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タイトル:609studio No.296◆現代時評:[キレルということと留学生]  2007/04/24


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【609 Studio 】メール・マガジン 2007/4/24  No.296
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◆現代時評:[キレルということと留学生]         ken

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◆現代時評:[キレルということと留学生]         ken

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◆◆アサヒコム 2006.4.13 韓国の外交通商省は17日深夜
、緊急対策会議を開き、在米韓国人社会に影響が出ることを懸念し、米
国にある在外公館すべてに状況を把握するよう指示した。当局者は「事
件が人種的な偏見や葛藤(かっとう)という側面で見られることは望ま
ないし、そうならないように願う」と語った。

◆◆ サンケイWEB 2007.4.17 米バージニア工科大での銃乱
射事件の犯人が韓国人学生だったことに韓国は大きな衝撃を受けている
。そして米国社会で韓国人に対する報復など、反韓感情が起きないか不
安を募らせている。政府は盧武鉉大統領が直ちにブッシュ大統領に「慰
労と哀悼」の電報を送ったほか、官民挙げて粛然とした雰囲気だ。

◆◆ アサヒコム 2007.4.19 米バージニア州ブラックスバ
ーグのバージニア工科大で32人を殺害したとされるチョ・スンヒ容疑
者(23)は、自分の死後に公表する映像、写真、文書をNBCテレビ
に送りつけていた。(中略)「お前たちのため、私はイエス・キリスト
のように死ぬ。何世代もの弱く、救いのない人々を突き動かすために」
「顔につばをはきかけられる気持ちがわかるか」「逃げることはできた
。でも、もう逃げない。子どもや兄弟姉妹のためにやるのだ」。容疑者
はビデオで、こもった発声ながら、きれいな英語でまくしたてた。(中
略) 文書などにはこれまでに見つかっていたメモと同様、富裕層に対
する強い憎しみが書かれていた。「お前たちはすべてをもっていた。メ
ルセデスでも満足しなかった。ウオツカ、コニャックでも満足しなかっ
た」。

◆◆ 日経ネット 2007.4.19 政府の教育再生会議は18日
、大学改革を話し合う第3分科会を開き、日本の大学・大学院で学ぶ留
学生数を現在の約10万人から2025年に100万人に増やす目標を
掲げることを決めた。大学・大学院の国際化を進めて国際競争力を高め
るのが目的。英語による授業の実施や留学生向けの宿舎整備などを促進
するため、政府による財政措置の拡充が必要との認識でも一致した。 
(中略) 留学生数を巡って政府は1983年に「10万人計画」を策
定し、20年がかりで達成した。

■■ 最近流行の言葉に「キレル」というのがある。主として青少年を
対象として使用しているようだ。 ボクは、「キレル」とは昔の「辛抱
が無い」という言葉と同義語であると思っている。 子供の頃、母親は
ボクに「お前は堪え性(こらえしょう)が無い」と、しょっちゅう文句
を言っていた。 今から考えると、ボクは子供のころよく腹を立ててい
た。 つまり今風に言えば「キレていた」のかも。

■■ そう考えると、「キレル」のは青少年だけでなく、大人にもたく
さん居る。 早い話がつい先日、会った事も無い長崎市長をピストルで
撃ち殺した初老男も、キレル男の典型的な例だ。

■■ ボクは昔から、人間の中には際立って温厚な人と、反対にややも
すれば残忍な行動に出る人がいると思っている。 まあ普通はその中間
的な人間が殆どであろうが・・。 そして残忍な性質の人とは、つまり
は「キレル」性質の人であると解して大きく違わない。

■■  「キレル」のは野菜の摂取量が足らぬからとの説がある。反対
に、肉を食べ過ぎると情緒不安定になり、「キレル」性質になる確率が
高いと言われる。 別に論理的根拠があってそう言われるわけでもなさ
そうである。 強いて謂えば、肉食動物は捕食本能として肉を求めるか
ら、つい人間社会でも戦闘的行動に走るという説で、いっけん尤もらし
いが、そうでない場合も多い。 よくキれ、残忍な性質の人と言うのは
、おそらく神が造り給うた失敗作ではないかとも思う。 そして近い将
来に、何かそうした戦闘的な性質を撓める薬が開発されたらいいなと思
っている。 取り敢えずの方法は忍耐を説き、「辛抱しないと自分がえ
らい目に会う」ということを身体で以って悟らせることだけだろう。

