メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio 号外 ◆セコリョ新聞日本語版  2008/06/18


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【609 Studio 】メール・マガジン・2008/6/18  号外
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に論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、
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   ────────◆◆◆ 号外 ◆◆◆─────────

6月13日発行のセコリョ新聞日本語版が届きましたのでお届けします。

6月17日号でお届けした「徒然のサハリン」の後編をお届けします。

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◆セコリョ新聞日本語版:2008年6月13日号
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2008年人口調査の実験

 ロシア連邦統計局が2010年に実施予定の全ロシア人口調査の準備
作業として、今年10〜11月に、30万人を対象に実験人口調査を行
う。実験対象地域はサンクト・ペチェルブルグとハバロフスクスク、モ
スクワの3つの区。実験の重要課業は調査方法、実行手順、技術問題、
中央政府と自治体との協力体制、個人情報保安問題など。

州知事国際経済フォーラムへ参加

 さる9日、ア・ホロシャヴィンサハリン州知事はサンクト・ペチェル
ブルグで開催中の第22回国際経済フォーラムに参加した。知事はエネ
ルギー部門に特別に関心を示した。エネルギー部門座談会ではエクソン
・モビル社のレクス・チレルソン総支配人が「サハリン−1」の経験を
語った。今回、州知事はA・F・イオプ物理技術研究所と「サハリン州
科学生産潜在力発展分野における協力」を約束する契約を締結した。

ロシアの日

 6月12日ロシアの日。当日午前、ユジノサハリンスクのチェホフセ
ンターで州政府が政治家、戦争・労働老兵、市民らを紹介して慶祝会を
開いた。又、センター前の広場で、昼は有名な芸術団や歌手のコンサー
トが、夕方の5時〜10時までは青年らのためのディスコパーティーが
開かれた。又、ガガーリン公園でも「ロシア、前進!」というタイトル
のコンサートがあった。各地方でもこのような祝賀公演があった。

地震関連会議

 さる8〜11日間、ユジノサハリンスク市で「サハリン及びクリルに
おける地震観測」とテーマの国際会議が開かれた。会議では昨年発生し
たシムスイル島とネベリスクの地震観測資料を巡っての討論が活発に行
われた。ロシア地球物理学科学アカデミーによると、2010年まで極
東地域に近代的な津波予防システムが完成するとのこと。

カムチャッカ、サハリン地震発生率高い

 ロシア非常事態予測センターは、6月カムチャッカとサハリン州に地
震発生可能性が高いと発表した。又、昨年地震が発生したネベリスク地
域では余震が続いているとも伝えた。しかし、非常事態が発生する程の
大きな被害はないと強調した。

若年層の麻薬中毒者増加

 ユジノサハリンスク市で開かれたあるセミナーでエス・ベスチャスヌ
イ州検事は最近、青少年麻薬中毒者が増えていると懸念を示した。麻薬
を始める年齢が年々低くなり、11〜12歳に達しており、麻薬消費者
の60%以上が18〜20歳までの未成年者であるとことがわかった。
又、麻薬販売に手を出す若者も増加しているとのこと。

小型バス運行禁止

 2010年までの住民らの運輸サービス発展規定により非常口のある
バスのみが運行できるようになる。昨年、ユジノサハリンスク市政府は
地方予算で5台の大型バスを購入しており、ロシア小型バス「ガゼリ」
の購入も検討中であるが、当バスが他の規定に合わないのが判明した。
新しい規定に合わない80台の小型バスの運行が禁止されている。

「未成年」作戦

 サハリン州政府は全国レベルで推進中の「未成年」作戦を6月2日か
ら8月27日まで実行することを決めた。当作戦は未成年者らの違法行
為を事前に防ぎ、彼らの権利を守るのが目的。政府は住宅地や鉄道駅、
市場、公園、クラブなどを定期的に回るほか、アルコール中毒の父母ら
に強制的に治療を受けさせるなどして未成年者保護に乗り出す。又、ス
ポーツ競技や施設での休暇などを進める方針だ。

