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タイトル:609studio No.318◆コラム・右往左往「はじめに」  2007/12/04


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【609 Studio 】メール・マガジン 2007/12/4  No.318
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              お断り      

 現代時評を書かれていた論説委員、Ken 氏は現在病気療養中です。
当分の間、現代時評は休載いたします。
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───────────◆◆◆INDEX◆◆◆───────────

◆現代時評:「執筆者病気のため当分の間休載」

◆コラム・右往左往「はじめに」:M Katayama

◆本澤二郎の上海紀行(中):政治評論家 本澤二郎 

◆はちみつ色のニングル「ハニィ」の冒険日記       wabi

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:未着です。

◆編集長から

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◆現代時評:「執筆者病気のため当分の間休載いたします」
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  Ken氏は病気療養中ですので、残念ながら当分の間、休載いたします。
 編集部でもKen氏の早期回復を祈っています。
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◆コラム・右往左往「はじめに」:M Katayama
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 Ken 氏の「現代時評」の代わりにピンチヒッターでコラムを書こうと
して、さてコラムの名称は「現代時評」とすべきか否かで一寸だけ思案
しましたが、いやいや「現代時評」はKen 氏がカムバックされたとき、
汚すことになりかねないと思い、はてさてと思案の末、コラム子の状況
そのまんまの「右往左往」としました。

 次週からコラム・右往左往をよろしくお願いいたします。
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◆本澤二郎の上海紀行(中):政治評論家 本澤二郎 
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1、朱家角観光
 筆者から日本事情を学んできた劉君が、上海近郊の水郷地帯の一つの
観光地を案内してくれた。11月16日である。前日、上海外語大学で
出会った院生の楊君、梁君の二人も同行してくれた。3人とも日本語を
話すが、これからの研修いかんで真価が発揮されることになろう。彼ら
にとって日本人との交流が大いに勉強になるわけだから、こんな機会は
双方にとって有益なのだ。


 車は上海の西方に向けて走った。あいにくの雨模様だが、かれこれ1
時間を過ぎたろうか。目の前に突然、白い壁の木造2階建て住宅と傍ら
を流れている水路が現れた。9月に「中国経済新聞」の徐社長が、日本
のマスコミ関係者を案内した周荘にとてもよく似ている。明や清代の豊
かな農村を、そっくりと今に留めているのである。どんな時代にも裕福
な人間がいたことを教えている。
 豊かさが人間の質を高めるというのも必然なのだ。ここは米つくりの
産地だ。水路と湖水が米の運搬を容易にする。交易に有利だ。人間は衣
食足りてこそ学問を高め、芸を磨くのだろう。そこに人物が排出するこ
とになる。中国の江南と呼ばれる豊かな農村から、有能な政治家や官僚
、はては文化人が陸続と輩出することになる。周恩来や江沢民、それに
蒋介石の生まれもこの辺りである。蒋の実家は塩商人として豪商の地位
を確保したことが知られている。豪商・豪農が蒋の支援者である。政治
の方向はスポンサーの正体で決まる。
 周荘は豪商の家々が、こちらは豪農の邸宅が並ぶ。前者は水路、後者
は水陸両用に地形状の変化を見ることが出来る。
 地震の少ないこの地方だから、住宅の寿命を長引かせるのだろう。木
造2階建て住宅が、21世紀になってもどっしりと軒を連ねていられる
理由ではないのか。白い壁と屋根瓦に特徴が見られる。近代以前までは
、日本など世界に文化を発信し続けてきた巨人の面影を見るようで、古
い時代を今に忍ばせてくれる。
 数年前、友人が「中国の思想は近代のヨーロッパの思想に影響を与え
た」と教えてくれたのだが、4000年とも5000年とも、あるいは
もっともっと古くから繁栄したであろう中国文明に触れれば、故なしと
しないだろう。

