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タイトル:609studio No.331◆現代時評:「チベットは中国の一地方か、それとも・・」  2008/04/01


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【609 Studio 】メール・マガジン 2008/4/1  No.331
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───────────◆◆◆INDEX◆◆◆───────────

◆現代時評:「チベットは中国の一地方か、それとも・・」  ken

◆本澤二郎の国際評論「スターリン後遺症」:本澤二郎

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:翻訳が届いておりません。

◆編集長から

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◆現代時評:「チベットは中国の一地方か、それとも・・」  ken
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◆◆ アサヒコム 2008.3.28 インドに拠点を置く非政府
組織(NGO)チベット人権民主化センターによると、中国四川省カ
ンゼ・チベット族自治州炉霍県で25日午前、僧侶ら約400人のデ
モ隊が武装警察部隊や公安当局と衝突した。24日に起きた衝突で僧
侶らが死傷したのを受けて、僧侶たちは弾圧の中止を求めたという。  

◆◆ 産経ニュース 2008.3.28 中国の周文重駐米大使は
25日、米国内の批判を踏まえ、「人民は信仰の権利を有してはいる
が、(チベットの現状は)信仰の自由といった問題ではない」と発言
。「チベットで起きていることは、法と秩序の問題だ」と述べ、米側
の批判をはねつける強硬姿勢を示した。 

◆◆ CNN 2008.3.26  チベット亡命政府が拠点を置
くインド北部のダラムサラで25日、五輪の聖火を模したトーチを持
って5大陸横断を目指す抗議リレーがスタートした。主催者によると
、北京五輪の開会式が開かれる当日、中国のチベット自治区ラサに到
着する予定。  
 
■■ 宗教は尊敬すべきか、それとも邪教として排除すべきか、判断
はひじょうに難しい。 厳しい見方をすれば、キリスト教も世俗仏教
も、イスラム以外の総ての宗教はすべて妖怪変化教であると言っても
いい。 なぜなら、明らかに偶像を礼拝しているからである。

■■ 近ごろは「国家」という定義や概念も、宗教と同じようにひじ
ょうに曖昧になってきた。 はやい話が、EUは国家かどうか、コソ
ボ周辺の旧ユーゴスラビアに明快な国境というものがあるかどうかな
どは、そう簡単に断定できない。

■■ ところがその曖昧な国家の独立紛争に、いつも深く関与してい
るのが宗教という妖怪である。 かってソ連や中国は、「宗教はアヘ
ン」としてきれいさっぱり抹殺しようとしたが、すべて失敗に終り、
いまあちこちで既成宗教の再興が始まっている。
 
■■ 宗教の他にもう一つ、国家の独立紛争に深く関わっているのが
、民族という、これまた不可解な概念である。 「民族自決」という
魅力的なスローガンもいっとき流行ったが、これも「民族とは何か」
という定義の段階で行き詰まり、おまけに近年の米国のように人種の
坩堝が、それを超越して明快に国家を形成するようになり、もう民族
・人種論も昔のように説得能力を持たなくなってしまった。

■■ ところで最近のチベット紛争のことである。 ボクははじめ、
これはチベット独立運動かと思っていた。 が、近ごろの状況では紛
争はチベット地区のみならず、甘粛省から四川省にまで及んでいて、
どうやらチベット独立運動にあらずして、いわゆるチベット人の人権
運動の様相を呈し始めている。

■■ しからばチベット人とは何者か、その定義がこれまたすこぶる
曖昧だ。 チベット人とはどうやら「チベット語を話し、チベット仏
教を信仰する人々」の群れであるらしいが、そのチベット語というの
も地方によっては相互に殆ど通じないほど多岐に渉っているらしい。
 シナ・チベット語群を大別すれば シナ・タイ語派(漢語系とタイ
語系)と、チベット・ビルマ語派(チベット語系とビルマ語系)の言
語グループに分類できるらしい。 つまり、チベット語はビルマ語に
より近く、タイ語は漢語により近いのだそうだ。

■■ にも拘らず、そのチベットという国やチベット人を、まず中国
の外に存在すべきものと前提し、「侵略されたチベット、侵略した中
国」という概念で多くのマスコミは報道し、米国下院やフランスなど
多くの西欧諸国が「被侵略国チベット」の味方をする。 もっとも「
侵略国中国」と決め付けるにはいささか論拠薄弱なため、これを「人
権問題」に換骨するという手法が用いられているようだ。

