メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.411 ◆現代時評:「円高でなくてドル安」  2009/12/01


─────────────────────────────────
【609 Studio 】メール・マガジン 2009/12/1  No.411
─────────────────────────────────
「現代社会を斬る!」をコンセプトに論説委員Ken氏の論説「現代時
評」をはじめ、政治評論家、本澤二郎氏の政治評論、また、ロシア唯一
の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」日本語版、その他、寄稿記事など
話題満載! 
─────────────────────────────────
              お知らせ

      企画展「サハリンを読むー遥か[樺太]の記憶」
    
   北海道立文学館(札幌市)で、「サハリンを読むー遥か[樺太]の
   記憶」という企画展が開催されます。私の写真も一部展示される
   ことになりました。お近くの方は是非・・・。

 チラシ http://www.h-bungaku.or.jp/event/2009/pdf/karafuto.pdf
  
 北海道立文学館    http://www.h-bungaku.or.jp/
─────────────────────────────────
          609studio ウェブサイト   
         http://www.609studio.com/

       オリジナルプリント販売開始 詳細 
   http://www.609studio.com/html/originalprint/index.html


       DVD アリランの流れる島 詳細 
     http://www.609studio.com/html/news-3.html 

       ジャーナリスト・ネット ウェブサイト
        http://www.journalist-net.com/

           ブログ 取材手帖
        http://j-net.obei.jp/katayama/

───────────◆◆◆INDEX◆◆◆───────────

◆現代時評:「円高でなくてドル安」 Ken

◆[セ・コリョ新聞日本語版]:2009年11月27日号

◆コラムEYE 「」:片山通夫」

◆編集長から

─────────────────────────────────
◆現代時評:「円高でなくてドル安」 Ken
─────────────────────────────────
 ◆◆アサヒコム 2009.11.26 26日の東京外国為替市場
で、円相場が95年7月以来14年ぶりの円高水準になる1ドル=86
円台まで急伸した。前日の海外市場でドルが全面安になった流れを受け
て円が買われ、投資家がドルの見切り売りをする動きも重なった。午後
2時現在は前日午後5時時点と比べ2円00銭円高ドル安の1ドル=8
6円35〜39銭。

◆◆日経ネット 2009.11.27 27日早朝、円相場は前日の
東京市場でつけた高値の86円29銭を割り込むと、損失確定のドル売りを
巻き込みながら一気に84円台まで上昇。1995年7月上旬以来の高値を付
けた。低金利のドルを売って外国通貨や金などを買う「ドルキャリー取
引」が勢いを増している。 

■■リーマン・ショック以来、今か今かと言われたドル安・円高がよう
やくやってきた。とうぜん来るべきものが来たといえばそれ迄で、今更
どうと言うことも無いが、問題は、日本政府がそのときの用意を今まで
なおざりにしてきた、という不思議な事実である。

■■いま日本の財務省はドル建て米国債を7100億ドル保有している
。 ということは、米ドルの対円相場が1円下れば、日本の資産はその
つど7100億円づつ目減りしていることになる。 鳩山内閣と民主党
が「行政刷新会議における事業仕分け」で何とかしてカネを生み出そう
と努力しているが、それにしてはこの米ドル1円下落でそのたびに日本
政府が7100億円づつ損という焦眉の急を問題にせず、放置したまま
という理由が今一つ理解しかねる。

■■察するに、これについての財務省の怠慢の原因は、一にかかって過
去10年か15年の間に政府が米国財務省証券を保有したことによる帳
簿上の運用益が膨大であったことで免罪符を得たつもりでいるのではな
いだろうか。 ならば、それは理解できる。 今になって考えると、わ
が政府の、米財務省証券をそのまま米国に預託しっぱなしという行為は
、元本確保のための帳簿上有利な投資方法であったと言えなくもない。