2、上海蟹

 いい時期の訪問となったらしい。昼食を、この歴史を伝える白壁の2
階屋の食堂でとった。なんと蟹が一匹皿に乗った。4人はこれにむしゃ
ぶりついた。おいしい。それから会話が途絶えた。日本で食べる蟹に比
べて小ぶりだが、味はなかなかのものである。食べ方がむずかしいが、
人はあきらめずに執念深く平らげていく。
 終わったところで、劉君に食堂の主人に確かめてもらった。「これぞ
上海蟹だろう」と確認してみたかったのだ。意外や「太この蟹」と明言
したのである。
 前日の夜、筆者は上海外語大学の武心波教授らと交流したあと、大学
近くの食堂に入った。店の壁に「陽澄この蟹」と書いた看板を見つけた
。思い出したのだ。この蟹を上海蟹と呼んで、他の蟹と区別しているの
である。一匹100元はする。庶民は高嶺の花である。
 食堂の主人は正直者だった。「うちのは上海蟹ではありませんよ」と
いったようなものである。正直者は馬鹿をみる、というが、実はそうで
はない。筆者の舌は十分、満足していた。太湖だろうが、陽澄湖だろう
が、同じ蟹である。味も同じだろうと思えば、どうでもいいことだ。
 同済大学のシンポジウムの前夜と終了後の大学迎賓館内での食事会に
も蟹が登場して、日本人の参加者を喜ばせてくれた。確認はしなかった
が、恐らく太この蟹に違いなかった。もし、本物であれば聞かなくても
主催者は説明に及んだであろうから。とはいえ、大いに満足した。
 上海交通大学の食堂でも王教授が蟹を注文してくれた。彼はそのとき
「南京路の王宝和ホテルでは、本物の蟹を食べさせてくれる」と教えて
くれた。随分と高いに違いない。
 彼はふいにカンボジアのシアヌーク殿下の名前を口に出した。「殿下
の蟹は食べ終わると、元の蟹の姿になっている。一番上手な食べ方であ
る」と。亡命中のシアヌークは秋から冬になると、毎日蟹を食べていた
のであろう。うまくなるわけである。日本の上海特派員やビジネスマン
も同様かもしれない。
 もっとも、上海の近郊には湖水がいたるところにある。あちらこちら
で採れるらしい。それが市民の食卓に並ぶ。わざわざ高価な蟹に手を出
すこともないのだ。
 シンポジウムで東洋大学の梁教授と名詞交換した。観光学の大家であ
る。さっそく上海蟹の講義を申し込んだ。答えを以下に紹介する。
 「陽澄とは名前の通り、澄んでいる水というだけでなく、湖底が岩盤
になっている。そのため蟹の足が強いのも特徴がある。汚染と無縁の、
いい環境のもとでの蟹だから高い。数も少ない。産卵期の雌がおいしい
し、値段も余計に高くなる」
 現在は知らないが、バブル経済の日本に上海蟹の全てが輸入されてい
たという。バブル紳士のおなかに入ったのだ。今は北京や上海のバブル
紳士が食べあさっているのかもしれない。

