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タイトル:609studio No.299◆現代時評:[資源の獲得競争よりも消費抑制をこそ]  2007/05/15


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【609 Studio 】メール・マガジン 2007/5/15  No.299
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【609 Studio】 メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプト
に論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、
ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェスト版、その
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◆現代時評:[資源の獲得競争よりも消費抑制をこそ]     Ken

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2007年5月4日号

◆ウェブサイトTOPIX

◆編集長から

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◆現代時評:[資源の獲得競争よりも消費抑制をこそ]     Ken

   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
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◆◆ 読売オンライン 2007.5.08 日本政府は8日、6月に
ドイツ・ハイリゲンダムで開催される主要国首脳会議(サミット)で、
地球温暖化問題に関し、2050年までに世界の温室効果ガスの排出量
を07年レベルから半減させる数値目標を提案する方針を固めた・・。

◆◆ 日経ネット 2007.5.05 日本政府は2050年までに
、気候変動の原因となる温暖化ガスの排出量を世界全体で現状から半減
させる新たな目標を6月の主要国首脳会議で提案する方向で調整に入っ
た。(中略)欧州連合(EU)は「20年までにEU全体で排出量を2
0%減らす」との目標をすでに公表した。日本政府は日本だけの目標で
なく、世界全体で取り組む目標として具体的な数値設定を検討。サミッ
トで新目標を提案して首脳声明に盛り込むことを目指す。
 
◆◆ 毎日新聞 2007.5.10 日本は石油危機をきっかけに省
エネ技術開発に取り組み、73年からの30年間で国内総生産(GDP
)あたりのエネルギー効率を37%改善。この経験を基に「日本の最先
端の省エネ技術やノウハウを世界に移転することで、地球規模で温室効
果ガス削減に貢献できる」としている。 具体例として、鉄鋼産業の廃
熱・未利用エネルギーを有効活用する技術を途上国などに移転し、日本
と同程度の普及率になれば年間約3億トン▽高効率の石炭、石油、ガス
発電システムを同様に移転すれば、最大で年間約17億トン−−のCO
2が削減できると試算した。 

■■ わが国の自動車保有密度(道路1km当たり)は圧倒的に世界第
一位らしい。 そしてわが国の自動車生産量も今や世界第一位(年間8
60万台で、世界に於けるシェアは約20%)だ。 いつのまにこんな
自動車大国になったのか不思議なくらいである。

■■ その日本が、いわゆる「京都議定書」で約束した2008年〜2
0012年の温室効果ガス減少は6%だったのに、現実は2004年度
7.4%と増加し続けている。 そのうち、運輸部門のエネルギー消費
量は2004年で24%の増加、とくにガソリン消費量の増加が最も大
きくて35%も増加している。 そしてどうやらその元凶は自動車の大
型化であるらしい。 軽四の出荷台数も増えているが、それにも増して
大型自動車への乗り換えが激しいのである。

■■ そのためいくらかの自責の心もあると見えて、つい最近までは自
動車用ガソリンに、ブラジル並みにエタノール、つまりバイオマス燃料
を混ぜようという話が花盛りだった。 が、これもやま10%止まりが
技術的に限度ということになり、さらに追い討ちを掛けてバイオ燃料の
原料である玉蜀黍やサトウキビ栽培には食糧供給との兼ね合いが問題で
あると解り、「夢のバイオマス燃料」がじつはそうではないということ
になった。 こうしたうまい話に飛びついて、あとで臍をかむよりは、
早々に分かって自制するというのも、人間がいろいろな物事につきあた
り、いくらか知恵が付いたという証拠であろう。

■■ ところが次にまた降って沸いた話が「海草バイオ燃料」創出とい
う話である。日本海に1万平方キロメートルの養殖場を設け、ガソリン
の年間消費量6000万キロリットルの3分の1に相当する2000万
キロリットルのバイオエタノールを海藻から生産するという壮大な計画
だ。 三菱総研辺りが旗振りになって海中農場をつくり、そこで海草を
育ててバイオ燃料を取るという仕掛けは、前回の玉蜀黍やサトウキビの
場合と同じような方式なのだが、これにも問題がある。

