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タイトル:609studio No.336◆現代時評:「春過ぎて夏来にけらし・・・」  2008/05/06


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【609 Studio 】メール・マガジン 2008/5/6  No.336
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◆現代時評:「春過ぎて夏来にけらし・・・」 ken

◆憲法特集 本澤二郎の政治評論「日本国憲法61歳」:本澤二郎

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:翻訳が届いて居りません。

◆編集長から

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◆現代時評:  「春過ぎて夏来にけらし・・・」 ken
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■■ 小倉百人一首に、持統天皇の歌で「春過ぎて夏季にけらし白妙の
ころも干すてふ天の香具山」というのがある。 ちょうど今ごろの季節
を歌ったのだろう。

■■ それにしても今年の春の気候は順調だった。 先ず初めに桃の花
が咲き、ついでソメイヨシノの満開があり、殆ど同時期に白いコブシ、
そして続いてモクレンと海棠とハナズオウが妍を競った。 それが旬日
を経ずして平戸つつじに変わり、きょうはもう紛れもなく「目に青葉、
山ホトトギス」の日々である。 この時期、まこと敷島の大和の国は美
しい、と つくずく自己陶酔に耽りたくなる。

■■ おまけに日本の経済は相変わらず好景気の連続だそうな。 外貨
はますます溜まるし、ボクの住むあたりは高級外車が国産車の数を上回
り、ガソリン税が無くなっている安い間にドライブ気分を満喫する積も
りか、どこのガソリンスタンドにも給油待ちの車があふれている。 ま
さに天下泰平の経済大国である。

■■ ところがその間、政府や政治家たちは汚職と政争に明け暮れるば
かりだ。 イージス艦の漁船衝突事件などはとっくに消え去り、それに
代わる連日の社会ニュース種は相変わらず暗い話の連続。所得格差問題
とか後期高齢者苛めとか、流行する硫化水素自殺とか・・。 いったい
日本は幸せな国なのか、それとも不幸な国なのかと、戸惑うのはボクだ
けで無かろう。 幸せそうに見えながら、それでいていつも焦りと不安
感に苛まされる日本という不思議な国。 いったいどこがいけないので
あろうか。

■■ そこで思い出したのは、先般来ブータン国王の決断として伝えら
れている「GNP(国民総生産)よりもGNH(国民総幸福値)」の話
である。 GNP必ずしも国民の幸せに比例せず、むしろGNH
(gross national happiness)を基準にせよとのブータン第4代国王の
1972年即位のときの演説が国際的に注目をあつめている。

■■ それは、GNPすなわち経済的「国民総生産」をすべての価値基
準とする世界の趨勢にたいして、経済発展はブータンの究極目的とする
ところではなく、GNHすなわち「国民総幸福」の向上こそがブータン
の目指すところである、という仏教理念に基づいたブータン第4代国王
独自の高邁な方針、政策の宣言であった。

■■ そのためブータンは、外国人登山家への「登山永久禁止条例」を
定め、一大観光資源としての仏教寺院の観光立ち入りを禁止、すべての
建物における伝統的建築様式遵守の命令を出し、「ヒマラヤが聳え、雨
雪が降り、森林が茂るかぎりわが国は安泰である」として、環境を劣化
させる林業の開発を一切禁止して、そのため2006年には国王が世界自然
保護基金から表彰さている。
 
■■ もっとも「国民総幸福」といっても、さてその「幸福」の定義は
何かと諸外国から疑問が投じられ、それで「幸福」を「充足(contentedness)」
という言葉に直すというハプニングまで追加された。 日本でもすでに
2005年には外務省主催で「ブータンと国民総幸福量に関する東京シ
ンポジウム2005」が開かれたりして注目を集め、いまや「世界第2
位の経済大国」に浮かれた日本も「経済必ずしも国民の幸せではない」
とのコンセプトが議論の対象になっている。 「経済発展が総てではな
い、カネで買えぬ豊かさもある」と、金色夜叉の間貫一の舞台せりふの
ように、今になってどうやらおカネ以外のことも考えなおして見ようと
の機運が沸いてきた。 それは、仏教でいう「足るを知る」ことへの再
評価か、物質文明への疑問の投げかけかも知れない。

■■ ヒマラヤ山中にあるブータンという人口60万人の小さな国。
 あえて言えば「開発途上国」または「未開発国」だろう。 小さな国
であるからこそ、いまの日本が経済発展のために失ってしまった大事な
何物かがまだ残っている。 もしもっと大きな国であったら開発と経済
発展という世界の潮流に飲み込まれていたかもしれない。 あるいは近
辺の他国との紛争に心ならずも巻き込まれていた可能性もある。 じじ
つ近年に、ネパール難民の追い出しにブータンの軍隊も使用したことが
ある。

■■ そのいい例が、ビルマという近隣国だ。仏教の教えだけでは成り
立ちがたく、いままさに先進諸国のグローバリズムと人権運動に飲み込
まれようとしている。 いくらブータンが「国民総幸福」を標榜して「
おカネで得られない幸せ」を守り抜こうとしても、はたしてそううまく
やっていけるのか、疑問がないわけではない。