3、魯迅公園
 
 シンポジウムは日曜日(11月18日)の午前に終了した。午後の時
間が空いている。さて、どうしたものか。近くに魯迅公園があることが
気になっていた。上海外語大学の楊君が案内してくれるという。すると
、シンポジウムに参加していた同済大学の院生4人も手を上げてくれた。
 急に外は冷え込んできていたが、元気な学生の前でひるむようなこと
は避けなければならなかった。5人とともに大学前のバス停に向かった
。歩きながら気付いて感動してしまった。片側2車線の車道に4メート
ルもの幅のある自転車道がある。さらに歩行者専用の道路もある。筆者
の住む都内の近くの歩道には、自転車が割り込んで歩行者が事故を恐れ
ている。しかし、ここは安全なのだ。近くでは地下鉄工事が大掛かりに
行われていた。辺りの同済大学の構内でも、新たな複数の高層ビルを建
築する槌音がしていた。一体、この開発資金はどこから出るのか。考え
ると、頭がくらくらするではないか。
 バス代は2元である。安い。ただし、運転はかなり乱暴である、手す
りに掴まっていないと放り出されてしまう。年寄りは椅子に座らないと
、ちょっと安心できない。それにしてもバスを利用すると、まことに便
利である。渋滞も苦にならない。北京のバスを利用したことがあるが、
上海のバスは今回が初めてのことだ。学生と友達になったお陰である。
 魯迅公園は予想した以上に広かった。プラタナスの大木が茂っている
のがいい。その間を利用して市民が音楽や踊りに興じていた。公園内で
いくつもの市民の輪ができており、その中にはカラオケを持ち込んで、
好きな者には相手かまわず歌わせている男性がいた。民族服を羽織、歌
と踊りで市民に対して庶民芸術をひけらかす中年の男女もいた。概して
若者は少ない。
 ともかく公園は広い、広い。市民の輪に紛れ込んでいたら、記念館に
入っている時間がなくなってしまった。
 この間、学生たちはさまざまな質問を浴びせてきた。日本人との対話
は初めてという学生もいた。そのはずで院生は地方からの出身者が多い
。地元の学生は学部を卒業すると就職してしまうが、地方の優秀な学生
は上海にあこがれて院生になるのだと、誰かが教えてくれた。
 この場にはいなかったが、重慶から上海外語大学の院生の梁君は、両
親が学校の教師をしている。重慶といえば、日本人にとって恐ろしい過
去を有している大都市である。だが、不思議なことに侵略戦争について
の被害を「両親から聞いたことがない」といった。その上で「祖父は、
国民党が若者を軍隊に入れようとしていたことを話してくれた。誰も軍
人になりたくないから逃亡したものの、祖父の兄は捕まってしまった」
とも。
 「日本軍による重慶爆撃は、テレビで見たほか新聞で読んだことがあ
る。戦争は本当に残酷だと思う。でも歴史教科書には詳しく書かれてい
ない」とも。中国の若者も歴史から遠ざかっている。だからテレビは今
も、過去を伝える映画を流して歴史の重要性を暗示している。梁君は少
数民族の土家族という。色白の小柄な学生だった。「全国に数万人しか
いない」とも教えてくれた。いつの日か行ってみたい場所である。
 無錫から同済大学の院生になった女子学生は、ふとしたことから株の
バブルを説明していると「私もやっている。奨学金を投資、今では倍に
なっている」と軽く応じてきた。この時は仰天してしまった。残念なが
ら彼女の名前を覚えていない。

4、浦江の夜景

 魯迅公園は夕刻になると急に冷え込んできた。風邪を引いたら大変で
ある。宿では友人が待っているはずだ。急いで取って返した。中日関係
史学会の秘書長が「夜景を見に行こう」というありがたい計画を提案し
てきた。しかも、外で眺めるのではない。ホテルからだという。幸い、
日曜日のせいかタクシーは渋滞もなく浦江にかかる大橋を渡ると、すぐ
さま浦東地区に入った。
 タクシーは大きなホテルの前で止まった。東方濱江大酒店だ。別名「
上海国際会議中心」である。「9月のAPECの首脳会議がここで行わ
れた」と説明を受けると、なるほど日本の一流ホテルに劣らない豪華で
落ち着いた高級ホテルである。「中国首脳のほとんどが宿泊した」とも
いう。警備も心配ないのだろう。
 友人はここの総経理と知り合いなのだ。お茶を飲む前にホテルの部屋
を案内してもらった。部屋数260、一泊2000元だ。広い窓の下に
浦江が流れ、対岸が旧市街のバンドである。時間がくると、一斉に小さ
な色付きの電球が点滅する。12月になると、日本でも流行しているが
、ここは一年中輝いている。浦江に浮かぶ遊覧船にも点滅し、光が織り
成す色彩豊かな夜景を見せびらかしてくれる。まことバンドの夜景に目
もくらんでしまいそうな部屋には、パソコンなど何でも揃っている。金
融街の大物たちは、事務所にも行かずにここから指令を出すのだろうか
。1930年代の魔都・大上海を彷彿とさせてくれているようなのだ。
 贅を尽くした喫茶ホールで夜景を堪能しながら、青島ビールで喉をう
るおした。対岸の和平賓館は改修工事の真っ最中だ。上海大廈(ブロー
ドウエイマンション)は戦後右翼の親玉で、悪事の限りを尽くした児玉
誉士夫が活躍した場所のはずだ。略奪した財宝を自民党の源流である鳩
山自由党に流し込んで、第一党の地位をつかんだ。一部の専門家に知ら
れている日本政治の恥部である。
 帰途、ホテル近くの地下鉄で川を渡り、南京東路に出た。地下鉄の電
車はドイツ製のはずだ。日中友好を貫いていれば、日本製であったろう
に。ちなみに上海のタクシーもドイツの合弁車だ。
 9月に南京西路を歩いたが、東路は久しぶりだ。なんと北京の王府井
のような歩行者天国に改修されていた。賑やかだ。まるで不夜城の趣き
を呈していた。東京の銀座の比ではない。何もかもが東京を圧倒してい
るようである。昇る竜と沈む太陽の関係である。中国バブルの行方が心
配されるが、万一軟着陸に成功すれば東方の巨人は、欧米を席巻するよ
うになろうか。日中友好が確保されているとなると、さらに勢いづくだ
ろう。ワシントンが想像したくないアジアの勃興である。
 西路に着いたところでタクシーを探した。9月に同じく夜間タクシー
を捉まえるのに30分ほどかかった。今回も捉まらない。やむなく途中
までバスに乗った。魯迅公園近くだ。そこからタクシーを捉まえて同済
大学迎賓館にたどり着いた。

