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タイトル:609studio No.298◆現代時評:[改憲論と憲法不要論の間]  2007/05/08


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【609 Studio 】メール・マガジン 2007/5/8  No.298
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【609 Studio】 メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプト
に論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、
ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェスト版、その
他、寄稿記事など話題満載! 

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◆現代時評:[改憲論と憲法不要論の間]            ken

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2007年5月4日号

◆ウェブサイトTOPIX

◆編集長から

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◆現代時評:[改憲論と憲法不要論の間]            ken

   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
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◆◆ アサヒコム 2007.5.03 戦争を知る世代の保守層から
「平和憲法を守れ」との声が上がっている。「九条の会」に加わった元
自民党県連幹部もいる。各地の「九条の会」にある「従来の革新勢力だ
けでは改憲の流れを止められない」という危機感が、保革連携の背景に
ある。  「戦争や武器の放棄を位置づけた憲法が、いつの間にか雲散
霧消していく。子孫のためにどうしなければならないか、いま一度考え
直す時が来た・・」。

◆◆ サンケイWEB 2007.5.03 超党派の保守系国会議員
有志でつくる「新憲法制定促進委員会準備会」(座長・古屋圭司自民党
衆院議員)は2日、現憲法を全面改正するための「新憲法大綱案」をま
とめた。準備会は「党派を超えて団結し、新憲法の制定に向けて具体的
な行動を開始する」(提案趣意書)方針で、大綱案を改正論議のたたき
台と位置づけている。  大綱案は、平和主義を堅持し、「防衛軍」の
保持と集団的自衛権の行使を容認した。

◆◆ 読売オンライン 2007.5.03 日本国憲法は3日、施行
60周年を迎えた。安倍首相は同日付で談話を発表し、憲法改正に向け
た強い決意を表明した。首相が憲法記念日に談話を出すのは、施行50
周年当時の橋本首相以来2回目。 首相は談話で、我が国の社会は憲法
制定時には想像もつかなかった変化に直面しており、「憲法を頂点とし
た、行政システム、国と地方の関係、外交・安全保障などについての基
本的枠組みは、このような大きな変化についていけなくなっており、見
直しが迫られている」と憲法改正の必要性を強調した。

■■ 憲法学者の宮台先生が言う、「憲法は国民から統治権力への命令
であり、法律は統治権力から国民への命令である」と。 まさにその通
りだ。 ところがその宮台先生は「だから、軍備をするためには憲法を
改正しなければならない」。 理屈はまさにその通りである。 しかし
この「だから」には疑問がある、そう短絡化すべきでない。

■■ 考えてみると、わが日本は戦後60年という長い間に、タダの一
度も戦争をしていないし、ただの一人の戦死者も出してない。これは世
界的に見てまことに稀有なことで、ひじょうな幸運である。 そしてそ
の幸運の殆どの理由は憲法9条、つまり『戦争をしない』という規定の
お蔭である。

■■ どんな理屈があろうと、そうした幸運なことの根本的な理由を排
除してはならないし、そのための予備行動としての改憲などはもっての
他である、とボクは思う。 

■■ 周知のように、我々は事実として世界第何位かの軍備があり、堂
々たる陸・海・空の軍隊も持っている。 ならば既に憲法違反ではない
か、と言われれば弁解の余地は無く、いささか後ろめたいのも事実であ
る。 軍備を持つなら持つで、ちゃんとそれに適合するよう改憲すれば
いいではないか、と言われれば、それもその通りである。

■■ だがしかしだ。現状で「憲法9条」を外せば、さっそく『戦争に
行ってくれ』と誰かが頼みに来るだろうし、結果、戦死者が出るだろう
ことは見え透いている。 理屈だけで国民の何人かを死なせるのは、ソ
クラテスが自分の理屈を押し通したために、ご自身が毒を飲んで死んだ
のと同じことになる。  落語では言う「病気では死なない、寿命で死
ぬのだ」と。 まして理屈で死んだりすれば閻魔様に会わす顔も無い。
 戦死者を出すための改憲など真っ平だ、もっと常識的に賢くなる必要
がある。