「ニブフ民族伝統アルバム」発刊

 サハリンエネルギー社と州政府の支援の下でニブフ民族の文化と歴史
を伝えるアルバムが発刊された。アルバムには80歳のエカテリナ・ラ
ニナイさんのニブフ民族の伝統美術や文様、料理などについての説明が
綴られている。発行数は1千部。

熊が女性を殺した

 アニワ区域の森の中で65歳の女性が熊に襲われ死亡。家族3人がゼ
ンマイ取りに行って、男性一人は車で見張りを、女性二人が山菜を取っ
ていたが、その一人が熊に襲われて死亡。ハンターたちは女性を襲った
熊を探している。

サハリン同胞支援要請書に対する韓国外務省の回答

 サハリン州韓人協会と老人会が韓国の李・ミョンパク新大統領宛に送
った要請書―サハリン同胞問題解決の協力、現地同胞らへの支援−に対
して韓国外務省が5月22日回答を行い、その前文がセコリョ新聞に掲
載。要請書の主な内容はサハリン同胞支援特別法案の通過、二重国籍許
可、韓人文化センター財政支援、永住帰国者と残留家族らの再会支援、
残留同胞1世らに対する生活支援、子女同伴永住帰国などである。外務
省は各項目ごとに外務省の立場を明確にしながら、赤十字社や国会を通
じて問題解決の方向を模索するように進めた。韓人会は新しい方法を探
るために住民らの意見を聞くなど世論を引き起こすことを始めようとし
ている。
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◆徒然のサハリン:オリホヴィク美香
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「教育について」−2

5)ボールペン。これは私が一番驚いたことです。ノートには基本的に
ボールペンで書きます。間違えても、修正液などは使ってはいけません
。ですから、間違えてはいけないのです。「間違えても消しゴムで消し
て書き直せばいいから」とは言えません。ペンで字を書くことの重みを
子どもの頃から身に付けさせるのです。ですから、子どもたちは、下書
き用と清書用のノートを持ち、下書きをして確認してから清書用のノー
トに書きます。宿題も同じです。うちの息子も時々間違いをしてパニッ
クになることがあります。上手くいけばノートのページを丸々交換する
など、夫が時々間違いを誤魔化すテクニックを伝授したりすることもあ
ります。(使うノートも、規格、ページ数が決まっている。)ノートは
毎時間、先生が見て、評価(5→1)を付けます。きれいに書けていな
いと「汚い」と書かれることもあります。

6)宿題。これは我が家の泣き所です。普通の日は、我が家の一日は宿
題で終わると言っても過言ではありません。毎日少なくとも3教科の宿
題があります。英語と算数の計算問題くらいなら、私がチェックするこ
ともできるのですが、その他の科目については、私のロシア語では全然
対応できません。算数も文章問題が多いので、息子の説明が悪いと全然
違う答えになってしまうこともあります。帰りの遅い夫がチェックする
のですが、ちょっとすると夜中までかかってしまうこともあります。(
チェックしてから清書しなければならないし。)特に日本でいう社会科
や理科の宿題では、明らかに子どもだけではできない宿題があり、親と
一緒にインターネットなどで調べてパソコンで打っていかなければなら
ないものもあります。できれば家庭教師を雇いたいところですが、適任
者が見つからないことと我が家の懐具合により、懸案事項になっていま
す。
7)クラス定員。基本的に25名。知り合いは苦労して子どもをエリート
校へ入れたけど、一クラスに30人もいると不満をもらしていました。や
はり、クラス定員は少ない方が先生の目が十分に行き届いていいもので
す。うちの息子が最初に行った私立校では、一番多い時で15名だったお
かげで、ロシア語がまだ不十分だった息子も助かったわけです。その学
校が閉鎖になり、今の公立校に移った直後は、クラスに25名もいること
に驚いていたし、先生との接点が少なく授業の理解も難しかったようで
す。先日インターネットで日本でこれから教師を増やす云々というニュ
ースを見ましたが、少子化の時代でもありますから、一クラスの定員を
大幅に少なくすることを考えても良いのではないかと思うのです。先生
が一人一人の生徒に目配りできる余裕があれば、日本の先生方も少しは
楽になるのではないでしょうか。先ほど書いたような毎時間全生徒のノ
ートをチェックしたり、「日誌」に一人一人評価をつけたりするなんて
いうことは、少人数制でなければできません。特に、外国語教育につい
て考えるなら、1クラス10〜15名が理想なのです。
8)(もう一度)格差。格差はあって当然。勉強が得意な子もいれば、
そうではない子もいます。お金持ちの子もいれば、裕福ではない家庭の
子もいます。ロシアでは、誕生日は重要なお祝いで、誕生日の人が周り
の人に振舞うのが基本です。学校でも、誕生日の子がクラスメート全員
にお菓子などを振舞ったりすることがよくあります。これも、出来る子
はすればいいし、出来ない子はしなくてもいいのです。(あまり華美に
ならないようにとは言われていますが。)例えば、学校でサーカスを見
に行くとします。日本ならお小遣いはどうするとかの指導があると思い
ますが、こちらでは自由です。お金を持っている子はジュースなどを買
ったりしても別に構いません。携帯電話も自由。