■■ しかし侵略したと非難される中国にとっては、それは「内乱」
か「地方騒擾」の鎮圧に他ならない。 もし「内乱」や「国内騒擾」
ならば、どこの国でも武力鎮圧を辞さない。 それは、英国の北アイ
ルランド紛争を考えれば分かるし、トルコのクルド人問題を見れば明
白である。 なにも武力行使が中国政府だけのものではない。 

■■ ボクはチベット人とかチベットという国が果たしていままでに
存在し、あるいは存在したことがあるかどうかの歴史知識を、これま
で持っていなかった。 それでいて、もし軽々しく「中国は怪しから
ぬ」などと主張すれば、それはマスコミの煽動に乗せられた無知な一
市民であるとの誹りを免れない。

■■ そこでチベット人およびチベット地域の歴史的事実について俄
か勉強してみた。 テキストの殆どは、おそらくチベットの知識がも
っとも豊富らしい東大の藤堂名誉教授の著書を拝借した。 その孫引
きによれば、チベットについては大要次の通りである。

■■ 唐代の正史「旧唐書(くとうじょ)吐蕃伝(とばんでん)」に
よれば、「吐蕃は長安の西8千里、漢のころの西羌(きょう)の地で
ある。種族の起こりは明らかでないが、南涼(5世紀の地方政権)の
禿髪(とくはつ)の後ともいわれる。北魏のころ、河西回廊にいた沮
渠蒙遜(そきょもうそん)の末に属したが、のち黄河を渡り積石山を
越え、羌族(きょうぞく・かんぞく)の中に国を建て「禿髪」を国号
とし、それが訛って『吐蕃』と呼ばれた。 今の地名チベットはその
また訛りである。 彼らは上古の羌族、秦漢のころの西羌(せいきょ
う)族の末流であることは疑いない。

■■ 吐蕃は、唐の太宗のころ、吐谷渾(とよくこん)を青海に追い
払い、いまの四川省に侵入した。唐では蘭州らの兵を動員して反撃し
た。 するとチベット王は金5千両を献上して「唐王室の公主(内親
王)をもらいたい」と迫った。唐の太宗は641年、文成公主をチベ
ット王 ソンツォンカンポに嫁がせた。 チベット王は兵を率いて黄
河上流に出迎え「わが父祖も中国と通婚しえなかったが、いま私は大
唐の公主を嫁に迎えた。公主のため城を築いて後代に誇示しよう」と
言って喜んだ。 その頃からすでに王都は今日のラサにおかれていた
。 今、ラサの大昭寺に、文成公主の塑像があり、寺のまえには彼女
が植えたという「公主柳」が残っているという。 文成公主は680
年に亡くなった、嫁してから39年」。

■■ 文成公主の嫁入りは、しばらく吐蕃(チベット)の唐への侵攻
をおさえる役目を果たしたが、670年、チベットは吐谷渾を徹底的
にやぶり、鎮圧に出動した唐の軍隊をも打ちのめして自信をつけ、以
来、矛先を東に向けて大軍を繰り出して唐の軍を脅かした。 『旧唐
書』には、「時に吐蕃は、タングートおよび諸蕃の地を配下に収め、
東は涼州・松州・茂州と接し、南はネパールに至る。西にては、シル
クロードのクチャ・カシュガル等の4鎮を攻め、北は突厥の地に至る
。 地方万余里、漢魏以来、西戎のこれほどさかんなりことはなし」
とある。

■■ 則天武后のころになると、吐蕃はいよいよ中国に侵攻の矢を向
けた。 唐軍は693年、チベット兵を破りいくらかの支配権をとり
かえしたものの、そのあとがいけない。とりわけ涼州は何度もチベッ
ト兵に踏み荒らされた。 唐の代宗の763年、チベット20万の大
軍に攻められて、唐の都長安は15日間、チベットに占拠された。 
786年にチベット兵は長安の近郊を荒しまわり、庶民1万余を捕ら
えて連れ去り、それのとき以来、唐の西域シルクロード支配は終わっ
た。

