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タイトル:609studioメールマガジン No.317  2007/11/27


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【609 Studio 】メール・マガジン 2007/11/27   No.317
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【609 Studio】 メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプト
に論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、
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他、寄稿記事など話題満載! 
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◆現代時評:「執筆者病気のためとうぶん休載」

◆本澤二郎の上海紀行(上):政治評論家 本澤二郎 

◆はちみつ色のニングル「ハニィ」の冒険日記       wabi

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2007年11月16日号

◆編集長から

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◆現代時評:「執筆者病気のためとうぶん休載」

   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
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  Ken氏は病気療養中ですので、残念ながら当分の間、休載いたします。
 編集部でもKen氏の早期回復をお祈りします。
 次週から「片山通夫のコラム」をお届けします。
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◆本澤二郎の上海紀行(上):政治評論家 本澤二郎 
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同済大学アジア太平洋研究センター学術討論会
          
1、戦略互恵関係に日中の学者が勢ぞろい

 蔡建国率いる同済大学のシンポジウム(11月17,18日)に参
加したのは、昨年に続いて2回目になる。言論人は筆者のほかに中国
語の堪能な川村東京新聞出版局長、学者は谷口岩手大学学長、依田早
大名誉教授、梁東洋大教授ら16人、それに国際交流基金の支援もあ
ってか隈丸上海総領事、中国側は旧知の徐中日関係史学会秘書長、そ
れに王上海交通大学教授、武上海外語大学教授、李上海国際問題研究
所主任、包復旦大学副教授、蘇上海師範大学教授、徐華東師範大学教
授ら上海の日本研究者の全てが勢ぞろい、大学院生らの聴講を含める
と100人規模の格調の高いシンポジウムとなった。


 「中日戦略互恵関係の構築と民間相互理解」が今回のテーマである
が、この同済大学はドイツないしはドイツ人が設立した教育機関で、
かつては中国随一の建築関係の大学として勇名を馳せていた。いまも
ドイツ研究では、他の研究機関を寄せ付けない実力を保持している。
中独専門の学院(学部の上部機関)まである。大学の迎賓館食堂では
、ドイツ人学者がいつも見られる。それが最近になって総合大学とし
て衣替えした。理工系だけでなく、社会科学や人文科学など全ての分
野を備えており、学生だけでも5万人を数える。

 中国の大学の構内の広さといったら、それはもう日本人の目には仰
天してしまうほどである。間違いなく、この国の教育にかける情熱に
圧倒されるだろう。問題は教育費の高騰で、貧しい若者が排除されて
いることである。これを解決すれば、それこそ世界に冠たるものだろ
う。日本人教師が衝撃を受けるのは、なんといっても学生の教育態度
である。日本で6年間、大学の教壇にたった筆者でも、それを理解す
ることができる。「21世紀は中国の世紀」という予測は、教育分野
からも指摘できよう。

 シンポジウムに参加した顔ぶれについて触れると、政治家ならとも
かく学者の世界は全く知らない筆者である。谷口が元外交官で、「東
アジア経済共同体」(岩波文庫)の著者であることを、現地で名刺交
換してしばらくしてから知る有様だった。プリンセスの父親とはケン
ブリッジで同窓であったことも本人の口から聞かされたものだから、
会食中に貴重な昔話を聞くことが出来た。依田は、その道では井上清
に次ぐような歴史学者として知られており、教え子たちが今や中国の
各大学で枢要な地位に就いているのだということを、これまた初めて
教えられた。

 ところで、これまで上海とはあまり縁がなかったが、北京に行くの
と比較すると近いのがいい。それでも今回、20数万円をかけて往復
した仲間もいたようだが、筆者は例によって自己負担の格安航空券で
ある。米国のNW機である。B747の大型機、いうところのジャン
ボを利用したのだが、なんと一席も空きがなかった。原因は旅行会社
の「HIS」が募集した「上海2泊3日2万円」の観光客が殺到して
いたからでもある。

 関西や九州からだとまことに近い。最近飛び始めた羽田も便利だが
、航空券が高いので庶民は成田を利用するしかない。

2、日中友好は普遍・不変の一大原則

 筆者の中国訪問は、今回で84回目になる。参加した横山北九州市
立大教授に「飛行機代だけでも随分、中国に貢献しましたね」とから
かわれてしまったが、最近の格安機はほとんどが米国機だからそうと
ばかりはいえない。

 なぜ中国なのか。72年の日中国交回復するときに確立した原則で
あるからなのだが、それはアジアの平和と安定に不可欠だからである
。時代が変わろうが、この両国の友好は不変・普遍の原則である。地
球に一大変動が起こらない限り、両国が永遠の隣国であることに変化
はない。日中間にいかなる事態・状況が起きようとも、この原則を放
棄してはならない。政治体制の差異など問題ではない。文字通り友人
同士の関係なのだ。これはアジアと世界に対する責任であることを、
両国政府と人民は認識する必要があろう。

