろのカーテンを開い
た。
「なにこれ?」筆者は思わず叫んだ。カーテンの向こうは寝室になって
いた。しかしメチャクチャに壊れているのだ。鉄筋コンクリート作りの
家屋の天井は一メートル四方の大きな穴があいている。そしてその下は
コンクリートやガラスの破片に交じって、3日前に買ったばかりという
テレビなどの残骸が足の踏み場もない位散らばっていた。
「これがあの天井から飛び込んできたのです」
手にした破片はおそらくロケット砲弾だろう。
「プロペラ音が聞こえましてね。そしてドカンです。家内は今あなたが
座っていた隣の部屋にいたのですが、怪我はしなくて済みました」
幸い怪我はなかったが、奥さんはその後、精神的に落ち着かない日々を
送っていて、仁川の病院でケアを受けている。
砲弾の破片を手にしている局長の後ろで恐ろしそうに見つめているのが
奥さんだった。
今年56歳になる島の郵便局長は、この島で生まれ、学校教育を受けて
いた間は島を離れたが、37年以上の歳月をこの島とこの島の人々と生
きて来た。

 筆者は漁師にも話を聞いた。
「今月17日にはまた韓国軍が軍事演習をすると言っている。私の小学
生の子供は怖いから仁川に逃げようと言ってきかない」と話すのは父・
李泰信(イ・テシン)さん(68歳)の後を継いだ李鎭斗(イ・ジンド
ウ)さん(43歳)だ。「網を海に置いたまま逃げて来たので、網がど
うなっているかも心配だ」と気の休まると気がない。

 傍らから父の泰信さんがまくしたてた。
「政府は何もしてくれない。網の損害だけでも二千万円は下らない。家
屋の損害や乗組員に支払う給与などを入れると天文学的な数字だ」
この島は北朝鮮に近いだけあって、韓国政府は「無人島」にはしたくな
いという方針があり、なだめすかして島の人々をこの島に縛り付けてき
たいきさつがある。だから「人災」とも言えるこのような事件が起こる
と、人々の怒りは直接政府に向けられる。
政府との補償交渉はまだ緒に就いたばかりである。

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発行     2011年3月9日   号外
編集・発行  609studio   Michio Katayama
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