■■ 紀元前15世紀頃、中国黄河デルタに住む殷人に対して、その
西北の山西省台地に遊牧人としての羌(きょう・チャン・カン)族ら
が住み、殷帝国はつねに羌族と争っていた。 周の武王が殷を滅ばし
たとき、周王朝最大の盟友は周帝室の姻戚羌族で、周の歴代王の正室
は羌姓から求めていた。 つまり、紀元前後の羌族は、周と共にいま
の山西省から東は山東省にまたがって住む中国の名流部族であった。

■■ その羌が内訌により、周を追われ、秦に追われ漢に追われ、反
攻と 討伐を繰り返しつつ西域へ散開した結果、ある者は四川南部に
、あるものは甘粛・青海に分かれて定住した。 そしていまのチベッ
トの辺りに落ち着いたのが西羌族であったらしい。 

■■ いまなお中国にはあちこちに羌姓の人が多い。 じじつボクの
知人にも台湾の羌(きょう)さんや、半島の羌(かん)さんが居る。
 広義に言えば、彼らはすべていまのチベット族と同系である。 と
なると、チベット人が、いま中国を支配する漢人と異なる人種である
とは言えず、近世になって漢人のうちに加えられた福建人(?南人)
などより、よほど筋目正しい漢人なのだ。 なるほどあちこちに住む
羌(ちゃん・かん・きょう)さんたちは、他の中国系の人たちと容貌
しぐさもぜんぜん変わらぬし、もちろん日本人とも外見的に差はない。

■■ もっとも、羌姓の人がすべて旧羌族出身であるかどうかも疑え
ばきりが無い。 台湾次期総統の馬英仇氏の「馬」姓は、もともとマ
ホメットのマがオリジンで、胡人(アラビア系)といわれているが、
馬英仇氏が回教徒系かどうかは保証の限りではない。 ただ、明代に
大艦隊を率いてインド洋へ7回も遠征した鄭和は、本姓が「馬」で、
雲南に残る彼の墓所には彼がアラビア系宦官の出であることが記され
ている。    

■■ いずれにしろ、羌族や、その同族といわれる壮(しゃん)族や
?(かむ)族はチベット仏教を信仰し、チベットだけでなく青海、甘
粛、新疆、四川、さらには広西省にまで分散定住している。 最近の
暴動がチベットだけではなく、あちこちの僻地に飛び火するのは、 
単なるチベット独立運動ではなく、むしろわが織豊期の一向一揆にも
似た、チベット仏教による宗教戦争と見る方が正解だろう。

■■ ところがそのチベット仏教なるものは、わが国の既成仏教をは
るかに凌ぐ前世紀的因循からまだ抜けきれず、どう贔屓目にみてもチ
ベットは時代の文明に取り残された宗教および土地柄であるというの
は否定すべくもない。

■■ ダライラマ師は中国政府のやり口を、チベットに対する「文化
的虐殺」と表現しているが、さてそのチベット仏教に、ある種の「文
化」はともかく、文明といえるほどの文明的文化がはたして存在する
かどうかはたぶんに疑問である。  いまのチベットは、あきらかに
現代文明の恩恵に取り残されている地球上数少ない未開地なのだから
、中国政府ならずともナンとかしなければ、とのお節介ごころを出す
のはとうぜんであろう。 それとも、チベットを未開地のまま今後も
残しておけというのだろうか。

■■ なるほど中国政府のやりかたは少々荒っぽく穏当を欠くのは否
めない。 がしかし、いまここでチベットの反乱に悠長な態度を採り
続ければ、同種の内乱が中国各地に勃発し、収拾がつかなくなること
も考慮しなければなるまい。 中国は怪しからぬという、いっときの
感情に任せて、何がナンでも中国政府が悪いと考えるのはいささか軽
率である。

■■ どちらかといえばチベット贔屓の藤堂先生も書いていらっしゃ
る、「隋唐から五代にかけてあれほど栄えたチベット族が、近世には
ラマ教(チベット仏教)と封建制とに縛られて、しだいに文明のかな
たに取り残されてしまったのは、なんとも不思議なことである」と。
 イラクやアフガンにてこずる世界の先進国群の中に、チベット仏教
という魔物に魅せられたチベットという国または地方を救えるほどの
国が果たして存在するであろうか。