■■ いまEUで憲法制定が論じられ、フランスの大統領などは大いに
乗り気だが、肝心のフランス国民が反対していて、どうにもならない。
という訳で、いまのところEUには憲法が無い。 にも拘らず、EUと
いう連合国家は非常にうまく作動している。 無くても順調にいってい
るのに、なぜ今更、憲法が必要なのか。 これはプリミティブな疑問だ
が、じつは憲法が無用の長物であるという弱点をまさしく衝いている。
 
■■ 憲法があればとうぜん、「違憲か合憲か」を判断する『憲法裁判
所』が必要で、それはもの要りである。 ヨーロッパ辺りでは憲法裁判
所を持っている国もあれば、持たぬ国もある。 わが国は「憲法裁判所
」を持たぬから、憲法違反を訴えるところが無い。 ゆえに、「憲法違
反で精神的損害を受けたから、慰謝料金1万円也を払え」などという漫
画的民事訴訟を起こす場合が多い。

■■ とうぜんのことながら憲法は法律ではない。 それなのに「法」
と言う文字が使用されていたり、六法全書にも収録されているから、庶
民が民法や刑法と同列の法律と誤解しているだけである。 憲法とは、
じつは「国の綱領(constitution)」とか「国家のグランド・デザイ
ン」と称すべき、なかば精神論のうちに入れるべき道徳律である。

■■ 端的に謂えば聖徳太子の「十七条の憲法」とか、明治維新の「五
箇条のご誓文」の方が「憲法」により近い。 ということは、おおまか
かに謂えば、国民生活にとって取り敢えず無くていいものである。 じ
じつ、EUにはいまのところ憲法というものは無いがうまくいっている。

■■ じつは日本も、戦後60年の戦争放棄期間、憲法9条は存在しな
かったも同様である。 だからどんどん軍備も進め、海外派兵もした。
 いわゆる「憲法解釈」で誤魔化して、都合の悪いときだけは「憲法上
では実行出来ない」と言い立ててイラク派兵も丸腰で行かせたのである。
 最初に言ったように、国民が為政者の不法行為に箍(たが)を嵌める
ための取り決めが「憲法」だから、国民さえ「為政者のその程度の違憲
行為は構わぬ」と腹さえ決めれば、目を瞑って黙認するのが「憲法」と
いうものの大らかなところである。

■■ 換言すれば、「政府為政者が、無茶なことをしない限り憲法など
要らない」ものである。 しからばどういう為政者の行為のときに「憲
法」が要るのか。弓削の道鏡や、袁世凱が帝位を狙ったような場合に、
「日本は万世一系の天皇制だから」、あるいは「主権在民だから」とい
った『憲法規定』を金科玉条にして、それを阻止するための絶対論拠と
するのである。

■■ そうした根本的な国家の在り方について、よほど重大な問題が生
じない限り、憲法など有っても無くても、他の日常政治については、い
わゆる民法、刑法、商法などでじゅうぶん事足りるのだ。
 実際問題として、「戦争放棄」や「再軍備」などは、その限界すれす
れの憲法問題なのだが、それでも便宜的に拡大解釈して「あれは軍隊で
はございません」と強弁して、今日までうまく国家的世渡りをしてきた
日本なのだ。 ここで「改憲」など考えずとも、いままでの「戦争放棄
」を謳った第9条で行き、あとはその都度、便宜解釈すればいい、とボ
クは思う。

■■ そうでないと、もしわが為政者たちが誰かに頼まれて海外派兵し
そうな場合、我々国民が「それはいけない」と阻止する法的根拠を失う
危険性がある。 つまり「憲法違反だが黙認する」といった便法が使え
なくなる可能性が発生するのである。 

■■ 高野連が「先だってまでは野球特待生を黙認していたが、目に余
るので今後は許さぬ」と言えるのも、じつは表向き野球特待生を禁止し
ていたからこそであり、もし解禁していたら、急に厳しい通達を出すわ
けにもいかないのと同様である。 「黙認」と「解禁」には、天地の開
きがあることを忘れてはいけない。

