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タイトル:609studio No.291◆現代時評:[教育改革と投票選挙制度との間]  2007/03/20


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【609 Studio 】メール・マガジン 2007/3/20  No.291
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【609 Studio】 メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプト
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◆現代時評:[教育改革と投票選挙制度との間]   ken

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◆現代時評: [教育改革と投票選挙制度との間 ]   ken

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◆◆東京新聞 2007.3.10 地方教育行政法など教育関連三法
改正について審議してきた文部科学相の諮問機関・中央教育審議会は十
日、国の教育委員会に対する是正指示について「必要であるとの意見が
多数」として、国の権限強化を認める答申を伊吹文明文科相に提出した
。「地方分権に逆行」など地方自治体側の意見も併記。最終的な方向性
は十二日に安倍晋三首相が判断するが、国の是正勧告・指示権を盛り込
んだ改正法案が、月内にも今通常国会に提出される見通し。

◆◆ アサヒコム 2007.3.13 旭混む参院予算委員会は13
日午後、安倍首相も出席して「農業・食の安全など」の集中審議が行わ
れた。松岡農林水産相の光熱水費問題をめぐる論議が焦点となっていた
が、松岡氏はこれまで通り、具体的な説明を拒んだ。野党側は松岡氏の
証人喚問を要求するなど、追及を続ける方針だ。 首相は、松岡氏につ
いて「政策分野については相当の見識がある。今後とも職責を果たすこ
とによって国民の信頼を得る努力をしてもらいたい」と述べ、辞任させ
る考えのないことを強調した。小川勝也氏(民主)の質問に答えた。

■■ 松岡農水相の、水道・光熱費が無償のはずの事務所における5年
間の費用が2880万円という報告書が虚偽であることは、議会でとや
かく論ずるまでもない。 これほど明白な嘘も近来珍しい。見え透いた
嘘が罷り通り、首相もその嘘の側に加担しているというのが、いまの政
治家たちのモラールの退廃を象徴している。

■■ 言うまでも無く、そうした「嘘」は松岡大臣だけの特例では無く
、おそらく与野党とも、そして国会、地方議会を問わず、いわゆる「議
員族」と称される人々の間ではごく普通にありふれた慣行で、今更誰も
驚かない。

■■ ボクらが子供のとき、小学校で「正直」、つまり「嘘をつくな」
を厳しく教えられものだ。 「正直」はもっとも基礎的で重要な道徳律
であった。 それが今では、国会という国の最高の行政機関が守らない
時代になった。 守らない張本人は、他ならぬわれらが代表の国会議員
諸公や、その上層部にある大臣諸君である。彼らは私腹を肥やし、社会
的地位を保存するために偽計を企て、虚言を吐いて恬として恥じない。

■■ なぜ議員諸君が、とくに政治資金の入手経路や使途について嘘を
つく性質が顕著なのか。 理由はいろいろあるが、先ず第一に近来の投
票選挙制度のもとで立候補する人物の性質に、とかくの性癖が際立って
多いことだろう。 当選するとどのくらい儲かるか知らぬが、投票によ
る選挙は戦場と同じに勝つか負けるかの争いの場である。そしてその争
いは主としてカネが勝ち負けを決める。その選挙費用たるや、法定費用
内で済むことは殆ど無く、そうしたカネを捻出するのにとうぜん利権が
絡む。これは必ずしもわが国のみならず、お隣の合衆国大統領選挙も同
様らしい。

■■ボクら庶民もときに「嘘」をつく。「嘘も方便」という仏教言葉も
あり、わずかな小嘘は、まあ許されていい。 しかしあれだけTVや新
聞で騒ぎ立てられる国会の場での嘘ともなれば、押し通すわけにもいか
ず、赤面して「恐れ入りました」と嘘を認めるのが、ボクら庶民という
ものの感覚である。 それを最後の最後まで認めないのは、いわば「議
員」という種族の特性ではないかとボクは思っている。また、公約を臆
面も無く破るのも議員の特性であろう。

■■ じゃ、「議員」族がなぜそうなのかといえば、本来そうしたこと
に鉄面皮な連中が議員になるからだ、と解すればいい。 換言すれば、
いまどきそのくらい顔の表皮が硬く、恥を恥とも思わぬ厚顔な人間で無
い限り、選挙に立候補しない世情になっている。周辺の誰かがもし「立
候補したい」と言い出せば、隣近所、親類縁者は先ずそれを制止しよう
とするのが普通である。 「カネも要るし、捕まる可能性も大きくて危
険だから止めておけ」と忠告するのだ。 

