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タイトル:609studio No.303◆現代時評: [従軍慰安婦問題]  2007/07/03


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【609 Studio 】メール・マガジン 2007/7/3 No.303
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【609 Studio】 メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプト
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◆現代時評:[従軍慰安婦問題]             ken

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2007年6月29日号

  6月1日号、8日号、15日号の各号はHPでお読みください。

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◆編集長から

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◆現代時評: [従軍慰安婦問題]            ken 
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
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◆◆ 読売オンライン 2007.6.28 いわゆる従軍慰安婦をめ
ぐる対日決議案が米下院外交委員会で採択された。全くの事実誤認に基
づく決議である。  日本政府は、将来に禍根を残さないよう、米側の
誤解をときほぐし、当面、本会議での採択阻止に努めなければならない
。  決議案は日本政府に対し、「日本の軍隊が若い女性を強制的に性
的奴隷化」したことへの歴史的責任を認め、謝罪せよと言う。「慰安婦
制度は20世紀最大の人身売買事案の一つ」と表現している。  事実
をきちんと確かめることもせず、低水準のレトリックに終始した決議案
だ。米議会人の見識を疑わせる。

◆◆ CNNロンドン 2007.6.29  英国で「売春婦(夫)=p
rostitute」という言葉を、法律から追放しようとの動きが出ている。
この言葉がもつ悪いイメージがあまりに大きいというのが理由。 (中略
) 『売春婦(夫)』というレッテルがもつ不名誉を取り除きたかった
」と法務省。「この言葉は1824年から使われていて、やや時代遅れ。
それに、人にレッテルを張ることはよいことではない」としている。

■■ 日本の新聞の特徴はどれもこれも同じような論調であり、ほとん
ど差異が無いことは我々自身も認めており、それが特異な現象であるこ
とは全世界のマスコミもじゅうぶん承知している。 がしかし、今回の
米下院における、日本の従軍慰安婦問題に対する非難決議についての、
わが国のマスコミのあたかも共同歩調を採ったような社説は、そのなか
でも特筆に価する論調といわざるを得ない。 その内容を、以下少々渉
猟してみよう。

■■ たぶんに左翼的と評され、「赤カボチャ」と揶揄されているアサ
ヒの論説はこうだ。「(米下院の)決議案に疑問がないわけではない。
歴代首相が元慰安婦におわびの手紙を出してきたことが触れられていな
いし、軍の関与を認めて政府として謝罪した河野談話の位置づけも不十
分だ。しかし、決議案にあるように、河野談話を批判したり、教科書の
記述を改めたりする動きがあったのは事実だ。慰安婦の残酷さを非難す
る決議案のメッセージは、真摯(しんし)に受け止める必要がある。」

■■ それに対して、たぶんにニッチであり「右翼的」と評されている
サンケイの論説はこうなっている。「慰安婦問題をめぐり、日本の官憲
が奴隷狩りのように強制連行したという説が一部で流布されたこともあ
るが、日本政府が2年がかりで集めた約230点の資料の中には、その
ような事実を示す証拠は1点もなかった。慰安婦は主として民間の業者
によって集められ、軍は性病予防対策などで関与していたのである。 
(米)決議案は来月にも下院本会議で採決される見通しだ。議会の決議
に法的拘束力はないが、国際社会では、誤った事実に対して何も反論し
ないことは、それを認めたことになりかねない。日本の外務当局はこれ
までに集めた公式文書などを有効に使って誤りを正すべきである。」

■■ 私見では、わが国をとりまく「従軍慰安婦」の件は、米空軍によ
る「広島長崎原爆投下」もしくは「多くの無辜の都市への焼夷弾爆撃」
(これらは紛れなくハーグ陸戦条約違反。)に酷似している。どちらも
人道上赦され得無い事実で、虚構でもない冷厳な戦時中の事実なのだ。

■■ それを「戦争を速く終結させるための便法であった」と、米国は
いまなおわが国に正式謝罪しているわけでないと同様、わが国も「従軍
慰安婦など、国としては関係してなかった」と、しらを切り通す訳には
いかぬ「正と誤」の間にある微妙な問題なのだ。