■■ ユネスコが2006年に出版し、世界保健機構や国連人間開発機
構が協賛した世界初の「世界幸福地図」というのがある。 作成したの
は英国レイセスター医科大学心理学教室のアドリアン・ホワイト先生で
ある。 
www.eurekalert.org/pub_releases/2006-07/uol072706.php

全世界8万人に照会し、100種に及ぶ調査をした上での統計的発表で
あるという。世界178カ国を対象とし、幸せの定義を主として健康、
富裕さ、教育度に拠ったと明記している。必ずしも科学的データに拠る
ばかりではないと注釈し、更なる検討を要するとの但し書きがあるが、
とにかくユネスコが関与しているからにはいちおう信頼できるデータと
看做せばいい。 その「世界幸福地図(world map of happiness)」に
よれば、世界各国の幸福度のランキングは次ぎの通りになっている。

上位20カ国
1. デンマーク 
2. スイス 
3. オーストリア 
4. アイスランド 
5. バーマ諸島 
6. フィンランド 
7. スエーデン 
8. ブータン 
9. ブルネイ 
10. カナダ 
11.アイルランド 
12. ルクセンブルグ 
13. コスタリカ 
14. マルタ 
15. オランダ 
16. アンティグァ・バーブダ 
17. マレーシア 
18. ニュージランド 
19. ノールウエー 
20. セイシェル諸島 

■■ 続いて世界の主な国で、上記20カ国以外の国の名が追加されて
いる、
23. 米国 
35. ドイツ 
41. 英国 
62. フランス 
82. 中国 
90. 日本 
125. インド
167. ロシア 
■■ これを見て驚くべきは、いま経済発展が著しいと伝えられるアジ
アの国々が、ブータンとブルネイを除いてぜんぜん上位に入っていない
ことである。 そのなかにあってブータンの世界第8位というのは賞賛
されてよい。 
■■ もっとも、先日の毒入り餃子とオリンピック聖歌事件以来、われ
われ日本人が世界最下位かと想像する中国が、日本より上位の第82位
にランクされているのが奇異にとれぬこともない。 しかしこれとて、
世界でいちおう良識があると考えている団体が客観的にそう評価してい
るのだから、ものの見方、考え方によればわが日本より、中国の方が「
住んでより幸福に思える」国というのも謙虚に反芻してみるべきであろ
う。
■■ 米国ほどではないにしても、国民の冨がやや偏在し、競争はつね
に激しく、よろずに余裕の無い生活を続けているわが日本の偏狭な社会
がはたして幸せかどうか、この辺りで生活を謙虚に再考してみるべきで
ある。アメリカや日本人の文明生活は身体的な面ではたしかにひじょう
な快適さをもたらしてくれた。 がしかし、こと情緒や精神面の生活で
は、間違いなくどこかに歪(ひずみ)が存在するのではなかろうか。
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◆憲法特集 本澤二郎の政治評論「日本国憲法61歳」:本澤二郎
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[東京=「ジャーナリスト同盟」通信提供]世界に冠たる日本国憲法が
1947年5月3日に施行されて61歳を迎えた。風雪によく耐えての
61年に感謝したい。「報恩」という言葉は、日本人であれば等しく平
和憲法のために用いられるべきかもしれない。

 近年は、小泉―安倍の内閣でさんざんにいたぶられたが、先の名古屋
高裁によるイラク派兵違憲という当たり前だが、それでも画期的判決で
元気を取り戻した。「死の商人に屈服するものか」の気概を見て取れる
。平和・軍縮派の宇都宮徳馬さんは常々「日本人の平和主義はいい加減
なものではない」と語っていた。また、改憲軍拡派に対しては「このリ
ベラルのすばらしい憲法を変える?そんな輩は大馬鹿野郎さ」と激高、
中曽根康弘やそれに追従するマスコミ人を叱り飛ばしたものである。宇
都宮さんの後輩・中曽根内閣官房長官を歴任した後藤田正晴さんは「わ
しの目の黒い間は改憲させない」と中曽根をけん制しまっていた。

 人生90年、100年である。61歳の平和憲法は若い。筆者の母も
この5月に90歳になる。4日は自宅で誕生会だ。61歳の憲法は、こ
れからまだまだこの地球でやることが沢山ある。100年、200年と
生きてくれないと、アジアの平和と安定に加え、この地球から愚かな戦
争と環境を守れない。

 思い起こすと、筆者が憲法9条に出会ったのは中央大学法学部の憲法
講義の時であった。それまでは、まともに勉強をする機会も環境もなか
った。侵略戦争被害による農村の貧困家庭では机も椅子もなかった。中
・高校授業で9条に出会えなかった。だから御茶ノ水の大教室で受けた
橋本公旦教授の9条解釈講義に、それこそ目からウロコが落ちる思いで
感動したことが、まるで昨日のように忘れられない。憲法学者の自信に
満ちた解釈に「日本はすごい国だ。戦争をしない平和な国。自衛隊は憲
法違反なのだ」と太鼓判を押してもらい、密かにだが誇らしく思った。
本物の愛国心が芽生えた瞬間であった。

