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タイトル:609studio No.302◆現代時評:[胡散臭いCO2排出権取引]  2007/06/26


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【609 Studio 】メール・マガジン 2007/6/26  No.302
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【609 Studio】 メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプト
に論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、
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他、寄稿記事など話題満載! 
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◆現代時評:[胡散臭いCO2排出権取引]    ken  

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2007年6月22日号

  6月1日号、8日号、15日号の各号はHPでお読みください。

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◆編集長から

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◆現代時評:[胡散臭いCO2排出権取引]    ken  
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
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◆◆ 毎日新聞 2007.6.09 主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミ
ット)の議長総括の要旨は次の通り。  ▽気候変動は自然環境と世界
経済に深刻な被害を与える恐れがある。50年までに温室効果ガスを少
なくとも半減するという欧州連合、カナダ、日本の決定を真剣に検討す
る。 ▽すべての主要な温室効果ガス排出国が京都議定書後の包括合意
に加わるよう、12月のインドネシアでの国連気候変動枠組み条約締約
国会議に参加を呼びかける。  ▽技術、エネルギー効率、排出権取引
や免税措置を含む市場メカニズムは、気候変動を克服する鍵となる。
(後略)

■■ 最近、当然のことのようにニュース化しているのに「CO2排出権」
なるものがある。 現に一部ではそうした取引が始まっているらしく 、
噂に依ればその非公式な国際取引所すら形成されていると聞く。 とこ
ろがボクにはどうしてもそれが、誰かによる不明朗な商取引の一種に感
じられるのである。  

■■ 参考までにそのCO2排出権取引なるものの定義について、ネット
公開されたみずほ情報総研の瀬戸口氏のお説を以下に引用させて頂く。
「京都議定書では国内努力による削減に加え、より柔軟な発想で世界全
体の削減を進めようというスキームが用意された(京都メカニズム)。
その一つが排出権取引である。 A、B二者に現状比かなり低い削減命
題(厳しい排出許容枠)が課せられたとし、結果としてAはこれをクリ
ア、一方Bは目標達成に至らず、というケースを考えていただきたい。
Bが金銭をAに支払うことで排出枠を譲り受け、ペナルティを避けるこ
とを認めるという考え方が排出権取引である。Aのように排出削減努力
の成果が新たな経済価値を生むのであれば積極的に排出削減取組を喚起
できるし、結果的に総体としても(A,Bの排出量合計値)削減に成功
していれば主旨に反しない。 サラリーマンが使い切れない有給休暇枠
を「誰か買ってくれればなぁ」と冗談に言うが、まさにそれが制度化さ
れるものと考えて良い。この考え方は新しいものではなく、90年には
米国で大気中の硫黄酸化物(SOx)削減を企図してSOxの排出権取引が実
施され、全国での削減に大きな成果を挙げている。」  

■■ こうした擬似商取引手法を用い、人間の射幸心を利用して、道徳
の範疇に入れるべき行為すら効率化を図るのは近年の流行であり、必ず
しも悪いことではない。 道徳行為を擬制企業化して実行し、効率(生
産性?)を挙げる手法は、米国社会でしばしば成功している通りである。

■■ それについてはごく最近も秋葉広島市長が、市のホームページで
紹介しておられる。 「世界的に視野を広げると、不可能に見えた状況
を<社会起業家>と呼ばれる人たちの手で大きく変えてきた実例は枚挙
に暇ありません。社会起業家の定義としては『社会の課題を事業的な手
法で解決するために、革新的な方法で情熱的にそして戦略的に取り組ん
でいるひと』辺りかも知れませんが、分り易い例としては、グラミン銀
行を創設し2006年のノーベル平和賞を受けたムハマド・ユヌスさん
がいます・・・」というのがそれである。

■■ わが安倍首相は、さきのハイリンゲンダム・サミットG8で、5
0年までには温暖化ガスを半分以上減らそうと、思い切った提案をした。
 半分に減らそうというのは、こうした削減目標としてはまことに異例
、かつ思い切った発言であるが、腹のうちはともかく、米国も表面上は
それに賛意を示したらしい。問題はそこまで切迫している、ということ
だろう。 