■■ それを押して立候補しようという人物などは、いわば戦国時代の
侍(さむらい)志願のごとく、「捕まっても、手が後ろへ回ってもいい
から偉い人になりたい」と志す、よほど生来争い好きの、博打根性とか
、闘争心を持った人物である、と考えられる。 もっとも、そうでない
小泉チルドレン派女性議員とか、たまにはそんな危険な商売であると気
付かぬ清純な青年なども居ないことは無いが、まあ例外だろう。 たい
ていは「海千山千」の鉄面皮で、豚箱入りも辞さない連中が政治家を志
すと決めて大過ない。

■■ そうした連中なればこそ、議員諸君が議政壇上に立てば、都合の
悪いことは「知らぬ存ぜぬ」で押し通し、その否認の弁たるや、ボクら
が「さてこの反対派の質問をどのように逃げ切るか」と固唾を呑んでT
Vを眺めていても、すらりとかわし時間切れに持ち込む。その答弁技術
は、まことにあっけないほど巧妙、かつ厚顔である。 それはいま議会
で騒がれている松岡農水相や、それを庇い立てる安倍首相に始まったこ
とではない。

■■ まあそうした政治家の厚顔さや、議会の逃げ合戦については、ボ
クらは既に知っているので、ここでとやかく言うまい。 問題は、そう
した昔ならば小学校で耳がタコになるほど教えられた「嘘をつかない」
という基本的道徳を完全にこの世から消し去ってしまった政治家諸君が
、いま「教育復興」の名のもとに教育関連三法改正を目論み、「地方分
権に逆行」など地方首長側から逆ねじを食わされているのはどうしたこ
とか。

■■ もちろん教育委員会の管轄権に関与しようとする政治家諸君の気
持ちも解らぬことは無い。 戦後すぐ、進駐軍が慫慂した地方の「教育
委員会」制がうまく奏功せず、殆ど名誉職に堕してしまって機能不全に
近いのが原因であることは明らかなのだが、だからといって、「嘘をつ
かない」というプライマリーな道徳一つ守らない議員諸君が、「教育改
革」や「美しい日本の再生」のための新しい法を創る能力があるのかど
うか、まさに疑問であると言うべきだ。

■■ だいたいボクは、進駐軍が遺した「教育委員会」と「公安委員会
」という二つの、いっけん民主的な米国伝来の行政システムについて、
ひじょうに疑問を持っている。 この二つの「委員会」制はどうやらわ
が国情に合わず、早晩廃止すべきではなかろうか。 だからと言って、
これらの権限を取り戻すほどの識見が、中央政府の政治家や官僚にある
とも思えず、そうした技術の持ち合わせも無い。 「公安委員会」が警
察に丸投げなのは周知の事実であるし、いままた「教育委員会」をアタ
マでっかちなだけで、各省中の最低能児と評判される文教省の官僚ども
の手に戻したとしてもどうにもならない。

■■ 巷間伝えられるところでは、政府は「教育再生」の名で、じつは
わが国民をして古きよき時代の日本の「忠誠心」を再生させようとして
いる、とのことである。 とくに安倍現首相の意図する「美しい日本」
の再生のためには、どうしても子供たちへの「忠誠心」教育が必要であ
るという。 「忠誠心」で誤解があるならば「愛国心・祖国愛」と言い
換えてもいいし、米国風に「patriosizm」と言ってもいいらしい。

■■ しかしそうした国家への忠誠心ならば、べつに教育委員会でなく
ても、はたまた今のような見識の無い文部官僚に任さずとも、ボクらは
すでにあの前大戦のときに、いやというほど叩き込まれた経験がある。
 特攻隊で戦死した多くの軍人や、硫黄島で玉砕した不幸な結果はすべ
て「忠誠心」の発露だったのだ。 いまさら「教育基本法の改正」が必
要かどうか、もう少し検討して欲しい。 まして、「正直・嘘をつかな
い」という基本的道徳一つ守れぬ議員諸君に、教育基本法の改正を頼む
のは、それこそ「樹によって魚を求める」の類では無かろうか。

■■ 今週の安倍内閣メール・マガジンで首相は、「更生する少年たち
」と題して、「失敗をくりかえした末に悟った信頼の大切さや失敗をの
りこえることによって体得した強さは、少年たちの人格を形成する幹と
なり、これからの人生を支えていくに違いありません」と言っている。
 ならば首相も、子供たちに愛国心を説く前に、最低限「正直」、つま
り「嘘をつかない」ことを、身を以って実践し、教え導いて欲しい。