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◆本澤二郎の国際評論「スターリン後遺症」:本澤二郎
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東京=[ジャーナリスト同盟通信」提供]
  数日前(3月25日)のことである。ウクライナの外務大臣が日本
記者クラブで記者会見を行った。彼の口から「ジェノサイド」という
予想外な発言が飛び出した。ホロコーストとほぼ同じように大量虐殺
と解釈されているのだが、ソ連時代のウクライナでそれがあったとい
うことを知る日本人記者は、筆者を含めて少ないようだった。ウクラ
イナでは「ホルドモール」と呼んでいるのだという。スターリン時代
の大事件なのだ。ホルドとは飢饉・飢えという、モールは殺戮を意味
する。


 外相のオグリスコはキエフ生まれの51歳。根っからの外交官であ
る。この英語とドイツ語が堪能な外交官は、冒頭の30分スピーチの
最後に「今年はウクライナにとって最大の悲劇の記念すべき年である
」といって、このことを特別に紹介した。記者団には理解ができなか
ったらしく、記事にする新聞はなかったようだ。

 彼は、ウクライナの大量虐殺をジェノサイド、地元民がホルドモー
ルと命名したと説明したあと、被害者の数を「何百万人」と表現した
。なんということだろうか。スターリンの粛清は知られているが、ウ
クライナでのジェノサイドは初耳であったから、筆者などは当初、聞
き間違いではないだろうか、と思ったほどである。

 ジェノサイドは人道に対する罪である。国際法違反だ。「民族・ウ
クライナ国家を標的にしたものだ。当然、国連の範疇に入る。このホ
ルドモール・大量虐殺の位置づけをしなければならない。人為的な飢
饉もまた兵器であるということを、国際的に喚起したい。このような
犯罪を阻止しなければならない。国連での日本の対応を期待したい」
と訴えた。

 ヒトラーはユダヤ人を毒ガス室に押し込んで600万人を虐殺した
が、スターリンは飢え・飢饉でもって何百万人ものウクライナ人を虐
殺したのである。穀倉地帯での飢饉とはどういうものであったのか、
知る由もないが人類の愚かさは犬畜生に劣ることを物語っている。

 こうした過去が独立(91年)へと突き進んだ背景だったのであろ
う。

 ユーシェンコ率いるウクライナが、モスクワから離脱してNATO
加盟に向けて走っているが、ロシアは止めようと必死である。

 しかし、ウクライナはエネルギーを隣人であるロシアに依存してい
る。ロシアはウクライナに敷設されているパイプラインを利用してい
るという関係にある。ホルドモールを政治的に利用できるが、それよ
りも人道的犯罪・国際法違反事件を正当に認知させることのほうが重
要であろう。過去の事件を政治的に利用することは問題を複雑にする
だけである。

 国連の調査が開始されねばならないだろう。新生ロシアも独自に調
査し、反省と謝罪をすべきだろう。二度と繰り返さないために。人間
を飢えさせることで、大量虐殺をする非人道的犯罪を許さないルール
を確立しなければなるまい。

 人道問題は政治と切り離し、すみやかな結論を見出す必要がある。
日本の役割だ。2008年3月30日記
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    未知谷 HP http://www.michitani.com/index.html
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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 翻訳が届いておりません。届き次第お届けいたします。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 今日は「四月馬鹿」である。筆者などは年中馬鹿なのだが。
 英語でApril Fool's Day。中国語では万愚節、そしてフランス語で
はポワソン・ダヴリル(Poisson d'avril, 四月の魚)というらしい。
 ただイスラムではコーランの教えに著しく反しているため、強く禁止
されているとか。

 古来、日本ではこの日は「日ごろの不義理を詫びる日」だったという。
詫びに回っているうちに、筆者などは一日が過ぎてしまうような気がす
るのだが。

 メディアの世界でも、この日は罪つくりな「嘘記事」が横行する。2
005年には、日本の新聞社が掲載した「スマトラ沖地震の余波で沖縄
南端に新島が出現」という記事を、韓国の新聞社がニュースとして取り
上げた例などがあった。

 さて読者諸兄妹、ご油断召されるな。
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発行     2008年4月1日   No.331
編集・発行  609studio   Michio Katayama
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