■■ 先ず、漁業との海面競業がとうぜん問題になる。 つぎにエタノ
ールに精製するためにとうぜん他のエネルギーを必要とする。 三番目
には、それを自動車用燃料として使用すれば幾許(いくばく)かの空気
汚染は不可避だし、エンジンの劣化も避け難い。 つまり、「自動車」
とはいうものの厳密にいえば「全自動」でなく、エンジンを回転させて
走るものに過ぎず、なんらかのエネルギー消費を必要とする物体なのだ
。 これではやはり、多かれ少なかれエネルギーが必要で、そのエネル
ギー源が石油であるか、他の代替物質であるかの違いに過ぎない。

■■ それよりも元に戻って、自動車を使用しないのがいちばんいいに
決まっている、という解りきった現実に目を醒ます必要がある。     

■■ 西洋ではよく、新来の客に家の中を隈なく見せる風習がある。 
いつも家を綺麗にしているから出来る習慣である。 そして家の中を綺
麗にしておくためには、先ず家の中を汚さぬ心掛けが要る。それを我々
の家は日常汚れっぱなしなので、急な客に家など見せられない。 その
ため、不時の客があれば、その辺にある一切合財を押入れという便利な
ものに押し込んで、取り敢えず表向きを取り繕う。 始めから汚さず散
らかさなければ、掃除もしなくていいのにと思う。

■■ あの仕掛けと同じで、初めから自動車の使用を減らせば、大気も
汚染されずに済むし、そのためには電車やバスなどの公共交通機関もだ
いぶ整備されている。 スイスなどでは大統領が電車で出勤しているら
しい。 ところがわが国では、政治家や高級官僚どもが大エンジン容量
の自動車で出勤する。 ひとえに見栄と体面のためであり、電車やバス
で出勤すれば威厳が保てない。 こんな習慣を継続していては京都議定
書による排ガス削減義務が果たせない。

■■ 日本政府もその辺りに気付いたらしい。 「73年からの30年
間でわがGDPあたりのエネルギー効率を37%改善した。わが最先端
の省エネ技術を世界に移転すれば、最大で年間約17億トンのCO2が
全世界で削減できる」と、最近になって国連気候変動枠組み条約(UN
FCCC)事務局に文書で以って申し入れたという。 怠惰なわが政府
としては、まことに勇ましい話で、ボクら国民としても拍手をおくりた
い。  

■■ ならばわが政府も「先ず隗(かい)より創め」で、最近のような
国内自動車の大型化の傾向を止める法的規制を進めたらどうか。自由化、
グローバル化の謳い文句で大量の大排気量外車輸入を認め、ひいては国
内生産車の大型化にも拍車をかけたのは、そういうわが政府ご自身では
無かったのか。 

■■ 自動車というのは、たとい3000CC超の大型車といえども、
交通渋滞に引っかかれば軽四と同じスピードしか出ないのだ。 それを
承知で大型乗用車に乗るのを好む人種は、いかれポンチの青年層を別と
すれば、政財界の大物諸君だけではないか。  「軽四」に乗るのを庶
民・婦女子に押し付けておいて、自らは高級車にふんぞり返っていては
「エネルギー節約」のスローガンが泣く。 大型乗用車に乗るのを恥ず
かしく思う社会的習慣さえ創出すれば、それだけでもだいぶ多くのガソ
リンが節約出来る筈である。

■■ かっての昔、わが国の鉄鋼生産量がどんどん増えて、米国のそれ
を追い越したと自慢した時代があった。 ところがそのころ、識者が「
鉄の生産を如何にして減らすかに努力している米国と比べて、わが鉄鋼
生産が増えたといって、比較し自慢することはない」と苦言を呈してい
たことがあった。 同じようなことが最近では地球のあちこちに起こっ
ている。 お隣りの中国では、いまあらゆる品物の生産増強にうつつを
抜かしている。 そして結果として空気汚染、水質汚染に困っている。
 かっての「まだ造れる、もっと造れ」の日本と同じステージに、いま
の中国はある。