■■ 先日のバージニア工科大学に於ける銃乱射事件も、キレる学生に
依る衝動的な行動であろう。 それが偶然、韓国籍の学生だったから、
韓国政府がいささか慌てている。 しかし韓国から留学した学生とはい
うものの、本人は8歳の頃、親の米国移住について行ったとのことだか
ら、いまさら海外からの留学生というほどのこともない。

■■ 移民の坩堝としての米国社会における一つの偶発的な事件だから
、敢えて「韓国からの留学生」と、韓国を強調する必要は無い。 もっ
とも、たとい少年の頃から長らく住んでいるとはいえ、異国社会である
に違い無いし、社会的マイナーとしての生活違和感があり、それがむか
し李御寧氏が唱えた韓国特有の「恨(はん)の文化論」の、「恨み」が
少々累積した結果であると評すべきかも知れない。

■■ ボクは昔、海外からの留学生に対する大きな奨学団体のお手伝い
をしていたことがある。 その経験から、母国を離れて一人留学に来た
外国人留学生が惹起する多くの些細な事件に出くわした。 青春で多感
な学生が故郷を離れて異国で暮らすのだから、彼ら彼女らにはとりわけ
心の葛藤が多く、いきおいその吐け口として「留学先社会が悪い」と思
い込む傾向が多いのも事実だ。

■■ ある南アジアからの学生は「指導助教授が私の論文を盗んだ」と
言い立てて、そっと精神鑑定を頼んだこともあった。 が、苦労人の実
業家が「ガールフレンドを紹介してやれば治るかも知れない」と言い、
じじつその青年にガールフレンドが出来ると、嘘のように彼の被害妄想
が消え、目出度く学位を取得して故国へ帰った例がある。

■■ そのとき気付いたのだが、台湾・香港辺りからの留学生は往々に
して、訳知りの親が留学前に結婚させ、幼児まで帯同して来させること
が多く、そうした場合は留学生活がひじょうに順調に推移し、これはい
い方法だと思った記憶がある。 むしろその場合、当時の日本の風潮と
して、「留学にワイフまで連れてくるとは贅沢過ぎる」と批判する日本
人の紳士方が居て困らされた。 海外留学に、昔の「苦学」の概念を導
入するのが、日本の老人諸氏の通弊であった。

■■ むかし夏目漱石は政府派遣留学生でありながら、ロンドンで神経
衰弱に罹り帰国を速めたと言う。 近年ではパリの日本人留学生が現地
のガールフレンドの人肉を食べたという猟奇事件もあった。 韓国政府
は、今回のバージニア大学の銃乱射を、韓国人学生による特異事件とし
て深刻に捕らえているようだが、要らざる牽強付会では無かろうか。 
 その程度の事件を恐れていては、どこの国も留学生の受け入れなど出
来るものではない。 

■■ むしろボクが思うのに、韓国という国は、何かにつけて興奮し、
やや過剰反応する傾向があるのを、常々内心で恥じているのでは無かろ
うか。 作家司馬遼太郎は、「いつの頃からか、そして何故か知らぬが
、韓国人は、事実よりも意識に於いて激しく興奮する」といった風なこ
とを述べていた。 どうせ日本の故郷であり、我々と同様のメンタルテ
ィであるべき韓国人にこの風潮が多いのをボクは不思議に思っている。
  
■■ 李御寧氏の「恨の文化論」では、「韓国のラジオを開ければ、先
ず泣くところから始まっている」と書いていたが、あの頃、つまり今か
ら30年か40年前の日本人も似たようなものだった。 戦後の日本は
、松竹の「母もの映画」が流行った。 「母紅梅」「母恋星」そして「
母三人」。 日本人もよく泣き、続いて韓国も李御寧先生お説の通りよ
く泣いた。 「泣く」というのは、「キレル」の前段階であり、要する
に自制心が薄いのだ。