■■ そこでボクの考え。 この辺りで「教育委員会」制や、教育基本
法改正などのアイデアを、いっそこの辺りですべてご破算にして、各地
方自治体の思うがままにさせたらどうだろう。 誰だって自分の府県・
市町村の未来を担う子供たちを立派に教育したいと思う心に変わりはな
い。 彼ら各地方の思うに任せば、中央官庁のアタマでっかちな官僚に
任せるより、また、「正直」一つだけも道徳として守れぬ利権屋政治家
どもに任せるよりはうまくいくのではなかろうか。 「教育委員会」制
を墨守したい地方があれば、それでもいいし、もし鉄面皮な政治家の能
力を買う自治体があればそれでもいい。 要するに、教育を本格的に地
方に任せきればばいいのだ。

■■ ここで立派な伝統的地方自治の一つの方法を紹介したい。 それ
は全国各農村地方に、いまなお残っている「区長」制だ。 この「区長
」というのは、田舎の最末端における自治制で、法的に存在しないが、
事実として明治以来百年、連綿として続いている集落の長のことである
。 殆どの場合、無給、または雀の涙ほどの報酬ともいえぬ報酬を貰っ
ていて、名実ともに名誉ある「名誉職」なのだ。通常、「区長」の下に
は「協議員」とか「什長」と称する、同じく無給の補助職が任命されて
いる。

■■ 日本全国の田舎の町村が、いまなお堅固な自治社会を誇っている
のは、一に掛かってこの「区長」制が維持されているからである。 室
町以後の田畑の水利システムなどは、殆ど「区長」や「区長会」の慣習
的管理下にあり、法の埒外ながらすこぶるうまく作動している。 それ
は多くの場合、市町村会議員と競合するかに見えるが、たいていの場合
、「法の下にある議員」がたぶんに「区長」に遠慮しているので、調和
を保っている。 地方町村などで、いささか厄介なことがあれば、町村
会議員などではなく、「区長」や「区長会」が丸く治めている事実は知
る人ぞ知る。  そしてボクは、戦後の進駐軍行政による「教育委員会
」や「公安委員会」制は、「区長・区長会」制の亜流ではなかったかと
思ったりもする。

■■ それを総て法に依る自治、つまり「投票議員制」に変更したもの
だから、選挙に不正なカネが飛び交い、その選挙コストを回収するため
議員諸公は高い給料を取り、なお飽き足らずに利権誘導に走るのだ。
 最近、地方の小市町村では、少子化の煽りを食った学習塾経営者たち
が、多く市町村会議員に転身していると聞く。地方議員の給料は学習塾
経営よりはだいぶ安定していて、有利だそうだ。 昔は、「井戸塀」し
か残らなかった高潔な政治家が多かったが、今では議員は儲かる仕事ら
しい。

■■ これはボクの一案だが、英国の地方議員のように、昼は普通のサ
ラリーマンで、週に2・3日だけ夜の議会に出席して、議員を儲からぬ
名誉職にすれば、わが国でも昔の「町村長」や「区長」制に戻り、うそ
つき議員の乱立も防げるし、教育の復興にも有効ではなかろうか。
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◆ウェブサイトTOPIX           609studio
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◇外交戦略・・・夢だろうな。
http://609studio.blog.ocn.ne.jp/blog/

◇世界のどこかでNo.92「龍野公園」
http://journalist-net.com/home/07/03/16/080000.php

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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2007年3月9日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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 セコリョ新聞翻訳はまだ届いておりません。
 届き次第お届けいたします。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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  なんだか寒い日が続いています。
  セコリョ新聞日本語版が届いておりません。
  届き次第お届けいたします。

◇CNNが「北朝鮮の口座凍結問題、米朝で「解決」と報じる。
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200703190001.html
 なんだか取り残されてるみたいなきぶん・・・。
 寒い!

◇浜岡・女川でも制御棒脱落 沸騰水型、臨界には至らず」と朝日新聞。
http://www.asahi.com/national/update/0319/TKY200703190111.html 
 怖い!

◇「小泉、武部氏は頭丸めたらいい」堀江判決で亀井静香氏」と朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/0316/006.html
 ホンマ!ついでにマスコミもドーダ!

◇光熱水費:松岡農相が内訳説明を拒否 参院予算委」毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/
20070319k0000e010035000c.html
 いまさら言えん。胃炎!になりそう。

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発行     2007年3月20日   No.291
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
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