■■ だからボクは、少なくとも現在のような怪しい国際情勢のときは
、「改憲」もいけないし、「憲法不要論」も採るべきではないと思う。
 つまり、表向きの「憲法墨守」こそ、もっとも現状に即した方法であ
り、それが温和で賢明な国家としての日本の採るべき道であろう。 今
日の北朝鮮の言行から勘案するに、もちろんBMD弾道ミサイル迎撃シ
ステムを完備しておく必要もあろうし、必要ならば極秘裏に核爆弾を蓄
えるのも已むを得ない。 

■■ だだしそれはあくまでわが憲法の「戦争放棄」条項から逸脱して
いるかも知れないと認識した上での便宜的黙認であるべきだ。

■■ 風姿花伝に曰く、「秘すれば花なり。秘せずば花なるべからず」
と。 仏教に「嘘も方便」という言葉があり、ヴァチカンも「処女懐胎
」を墨守している。 いまどき「憲法の拡大解釈」も似たようなもので
はなかろうか。 
 メキシコは02年までに408回、ドイツは51回も憲法改正してお
り、それに反して英国は未だに成文憲法を持たない。 日本は戦後60
年、ただの一度の憲法改正もしないで、ひたすら「拡大解釈」で押し通
した。 それぞれの国が、それぞれなりの世俗的叡智を働かせて来たの
である。 すべて立派というべきであろう。
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◆ウェブサイトTOPIX           609studio
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◇J-net特集「憲法記念日」
http://journalist-net.com/home/07/05/07/040148.php

◇ユジノサハリンスクのメーデー
http://journalist-net.com/home/07/05/01/115040.php

◇フラッシュ・ムービー掲載!
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2007年5月4日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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副知事クリル訪問

4月24−27日間、ヴェ・ナゴルヌイサハリン州副知事がマスと鮭の
漁獲期を迎えての準備過程と農業などの現地実態調査のために択捉と国
後島を訪ねた。副知事は「サハリンにはこの2年間、17箇所の養魚場
を建設した。クリル島にも養魚場を建設してクリル沿岸のマス・鮭の量
を増やさなければいけない。そうしないと、クリル沿岸からマスや鮭の
姿が消える」と危機感を募らせた。又、副知事は農産物生産者らと面談
し、地熱を利用し農産物価格の安定化を図るように訴え、地域住民らは
メンゼレエヴォ火山地域の熱を利用する熱節約技術の導入に同意を示し
た。
  今回、近々択捉と国後に支店を開く予定の「ロスセルホズ銀行」の代
表も同行したが、二人は支店開設に適切な場所を探すなどして日程を終
え帰る前には、「クリル島はロシアの末端ではなく始まりである。我々
はこれらの島の住民らが安全でよい生活環境作りのために最善を尽くし
たい」と出張の感想を述べた。

大統領教書

 4月26日、クレムリンの大理石の間でプーチン大統領が第8回目の
教書発表を行った。大統領は教書を通じて、2009年まで年金を65
%引上げることの他、極北・準極北手当の持続的支給、道路や住宅修理
に巨額の資金を割当ると共に、国家経済を強くするために中小企業の発
展を図り、国内産業保護のために外国企業への漁獲クォター配当を禁止
すると訴えた。

メーデー

 5月1日のメーデーにユジノサハリンスク市では、サハリン州職盟連
合の主催で民衆集会が開かれた。集会では「老人たちに人間らしい生活
を、労働者が貧しい生活をしてはいけない」と訴えられると共に、州職
盟連合のヴェ・アゲエフ副委員長は祝辞の中で給料の引き上げと最低生
活費水準まで最低年金を引上げるように強く求めた。

障害者協会創設決定

 4月末、州社会保護管理局で州政府傘下組織の障害者委員会会議が開
かれた。会議ではサハリン州の障害者実態についての報告が行われた後
、州知事とロシア大統領に環境改善を訴えることのほか、サハリン州障
害者協会を創設することを決めた。

外貨の無断持出し発覚

 先月24日、ユジノサハリンスク国際空港で、ソウル行きの飛行機に
乗ろうとした一人の女性が申告せず1万ドルを持ち出そうとして捕まっ
た。3千ドル以上の外貨持ち出す場合は申告が必要であり、又1万ドル
以上の外貨持出しは禁止されているため、彼女は2つの犯罪を犯したこ
とになる。その場でお金は没収された。
税関は外貨法を守るように住民に訴えている。