5、260元の携帯

 日本もそうだが、中国で携帯電話を持っていない市民はいない。誰で
も保有している。日本に比べて格安料金だから持っていると便利だ。東
京からの電話にも応じられる。院生に手伝ってもらい、購入することに
した。
 上海外語大学の学生寮の近くの店に入った。別にいいものはいらない
。年に数回、利用するだけである。新品でなくていい。中古の携帯があ
るという。中古でも声がわかれば十分である。
 という次第で、結局のところ多少値引きしてもらい260元で中古品
を買った。韓国の三星(サムソン)製である。かなり使い古した代物で
あることは、手にとってみてすぐわかった。しかし、まさか不良品であ
るとは思ってもみなかった。
 一晩充電した。これで2日程度は持つだろうと思い、さっそく使って
みた。するとどうだろう、話しているうちに電池が切れて声が聞こえな
くなってしまった。充電不足かもしれない、と判断して再び充電した。
何度も繰り返した。それでも無駄だった。充電できない不良品なのだっ
た。大事な場面で全く役に立たなかった。人は安物買いの銭失いと笑い
飛ばすだろう。
 そうかもしれない。新品を買っていれば、こんな悲劇的事態は避けら
れたはずであろう。だが、たとえ安物買いだとしても、不良品を堂々と
外国人に売りさばく上海商人の気質が気に食わない。くだんの院生が事
情を話しても悪びれる様子がないという。
 ただし、部屋から何度か利用できた。充電したまま電話するのである
。とはいえ、このわずかな貴重な時間帯にこの三星安物携帯は、全く役
割を果たそうとしなかった。「この製品は役に立たない」と教えてくれ
れば新品を買ったであろうにと、帰国した今も悔やまれるのである。他
人を騙すのはよくない。
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◆はちみつ色のニングル「ハニィ」の冒険日記      wabi
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2007年11月30日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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 通信事情のトラブルでまだ届いておりません。
 到着次第お届けします。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 12月に入りました。早いですねー。なんていっている場合か!?
 どこまで深い守屋防衛省問題。沖縄の基地移転に絡んでの利権も浮上
か。ほんと、いやな世の中ですね。
  そういえば、南京虐殺からこの13日で70年・・・。さまざまな
行事が予定されているようです。南京では。

△大阪の大田知事が次期選挙に出馬断念。当然なのか、おやおや・・。
金と政治は永遠のテーマ。

△与党「統一ロシア」が約63%を得票し、地滑り的勝利の報。大統
領の首挿げ替え可能!!プーチンのロシア、ますます独裁的に?大方の
予想通りというのが情けない。
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発行     2007年11月27日   No.317
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
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website    http://www.609studio.com
投稿      http://www3.ezbbs.net/06/609studio/
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