メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.344◆現代時評:「北東アジアに平和は来るか」  2008/06/29


─────────────────────────────────
【609 Studio 】メール・マガジン 2008/7/1  No.344
─────────────────────────────────
 「現代社会を斬る!」をコンセプトに論説委員Ken氏の論説「
現代時評」をはじめ、政治評論家、本澤二郎氏の政治評論、また、
ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェスト版、
その他、寄稿記事など話題満載! 
───────────────────────────────── 
          609studio ウェブサイト   
         http://www.609studio.com/

         ラジオ放送とセコリョ新聞 
      http://www.609studio.com/sakhalinmedia.html

         ブログ コーヒーブレイク
          http://609studio.sblo.jp/

       DVD アリランの流れる島 詳細 
     http://www.609studio.com/html/news-3.html 

          ユジノサハリンスク ライブカメラ
       http://www.snc.ru/rus/camera_w.htm

───────────◆◆◆INDEX◆◆◆───────────

◆現代時評:「北東アジアに平和は来るか」  ken 

◆ 本澤二郎の政治評論「拉致問題」:本澤二郎 

◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :日本語訳が届いていません。

◆編集長から

─────────────────────────────────
◆現代時評:「北東アジアに平和は来るか」  ken 
─────────────────────────────────
◆◆ 産経ニュース 2008,6,26 北朝鮮による核計画の申
告書提出を受け、米政府は26日、同国を「テロ支援国家」としてき
た指定を解除すると発表した。指定解除を議会に通告し、通告から4
5日で発効する。1988年から約20年間にわった米側の指定が解
除に踏み込むことで、米朝関係は、最終的な非核化への取り組みをに
らみつつ、将来的な正常化に向け動き始める。

◆◆ アサヒコム 2008.6.27 オバマ氏は声明で「一歩前
進だが、今後踏むべき段階は多い。北朝鮮が義務を果たさなければ、
制裁を早急に再び加え、新たな制限も考慮すべきだ」との考えを示し
た。今後の道筋に関してはブッシュ政権と大差はなかった。一方のマ
ケイン氏は「控えめな前進だ。北朝鮮の核計画の一部しか扱っていな
い」。やはり、完全な北朝鮮の核放棄という目標にはまだ遠いという
受け止めをみせた。「提出された宣言や検証の仕組みが満足できるも
のでなければ、私は制裁解除は支持しない」と、慎重姿勢に終始した。
 
■■ 大相撲は制限時間が一杯になるまで先ず立ち上がらない。実況
放送の通り「時間一杯、立ち上がりました」が普通である。 今度の
米・朝合意もそれに似て、やっと時間一杯になったらしい。 北朝鮮
の核計画申告書提出と、米国の「テロ支援国家」の解除はすべて予定
通りで、あっと驚くほどの素早さであった。 そこには、日本の「拉
致問題」など歯牙にも掛けない風情があった。 国際外交の場はいつ
もドライで、当事者双方のニーズさえ合えば歴史の歯車は電光石火に
変化し、まごまごしていると内部の者さえ置いてけぼりを喰ってしま
う。

■■ この6月初旬、米民主党のクシニッチ議員は、ブッシュ大統領
弾劾決議案を5時間掛けた大演説にしてぶち上げた。 それは35か
条から成る罪状(例えば第1条:対イラク戦争の根拠を正当化させる
ために秘密裏にプロパガンダ工作をした罪)を並べ立て、もしこの法
案が通ればブッシュ氏は現職のまま収監される可能性も無しとしない
。 まさにブッシュ政権もピンチなのだ。

■■ さらに、米国最大のシティバンクはつい先日、アブダビ投資庁
から8000億円の投資を仰いだが、なお4兆円の資金不足で倒産の
危機に瀕しているとニュースは報じる。 とうとうサブプライム問題
も来るべきときが来たようである。 いまさらアフガン、イラクの屋
上に屋を重ねて火中の栗の北朝鮮に、戦争を匂わせて核廃棄をせまる
余裕など米国にはさらさらない。 まさに終戦処理のときなのである。 

■■ ましていまごろ、核兵器などは地球上に遍く存在していて、米
国独占の技術や武器ではない。 ナンでもいいから北朝鮮に核に関す
るレポートを適当に出させ、表向き格好さえつけば、あとは6者協議
の名のもと、北朝鮮の処置は中国政府にすべて押し付け、知らぬ顔の
半兵衛を決め込めばそれでお終い、というのが米国のいまの立場だろ
う。お人よしの他国の「拉致問題」などに構っている余裕などない。

■■ 対イラクの場合は、伝えられる今までの戦費5320億ドルと
、やっと入手できそうになった石油利権のてまえ、ここで撤兵するわ
けにはいかぬが、北朝鮮にはそうした米国の喜びそうな利権もないし
、戦費もまだ遣ってない。 北朝鮮の資源といえば、せいぜいがタン
グステンと僅かな金鉱だけで、戦争を仕掛けてまで取り上げるほどの
ことはなく、米国としては一刻も速く手をひきたいのが本音だろう。
 東北アジアに下手に深入りすると、米本国の屋台骨すら危ない。