 筆者は、この当たり前の原則を平和・軍縮派の宇都宮徳馬から学ん
だ。72年からぶれることはない。卑近な例だが、筆者は小泉首相が
靖国参拝を強行したことに対して、友人ゆえに警鐘を鳴らし続けたも
のである。言論人として言論を通して注意を喚起した。「純ちゃん、
間違っていませんか」(データハウス)を執筆・出版した。中国でも
北京の学苑出版社が翻訳した。

 筆者と小泉の関係は、政治記者と国会議員であるが、それこそ70
年代からだから随分と古い。総理大臣になったときは喜んだ一人であ
る。だが、それでも友人として靖国参拝を容認することは出来なかっ
た。アジアの平和と安定を損なうからである。現に、小泉参拝によっ
て日中の首脳会談はなくなり、双方のマスコミも感情的に反発した。
ために、両国民の間に冷たい隙間風が吹いた。政治家として両国民を
裏切る大失態だ。

 かくして友人の過ちを黙視できなかった。成果を期待できなかった
ものの、しかし、友人とはこうでなければならないという見本を示す
ことが出来た。いつの日か、彼が目を覚ましてくれることを願ってい
る。

 ともあれ靖国参拝は、曲がりなりにも72年から継続してきたアジ
アの平穏な関係に亀裂を入れてしまった。不安定なアジアを韓国やA
SEAN諸国は心配した。そのあとの安倍内閣は参拝を止めることで
、一応の修復に成功したが、他方で価値観外交なる中国封じ込め政策
を強行した。安倍こそが「戦後体制の脱却」というおぞましい方針を
打ち出して、教育基本法を改悪、次いで平和憲法を破壊するための国
民投票法を強行した、戦後もっとも危険な政府だった。

 シンポジウムで谷口は「なぜ中国は価値観外交に対して沈黙をする
のか」と苦言を呈して討論会を盛り上げた。日本におけるリベラルな
外交官の本領を、この大事な場面で発揮してくれた。いまの日中の関
係は、不幸にして友人同士という当たり前の認識が欠けているのだろ
うか。お互いが裸をさらけ出して、率直にぶつかり合える態度が不足
しているのである。ここが危ういのである。友好の大原則に戻ること
が、戦略的互恵の本質と捉えるべきだろう。

3、平和憲法が友好の証

 日本国憲法は戦争を放棄している。軍備の保持も否定しているもの
の、これは国際情勢を口実に破られてはいる。しかし、それでもイラ
ク派兵の自衛隊は一発の弾も発射しなかったし、できなかった。自衛
隊は戦後、一人の外国人の命を銃で奪ってはいない。平和憲法は、侵
略戦争を断じて許さない。たとえ、どんな右翼政権が誕生しても日本
が侵略されない限り、自衛隊が発砲することはない。9条が存在する
からである。

 二度と戦争はしない。出来ない憲法なのである。これこそが人類の
理想を体現した憲法である。この憲法が存在する限り、自衛隊が海外
で戦闘することはできない、まぎれもないすごい憲法なのだ。過去の
反省とアジア諸国民への謝罪から明文化したものである。

 この憲法が存在する限り、二度と隣国と戦争をしないし、第一出来
ないのである。日本国憲法こそが、いうなればアジアの安定と平和を
約束しているのだ。したがって平和憲法が、日本の中国に対する友好
の唯一の証なのである。このことについての中国側の研究と認識は、
まだ不足しているというのが筆者の印象である。

 しかしながら財閥と右翼・国家主義が、この立派な憲法を破壊しよ
うと必死なのは、今日の日本の経済衰退と関係しているということに
留意する必要があろう。金持ちは喧嘩をしない。金持ちから転落する
国家は、容易に喧嘩しようとする。日本の国と地方合わせると、その
借金は1000兆円を軽く超える。これがどういうことなのか、これ
の正確な認識が中国に欠けていると、あえて指摘しておきたい。日本
では、政治家・官僚のみならずマスコミを含めて蓋をかけて国民に知
らせまいとしている。論語にいう「民はよらしむべし、知らしむべか
らず」を地で行っている。要注意である。

 だからこそ平和憲法の存在にアジアのみならず世界は、その意味す
る政治的役割に注目してもらいたい。いずれは、この憲法原則が各国
で共有された時こそ戦争のない地球が現出することになるのである。

4、福田内閣の外交体質

 筆者は、シンポジウムにおいて福田外交についての所見を述べた。
 特徴の一つは派閥人脈による制約というか、影響についてである。
福田の実父・赳夫はA級戦犯容疑者の岸信介の子分であったがために
、戦前の国家主義の影響を受けてきている。筆者が命名した天皇制国
家主義だ。岸政治の特徴は、日米同盟を利用した反共主義であり、そ
れゆえの台湾派として定評がある。福田政治にもその色彩は強く、日
中国交回復の場面で強力に反発したことは、筆者はこの目で確かめて
きた。だが、政権を担当すると田中―大平の友好派の強い圧力に妥協
して平和友好条約を結んだ。2008年はその30周年に相当する。
来年早々の訪中が息子の悲願であろう。