もちろん授業中は切っておかなければなりません。うちの息子も通話
機能だけのものを持たせています。うちは学校から遠いので、送り迎え
や一人で下校する時などの連絡に使うために必要なものだからです。こ
ちらの携帯電話は基本的にプリペイド方式で、残金がなくなれば使えな
くなりますから、使いすぎるといった心配はあまりありません。できれ
ばGSP機能がついたものがあれば、親としてはもっと安心なのですが
、ちょっと高価で・・・。息子は、時々クラスメートに頼まれるか、自
慢したいのか、ニンテンドーDSを学校に持っていきたがりますが、こ
れだけは厳禁。高価なものは、万が一貸した友達が壊してしまった時、
自分だけではなくその友達も困るからです。ましてこちらで売っていな
いものならなおさらです。携帯電話も一度外で遊んでいる時に、どこか
の年長の男の子に取られたことがあります。どうしたら自分のものを自
分で守れるかを、家族みんなで考えるきっかけになりました。
 「人は人。うちはうち。」ロシアでは、みんなが同じでなければなら
ないという考え方がありません。
9)「日誌」。先ほどから何度か出ていますが、ロシアの学校では各生
徒が「日誌」というノートを持っています。毎日の時間割、連絡事項、
宿題、成績表の役割をします。授業でノートをチェックする他に、この
「日誌」にも宿題の出来や授業の様子から評価が書かれます。(何もな
いときもありますが。)苦労して宿題をして行った後で、5がつけられ
ると、それはうれしいものです。テストの成績も書かれます。宿題をし
ていなかったり、忘れ物をした時にも、先生のチェックが入ります。そ
して、毎週最後に先生と親が確認のサインをします。「日誌」の巻末に
は学期末の成績が書かれます。この1冊で、一年の勉強の様子が分かる
のです。
10)その他。ロシアの学校で、私がすごいと感じたのは、学校に医師
(または看護士)と歯科医、心理カウンセラーがいることです。具合が
悪い生徒の診察の他に、例えば、インフルエンザの予防接種の時期にな
ったりすると、学校の医師がワクチンを調達して注射をするのです。他
にも、学校では、結核検査、B型肝炎ワクチンが義務付けられています。
(レントゲンは決まった時期に病院へ行かなければなりません。)小学
生の子どもは、ちょうど乳歯から永久歯にかわる時期なので、学校の中
に歯科医がいるのはありがたいものです。もちろん、予約制で虫歯の治
療もしてくれます。(ただし、抜歯は外科行為にあたるため、専門の医
師がいる歯科医院へ行かなければなりません。)もちろん無料で、職員
も治療を受けることができるそうで、私の学生が教育実習中に虫歯を治
してもらったと喜んでいました。ところで、ロシアでは、風邪などの病
気や怪我で学校を休んだ場合、病院の医師の診断書(学校復帰の許可)
がなければ、学校に戻ってはいけません。それがない場合は、理由のな
いただの休み扱いになります。(これは職場でも同様。子どもの病気等
で仕事を休む場合、同様の診断書があれば親も病欠扱いになる。)

