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───────────────────────────────── 【609 Studio 】メール・マガジン 2007/5/22 No.300 ───────────────────────────────── 【609 Studio】 メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプト に論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、 ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェスト版、その 他、寄稿記事など話題満載! http://www.609studio.com ───────────────────────────────── 300号! 長い間のご愛読有難うございます。今後とも宜しく。 メールマガジン発行300回、おめでとうございます。振りかえって みると財政難で廃止の危機にあった当放送局が今日まで来れたのは60 9スタジオのお陰かもしれません。落ち込んでいた我々に勇気とやる気 を取り戻せ、積極的に再生に向かって走らせたくれたのは片山さんの励 ましのお言葉と日本のリスナーの皆様方のお便りだったような気がしま す。 世界中に我々が作っている番組を聴く人が居る、世界を相手に我々の 現状を訴えることができるということで新たに気を引き締め頑張れまし た。 今やサハリンで韓流ブームを引き起こす民族放送としてしっかり根を 下ろし、多くの若者からも愛される放送局になりました。その間の物心 両面からの支援に対し心から感謝しながらもこれからも我々の声を世界 中の人々にお伝えくださいますように心から願っております。 ウリマルTVラジオ放送局長 金・チュンジャ メールマガジン発行300回!思わず驚きの歓声が上がります。7年 前、609スタジオにセコリョ新聞インターネット版を載せると聞いた とき、正直半信半疑でした。果たして日本人の読者がいるかしら。 又、いつまで続くだろうなどの疑問が先立っていました。ところが最 早300回。 まずはサイト管理者の片山さんへの感謝の気持ちで一杯です。7年間 も個人的にこのような作業を続ける何で並々の苦労ではなかったと思い ます。サハリン韓人への愛情と関心、そして片山さんの哲学、こんなも のが強かったからこそでここまで来れたことでしょう。そして、又片山 さんの思想に賛同する方々が居てこそ今日があることでしょう。改めて 片山さんと読者の皆さんに心からお礼を申し上げます。今後とも益々の ご発展を心からお祈りいたします。 −セコリョ新聞社長 ベ・ビクトリア ───────────────────────────────── 300号を記念して読者の皆様に下記の要綱でささやかなプレゼント を用意しました。ご応募は office@609studio.com まで 詳しくは http://www.609studio.com/html/300th.html ───────────◆◆◆INDEX◆◆◆─────────── ◆現代時評:[こうのとりからの予期しなかった贈り物] ken ◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2007年5月18日号 ◆ウェブサイトTOPIX ◆編集長から ───────────────────────────────── ◆現代時評:[こうのとりからの予期しなかった贈り物] ken Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは office@609studio.com へ! ───────────────────────────────── ◆◆ 熊本日日新聞 2007.5.16 「父親と福岡から来た」 男児 県警「遺棄罪難しい」 熊本市島崎の慈恵病院(蓮田太二理事 長)が、新生児を匿名で受け入れるために設置した「こうのとりのゆ りかご(赤ちゃんポスト)」に、三歳ぐらいの男児が預けられていた 問題で、同病院や設置を許可した熊本市、県、県警は十五日、事実関 係について否定も肯定もしない姿勢に終始した。 ◆◆ 読売オンライン 2007.5.15 熊本市の慈恵病院( 蓮田晶一院長)が設けた「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご) 」に最初に預けられたのは、新生児ではなく、言葉も話せる「3歳児 」だった。 親が養育できない新生児の受け入れを想定していた病院 の担当者は、予想外の事態に固く口を閉ざしたまま。これに対し、「 捨て子を助長する」と設置に慎重だった人たちからは、「恐れていた 事態が現実になった」と改めて疑問の声が上がった。 ◆◆ 毎日インタラクティブ 2007.5.17 熊本市の慈恵 病院に国内で初めて設置された「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆり かご)」に3歳とみられる男児が預けられていた問題で、男児は「福 岡から来た」「(父親から)『かくれんぼをしよう』と言われ(入っ )た」と、住んでいた場所と、ポストに入った経緯を話していること が関係者の話でわかった。 ■■ 日本で初めてという「赤ちゃんポスト」に、予期しなかった3 歳児が入っていたという報道に、ふだんはかまびすしい評論家たちも どう対応していいか判らず、いまのところ、音なしの構えを決め込ん でいる。 しかしボクが思うに、これはとうぜん過ぎるほどあり得る 話であった。 むしろ予期しなかった方が迂闊すぎたのではないか。 そしてその迂闊さこそ、日本という社会の特徴ではないかとボクは 思う。 ■■ 日本では、他国に比べて不思議なほど子供の養子縁組が少ない 。 身近なところで比較して見よう。 大陸からの引き上げ孤児問題 に人生の後半を費やしたある知人の話では、満州に残した日本人の孤 児たちが中国人に養子として引き取られた総数は数万人を下らぬとい う。 どうして彼ら中国人はそれほど多くの日本人の遺児たちを引き 取って養育してくれたのか。 ■■ それは必ずしも日本人の遺児であるにとどまらず、そしてもち ろん養育してその子たちを食い物にしようという意志など皆無で、人 間としてわけ隔てなく、幼くかわいそうな子供たちを引き取って養育 する習慣が昔からあったからだそうである。 ■■ もう少し目を伸ばして、ボクがむかし住んでいたフィリピンを 見てみよう。 そこにも孤児に類する子供たちがたくさん居る。 そ して彼ら孤児たちを養っているのは誰か。 簡単に言えば社会全体が 養っているのである。 彼らフィリピン人社会では、少なくともボク の見たところ、子供というのはその親の子供であるというよりはむし ろ社会全体の所有であるといった習慣がある。 だから、子供がいつ の間にか他所の家でご飯を食べていたという状況は日常茶飯事である 。 親が無くても子は育つ、それはフィリピンでは普通のことであり 、日本のように「親がなくて飢えに苦しむ」子供というのは先ず見受 けない。 社会が共同して育てているからだ。 ■■ ボクの友人Y氏は、ロンドン孤児援護協会の役員だった。 彼 には当時3人の子供が居た。 上の長女は彼ら夫婦の間に生まれた子 で、まぎれもなく白人の顔である。 次の男の子はインド系の鼻筋の 通った細面(ほそおもて)の子供だった。 「お前はインディアンの 子だ」と普段から親が言っているので、その子は「ボクはインディア ンだ」と喜んで、アメリカ・インディアンの鳥の羽根の頭飾を付けて はっしゃぎ回っていた。 が、いつかそのインディアンではないと判 るときが来るだろうから、そのとき「お前は貰ってきたパキスタン系 の子供だ」と教えねばならぬが、うまく説明できるかどうか一抹の不 安があると、Y氏は言っていた。 ■■ あと一人の末の女の子はロンドン留学中の中国女子学生が産ん だのを貰ってきた子だそうで、幼女は紛れもなくボクらと同じ東洋系 の顔であった。 ロンドン辺りへ異国から留学で来ている学生たちの 中にはそうした故国の親に言えずに産み落とした子もあり、Y氏の孤 児協会の世話で引取り育てる子も多い、と彼は言う。 ■■ 以上、Y氏の子供はそのころ都合3人。 Y氏夫妻はそれを「 われら国連家族」と称し楽しく暮らし、何の問題もなかった。 そし て10年、あるときロンドンからボクら共通の友人がきたのでY氏一 家のその後の消息を訊いてみた。 彼らY氏夫妻はさらにもう二人 の、色の違う子を貰い受け、ますますの国連家族一家を楽しんでいる 、とのことだった。 