■■じじつ、平成21年11月9日付け財務省発表によれば昨年度一年
間の「外貨証券資産の運用収入」は3兆6千億円に達していて、その平
均利回りは3.69%になっている。 「過去にこれだけ稼いだのだか
ら、いまその反動でドルが少々下落しても、通算して赦されるべき」と
いうのが財務省の言い訳ではないか、と思ったりもする。 過去平均利
回り4.5%を複利計算すると、元利合わせてノミナル簿価で2倍にな
っていた可能性もある。(米国財務省証券の金利は今こそ3%を割って
いるが、過去には4.5%から5%に達していたこともある。) 米国
は政策として、つねに米ドルの減価を上回る米財務証券金利を付けてい
たのである。 

■■つまり、少々米ドル為替が値下がりしてもその分は米国からの支払
い金利で補給される仕組みになっていた。 中国や英国がドルを溜め込
んだのも、そうした金利を狙ってのことだったと噂されている。 こう
した米国国債保有癖は必ずしもわが財務省だけのものではなく、したが
って、国民からわが財務省への非難はあたらない。

■■例によってここ数日わがマスコミは、米ドルが86円台に下落した
として、いまにも日本経済がダメになってしまいそうに大騒ぎしている
。 曰く、「ドルが1円下がるたびにトヨタは300億円、ホンダは1
20億円、ソニーは10億円の損失になる」と。 個々の民間企業が円
高ドル安で輸出に損失が出たとしても、それはそれぞれの企業内才覚で
然るべく操作するのが彼らのとうぜんのファンクションであり、それを
マスコミがさも心配げに報ずるのは「下司の勘ぐり、対岸の火事見物」
以外の何ものでもない。

■■ボクは後期高齢者で、何かにつけて古い記憶を想起する。 そのボ
クの記憶によれば、15年前、たしか瞬間的ではあるが米ドルが対円相
場で80円を切ったことがあった。 たしか79円50銭までは下落した
。 その記憶はボクにとっていまなお鮮明である。 なぜならボクはそ
れで、戦後数十年続けてきた貿易商売に見切りをつけ、廃業したのであ
った。 もっとも、そのときぐうぜん世間でいう定年の年齢に達してい
たことも廃業の一つの理由であった。

■■しかしいま思い出しても、そのときの円高で日本経済が壊滅するほ
どのダメッジがあったとは考えられない。 大方の他の同業者たちは1
ドル80円が続いたままであったとしても事業を継続したであろうし、
日本経済は大過なかったハズである。 つまり日本の平均的産業は、マ
スコミが喧伝するほどドル安に対してひ弱ではなかった、と僕は解釈し
ている。 あの時、あのまま1ドル80円が継続していても、日本の産
業はじゅうぶんやっていけ、騒いだのはマスコミだけだったのだ。

■■今回も、さっそく日本経団連会長の何某が政府に対して、「緊急対
策を要求せざるを得ない」と市場介入を含めた検討を求めている。が、
鳩山政府はそうした財界の無責任、無定見な要求に惑わされる必要はさ
らさらない、とボクは思う。「経済界はいままで90ー95円=ドルを
想定して輸出の計画を立てていた」というが、そうした想定ドル・レー
トは、じっさいはいい加減な予想見積もりに過ぎず、情勢が変わればそ
れに対応した新レートにすぐ切り替えるのが民間企業の能力の見せ場で
あることは言うまでもなく、そのつど政府に何かを頼むのは邪道である。

■■こういったときこそ産業界自身で適当に処置し、政府が市中の外国
為替操作に介入すべきでないことはとうぜんである。 妙なところで政
府がケインズ流を持ち出すべきではない。とくに今回の場合、ドル安の
原因の一つにドバイのイスラム資本家たちによる無責任な資金繰り失敗
があったと言われており、その尻拭いに日本政府が加担すべきではない。 

■■ボクの古い商売相手に、さるイスラム資本家が居た。 彼らは機会
利益を追うマーチャントであることを誇りにし、産業資本家としての矜
持など片鱗も持ち合わせていなかった。 そのイスラム商人たちが不遜
にも砂上の楼閣を建てようとし蹉跌したのに、わが国経済が片棒担いで
援助する必要などさらさら無いのだ。