■■ もちろん広島長崎への原爆投下については「存在しなかった」と
ウソもつけぬから、米国はその必要不可欠だったことを力説するが、わ
が「従軍慰安婦」については「必要不可欠」の代わりに「軍や政府は強
制的に関与しなかった」と言い張るという方法を採用しているだけで、
その事実についてはどちらも否定しようがない、というところに問題の
複雑さが存在するのである。

■■ 「従軍慰安婦」という言葉こそ無かったにしろ、ボクらの世代の
人間にとっては、わが陸軍の行くところつねにそうした慰安施設が存在
したことは忘れられない。 もっともそのころのボクはまだ、いまでい
えば「少年兵、もしくは初年兵」であったから、じっさいにそうした場
所へ行ったわけではないが、いわゆる古年兵たちが休日毎に行っていた
事実だけは記憶している。 子供心(?)に「なぜ、そしてどういった
システムで、あの物資不足、旅行困難ななかでそのような施設が軍と行
動を共にしていたか」と、まことに不思議に思ったものである。

■■ だから、いま「従軍慰安婦」問題が紙面を賑わすたびに、「ああ
やっぱりああした施設には軍が関与していたのだな」との思いが残る。
いくら「軍や政府が関与していなかった」と主張しても、ボクとしては
、軍もしくは政府の関与を信じ無い訳にはいかない。 たとい積極的で
なかったにしろ、わが政府もしくは軍は、必ず何らかの方法で関与して
いただろう。

■■ もっとも、軍にも良心はあったろうから、表向きには隠蔽し、ご
く消極的に関与したことと察せられる。 いうなれば「指唆(しさ)も
しくは教唆(きょうさ)」みたいな立場だったと解していい。 わが刑
法に詐欺教唆罪(二四六条一項)というのが存在する。 ならば、わが
国が「絶対にそうした従軍慰安婦は存在しなかった」とは義理にも言っ
てはならず、いわば内心、教唆罪を覚悟すべきだろう。 

■■ 米軍が、戦争に無関係のわが地方都市をもほぼ総て焼き払ったの
に、「そうした地方都市にも軍需工場の分工場が存在したから」という
理由をつけているのと似たような「牽強付会」の理由付けが、いま「従
軍慰安婦は政府、軍として関与していなかった」と言わしめているのだ
から、安倍さんも、かっての河野さんも、この問題に対して歯切れが悪
いのは已むを得ない。

■■ もっとも識者の「その当時の日本の社会習慣として、そうした職
業に就き、または就かされる女性の存在は法的に認められていた」と言
うのは間違いではない。 

■■ 戦前ある年の、東北某県における若い女性の県外就職に関する正
式の記録が残っている。 「県下を去る年頃の女たち7000人の内、
芸妓405、娼妓850、女給948、酌婦1024、女工1427、
女中2432名」。 まさに当時農村の疲弊の象徴的数字であり、涙無
くては語れない。 この報告は市町村長、警察署長、職業紹介所長から
なる「農村婦女離村防止委員会」の年次正式報告だから、先ず間違いの
ない数字であったと考えていい。 そのうちの「娼妓」というのが、い
ま言われている「慰安婦」だったとは容易に想像がつく。

■■ 海外戦線に参加した旧日本軍人の話によれば、中国および南方戦
線におけるこうした「慰安婦」の過半数は半島出身の女性であったとの
ことだが、それは、おそらく戦時中旧日本領だった半島における農民た
ちが、わが内地の農民たちよりももっと貧乏であったという証拠になり
こそすれ、半島の女性が特に好んでそうした職業に就いたということは
想像できない。 まことに気の毒であった。

■■ そうした世間から蔑まれる性産業企業家というのに、普通の事業
を営む人々は殆ど関与しなかったはずだし、じじつ多くの場合、その働
き手である女性を集めるために、彼らがたぶんにアウトロー的な手段を
弄したことは想像に難くない。 彼らを相手にして、そうした施設を軍
とともに随時移動すべく手を貸した軍人たち(おそらく中・下級将校群
?)もまた、後味のわるい思いをしながら、非公式に共同謀議をしたと
考えられ、広義には同類、もしくは指嗾者と断定してもいい。