めでたし、めでたしである。 ■■ 別のボクの古い知人S氏はオランダ・アムステルダムで名のあ る老舗の社長だったが、彼には一人娘が居て、いまはイスラエルに住 み画家になっているとのこと。 だから自分の会社の後継者として戦 争孤児だった少年を貰い受け、いまではその養育した子が成人して立 派な後継社長になっている。 日本人ならば、娘に婿養子を取るとか 、親戚で血の繋がった子を跡継ぎにするところだが、S氏は「別に血 など繋がってなくても、しっかりしたいい青年ならば貰ってきた子供 に後を継がせてもいいではないか」と割り切っていた。 ■■ こうした例を挙げれば西洋でも東洋でも限りがない。 ボクが 思うのに、「血の繋がり」に拘り過ぎるのは、どうやら日本人に多い 特性であり、それがひいては他人の子供を貰い養育する習慣が殆どな い原因となっているのではなかろうか。 そしてそれが、新生児のた めの「こうのとりゆりかご(赤ちゃんポスト)」を初めて造るのに批 判的であり、なおその「赤ちゃんポスト」に最初に託された子供が新 生児でなく、3歳児だったことに驚いた原因に繋がっているのではな かろうか。 ■■ いまさら驚くまでもない、3歳児であろうと5歳児であろうと 、世の中にはいろいろな事情があり、やむなく子供を他人の手に託す 必要がある場合などは想像以上に多い。 そうした他人の切羽詰った 事情に目を閉ざし、「養育の義務を放棄する人が多くなるのは良くな い」などとあげつらい、良識顔をするのは、どちらかといえば恵まれ すぎた日本社会の弱みと言えるかもしれない。 世の中に、わが子を 積極的に他人に渡そうとするような人はごく稀にしか存在しないのに ・・。 ■■ 心ならず、のっぴきならず子供を人に託すのであり、そうした 子供を積極的に引き取る広い心を持った人の多い社会こそ、立派な社 会というべきではないだろうか。 そのためには、新生児のみならず 、3歳児、5歳児のための「こうのとりゆりかご」なども、もっと多 くわが国にあっていい。 換言すれば社会に、新生児のためだけでな く、幼・少年のための「こうのとりゆりかご」への切実なニーズもま たたくさん存在することを知るべきである。 それを忘れて、いまさ ら新生児に替わる3歳児を託されて驚くのは、わが国社会に思いやり の心が少ない証拠でもある。 ■■ それともう一つ、わが国には「継母(ままはは)」とか「捨て 子」とかいった悲劇的ストーリーをすぐさま思い浮かべる悪い習慣が ある。 そしてその悲劇の当事者になるのを避けようとして、かえっ て「親子心中」を惹起したり、他人の子を養育する広い心を無くした りしている。 ■■ それは、その昔の一億総玉砕の精神にも通じ、「もうどうにも ならなくなった」という切羽詰った心に、安易に追い込まれる素地と もなっている。 それは一種の生真面目な精神主義であるかも知れな いが、あまり褒められるべき心の在りようではない。 世の中という のはもう少し柔軟に考え、困ったときは心ならずも子供を他に託す方 が良い場合もあることを知るべきだ。 古書にも「苦節、固くすれば 凶なり」と説いている。 ■■ そうした意味合いで、今回の「こうのとりゆりかご」に3歳児 を託した父親の採った行動は、ひょっとしたら良識に近い行為であっ たかも知れないと、ボクなどは思う。 子供の預け場所としては、警 察が「遺棄罪とするには難しい」と言っているところからすれば適切 であったかも知れず、後になって子供の行方をトレースするに都合が いい場所とも考えられる。 願わくば、「こうのとりゆりかご」がわ が国にもっとたくさん設置され、さらにそうした子供たちを養子とし て貰い受ける人が多くなるような社会に日本がなることを切に期待す る。 ■■ ついでながら、米国の養子縁組の統計を見つけたので付け加え ておく。 米国家庭が2005年度中に迎えた海外からの児童養子縁 組は総数23、000人。うち、中国からが7,906人、ロシアか ら4,639人、韓国からは1、630人であった。 ───────────────────────────────── ◆ウェブサイトTOPIX 609studio ───────────────────────────────── 300号! 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