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タイトル:609studio No.459◆現代時評「北朝鮮を考える」  2011/01/11


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【609 Studio 】メール・マガジン 2011/1/11  No.459
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「現代社会を斬る!」をコンセプトに論説委員Ken氏の論説「現代時
評」をはじめ、政治評論家、本澤二郎氏の政治評論、また、ロシア唯一
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◆現代時評「北朝鮮を考える」:片山通夫

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◆現代時評「北朝鮮を考える」:片山通夫
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 筆者にとっては本年最初のコラムです。もう少し「軽い」テーマをと
考えたのですが、昨年来、北朝鮮と韓国との間で緊張が高まって来てい
るのを受けて、こんなテーマを選んでしまいました。

▲昨年12月に筆者の知り合いが、ユジノサハリンスクからソウルへ向
けてアシアナ航空で飛んだ。通常、ユジノサハリンスクーソウル間の飛
行時間は3時間程度だ。地図を見てみるとわかるが、平常なら直線に近
い形で日本海上空を飛ぶ。しかしこの時、時間にして30分ほど余計に
かかったという。ユジノサハリンスクから、北海道を経て日本列島に沿
った飛行ルートをとると機内で説明があったとか。延坪島(ヨンピョン
ド)への北朝鮮の砲撃が原因である。

▲大型のジェット機が30分余計に飛ぶとどの位燃料費がかかるのか知
らないが、相当高くつくであろうことは想像するに難くない。戦争状態
(=緊張状態)だから仕方がないのかもしれないが、1983年に起き
たサハリン上空での大韓航空撃墜事件や1987年の大韓航空機858
便爆破事件など幾多の苦い思いをしている韓国としては「安全第一」を
考えた結果だろう。我々は日常的に「国境を接している国はない」ので
あまり深刻に考えることはないのだろうが、いまだ朝鮮戦争が「休戦状
態」である朝鮮半島の二つの国においては、厳然と「休戦状態」であり
、決して「戦争終結」状況ではないことを、思い知らされたわけだ。

▲さてその北朝鮮だが、1月1日、労働新聞、朝鮮人民軍、青年前衛の
3紙が新年共同社説を掲げ次のように指摘した。「北南(北朝鮮・韓国
)間の対決状態を一日も早く解消すべだ。対話と協力事業を積極的に推
移していかなければならない」
 また 北朝鮮の立場を伝える在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の機
関紙、朝鮮新報は2日、「朝鮮が北南関係の必要を明らかにした以上、
南朝鮮(韓国)当局が政策転換するかがカギだ」と指摘している。その
韓国・李明博(イ・ミョンバク)大統領は3日北朝鮮に対し「北朝鮮は
核と軍事的冒険主義を放棄しなければならない。言葉だけでなく、行動
で平和と協力のために努力しなければならない」とクギを刺した。6カ
国協議の可能性はまだない。

▲しかし韓国としても6カ国協議での交渉に頼るしかない状況に変わり
はない。水面下では、南北交渉を探り、一方では日米中と連絡を密にし
ているという話だ。韓国は朝鮮半島の非核化を先ず達成して、その後に
北朝鮮への経済支援を大幅に増やし、朝鮮半島の「主人は韓国である」
と認めさせたい思惑が見え隠れする。このシナリオに北朝鮮が素直に乗
って来るかどうかは大いに疑問だ。まず無理であろう。北朝鮮の軍部が
黙ってはいまい。ちょうど、60年以上前の日本の状況によく似ている
と思うのは筆者だけではあるまい。軍の暴走は最終的には国を滅ぼすこ
とになると思うのだが。

▲北朝鮮はそうは思っていない。少し古いが昨年12月24日付の朝鮮
新報に「記者座談会 2010年 朝鮮半島情勢 「停戦」の矛盾が臨
界点に」と題した記事が掲載されている。

http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2010/05/1005j1224-00001.htm

 当然のことながらその座談会では「米韓の軍事演習が緊張を高めた」
としている。北朝鮮本国の意向を斟酌した座談会なので仕方がないとは
思うが、興味深い記述があった。「砲撃戦を行ったのは北南だが、その
背景には中国も関わる国際政治の対立がある。政治、経済、軍事の分野
で米中の葛藤が表面化し、「新冷戦」と言われる緊張関係が生まれた時
期に、朝鮮半島で戦争の危機が作り出された」というものだ。

▲北朝鮮は「強盛大国」というプログラムを自国の国民に約束した期限
は故金日成主席生誕100年である来年(2012年)ことである。先
に述べた労働新聞、朝鮮人民軍、青年前衛の3紙が新年共同社説でも「
人民生活の向上」を訴えていたが、一向に改善の見通しはないというの
が、大方の見方だ。昨年の延坪島への砲撃は一体何が目的だったのか、
大いに疑問の起こる事件である。あの砲撃が軍の暴走だとしたら事態は
深刻である。また瀬戸際外交の一環だとすれば、下手な政策だと言える。