 当時、難関の渥美東洋ゼミ(刑事訴訟法)や司法試験のための白門会
研究室にも席を置いたものの、アルバイト学生の才能が災いしてか4年
間かけて五体に染み込んだのは9条だけだった。しかし、それでもよか
った。

 政治記者になって20年かけて自民党派閥にのめり込んだが、護憲派
の宏池会、三木派、水田派などが好きだった。ポスト中曽根の総裁選挙
で出馬した宏池会会長の宮澤喜一さんが、その第一声で「核戦争の危機
が迫る中で、9条はますます光り輝いてきている」と臆することなく叫
んだのには感激した。傍らに、後に防衛庁長官をした池田行彦氏(池田
勇人の娘婿)がいた。彼が「やあ、驚いた。いい演説だね」と声をかけ
てくれたのも忘れられない。憲法制定時の吉田茂総理大臣に仕え、その
影響を最も受けた保守本流の嫡子からの舌鋒である。ここに自民党の強
さが存在していた。今はない。

 93年に米国務省の招待を受けて1ヶ月かけて取材旅行をした時のこ
とだ。「日本に改憲を押し付けようとの勢力が存在するのか否か」を目
的にして全土を歩いた。たまたま中西部の共和党支持の企業家と議論に
なった。「いま米国は苦しい。こんなときだから日本は軍事力を強化す
べきだ」と力説してきた。筆者は日本の過去を詳しく説明した。平和憲
法のこと、そしてアジア侵略のことを説明すると、なんと彼は「それを
全く知らなかった。君の言うとおりだ。自分が間違っていた」と持論を
撤回してくれた。話せばわかる保守派のアメリカ人にいたく感激した。

 西海岸の民家に呼ばれたさい、日本人銀行家夫人と一緒になった。彼
女は「先日、イギリスのサッチャーの演説を聞いて、改めて日本も軍事
力を強めるべきだと思う」という予想外の発言をした。すると、そばに
いた知性派の白人男性が「イギリスと日本は違いませんか」と釘を刺し
た。白人弁護士もいた。彼は「本当ならアメリカも日本の9条憲法にす
るべきだよ」といった。皆平和憲法を理解し、評価してくれた。

 加州サクラメントでは、敗戦後の日本で通訳将校として活躍した日系
アメリカ人に会った。右翼の主張である押し付け憲法論を紹介して、当
時を知る彼の意見を求めた。即座に否定すると「どこに行っても国民は
新憲法を喜んでいた。この目で全国を歩いて確認した。反対する人など
いなかった。日本は二度と戦争をしてはいけないよ」と諭すように事情
を説明してくれた。

 このときは国務省、国防総省、大統領府、議会、シンクタンク、マス
コミ、市民など幅広く取材したのだが、結局のところ現在ブッシュ周辺
にたむろしているネオコンを見つけ出すことはできなかった。健全なア
メリカ社会は、むしろ読売グループの改憲キャンペーンを紹介すると驚
愕した。

 ブッシュ時代も間もなく幕を引く。小泉、安倍を自在に操ったブッシ
ュを米国民は、とうに見放している。過ちを軌道修正できるアメリカで
ある。ブッシュを利用して国民投票法を強行制定した安倍も、沈没を余
儀なくされた。政権交代で軌道を修正できれば日本の将来は明るい。民
主党にも「死の商人」と連携している右翼議員は存在している。しかし
、9条の壁は高くて分厚い。

 財界改憲派の責任者が日本記者クラブでうめいた一言を覚えている。
それは「(国民に人気の高い)大江健三郎や吉永小百合に反対されたら
、改憲世論で包囲するのは厳しい」と。最近はロ事件報道で有名になっ
た立花隆も護憲の旗を掲げてくれている。「61歳の活躍はこれからだ
よ」というのが、日本のみならず国際世論なのである。
2008年5月3日記
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 ◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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 翻訳が届いて居りません。届き次第お届けいたします。
 原文(PDF)
http://www.609studio.com/html/sekoryo/korean/080502-1.pdf
http://www.609studio.com/html/sekoryo/korean/080502-2.pdf 
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 「9条世界会議」が東京・幕張メッセで開催された。1万2千人が入
れる会場は人があふれて3千人が入れなかったと言う盛況振りだった。

 昨年は安倍首相の元で改憲派が幅を利かせていたが、改憲論は隅に追
いやられたようである。「9条世界会議」は簡単に言えば日本の憲法第
9条を世界に広めようと言う趣旨。

 94歳の本多立太郎さんは9カ国語に訳した憲法9条をもって世界に
配布すると言う構想をもたれている。
 
 すべての国の軍隊をなくそうと言う壮大な運動。本多翁に続け!

 ところで5月30日、本多翁を迎えてジャーナリスト・ネット3周年
記念の講演会を開催する。
 詳しくは
     http://www.journalist-net.com/files/080530.html
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発行     2008年5月6日   No.336
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
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e-mail        office@609studio.com
website    http://www.609studio.com
投稿      http://www3.ezbbs.net/06/609studio/
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