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タイトル:609studio No.284◆現代時評:[北朝鮮の核実験成功]  2007/01/09


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【609 Studio 】メール・マガジン 2007/1/9  No.284
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◆現代時評:[北朝鮮の核実験成功]                 ken

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:セコリョ新聞社は正月休です。
            1月5日号は後日お届けいたします。

◆編集長から

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◆現代時評:[北朝鮮の核実験成功]                  ken
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
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◆◆毎日新聞 2007.1.03 北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」
など3紙は1日、新年共同社説を掲載、昨年を「偉大な勝利の年」と
位置づけ、核実験(昨年10月)について「不敗の国力を渇望してき
たわが人民の世紀的宿願を実現した民族史的な慶事だった」と称賛し
た。

■■北朝鮮の核実験でいまや世界は右往左往の大騒動である。 いや
正確にいうと、米・日・韓などのいわゆる西側諸国だけの大騒動で、
「(北朝鮮は)怪しからぬ、怪しからぬ」の大合唱がかまびすしい。
 もっともロシア、フランス、中国などが内心でどう思っているかは
解らぬが、とりあえず表向きでは、国連挙って「北朝鮮の核開発は怪
しからぬ」ということにしている。 さてボクは正真正銘、日本生ま
れの日本人であるし、べつに左がかった特別思想の持ち主でもないか
ら、北朝鮮の核実験成功の報に、「これは困った」と思う者の一人で
あり、日本の国益を大きく害すると心配だけはしている。 

■■が、しかしだ。この北朝鮮の核実験成功を、当事国北朝鮮の主要
新聞が挙って「民族的慶事」であると報道したのは、彼らとしてまこ
とに当然であると解するのに、ボクは吝かでない。ごく近い隣国人で
あるから、「おめでとう」の一言も掛けるのが普通の人間の隣人愛と
いうべきだろう。 しかしそれは言えない。 もしそのようなことを
言うと、日本の現状では「非国民」と言われかねない。

■■「非国民」、懐かしい言葉である。先の大戦中、ぼくらは耳がタ
コになるほど「非国民」という言葉を聞き、「非国民」という言葉を
みずからも吐いた。 が、それがひとたび終戦となってからは、あの
ときはどうやら「非国民」という言葉の乱用ではなかったか、と思う
フシがあまりにも多い。 思うに、「非国民」というような言葉は、
その時々の都合で軽軽に吐くべきでなく、百年を経た後の、歴史上の
批判のため用いる、重い言葉ではなかったろうか。

■■といった意味で、仮にいまボクが誰かわが国民に「非国民」と罵
られようと、今回の北朝鮮の核実験成功について、彼らに「おめでと
う」と言いたい心に変わりはない。 なにしろ、彼ら北朝鮮という国
にも「核抑止力」が持てたのであるから。 もっとも彼らに目出度い
ことは、とくに今回のばあい、わが日本にとっては決して目出たく無
い冷厳な軍事的事実であり、したがってボク自身、「北朝鮮の核開発
は怪しからぬ」と、腹をたてているのも事実だ。 いささか、二律背
反ながら、ボクとしてはそうした矛盾思考に嵌っている。

■■しからば今回の北朝鮮の核実験成功の、どこが彼らにとって「目
出度いこと」であり、反対に、ぼくら日本人にとって「目出たくない
」事柄なのか、そこをはっきりと認識しておく必要がある。 単に「
怪しからぬ」というだけで片付け、「あれは悪い国である」との烙印
を焼き付けるので問題は片付かない。 彼ら北朝鮮の代表的メディア
が「不敗の国力を渇望してきたわが人民の世紀的宿願を実現した民族
史的な慶事」と喜ぶのには、それなりのじゅうぶんすぎる論理と、事
実の裏付けがあるのだ。 すくなくとも今後、そう簡単に、イラクの
フセインのごとく、北朝鮮がアメリカに押しつぶされる可能性は少な
くなったのであるから。 