■■ 「国際連盟脱退」は日本という国が最もキレた瞬間であり、「蒋
政権を相手にせず」も「真珠湾攻撃」も、日本という国がキレたときで
あった。 そして韓国盧武鉉政権はいまなお半ばキレルのが続いている
と感じられることがある。 日本に対してだけキレているのかと思うと
さにあらず。 どうやら全世界に向かってキレていて、今回のバージニ
ア工科大学銃乱射事件への韓国政府の過剰反応もそのせいかも知れない。

■■ キレルことへの予防策として中国の古典「孟子」は、「浩然の気
を養え」と教えた。 明治天皇の御製「あさみどり 澄み渡りたる 大空
の 広きを己が 心ともがな」は、その日本語訳かも知れない。

■■ ところで政府の教育再生会議は18日、大学改革を話し合う第3
分科会を開き、日本の大学・大学院で学ぶ留学生数を現在の約10万人
から2025年に100万人に増やす目標を掲げることを決めた。大学
・大学院の国際化を進めて国際競争力を高めるのが目的、という。

■■ ボクが海外からの留学生に関与していた頃は、まだ毎年の日本へ
の留学生数は6000人に留まっていて、それをせめてフランス・英国
並みに数万人に増やそうというのがボクらの目的だった。

■■ それがいまや10万人を越えたというから、意外に速かった。そ
していま、わが政府は100万人に増やそうという、いわゆる嘱望であ
る。 語源は「隴を得て蜀を望む」、つまり高望みをすることだが、い
つかは100万人の海外からの留学生が日本に来る可能性もあるだろう。

■■ ここで用心しなければいけないのは、日本へ来た留学生の全員が
必ずしも日本贔屓になってくれるとは限らぬことだ。 日本人は、とも
すれば「お世話したら親日になって帰ってくれるだろう」と、期待を大
きく掛け過ぎる。 ところが、慣れぬ異国の孤独生活で事件を惹起し、
苦情を述べ立てる留学生は想像以上に多い。 ある国から日本に留学し
、今は日本に帰化している学者が言う、「留学生に期待の掛けすぎは、
その国にも、当該留学生のためにならぬ場合が多い。留学生受入れの要
諦は、過大期待せず、せいぜいそのうちの数十%程度が将来の知日派に
なってくれるであろう、と少な目に期待しておくことである。 事実、
北欧諸国などはその計算で毎年の留学生割り当て予算を作成している」
と。

■■ 100万人もの留学生を受入れれば、なかには犯罪に走る青年も
居るだろうし、勉強しないで遊びまくっている学生も出来るだろう。 
それを覚悟の上で受け入れる必要がある。 もちろんキレル留学生もた
くさん居る。 ボクが世話したころの海外からの留学生では、残念なが
ら韓国からの留学生に「キレル」のがいちばん多かった。 国全体がい
まなお臨戦状態のところからやって来、「追いつけ、追い越せ」のプレ
ッシャーを背負って留学して来たのだからやむを得ぬ、とボクらは思い
、そしてお世話したものであった。

■■ 留学生受入れには、孔子のいう「仁恕」の心が要る。仁恕とは、
すべてのものを慈しみ育てる心、他者の痛みに共感する心、相手の立場
になって考える心である。「仁恕」以外に、キレ易い青年留学生を遇す
る方法が無いことを、わが政府や、総ての国民が心得た上で、はじめて
百万人の留学生を受入れることが出来る、ということを銘記すべきであ
る。
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◇コラム「銃社会」:片山通夫
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◇コラム「美しい国」
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◇世界のどこかでNo.97「秘境菅浦」:片山通夫
http://journalist-net.com/home/07/04/22/132200.php
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2007年4月20日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
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 4月20日号は明日配送します。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 統一地方選挙が終わった。地方選挙でこれほど注目されたのも珍しい
のではないだろうか。
 長崎市長の銃殺、破綻した夕張、東洋町の核廃棄物処理場問題・・・。
おまけに奈良・生駒市議の当選即逮捕!

 こうして並べてみると、なんだか悲しい事件や出来事ばかり・・。
春爛漫の4月の選挙にふさわしい話題に乏しかった。しかし地方選挙が
全国ネットで話題になるということの意義は大きい。

 生駒市議の逮捕以外は即ち国策への提言ととれる。受け取る国側の対
応にいささか不安が残るが・・・。 
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発行     2007年4月24日   No.296
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
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