■■ また終戦後すぐの頃、米進駐軍が存在する各地に「OFF LIMIT」
と赤い看板が張られた怪しげな特殊地帯が多数存在した記憶は我々の記
憶にまだ残っている。 特殊慰安施設協会というのがその企画経営者の
団体ということになっているが、その実態は、敗戦後、日本帝国政府に
よって作られた進駐軍向けの風俗営業施設団体の通称であり、正式名称
は Recreation and Amusement Association(RAA)であった。
 日本政府が作ったとはいえ、実際は進駐軍専用であったところからす
れば、これもまた米軍の少なくとも教唆または合意のもとの施設であっ
た。ならば米進駐軍もまた共同謀議者としての責めを負うべきだろう。

■■ それらの総てを、「戦時中や、貧乏な昔はそれも已むを得ない不
幸な事実だった」として責任逃れをしようとする態度は、「原爆投下も
やむを得なかった」とする米国と同じに、軽々に容認するにはことが重
大過ぎる、とボクなどは思う。 いかなる事情のもとでも、いたいけな
い婦女の性を強制的に売買の対象にするなどは、未来永劫に禁止される
べきである。 

■■ それについては最近の報道によれば、英国で「売春婦(夫)=
prostitute」という言葉を、法律から追放しようとの動きが出ている
という。この言葉がもつ悪いイメージがあまりに大きいというのが理由
だが、まことに思いやりのある考え方で、感心の他は無い。

■■ 世に「生きるため強制された醜業婦」、つまりこの世の不幸せの
犠牲者である女性は多いが、その仕掛けを作った唾棄すべき「醜業夫」
とでも呼称すべき男どももまた多かったのだ。 われわれは被害者と加
害者の区別を過去に遡って、内心ではっきりと認識する必要がある。 

■■ と言って、今ごろになってそれを殊更に言い立て、騒ぎ立てる集
団というのは、それなりの特殊な事情が存在するであろうことも想像に
難くない。 それを考えると、説得性の少ない下手な言い訳をしたり、
自分たちだけに都合のいい部分だけを取り上げた反論を公表したりして
、相手をより興奮させるというのも如何なものか。

■■ そうしたばあい、米国というのは案外に沈着冷静、かつ賢明で、
例えば米国は、国自体として原爆投下などを正式に謝罪していないよう
だ。ただ黙って、年月の経つのを待っているらしい。それに対し、わが
国はすぐに謝罪し、反論し、ものごとをより悪い結果に至らしめている
ような気がする。

■■ その辺りは、わが国民が短慮、または国家としての外交技術が拙
劣ではないかと思える。 沈黙は金、雄弁は銀という諺がある。 私見
では、ときに雄弁は銀であるどころか、下策の石か木であるばあいが多
い。いくら挑発されても「沈黙」を守り、台風通過を待つという手が望
ましく、いまはまさにその手でいくべきときではなかろうか。 

■■ なぜなら、わが国の「慰安婦問題」に対するお詫びや反論は、い
ささか稚拙過ぎて効果に疑問がある。むしろ、いかなる恩讐・遺恨とい
えども、百年経てばほぼ消え去るのが世の常であることを知るべきだ。
 「原爆投下」はいまもなお怪しからぬと思っているが、「蒙古襲来」
は歴史上の一挿話に過ぎない。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] 2007年6月29日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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張・リュボミル議員サハリン訪問

 先週、下院議員張・リュボミル氏が非公式的にサハリンを訪問したこ
とがわかった。非公式的ではあったが、滞在中にイ・マラホフサハリン
州知事を始め、韓人社会団体代表らと接見するほか、韓人センターを訪
ね、そこで民族の文化を習っている青年たちと会話を交わすなど同胞社
会の現況把握に多くの時間を割当てた。特に26日、サハリン州知事と
の面談の際、サハリン韓人問題の完全な解決のために、韓国、日本、ロ
シア3国の国会議員フォーラムの開催を提案し、イ・マラホフ州知事も
これに同意したと伝えられる。