■■いま世界中、どの核保有国でも、「我々が核を保有するのは『核
抑止力』のためであり、 積極的に自分の側から攻撃武器として核を
使用するためでは無い」と、言いきっている。 ならば米国であろう
と、北朝鮮であろうと、はたまたインド・パキスタンであろうと、『
核抑止力』のために核を持つのは許されるべきであり、それを非難す
べき筋合いは無い。 核兵器が、激しく無慈悲な超破壊力をもった武
器であることは事実としても、周知の通りいまや「核兵器」そのもの
は、地球上、武器としては「公知公用」に近い兵器なのである。じじ
つごく最近、米国はインド政府と「米・印(民生用)原子力協力協定
」を締結したが、誰も驚かない。 体裁の上では「民生用」と言って
いるが、こと原子核技術に関する限り、「民生用」と「軍用」の区別
は無いに等しい。

■■「仮装敵国」というよりは「準敵国」に近い、米国と北朝鮮の間
で、片方の米国が核兵器を持ち、片方の北朝鮮がそれを持っていない、
という間柄は、ひじょうに一方的で、公平でないことはまことに明白
である。 それを米・日をはじめ、大方の、いわゆる自由主義諸国が
核を事実上持っている現状で、北朝鮮に「核兵器を持つな」というの
は、あまりにも一方的過ぎ、そのような米国の話に同調するのは、い
わば米国の不平等政策に加担していることである。 ただし、わが国
として隣の準敵国に核兵器を持たせまいとして、「怪しからぬ」と戦
術的に言い立てるのは、こちらの都合としてとうぜんであり、何ら遠
慮することは無い。 国際的な平等よりも、わが国益が優先するのは
やむを得ない。

■■もちろん米軍がわが国に核兵器を持ち込んでいるのは暗黙の事実
であるし、それでわが自衛隊が核兵器を持たなくてもいのならば、そ
れに越したことは無い。 がしかしである。それにより北朝鮮がわが
国の軍事力を侮るとすれば、核兵器であろうと何であろうと持った方
がいい、遠慮することは無い。 古来、近国からの侮りは、戦争勃発
の最大原因であった。

■■確かにわが国は60年前に世界で唯一最初に原子爆弾で大損害を受
けたのは事実だ。しかしそれは60年前のことであり、この変化の激
しい時代に、60年前の大悲劇を理由にして、非核3原則を守るとい
うことは、現状無視、時代錯誤の甚だしきものであり、諸外国が「日
本は核アレルギーの国」というのはとうぜんのことである。 

■■いわゆる『核抑止力』が有用ならば、たとい広島・長崎の人々を
宥めすかしても、わが国が核兵器を保有すべきは言うまでもない。核
兵器を持つなという純粋、かつひたむきな心は尊ぶべきだが、いまや
世界中が核兵器を持つ時代だ。 そうした中にあって、わが国だけが
持たないというのは、いわゆる『史記蘇秦伝』中の「尾生の信」に他
ならない。

■■それよりも大事なことは、ほんとうに「核兵器を使用する場合が
、将来、果してあるのだろうか」ということを、先ず以って深く考え
る必要がある。 なぜなら、核兵器などと言うのは研究開発、そして
保管に莫大なカネが要る。 持つことに、それに見合う価値があるか
どうかという損得勘定を先に計算して、間違いなく採算が合うとなれ
ば、自前の核兵器をもてばいい。 

■■もしそうでなければ、現状のように「米国の核の傘」のもとに止
まり、そのための応分の分担金を米国に支払うことが望ましい。使用
する場がないのを承知で、高価なコストを掛けて製造保有するのは、
俗にいう「無用の長物」に過ぎない。 その辺りの計算こそ大事なの
だ。 まあ適当に、米国に造っておいてもらえば、その方が無難であ
るし、安上がりだ。 頼めば米国が、はたしてわが敵国に核兵器を撃
ち込んでくれるかどうかは、さして心配する必要はない。 米、自国
内に撃ち込む核兵器ならば問題だろうが、地球の裏側のある一国に核
爆弾を撃ち込むていどの話は、名目さえ立てば米国にとっては、さほ
ど難しい話ではない。 普段に前渡し金的なものを躊躇せず払ってお
れば、さあというときに頼みさえすれば、撃ち込んでくれるだろう。
 もっとも、こちらが撃ち込む前に、相手方敵国が核兵器を先に使用
してくれることが必須条件なのは、わが国自前の核兵器の場合であろ
うと、米国依存の場合であろうと同断であり、そこのところが難しい
だけである。