■■ かたや北朝鮮も、最後の危機が目前に達している。 食糧不足
による脱北は急増し、中国国境のトラブルがエスカレートし過ぎてい
る。 いつ中国政府が怒り出すやも知れない。 それに、「核兵器を
持っているぞ」の脅し文句だけで援助食糧や重油をせしめる手も、い
つまでも続かない。 さいわい米国が折れてくれたのをチャンスに、
適当な紙切れの核報告書だけ提出して幕切れにしないと、自国の経済
が土壇場に来てしまっている。 せっかく造った核爆弾は、どうやら
米国が暗黙裡に保有を認めてくれるらしいし、「シリアへ核協力した
」と文書で報告しさえすれば「テロ支援国家指定」の解除はしてくれ
るという。

■■ こう考えてくると、今回の米・朝がとつぜん合意に達したのも
むべなるかなで、これにあたふたした日本の方が不思議なくらいであ
る。 機はまさに熟していたのである。

■■ 米・朝が手を打った後で、「われわれにはまだ拉致問題が解決
しておりません」と、日本が駄々をこねても、米・朝和解の後では何
の意味も無い。 いたずらにコキュの悲哀を味わうのは日本だけであ
る。 

■■ もともとわが政府の意向は、「北朝鮮はテロ国家」の証拠に拉
致問題を採り上げ、米軍を北東アジアに引き留めて置くつもりだった
のだろうが、勝手な米国がひとたび「東北アジアからの撤兵」を決意
すれば、それをとやかく言っても詮無いことである。 いまとなれば
傭兵としての米軍のコスト高は明白だし、いつまでも米国の核の傘の
もとに安住しているわけにはいかないのも事実だ。 むしろこれをチ
ャンスにわが自衛隊を増強し、取りあえず将来における北朝鮮の恐喝
まがいに備えるしか方法が無いと知るべきである。 

■■ 考えてみるに北朝鮮は、わが国にとって武力的にそう手強い相
手ではない。 どうせ相手は貧乏な小国であるし、核爆弾の数個くら
いは持ち得てもそれ以上の軍備となればわが国の方が圧倒的に上であ
ることは分かりきっていて、恐れる必要はない。 もし核武装が必要
なら、自前で造らずとも米国から買えばよい。 まして今となれば、
張子の虎みたいな米軍を頼りにして北朝鮮を仮想敵とした防衛をお願
いする必要などさらさらない。 憲法9条がどうであれ、わが国の防
衛はわが国自身で普段からしておけばいいのであり、それを他国から
とやかく言われる筋合いはない。 とうぶんの間、わが国の仮想敵は
北朝鮮だけだから、それなりの用意を怠り無く努めればいいのであり
、それはさして難しいことでは無い。

■■ それより問題なのは、「拉致事件」に拘り過ぎて、わが国だけ
北朝鮮との和解が進まないことである。 これは拉致事件の今後の実
態究明に大きなハンディになる。

■■ 今後の北朝鮮の出方はおよそ想像がつく。 いったん造った核
爆弾を米国に引き渡すつもりはないだろうし、仮に書類の上で引き渡
したとしても、彼らはすでに製造技術を持っているのだから、いつで
もまた内密に造り、それを匂わして、とくにわが国に対して「昔の賠
償」を求めてくるだろう。 そのばあい、わが国としては「賠償はす
でに韓国との間に済ませている」と言って逃げておるわけにはいかな
い。 この場合、韓国は韓国で、北朝鮮は北朝鮮という別国としての
「援助」ないしは「賠償」交渉を開始するのが、誠意ある態度であろ
う。

■■ かりに一歩を譲って、わが国に北朝鮮に対する賠償義務など無
いとしても、近辺に食うや食わずの貧乏国が存在しているのを見ぬふ
りをしていては北東アジアの平和は永遠にやってこない。

■■ いつまでも「拉致事件」を根に持って喧嘩をし続けるよりは、
今からは、気の毒な近隣国を助けるつもりで、援助なり賠償なりを実
施すべきである。 おそらくその援助には「兆」の単位の金額が必要
だろうし、盗人に高価な追い銭の感じもするが、それは辛抱すべきだ
。 そして日朝国交が回復すれば、自身で北朝鮮まで出向き、被拉致
者を探し出す努力を傾けるのがより実務的である。 近隣で喧嘩ばか
りしていても、ものごとは良い方向へ進まない。 米国の軽率な「テ
ロ支援国家解除」という過を転じ、北東アジアに平和を来させるため
には、こうした大らかな仁恕の心こそ必要である。
─────────────────────────────────
     ◎片山通夫写真集「サハリン」好評発売中!!◎

 写真集「サハリン」が未知谷から発行されています。是非書店
        もしくは609studioでお求めください。
 
          四六判160頁 1,600円(税別)
           ISBN4-89642-138-8 C0072

    未知谷 HP http://www.michitani.com/index.html
    または    office@609studio.com
─────────────────────────────────  
◆ 本澤二郎の政治評論「拉致問題」:本澤二郎 
───────────────────────────────── 
 石原慎太郎がいうように北朝鮮による拉致問題は「ナショナリズム
の高揚に貢献してくれている」との分析は、右翼の論理としてそうな
のであろう。小泉の靖国参拝も。哀れな拉致被害者の叫びは、国内外
の政治に利用、翻弄させられている、というのが真相だが、その点で
被害者に同情しすぎることはない。