▲いまひとつ、筆者が懸念する問題がある。北朝鮮の金正日率いる政権
が「自然崩壊」した場合のことだ。おそらく北朝鮮のスポンサーを任じ
る中国が「自国の属国化」するのではないかという懸念を拭い去ること
が出来ない。中国は自らの版図を広げることに熱心である。北朝鮮の領
土を「わがもの同然」にすれば、日本海へも直接進出できて、米韓日の
ラインに揺さぶりをかけて、韓国に対する影響力を保持できる。こんな
筆者の懸念が杞憂に終わることを願いたい。

▲いずれにせよ、今年は朝鮮半島の情勢から目を離すことのできない一
年となりそうだ。言うまでもないことだが、朝鮮半島は我が国から最も
近い国の一つである。長崎県対馬から最短で49.5キロメートルしか
ない。朝鮮半島の動向は我が国に直接・間接に影響を及ぼす。「韓流で
浮かれていた時代が懐かしい」なんてことにならないよう祈りたいもの
だ。勿論朝鮮半島に住む人々にとっても、平和で幸せな日々であってほ
しいことは言うまでもない。東アジアにとって、20年も前に終了した
「冷戦の再来」だけは避けたい。

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註:「北朝鮮」とは、朝鮮民主主義人民共和国のことであるのは当然で
すが、あえて、朝鮮民主主義人民共和国と表記しないのには一応のわけ
があります。
 そのわけをウイキペディアに見てみると、次のようになっています。
筆者も同じ考えをとるものです。

朝鮮民主主義人民共和国や在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)は、自ら
を朝鮮の正統国家と主張する立場から、North Korea または「北朝鮮」
と呼ばれることを嫌って、「朝鮮」と表記してほしいと主張して、マス
コミに対して抗議やデモを繰り返した。しかし日本のマスコミには受け
入れられなかったため、次に「共和国」と呼んでほしいと提案した。こ
れも日本側には受け入れられず、最終的に、記事の最初に正式国名を一
度だけ併称することを条件に、「北朝鮮」と呼ばれることを受け入れる
という妥協が成立した。冒頭での呼称は、テレビ・ラジオなどアナウン
スの場合は「北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国」という形式であり、新
聞など文の場合は「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」という形式で
あった。また新聞等では、この地域の在留者について「朝鮮人」と記述
される。しかし、「北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関
する法律」(拉致被害者支援法)制定以後は、単に「北朝鮮」と呼ぶの
が一般的になっている。背景には、2002年9月17日に行われた小
泉純一郎首相(当時)の北朝鮮訪問およびそれを契機とする拉致問題に
関する世論の高まりがある。現在では「北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和
国」などの呼称を採用しているマスメディアは、ほとんどなくなってい
る。さらに略して「北」と表現する場合もある(「北」は、冷戦下にソ
ビエト連邦を指した呼称でもある)。
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◆ロシアの話題・事件
            The Voice of Russia http://japanese.ruvr.ru/
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◆北朝鮮で反日キャンペーンが展開
  朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、日本が米国と軍事協力してい
るとして非難し、大規模な反日キャンペーンの展開を始めた。同国では
軍国主義が再興している。
http://japanese.ruvr.ru/2011/01/05/38801544.html

◆砕氷船「マカロフ提督」号、オホーツク海で救助に成功
http://japanese.ruvr.ru/2011/01/05/38782387.html

◆エルミタージュ美術館 10年の収蔵品に稀少な品が加わる
http://japanese.ruvr.ru/2011/01/04/38730292.html

◆全体主義の過ちを繰り返さない
http://japanese.ruvr.ru/2010/12/27/37891008.html

◆モスクワ郊外 電力復旧作業は5日終了か
http://japanese.ruvr.ru/2011/01/05/38791287.html
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◆[編集長から]              片山通夫
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 イランの女性ジャーナリストで人権活動家のシワ・ナザル・アハリさ
んに対し、テヘランの裁判所は、4年間の自由剥奪と鞭打ち74回の刑
を言い渡したというニュースが届いた。
21世紀になって10年以上たつ時代に「鞭打ち刑」が存在する世界。

 人権をないがしろにする時代は終わりにしたいもの。

 寒い日が続いています。筆者も先日「雪を楽しみに」車で出かけまし
た。雪道を走るというのは神経の疲れるドライブです。
 寒さはまだまだ続きそうです。ご自愛ください。
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発行     2011年1月11日   No.459
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
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