■■北朝鮮の国情でも同じと考えていい。 「(核抑止力という)不
敗の国力を渇望してきたわが人民の世紀的宿願を実現した」という北
朝鮮の考え方は決して間違っていない。 なぜなら、米国はいまの北
朝鮮の「金王朝」を倒すと明言しているのだから、彼らとしても核を
持って対抗しなければならなかったのだ。 もし北朝鮮が遠国の友邦
で、わが国民を誘拐したりしなかったならば、「核抑止力を持ちなさ
い」と、かえって我々日本から勧めてあげたいくらいだった。

■■がしかし、貧乏な北朝鮮にとってはそのためのコストはひじょう
に高くつく。損得を考えれば、核実験に成功した方が得だったか、も
しくは初めから諦めていた方が得だったかは、今のところ軽々しく判
断できない。もし諦めたりすれば、金将軍が、先日のフセイン元大統
領のように、米国により絞首刑に処されてしまう可能性さえある瀬戸
際なのだから、ボクらが兎や角、無責任な示唆を北朝鮮にすべきこと
ではない。金将軍自身のリスクと判断で、核開発すべきかどうかを意
思決定すればいいのである。 

■■日本が、北朝鮮に文句をいうのは核開発がどうのこうのの理屈で
はなく、ただ一途に、攫っていったわが国民を還してくれと要求する
に尽きる。 それと、もし核開発を止めて置けと言いたいのならば、
理由として、「核開発して、高いコストを掛けて、はたしてそれで採
算があうのか。 さらに、自前で開発した高価な核爆弾を、みずから
使用するチャンスが来るかどうかを、よく考えた方がいいですよ」と
、言うにとどめるべきである。 核開発の損得勘定を、北朝鮮自身に
考えさせることが重要であり、ただ単に「国連決議だから、貴方の国
は核開発してはならない」というだけでは、彼らをして納得させるわ
けにはいかない。

■■それをどうしたことか、わが政府は米国に阿諛する余りか、「核
実験を止めて置け」などと、要らぬ差し出口を言う。 だから金将軍
は、日本など米国の代弁をしにくるだけの属国と、蔑むのだ。もし端
的に、「攫った日本人を還せ」だけならば、まだしもほかに交渉のし
様もあったのではなかろうかと、ボクなどは、わが日本政府のために
悔やむばかりである。 

■■もっともボクは、どこの国であろうと、核兵器などという物騒な
ものを製造するのに賛成しない。 がしかし、現在までのところ、「
核抑止力」が、戦争回避の最良の方法であると、世界中ほとんどの国
が思っていて、それは一理ある。 だから、わが国も、もし米国の核
の傘の元に居なければ核開発しなければならないだろう。 どこの国
でも、伊達や酔狂で「核開発」をしているわけでないことを、われわ
れはもっともっと切実に理解する必要がある。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2007年1月5日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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  セコリョ新聞社は正月休です。1月5日号は後日お届けいたします。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 天候が不順です。暖かくて雪の無いスキー場も。ジャーナリスト・
ネットの「今年もよろしく5;三室勇 新年に思うこと:待ったなし
の温暖化対策と環境社会主義の動き」と題したジャーナリストの三室
氏が地球温暖化に対する警告を紹介しておられた。

http://journalist-net.com/home/07/01/07/022545.php

 確実に地球は病んできているようです。
 
一方、政治も。
 「イラク軍は、駐留米軍の支援を受け、バグダッドのスンニ、シー
ア両派の過激派に対する掃討作戦を7日以降始めると、マリキ首相周
辺筋が明かした。(CNN)とある。

 掃討作戦もいたずらに犠牲者を増やすだけだという意識が欠如して
いるのがイラクとアメリカの首脳。
まさに「やられる前にやり返せ」か。

 セコリョ新聞の1月5日号はまだ入手できていません。
日本語訳ともども、後日別刷でお届けいたします。
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発行     2007年1月9日   No.284
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
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