■■ ものを精一杯に増産することだけが国力を示すバロメータではな
い。 いまや、減量生産もしくは生産中止するほうが民生のためにはよ
りいいのではないかと知るべきことが多い。 

■■ 例えば自動車生産がその域に達している。 デンマークもスイス
も、そしてニュージランドも自動車を生産していない。 ニュージラン
ドなどは、わが国の贅沢者が乗り換えた良質な中古車を輸入するに止ま
り、分(ぶん)を弁え、かたわら生産公害を防いでいる。 立派とすべ
きではないか。 

■■ 反対に中国などは「造れ、もっと造れ」で、そのための将来の生
産原材料の確保に世界中の産地を血なまこで渡り歩いている。そしてそ
の確保した原材料を加工して、公害をますます増やしている。お気の毒
な限りである。

■■ より省資源の、より頭脳産業を、わが国は志向すべきであり、そ
うした時代にあって、尖閣の海洋資源の簒奪競争などに参加せずとも、
その時間があれば、より省資源技術の開発に努力を傾け、あるいは消費
抑制を図るべきが、わが国の、いわば国家百年の計ではなかろうか。 

■■ それを噂によれば、わが安倍首相はこの連休を利用してエネルギ
ーや生産原料生産国と親しくすべく巡遊しているという。 訪ねる国が
違いはしないだろうか。 われわれは、資源の獲得競争の域を脱して、
生産原材料の消費抑制策を講じるべき国であることを銘記しなければな
らない。 その消費抑制も、単に生産原料のみならず、日常生活物資の
消費抑制も本気で考える必要がある。とくに、食物の消費抑制は焦眉の
急である。 

■■ 食べ過ぎの栄養過多、太り過ぎの医療費増大というのは困ったも
のである。 カネに任せて世界中から食品を買い集め、それで病気にな
っていたので漫画にもならない。 日常生活を優雅に、ということはい
まの世、馬鹿みたいな成金浪費生活を慎むことである。 この辺りを真
剣に考えることこそ人間の叡智であり、日本がほんとうに幸せな国にな
る道程である。 

■■ 安倍首相のいう「美しい国日本」であるためには、生産財も消費
財も、先ずその消費を減らすことから始めるべきである。 どうしても
消費しなければならない物質については、それがサステイナブルな品物
、つまり再生産可能な物質に限り、地球に何万年何億年も掛かって蓄え
られた有限の資源争奪合戦に参加すべきではない。
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◆ウェブサイトTOPIX           609studio
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2007年5月11日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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兵士遺骨調査事業に予算割当て

 サハリン州政府が今年、第2次世界大戦の際、サハリンで戦死したソ
連軍と日本軍兵士の遺骨探しのために160万ルーブルの予算を割当て
ることを決めた。軍事及び愛国財団「ピオニェル」の指導者イ・ゴロジ
ャノフさんによると、予算は探査装備と作業員の食費に使われるとのこ
と。5月末から11月中旬まで続く予定の当探査事業には毎年70人余り
の青少年も参加している。現在、スミルヌイフとホルムスク谷で探査準
備作業が行われている。遺骨発掘事業は20年間続いているが、その間
136人のソ連軍、284人の日本軍兵士の遺骨を発見、各国がそれぞ
れの伝統に基づいて改葬してきた。弾や地雷発見などの危険性に備えて
非常事態局とも連携して作業を行う。

5500人が夏休みキャンプに参加

 ユジノサハリンスク市教育管理局によると、今年は5500人の児童
が校内キャンプなどの休暇施設で夏休みを過ごせる。また、夏休み中に
何処にも出かけられず市内で過ごすと予測している市児童の72%が低
価で休憩施設を利用できるようにするなど様々な休暇プログラムの提供
のために企画中である。

指導者セミナー

 先日、サハリン州政府は2008−2010年までのサハリン州自治
体の社会経済発展計画立案のために各自治体の経済と財政担当者を対象
にセミナー兼会議を行った。そこで州知事は足元の火を消す事業方案か
ら長期経済発展計画事業案への転換を強く呼びかけた。