■■それよりわが政府は、政府自身が保有する7000億ドルの米国財
務省証券を、このドル安に遭遇し、どう有利に立ち回るかを早急かつ真
剣に考える必要がある。 なぜなら米政府財務省証券の利回りがここの
ところ3%を割り、それがドル安、ドル・キャリーと金融業界が蠢動し
ている現状につき、わが政府も、米国に預託したまま金利稼ぎするより
、もっと安全有利な米ドル運用方法を考究する時期が到来したとさとる
べきである。 更なる米ドル相場の下落見込みと、米国政府からもらえ
るであろう米ドル金利を秤量したばあい、3%弱という金利はイーブン
、つまり政府による外貨運用上の損益分離点であるからだ。 

■■そのためには「米国に預託した米財務省証券の引き取りは、米国政
府が簡単にはOKしないだろう」といった、いらざる風評に義理立てして
「米国財務省にいつまでも預けっぱなし」にしておくべきではない。
 預けたカネは必要なときに還してもらうのがとうぜんである。 

■■たとい少しでも預託証券を米国から取り戻し転売するか、あるいは
中国を真似て発展途上国へ余裕ドルとして貸付けするか、いまはそうし
た思案のときである。 霞ヶ関に埋もれた金塊を探し出すのも才覚、不
急の政府事業を中止して予算を没収するのも才覚である。 がそれ以外
にも、政治家や官僚たちは、政府保有の眠りドルの有効利用に才覚を働
かせる必要が大いにあるハズである。 

■■いまごろ米ドルを懐にして海外旅行をすればすぐ解る、世界中どこ
のホテルでもその滞在費の高いこと。 少なくとも10年前のホテル代
の2倍になっている。 つまりそれだけ米ドル価値がここ10年で目減
りしているのである。 そしてその米ドルにスライドして日本円も不思
議に下落さされていた。 それがいま目を覚まし、日本円の米ドルから
の独立性が回復したのだ。 そして日本円の値上がり見直し、ボクらは
それを喜ばねばならない。 

■■わが国からの輸出が赤字になるなどと称して、経団連のバカ指導者
たちが円高に不服を言うのは無視するに限る。 それで輸出力が無くな
る商品はもはや国際競争で負けた商品なのだから退場するしかない。
 デフレと円高に相関関係は無い。円が値上がりすれば円による国内物
価が値下がりするのはとうぜんのことである。 円がドル離れし、国際
社会で正当に再評価され始めたのだから、日本国民はそれをきわめて目
出度いこととして祝杯を挙げるべきで、デフレなどといって悲観するの
は誤りである。
─────────────────────────────────
    ◎片山通夫写真集「サハリン」好評発売中!!◎

 写真集「サハリン」が未知谷から発行されています。是非書店
    もしくは609studioでお求めください。
 
         四六判160頁 1600円(税別)
          ISBN4-89642-138-8 C0072

    未知谷 HP http://www.michitani.com/index.html
    または    office@609studio.com
─────────────────────────────────
◆セコリョ新聞日本語翻訳版:2009年11月27日号
───────────────────────────────── 
ソウルでサハリン紹介

 先週、ロシア連邦外務省でア・ホロシャヴィンサハリン州知事と同省
ア・ボロダフキイン大臣との会談が行われた。両者はサハリン州におけ
る対外政策や反危機策、外国投資状況などについて話し合った。又、韓
国や日本でのサハリン州紹介事業案の検討も行われ、残念ながら先日予
定されていた東京での紹介式は延期となったが、韓国では予定通り来年
の上半期に行うとの報告がなされた。

サハリン州の飲酒量増加

 23日に行われた州政府会議によると、過去9カ月間サハリン州住民
のアルコール消費量が一人当たり27リトル(ビール除外)で、全食品
消費量の25%を占めていることがわかった。アルコール消費量は昨年
より2.4%増加しており、ウォッカが販売量の50%を占めている。
サハリン州立麻薬・アルコール中毒者療養所のエル・コニュシェンコ院
長によると、州内中毒者数は約2万4千人で、全体未成年者の3割がア
ルコール中毒者でロシアの平均より2.5倍も多いとのこと。


優秀地方自治体表彰

 さる23日、「2008年度地方自治体活動評価コンクール」の結果
発表があった。1位ユジノサハリンスク市、2位アニワ市、3位はノグ
リキ市。賞金は1位から500万ルーブル、300万ルーブル、100
万ルーブル。よく働く地方自治体政府を励まし、手本にするために行っ
ている同コンクールは州政府が主催するもので今後も続けられるとのこ
と。