■■ ところが今後に大幅なCO2の発生を予測される中国、インドなど
はそう簡単に温暖化ガス削減話に乗れない。 なにしろわれわれ先進諸
国は、すでに大幅な排出既得権を持っているし、排出権取引による利益
確保の手法も凡その目安を付けているが、いわゆるBRIIKS諸国がいまか
ら、そうした先進諸国と同じ生活水準に達するためには、総計して現在
の20倍程度の温暖化ガス排出は不可避で、仮に安倍首相の言う半分程
度の削減が実現出来たとしても、なおかつ全世界の化石燃料消費には1
0倍程度の量が必要であることは既に数字で予測されている通りである。

■■ これは決して脅しでも無く、白昼夢でもない。 実務的に計算さ
れた予測数字なのだ。 ただ、それを言うのが恐ろしいから、学者政治
家たちはそうした数字を明確に言うのを躊躇しているだけであり、その
間隙を縫っていっときの金儲けに巧みな実業家たちがCO2排出権取引な
どという詭弁を、さも名案らしく唱えているだけである。  それより
も世は、コペルニクス的発想転換をし、化石燃料の類の国際相場を、5
0年前程度に下げるほどの需要減少を来たさなければ地球そのものが維
持できないところまで差し迫っているのだ。 なにしろ、現代西欧社会
並みの消費を渇望している消費予備軍の人口は、中国やインドだけでも
それぞれ10億人を優に超すのである。 

■■ 率直にいえばこれはもうどうにもならない事実であり、それを承
知で日・独などは、とりあえずG8や京都会議で無理押ししてせいぜい
数%の温暖化効果ガスの減少を訴えているに過ぎない。 先進諸国の5
0%削減だけならば、都合によれば、ということは科学の進歩と国民の
努力によれば不可能とは言えぬにしても、BRIICS 諸国にとってはナポ
レオンと反対で「可能という文字はわが辞書に無い」としか言いようが
無いだろう。 だからといって、地球の滅亡を座して待つわけにはいか
ないのも事実である。

■■ 但しこれは、化石燃料の今まで同様の使用を前提とした産業構造
から考えての話であり、もし化石燃料の消費さえ数分の一以下にする画
期的な新産業社会に転換できれば、案外易しいことであるかも知れない
のだ。

■■ ところが今の世界情勢では化石燃料のみならず、在来同様の、た
とえば希少金属を初めとする継続生産不可能(unsustainable)資源の先
行獲得競争にしのぎを削っているのだから、地球上の温室ガス増強に拍
車を掛けこそすれ、減少化努力とは完全に乖離して居ると言わざるを得
ない。

■■ そしてそうした暗黙の理不尽な了解のもとに、当座を糊塗するた
めの弥縫的態度、もっと厳しく言えば、それまでのほんの一時の間に、
然るべく荒稼ぎしておこうというのが、最近さも尤もらしく取沙汰され
ているCO2排出権取引ではないのか。

■■ いずれの国、もしくは実業家グループが旨く立ち回ったとして、
その間に表面上莫大な排出権取引によるカネのやり取りがあったとして
も、所詮それは地球規模で見る限り、どちらかが儲け、どちらかが損を
するバクチであるに過ぎず、いま差し迫っている地球の危機を救う方法
では決して無い、とボクは考える。 

■■ もちろんそうした直接的損得の射幸心に訴えて、エネルギー消費
を少々減らす努力への効果もぜんぜん無いとは言えぬが、ことは余りに
も迂遠過ぎ、反対にそれによって儲ける人間と、それが理不尽であると
する不満派との軋轢を考えると、あまり賢い方法とは考え難い。 いま
すでに、排出権を売りまくる側と、将来のためにそれを買う側との虚実
の駆け引きが、この地球上に顕在化しつつあるというニュースを聞くた
びに、ボクは「果たしてこれでいいのか」と不安に思わざるを得ない。
 それは、いまグローバリズムを錦の御旗にして国際資本社会を不安に
陥らせている米国式の、資本自由経済主義と結果的に変わらぬのでは無
かろうか。

■■ 擬制商業手法による人間の射幸心を利用するのも、ある場合は有
効であるかも知れないが、地球温暖化ガスを減らすことなどは、じつは
地球環境維持への最重要かつ、もっとも基本的な道徳的営為であるべき
だ。 射幸心に訴えることは二の次にして、まず純粋な人間の良心に訴
え、地下資源の使用を大幅に削減する、いわば「人間としてのプリミテ
ィブな良識」を顕在化することが、我々人間の最初に取り掛かるべき行
為ではないか。 