 筆者にも苦い思い出となっている。たとえ敵国関係とはいえ、国内
には朝鮮のまじめな団体、市民がたくさんいる。もはや60年前でも
ない。「拉致などありえない。韓国KCIAの偽り情報を一部右翼マ
スコミが喧伝しているにすぎない」と思い込んでいた。野党議員や自
民党リベラル派なども同様の見方をしていたのではなかろうか。

 しかし、小泉訪朝の場面で事実が判明した。それでも理解すること
が出来ないでいる。なぜ幼子を、若者を拉致するのか。かの国にはい
くらでも日本語使いがいるではないのか。日本国籍をとった仲間もい
るだろう。韓国対策といわれてもピンとこない。

 ミサイル実験についても「人工衛星」という誤解をしたことがある
。ロシアだけでなく米国もそうした報道を流していたからだが、これ
も物書きとしての失態となった。確かにわからない、理解しがたい国
である。

 だが、チャンネルを平壌に切り替えてみると、後者については理解
できる。後ろ盾だったソ連の崩壊、中国の経済変革と韓国との正常化
によって、文字通り完璧に孤立状態に立たされてしまった北朝鮮であ
る。しかも、天候不順による食料危機である。ソ連からの原油も途切
れてしまった。それでいて米国との軍事的対立は続行している。しか
しながら、前者は今も理解できない。その分、被害者家族への同情が
やむことはない。息子や娘が拉致される恐怖は、家族にとってどうい
うことか、十分に理解できるからである。

 ならば、日本政府はどうするか。被害者家族を躍らせ、それをマス
コミでもって合唱させて、北朝鮮脅威論を振りまいて、それでもって
一般国民に偏狭なナショナリズムを植えつけるために利用することで
は全くない。小泉―安倍ラインの責任は重大である。

 敵対関係にある国との外交において、大上段から大刀を構えて怒っ
てみても決着などつくわけがない。誰でもわかることを小泉―安倍ラ
インは推進してきた。
 今回の米朝による核解決に向けた動きを福田は、率直に評価した。
拉致問題解決に向けての第一歩なのだから。日朝国交正常化へのスタ
ートにもなる。被害者家族をさんざんもてあそんできた小泉―安倍ラ
インから、ようやく真の解決に動き出すのだと思う。ここでは福田に
かけてみたい。双方の利益にかなうからである。日本の経済界も後押
ししているようだが、不思議と日中国交回復時と似ている。

 福田が平壌に乗り込むときは、小泉のように日帰りはないだろう。
拉致の全面解決をするまで滞在、正常化も実現するかもしれない。解
散時期も決まるだろう。民主党が一番困る場面だ。社民、共産、公明
までが今もって高見の見物を決め込んでいるというのも解せない。
 改めて日本政治のいい加減さにあきれる。

 そもそもは田中内閣が決着をつけようとした外交課題だった。この
ときに処理をしていれば、拉致問題など起きていなかったのだから。
 参考までに、アジア諸国の拉致問題に対する視線は、かなり冷めて
いるという事実を日本人は知っておくべきだろう。過去の歴史を承知
している隣国の知識人などは特にそうである。従軍慰安婦や植民地政
策とアジア侵略と比較してしまうからである。

 たとえば、最近高校歴史教科書を調べてみたのだが、731部隊の
記述はなかった。若者の多くは731部隊を知らないのである。
───────────────────────────────── 
◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2008年6月27日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
───────────────────────────────── 
 日本語訳が届いていません。届き次第お届けします。
───────────────────────────────── 
◆[編集長から]              Michio Katayama
─────────────────────────────────
  燃料高騰が様々な波紋を世界中で広げている。物価高に拍車をかけ
ているのだ。いか漁に続いてマグロ漁も日中韓台の4か国が長期の休
漁の申し合わせをしたというニュースも飛び込む。
 
 原油市場が投機の対象になっているのが原因だという。世界経済の
メカニズムはよくわからないが、大方の報道がそのように伝えている
からにはそうだといえるのではないか。

 マスコミは「マグロの値段が上がる」と伝える。しかしこれらの報
道には違和感を覚えるのだ。今一度、我々の生活の有様を考え直す良
い機会ではないか。

 キャンドルナイトではないが、電力や車など石油製品はもとより、
生活のあらゆる側面で「もったいない」の精神を発揮するいい機会だ
ととらえるキャンペーンを世界中で繰り広げるべきだ。

 世界中に広げる必要性があるのは「グローバル社会の宿命」だ。
─────────────────────────────────
発行     2008年7月1日   No.344
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
              MailuX配信システム        ID:MM3E1B97842E020
e-mail        office@609studio.com
website    http://www.609studio.com
投稿      http://www3.ezbbs.net/06/609studio/
購読 購読解除は websiteへ

           ◇禁・無断転載◇
─────────────────────────────────

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。