コルサコフ公園問題で葛藤

 数年前、コルサコフ市は「サハリン・エネルギー社」から公園再建資
金2千万ルーブルの支援を受けた。しかし、市政府と市民間の意見対立
で予算実行ができない状態である。先日、イ・マラホフ州知事が和解の
ために当地を訪ね、3者会談を行った後、知事は市民側の意見を受け入
れるように市政府に勧告した。

大学入試スタート

 間もなく、大学入試が始まる。受験生数は、大学5、500人、専門
学校4、000人、職業技術学校2、300人と予測している。

無制限にカニを

 今、サハリンはカニの季節。今年5月22日に制定された新しい漁労
規定により、以前の漁獲制限がなくなり、誰もが好きなだけカニを取る
ことができるようになった。カニの多く取れる地域はコルサコフ、ネベ
リスク、モルドヴィノフ湾。公式的には年間100トンのカニを一般人
が取っているが、非公式手には400トンと言われている。

今年、盛漁期予報

 サハリン水産海洋探査研究所によると、今年は例年より大量のマスが
上がって来る。クリルなど太平洋沿岸で16万トンのマスと2万700
トンの鮭が取れると予測されている。又、漁獲期も例年より少々早い7
月中旬から始まるとのこと。

都市のガス化計画

 先週行われたユジノサハリンスク市政府会議で、ユジノサハリンスク
市のガス化問題が取り上げられたことがわかった。市政府は既にアニワ
ガス産地のガスを利用してユジノサハリンスク市のガス化を決めており
、ガス供給会社との協定締結も済ませた状態。協定によると、「スペラ
社」は年間3千万m3のガスを供給することになっている。州中央都市
に限らず南から北へとガス化は拡大される予定であり、現在は中央都市
までのガスパイプ建設が進められている。

永住帰国者の里帰りと赤十字社への疑問

 先日、韓国慶尚北道コリョンにあるテチャン養老院へ永住帰国した1
世25人がサハリンへ里帰りした。永住帰国者らに同伴してシン・ウォ
シク院長と里帰りの予算5万ドルを支援した当地域社会福祉共同募金会
のバン・ソンス事務長、テグテレビ局の取材班など7人の代表が同胞社
会の現状把握のために島を訪れた。約1カ月間の予定で子供や孫のいる
サハリンに戻ってきたが、実はサハリンまでの渡航経費は赤十字社では
なく、地域の社会団体が後援した。どうして赤十字社が当施設には無関
心なのか疑問に思う。入国翌日の23日午後3時には、サハリン韓人文
化センターで老人たちに特別慰安公演も開かれた。

駐サハリン韓国領事館の開館記念式

 来る7月3日、ユジノサハリンスク市韓国領事館の公式開館式が行わ
れる。開館式には駐ロシア大使とウラジオストク総領事をはじめ、サハ
リン州や議会の代表ら、韓人社会団体代表らが招待され参加する。また
、開館を祝う多様なイベントが行われる予定。

広告

7月3日午後1時、「韓国凧揚げ大会」
7月4日午後7時、「特別慰安公演」
7月4日午前11時、「サハリン二重徴用被害者会」の慰霊碑除幕式。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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  札幌でこの前の日曜日に田中了という方にお会いした。氏はウイルタ
協会という会を主催されている。ウイルタとはサハリンに住む北方少数
民族のひとつの名称である。ウイルタは他の北方少数民族と同様、戦前
樺太庁によって皇民化が進められた。そしてそのうちの若者が帝国陸軍
の「特務機関員」として働かされた。厳寒のツンドラ地帯を行くスパイ
である。彼らは「狩猟民族としての特質」を利用されたわけである。

 そしてソ連の参戦。戦後、彼らは「スパイ」としてシベリアに抑留さ
れたという史実がある。氏は彼らの名誉回復に奔走していられる。

 氏へのインタビューは後日掲載する。
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発行     2007年7月3日   No.303
編集・発行  609studio   Michio Katayama
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