■■ そのためのいちばん簡単な取り掛かり口は、自動車を全廃しない
までも、文句無しに排気量の最大限を軽四車並みに制限することだ。こ
れなら知恵も技術も要らずにすぐ10%程度の化石燃料の節約にはなる。
 効率は良くないが世の中には1000CC以下のショベル・カーも存
在するし、石油を撒くようにして飛び回る飛行機の代わりに帆船だって
ついこの間までは大洋を航行していた。

■■ それを考えると、どうしてもボクはいま話題になっている「排出
権取引」などという行為は、毒ガスや核兵器の禁止などと同様に、絶対
道徳として厳禁すべきとの思いがしてならない。 「排出権取引」など
は、たとい政治家や学者連中がどう言い訳しようと、まやかし、邪道の
1語に尽きはしないだろうか。 

■■ すでに言われている、「日本は次期京都会議の枠組みができると
有利な位置にいることになる。原子力発電、省エネ技術、電気自動車、
たんぱく質合成など、日本企業の得意分野がますます注目されることに
なる」と。 そして「地球温暖化問題でも裏ではすでに各国は経済的に
損か得かの切実な駆け引きをしている」と囁かれている。 

■■ 中国の古典に「穎川(えいせん)の水で耳を洗う」という有名な
挿話がある。 あまりにも汚い話を耳にしたので、それを聞かされた耳
すら汚れた。 だからその耳を頴川の水で洗った、という話である。 
このたいへんな地球温暖化問題のさなかに、「CO2排出権取引」で誰か
が稼ぐという話を聞いたとき、ボクは即座にこの「頴川の水」の話を思
い出した。 「美しい日本、清廉な日本」であるべきこの国にあって、
およそ「排出権取引」などとは不釣合いの極致の唾棄すべき言葉ではな
かろうか。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] 
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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州知事、中央都市の建築現場視察

 イ・マラホフ州知事はユジノサハリンスクで改築及び整備中の建築対
象物の視察を行った。最初の訪問先は郷土博物館。博物館は噴水や綺麗
な庭で整備されており、展示ホールはモスクワから専門家を招聘して展
示や照明機構の充実化を図っている。又、サハリンを代表するスポーツ
・観光施設「ゴルヌイ・ヴォズノフ」の方もオーストリア産の先端設備
と装備を購入し整備作業を着々と進めている様子。他にユジノサハリン
スク市幹線道路であるミラ大通りの4車線拡張現場やサハリンスカヤ通
り人道整備や5車線拡張現場などを見て回った。

連邦住宅政策関係者らサハリン訪問

 さる19日、ロシア大統領補佐官と連邦会議副議長、連邦政府の建築
住宅担当者3人がサハリンを訪ねた。彼らは連邦住宅政策の実験体にな
る建築現場を視察した後、アニワ区域を訪問して地元関係者らと住宅問
題の対策について話し合った。視察を終えた訪問団は、「よい印象を受
けた。視察結果を26日の国家プロジェクト常任委員会会議で報告し検
討したい」と伝えた。

クリル島動力総合体建設本格化

 先週、連邦動力担当機関が連邦プログラムとして進められているクリ
ルの二つの発電所建築資金を割当てたことがわかった。発電所はパラム
スィル島北クリルスク市とイトロプ島クリルスク区域に建設される。2
008年完成予定のパラムスィル島発電所には2億900万ルーブル、
2010年完成予定のエトロフ島の場合は2億200万ルーブルの連邦
予算が割当てられる。他に州政府が1800万ルーブルの追加予算を出
す。パラムスィル建築はサハリンマスィネリ社が、エトロフはダルエレ
クトロモンダズ社が担当する。二つの会社は連邦から予算が下りていな
いにもかかわらず建築事業を既に始めた。

ウグレゴルスク地域炭鉱、資源保護法違反

 サハリン州自然保護監視管理局調査員たちが先日、ウグレゴルスク地
域の炭鉱会社を調べた結果、経営不調は勿論自然保護法違反も発覚。税
金を払っていないため採掘許可も取り上げられる羽目になっている会社
や借金が増えた会社、その上目標とした石炭の採掘も出来ない上環境保
護規定も違反しているなど状況は深刻。調査結果はサハリン州検事局に
渡された。