 福田康夫政権の背後には、後見人としての森喜朗という台湾派が控
えていることも、福田外交を制約している。他方で、彼は官房長官時
代に外交問題については、かねてから信頼を寄せていた宮澤喜一に師
事した。宮澤は筆者がよく知る政治家の一人であるが、彼は戦後の経
済復興を実現した保守本流の継承者として知られ、その特徴は軍国主
義を否定し、経済を重視する。したがって日米関係のみならず、アジ
アとの関係も重視する立場である。いたずらに反共主義に走らない、
いわばリベラルを貫いている

 福田がアジア重視であることは、実父の全方位外交に加えて、保守
本流の宮澤政治を接合しているからである。彼の最大の関心事は、北
朝鮮との国交回復に尽きる。難点をあえて指摘すると、それはブッシ
ュがそうであるように石油業界とのからみである。戦争が同業界の利
益を莫大なものにさせている、という事実を指摘しておきたい。
当面は、しかしインド洋での自衛隊による給油活動を実施するための
法案審議で政局は混迷化している。米国の圧力と野党の板ばさみで、
解散・総選挙も視野にいれながらの政局運営で四苦八苦している。外
交どころではない。

 アジアの視点で評価できるのは、小泉や安倍と異なり、戦前を正当
化する靖国参拝はない。歴史認識による問題も少なくなろう。小泉―
安倍の外交から離脱である。

 また、中国が心配する台湾問題に政府が表向きのめりこむこともな
いはずだが、ただし、後見役の森元首相は健在だし、民主党の小沢代
表らも関係が深い。水面下の動きは注意が必要だろう。近々、外務省
人事でアジア軽視の事務次官を更迭することになろう。

<福田―小沢会談で浮上した大連立>

 激突関係にあった福田と小沢が2007年11月30日、突如会談
を行い、自民と民主の大連立が浮上して、深刻な事態を招来させたが
、これをどう理解すべきなのか。アジアと隣国との関係にも相応の衝
撃を与えることになることに、思いを致すべきだろう。以下に核心を
列挙してみたい。

1、仕掛け人は中曽根と読売新聞会長と報じられている。
2、狙いは平和憲法をぶち壊す体制つくりにあるが、同時に当面は自
民・民主にからむ軍事大疑獄事件に蓋をすることにある、と筆者は分
析する。
3、本当の仕掛け人は、実は自衛隊を引き続き活用したいワシントン
の意向を受けたCIAではないか。
4、一説には、湾岸戦争時、小沢は海部内閣の自民党幹事長として日
本から135億ドルを拠出したとされる。野中広務によると、使途が
判明している金額は30億ドルに満たない。100億ドル、およそ1
兆円の使途が不明となっていると指摘している。ワシントンがこれの
秘密情報を開示すると、いつでも第二のロッキード事件にできるとい
う。それまでの小沢は「党首会談をしない」と公言していたが、軍事
疑惑で前防衛事務次官が国会で証人喚問を受けると、即座に福田との
密談に応じて、大連立に合意した。幸い、民主党役員全てが反対して
一度は辞任の会見まで行っている。
5、こうしてみると、選挙後に再び大連立が浮上、政界再編へと突き
進む可能性が強い。そうなると、いよいよ改憲に必要な3分の2の国
会議員の結集が可能となり、アジア諸国に深刻かつ重大な影響を与え
ることになる。戦争のできる国家改造である。アジアの平和と安定を
ぶち壊す危険性を有することになる。
6、他方、護憲の共産、社民の両党が連携・合体へと向かい、自民と
民主に対抗する第3極を形成するのか否か。これの行方もアジアの世
論の動向が鍵を握ることになるだろう。

 以上が同済大学アジア太平洋研究センター主催にシンポジウム関連
の報告である。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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 日本語訳は届いておりません。届き次第掲載いたします。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 2000年11月21日発行の【609studio メールマガジン】は
<創刊号>を発行しました。以来毎週火曜日に発行し続けました。
 今週号で317号となり、創刊時よりKen 氏には現代時評を連載
していただきましたが、同氏は病気となられ、現在療養中です。

 残念ながら、今週から当分の間、休載せていただきます。氏の1
日も早い回復と連載再開を願っております。

創刊号 
http://blog.mag2.com/m/log/0000052236/30663978.html?page=21

△額賀財務相の宴席同席否定は真実か?守屋前事務次官の証言が正
しいのか?狐と狸の化かしあいなのか。国民はいい迷惑。

△額賀氏の口利き「あった」と強調・旧仙台防衛施設局長が意見。
証拠がないうちは、財務相は否定するわな。
 「記憶にない」と。

△もうこの辺で決着を。覚悟を決めてもらいたいものだ。いずれに
せよ。いや、税金の無駄使いと天下りですよ!
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発行     2007年11月27日   No.317
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
              MailuX配信システム        ID:MM3E1B97842E020
e-mail        office@609studio.com
website    http://www.609studio.com
投稿      http://www3.ezbbs.net/06/609studio/
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