未成年相手のアルコール、タバコ販売調査

 4月末、ユジノサハリンスク市未成年管理保護委員会や警察など未成
年者関係機関が共同で未成年者にアルコールとタバコを売っている商店
の調査が行われた。第2ギムナジヤ学校近くの店で15歳の未成年にビ
ールとタバコを売っているのが発覚するなど、法律違反の店が減っては
いるが、今も不法販売が続いていることが判明。

韓民族芸術セミナー

 4月30日、サハリン州成立60周年記念行事の一環としてサハリン
韓人文化センターが同胞や他民族を対象に韓民族の文化について知って
もらおうと民族芸術セミナーを開催した。参加者たちは伝統楽器や踊り
、民族衣装や食べ物、トク(餅)の歴史についてのセミナーに参加した
後、直接それらに触れてみるなどの体験学習を楽しんだ。

読者からの手紙:「サハリン残留韓人らの要求」

 終戦から62年が過ぎた今も日本は戦争責任から逃れるためにあらゆ
る手段を講じようとしている。日本は40万人の自国民又は日本人を帰
国させながら5万人の我々朝鮮人をこの島に遺棄したため、我々は4度
国籍を変えるなど厳しい人生を歩まなければならなかった。ペレストロ
イカ、そして韓・露国交樹立以来、やっと我々の要求に耳を傾ける始め
た日本は1995年「戦後50周年プロジェクト」にサハリン朝鮮人問
題を含めるようになり、次のような政策を決定するに至った。

1.日本政府は永住帰国費用を負担する。
2.日本政府は永住帰国者(高齢の独身老人、高齢の夫婦とその家族)
  用の住宅建設費用を負担する。
3.日本政府は永住帰国後の生活費を支給すると共に、基金を設け年金
  或いは一時金を支給する。
4.日本政府はサハリン残留希望者に対し、永住帰国者と同様の措置を
  取る。例えば、一時金支給、文化交流会館建設などを考慮。
5.日本政府はサハリンと韓国間の往来を支援する。
6.日本政府は消息不明者の生死確認のための調査、遺骨送還を行う。

 以上6項目はサハリン韓人団体が日本政府に要求しているものとほぼ
一致する。日本政府は議員懇談会の提案を受け入れ、国家補正予算から
32億円を拠出し、永住帰国者用アパート500世帯と療養院を建設す
る他、サハリン韓人文化センター建設、一時母国訪問事業の実施などを
行っている。
 しかし、残留希望者らに約束した一時金支給はいつ、どのように実行
するつもりかを聞きたい。又、文化センターは建設されたものの運営費
支援は行われていない。当然、運営費も支援すべきだ。日本政府は高齢
者と遺家族に1200万円を支給し、公式的に謝罪すべきだ!そして、
約束した消息不明者の生死確認と遺骨返還問題も早く実行するべきであ
る。
             ―サハリン州韓人老人会顧問 鄭・テシク

広告: 「2008年永住帰国希望者名簿作成」

 2007年4月23日から「2008年度永住帰国希望者名簿作り」
を始めます。希望者は申請をお願いいたします。
                 ― サハリン州韓人会・老人会
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 今週号でこのメール・マガジンは298号となりました。
今月の22日発行で通算300号です。

 2000年11月21日 創刊号を発行。記事の内容を見ると

◆現代時評:[森首相を、誰がピエロに仕立て上げたのか] Ken
◆セ・コリョ新聞ダイジェスト版:[2000年11月17日号から]
◆コリア・コンフィデンシャル: [廃鉱村地域活性化―カジノ産業」Nam
◆寄稿 [展覧会レポート] 今西雅文
◆編集長から:[創刊号によせて]

 となっている。

 まもなく300号。

 ここまで継続できたのは読者の皆様と執筆して頂いているKen氏はじめ
セコリョ新聞のスタッフの皆さんのおかげです。

 感謝の念をこめて。 
          http://www.609studio.com/html/300th.html
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発行     2007年5月8日   No.298
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
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