2007年度統計で見るサハリン州社会経済現況

 2007年度4月1日現在の統計のよるサハリン社会経済現況をみる
と、企業数は法人1万5千、個人営業所1万7千。1・4分期原油ガス
採掘量は原油322万1400トン、ガス9億9600m3.石炭は8
7万1千トンを採掘。又、消費市場総流通額は113億ルーブル、住民
一人当たりの平均消費額は2万2千ルーブル。その中の46%が食品購
入額。対外貿易量は3億8千万米ドル。輸出額1億8千万ドル、輸入額
1億9千万ドル。輸出国は韓国(40%)、日本(29%)、米国(1
0%)、中国、シンガポール順。反面、輸入国1位は米国で28%を占
め、日本、英国、イタリア、韓国、オランダ、ドイツ、中国の順。輸出
品1位は燃料で8800万トンドル相当の21万トンの原油が米国に輸
出され、2位は魚と海産物で総輸出量の28%を占め、4300万ドル
の4万500トンが出された。物価上昇率をみると、果物缶詰23%、
牛乳と乳製品15%、パン類14%、アルコール製品12%、果物野菜
11%、燻製品9%。非食品中、燃料価格43%、毛皮商品12%、衣
類12%が値上げした。住民は総収入の68%を商品購入やサービス料
金に消費しており、収入の3.6%を外貨購入に、15%を銀行貯金に
、そして残りの4,3%をダンスに閉まっている。 住民の平均収入は
1万6千ルーブルで前年度比24%上昇。1−2月の平均実質賃金は2
万ルーブルで前年同期比24%が増えた。公共機関や国営企業従事者ら
の平均賃金は農業、林業、教育機関関係者1万2千ルーブル、商業、運
輸、家電製品修理機関1万3千、水産業1万4千、保健やサービス機関
1万5千ルーブル水準。
 2007年度3月1日現在、サハリン州人口は623人減り52万6
00人(339人自然減少、284人移住)。出生率は6%増加、死亡
率はやや減少した。3月現在、労働能力のある住民は全体の56%の3
0万人、その中の2万には失業者。4月1日現在、4万7千人の子供に
総額1850万ルーブルの補助金が支払われている。
 内務局によると、犯罪件数は3900件で、前年同期に比べ5%が増
加した。

サハリン被強制徴用者の手紙大量発見
          ―被害真相究明委員会1千400通余り確保

 日本植民地時代サハリンへ労働者として連れて行かれてから帰国でき
なかった韓国人が戦後国内の家族に宛てた手紙が大量に発見された。日
帝強占期強制動員被害真相究明委員会は先月31日、「サハリンに連れ
て行かれた韓国人労働者が国内家族宛てに送った帰国を希望する内容の
手紙を1千400通程確保した」と明らかにした。この手紙は1943
年日本人妻と一緒に帰還して以来同胞らの帰還運動を展開した故朴・ノ
ハクさんの所に送られたもの。サハリンに残された2万5千人の労働者
の内、その生存者と韓国の遺家族約7千人が被害申請を行った。しかし
、国内に関連書類が殆どなく被害者判定は難しい状況。同委員会は「我
々が確保したものは、既に韓国の家族に渡されたものは入っていない。
手紙は被害者を探し出すのに大いに役立つと期待している」と述べた。
現在国会に提出されている「日帝強占下国外強制動員犠牲者支援法案」
が採択されると遺家族は2千万ウオン程度の補償金を貰える。
                      (韓国在外同胞新聞)
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 長い間休刊しました。サハリンへ行っている間に、国会は延長を決め
て参議院選も伸びてしまいました。
 筆者も参加しているジャーナリスト・ネットでは参議院選に向けてのア
ンケートを実施しています。。ぜひご参加ください。

 ジャーナリスト・ネット
 http://www.journalist-net.com/
 「参議院選」アンケート
 http://www.journalist-net.com/files/j-net.html

 休刊中お届けできなかったセコリョ新聞日本語版を一挙にお届けいたし
 ます。
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発行     2007年6月26日   No.302
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
              MailuX配信システム        ID:MM3E1B97842E020
e-mail        office@609studio.com
website    http://www.609studio.com
投稿      http://www3.ezbbs.net/06/609studio/
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