盛大な勝利記念行事

 戦勝62周年を迎えて5月9日、ユジノサハリンスク市の勝利広場で
戦争関係者7千人余りが参加した中で州政府主催の盛大な記念行事が行
われた。サハリン韓人文化センターの高齢者将棋大会を始め、戦争老兵
慰問コンサートやスポーツ競技など多彩な記念行事が行われた。

サハリン韓人社会団体代表団訪韓

 サハリン州韓人離散家族会を含め7つの韓人社会団体代表が「サハリ
ン同胞支援特別法案」の国会通過を促すために韓国を訪問した。代表ら
は4月23−30日の間、韓国国会統一外交通商委員会の金・ウォンウ
ン委員長をはじめ、在外同胞財団、赤十字社など関連団体を訪ね、早急
の法案採択を求めた。又、サハリンでの米価の急騰を理由に米の支援を
依頼したとのこと。

道路事情改善デモ

 先月末、ユジノサハリンスク市のレーニン広場で社会団体「サハリン
自動車運転技師連合」が主催したデモがあった。当団体は市内の悪い道
路状態の改善を訴えるために集会を組織したものの参加者は予測を遥か
に下回り10人ほどだった。参加者たちは「我々は税金を払っている。
安全な道路の上を走りたい」と訴えた。今年もユジノサハリンスク市政
府は道路修理に2200万ルーブルの予算を割当てているが、道路全体
の修理のためには40億ルーブルが要るとのことである。

5月19日土曜労働の日

 ユジノサハリンスク市政府によると、4月の都市掃除に住民1万5千
人が参加し、1000立米のゴミを処理した。これで通りのゴミや砂な
どの掃除ができたものの、花壇などの掃除はまだ不十分であるために、
5月19日も土曜労働日に決め、街の掃除への市民参加を促している。

職業学校の直売展示会

 今月の4日(金)、ユジノサハリンスク市のコムソレツ青少年センタ
ーで「第28回職業学校直売展示会」が開かれた。8地域から11の技術
専門学校が参加し学生たちが作った木製品、縫製品、料理などの展示と
直販が行われた。特に市民らの目を引いたのはビニルハウス設備や野菜
の種の展示であって、その場で制作の注文をする人もいた。

「沿海州アリラン」来月発行予定

 韓国在外同胞新聞によると、韓国のチョンソンアリラン研究所が数次
現地を訪ね収録した中央アジアの朝鮮族の間で歌え継がれたきた数々の
アリランが「沿海州のアリラン」という名前で整理され、来月出版され
るとのこと。当研究所は消えつつある海外同胞らのアリランを記録とし
て残すための作業を続けており、数年前には中国やサハリンの同胞の間
で歌われているアリランを整理し、「中国朝鮮族のアリラン」「サハリ
ンのアリラン」を出版した。これからは中央アジア地域とヨーロッパ地
域まで足を広める予定。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 いよいよ次号で通算300号となります。本当に深謝、深謝です。

▲困ったことが起こりつつある。アメリカが北朝鮮との直接交渉が本格
化しそうな気配。先の安部首相の訪米時に「拉致問題の解決」をテロ国
家指定解除の条件にしないという。
 無論ブッシュ大統領は「理解は示した」ようだ。まあ、安部首相の「
慰安婦発言」の程度の理解の仕方。儀礼的。

⇒安部首相の「よりどころ」が崩れ去ろうとしているわけ。彼はいうな
れば「拉致問題を政治利用」して首相になれたようなもんだ、実際。

⇒昨年12月に亡くなった青島幸男氏が佐藤首相を名指しで「男めかけ」
と予算委員会で発言した。今の首相はアメリカの「めかけ的存在」だ。
 自己の存在すら危うい拉致問題に関してアメリカが手を引くような事態
になっても「日米同盟」とお題目を唱えていればいいのだと理解している
風に見える安部首相っていったい何なんだろう。

 筆者の口癖ではないが「困ったもんだ」
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発行     2007年5月15日   No.299
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
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