 「教育について」−3

余談になりますが、うちの息子は日本人ですが、それを成績に考慮して
くれるということは、少なくとも息子の学校ではありません。同じクラ
スにロシア語があまりよく分からない子がいるそうですが、毎回「2」
をもらっているそうです。逆に、別の学校に通う知り合いの日本人の子
どもは、どうせ長くて1年か2年だからか、「日誌」も成績付けもない状
態だそうです。学校によって対応が違うのですね。ちなみに、私の夫は
3年生くらいの時に両親とウクライナからサハリンに引っ越してきたの
ですが、その時にウクライナ訛りがあるからとロシア語(国語)で普段
の成績も試験も5なのに「3」をつけられ、母親が学校に抗議に行った
そうです。

息子に学校でいじめはないかと聞いたら、今のところ特にはないという
答えでした。もともと「人は人。」ですし、他民族の国ロシアの中でも
、サハリンは特に民族の数が多いところで、外見が違う人は大勢います
。「いろんな人がいて当たり前」というのが、サハリンの良いところで
す。もし、いじめにあっても、嫌なら学校を変えればいいのです。そう
いう気楽さが良いですね。

ロシアの学校は基本的には土曜日は休みではありません。4学期制で、
3ヶ月の夏休みの他に、1週間〜10日ほどの秋休み、冬休み、春休み
もあります。が、学校へ行く日数がこれほど違っても、日本の学校の教
科書と比べると、例えば算数は同じ学年ならだいたい同じことを勉強
しているのです。この差はどこから来るのでしょうか?不思議です。今
後、息子の勉強の様子を見ながら、その答えが見つかればと思っていま
す。

公立の学校教育は、基本的には無料ですが、実際にはそうなっていませ
ん。日本は、外国にいても義務教育中の教科書をもらうことができるの
は、本当にありがたいことです。ロシアでは教科書は有料で、サハリン
になるとだいたい3年生で一揃え4千ルーブル(約1万8千円)近いお
金がかかります。兄弟や親戚がいれば、おさがりも可能です。教科書の
他には日本のようにリコーダーを買うとか、スキーがいるといった教材
費はかかりません。体育も音楽も基本的に個々が道具を必要とするもの
はしません。

政府の改革の一環で、今年から日本の小学校にあたる4年生までの生徒
には無料で昼食が提供されることになりました。最初はちょっとリッチ
なメニューだったのですが、だんだん貧相になり、結局はお腹をすかせ
て帰ってくるようになっているのが現状です。きっと、どこかで経費を
ネコババしている人がいるのだと、夫は言っています。(何せどこかで
お金が消える国ですから。)

設備の面では、日本の学校は本当に恵まれています。ユジノサハリンス
クでは、学校の改築も少しずつ進んでいます。教室が足りないため、ほ
とんどの学校は2部制になっていて、朝から昼までの学年と昼過ぎから
夕方までの学年に分かれています。設備が悪い分は知恵でカバー。

―最後に―
色々と長く書きましたが、ロシアはその社会と同様に教育も変化の途中
で、まだまだ安定していません。しかし、経済成長に後押しされ、次第
に政府の目も教育改革に向かっています。今後の国家の安定と繁栄を担
う若者の教育は重要な問題であり、早急にその改善を目指さなければな
らないと考えられるようになりました。プーチン前大統領の離任直前の
スピーチでは、教師の給与の改善を早急に行うことも肝心だと言ってい
ましたから、期待したいところです。
また何か発見があった時には、ご報告したいと思います。(完)
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発行     2008年6月18日   号外
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
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