年金引上

 来月からロシア連邦年金財団の年金中、労働年金基本額が現在の19
59ルーブルから2562ルーブルへと、来年1月からは労働年金の保
険額が1100ルーブル引上げられる。

海産物輸出4倍増加

 サハリン州税関によると、この10カ月間の海産物輸出額は約2億ル
ーブルに達し、昨年の5300万ルーブルに比べ4倍も増えた。

医師教師らのために木造家屋を

 トイモフスコエ市政府は医師と教師のために、3年間に渡って13棟
の木造家屋を建築しなければいけない。まず、今年の年末まで8棟の建
築を始めなければいけない。既に地方政府から700万ルーブルの予算
がおりており、州政府も2700万ルーブルを支援する。

深夜アルコール飲料販売禁止

 2006年から深夜のアルコール(ビール除外)販売を法律で禁じて
きたウラジミル州が今度はビールの販売も禁じる法律を州議会に発案、
サハリン州議会の経済発展担当委員会がこれを支持しサハリン州でも導
入することを提案した。州議会がどのような決定を下ろすか。

夜の未成年者通行禁止

 12日、サハリン州議会は未成年者の夜10時から翌朝の6時までの
外出を禁じる法律を採択した。父母同伴の場合は問題ない。しかし、ク
ラブなど未成年者を相手に商売をしている人々からの反対の声もある。

ホテル「MEGA・PALAS」の経営権巡って戦い

 先日の20日夕方、ユジノサハリンスク市にある「MEGA・PAL
AS」ホテルに韓国人20人が現れ、現社長の退陣を要求しながら2階
の事務所などを占拠する事態が発生した。当ホテルの支配人の話による
と、シンという韓国人の共同投資者が韓国で開かれた株主臨時総会で新
しい社長に選ばれたと主張しているが、現社長は総会の無効(現社長の
持分67.87%)を主張し、退陣を拒否している。サハリン州商工会
のテ・コンチェワ委員長は裁判で解決するしかないと意見をいう。
─────────────────────────────────
◆コラムEYE 休載です。
─────────────────────────────────
 次週からの掲載をお楽しみに。
─────────────────────────────────
◆[編集長から]              片山通夫
─────────────────────────────────
  最早12月。しかし一向に寒くならないのは地球温暖化のせいか。

 過日毎日新聞が共同通信と提携するというニュースがあった。筆者な
どは本来、通信社が行うべき取材を新聞社が行っていて、不自然だと考
えていたので、「ようやくそれに気がついたのか」と感じた。しかしど
うもそうではないようなニュアンスも感じられる。つまり、全国に張り
巡らせた支局、通信員網の縮小(=経費節減?)が目的のような意味合
いの解説記事も散見された。共同通信社の加盟社になると、どの程度の
費用がかかるのか不明だが、それよりも、役所などの発表モノを垂れ流
して「これが報道だ」とふんぞり返っているよりも、はるかに良いかも
しれない。発表にもとずくないようをじっくりと時間をかけて検証した
奥深い記事を目的にするほうが「本来の新聞社の使命」だと筆者などは
思うからである。

 ニュース速報はテレビと通信社の任せればいい。沖縄では地元紙2紙
とも夕刊はない。沖縄の人に尋ねてみたが、あまり支障は感じないとい
う返事だった。インターネット(それも携帯電話での)、テレビと言う
速報性のあるツールが幅を利かせている今の世界に新聞に速報を求める
人がどれほどいるのか、疑問だ。

 毎日新聞の英断に敬意を表したい。そのきっかけが経費の節減であっ
ても。
─────────────────────────────────
発行     2009年12月1日   No.411
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信 まぐまぐ配信システム ID:0000052236
MailuX配信システム ID:MM3E1B97842E020
e-mail       office@609studio.com
website    http://www.609studio.com
投稿     http://www3.ezbbs.net/06/609studio/
購読 購読解除は websiteへ

           ◇禁・無断転載◇
─────────────────────────────────

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。