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タイトル:609studio No.282◆現代時評:[政治家と女性問題]  2006/12/26


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【609 Studio 】メール・マガジン・2006/12/26  No.282
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に論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、
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◆現代時評:[政治家と女性問題]           ken

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2006年12月15日号

◆編集長から

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◆現代時評:[政治家と女性問題]           ken
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
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◆◆共同通信 2006.12.21 政府税制調査会の本間正明会
長は21日、公務員官舎に不適切な形で入居していた問題の責任をと
り、辞任する意向を関係者に伝えた。与党内で辞任要求が強まり、信
頼回復を図って税制改正論議を主導していくのは困難と判断したとみ
られる。安倍晋三首相も認める方針。財務省案を拒み、成長路線への
軌道修正を狙って実現した官邸主導による本間氏の会長起用人事が、
わずか1カ月半で失態を招いたことは首相の大きなダメージ・・・。

◆◆サンケイWEB 2006.12.21  政府税制調査会(首相の諮問機関)
の本間正明会長(大阪大大学院教授)は21日、公務員官舎に不適切
な形で入居していたとされる問題の責任を取り、安倍晋三首相に辞意
を伝えた。塩崎恭久官房長官は同日午前の会見で「今朝、安倍総理に
電話で一身上の都合で辞任したいという強い申し出があり、受け入れ
た」と述べ、安倍首相も辞任を了承したことを明らかにした。政府・
与党内からの批判が相次ぎ、本間氏は職責を果たせないと判断したよ
うだ。

■■「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉が昔あった。この二つは関係
のない他人からみるとずいぶん面白かったらしい。 ところが最近は火
事も喧嘩も減っってしまった。(もっとも国際的な喧嘩はいまなお盛ん
である。 )    近頃、火事や喧嘩より面白いのは、どうやら男女
間のゴシップが一番らしい。 その証拠に、週刊誌を毎号飾るのは男女
のくっついた離れたという話がいちばん多く、政治家の賄賂事件と比べ
て数倍も多い。 ただし、 その当事者はだいたいが映画俳優とかスポ
ーツ選手である。

■■それが政治家に飛び火したのが今回の某大学教授兼政府税制調査会
長という著名人の公務員宿舎入居問題だ。火付け役の記事は若い人が好
んで読む三面記事専門の娯楽雑誌だった。 こうした安物雑誌は一般的
に言って紳士淑女たるものが読む本ではないハズだ。がしかし、こうし
た雑誌記事専門の、これまた安物記者たちがジャーナリストなどと詐称
してセンセーショナルに報道する。もっとも、彼らいかがわしい文筆屋
が何を読み書きしようと、いわば他人の商売で、我々がそれにケチを付
ける必要はない。

■■だが問題は、そうしたゴシップ屋に挑発されて、大事な国家社会の
将来を決める政府税調会長に、その女性問題を理由に退陣を迫る国会議
員諸君の見識はいったいどうしたことか。なるほど、世間体に言えば正
式ワイフで無い女性と国家公務員住宅に入居していたというのはあまり
誉めた話でもないし、当人にとっては、出来れば伏せておいて欲しい私
的な事実に違いない。もちろん、こうした男女間の問題については、紳
士たるものがとやかく噂するのは憚るべきであろう。 ましてそれを政
治家が政争の具に用いるというのも恥ずべき行為に入ると考えていい。

■■ところがそれを野党第一党の大物領袖がわざわざ騒ぎ立てて、政敵
を非難し、辞職を迫るというのは、まことに卑劣な倒閣運動とも言うべ
きだろう。  もっともこの野党領袖は、つい先だっての選挙の折り、
辛辣な評論家から、「あれほど男としての魅力が無い政治家では、仮に
一党の党首として選挙で争っても勝ち目はなかろう」と、こき下ろされ
ていたから、艶福家の政府税調会長に聊かの嫉妬心を抱いての上のこと
だったかも知れない。

■■だいたい、「政府税調」というのは、いわゆる「政党の税調」など
と違って、政治的中立の立場にあり、長期的な視野に立って国家として
の理想的な税制度を考え、それを首相に進言する機関である。 そうし
た特別な機関の代表というのは、必ずしも私生活において人格高潔、修
身の教科書を身で示すような立派な人であるよりも、むしろ、酸いも甘
いも噛分けた社会の常識人であることが望ましい。 

■■なぜなら、税というものは、端的に言えば政府がやむを得ず国民か
ら収奪するカネであり、ほんとうは取らないほうがいい必要悪なのであ
る。 それを無理なく、(なるべく公平に)国民から搾り取るべき性質
のもので、国民の側からすれば、なるべくならば払わずに済ませたいも
のである。  それを出来るだけ穏便に取り立て、国民をして怨嗟の声を
より少なくするのが理想的な税制である。本質として税制には、「二律
背反」の性格が原罪として存在し、誰かが得をすれば誰かが損するとい
う形式になるのは否めない。 

■■であるから、そうしたシステムを考え出すには、人格高潔、公平無
私の人格者よりも、むしろ世俗の心をより巧みに忖度し、清濁併せ飲む
ような知恵者が税調会長として適任である。 そしてそのような適任者
は、おそらく民心を収攬する術に長け、世の人々の受けがよく、とうぜ
んのこと女性らか見ても魅力的な人であるばあいが多いと考えられる。
もっと端的にいえば、ある場合は資本家から、そしてある場合は零細な
国民からも、知らぬ間に苛斂誅求し、それでいてなお大多数から尊敬さ
れ、愛されるといった、いわば「やり手」であることが、じじつとして
望ましいのである。

■■ボクが思うのに、今回、税調会長を辞任したという大学教授という
のは、じつはそうした性質の紳士ではなかったろうか。だからこそ、首
相をはじめ、周辺の友人政治家連中は、彼を政府税調会長として選任し
たのではなかったか。もしそうであればとうぜん女性にも持てるだろう
し、浮名を流すこともあり得る話であり、東京宿泊のチャンスが多けれ
ば、その女性との東京生活の場として政府高級公務員用の宿舎を借り受
けることにしたと考えれば、ごく普通の行動であり、とり立てて非難す
べき筋合いは何も無い。

■■ところが予期せぬ横槍が三面記事雑誌関係者から闖入してきた。 
一服盛ったその蔭の告発人は、政府税調、および最近の米国式の、首相
官邸主導型政治システムにより、自分たちの既得権益を奪われそうにな
った財務省官僚であると噂が伝える。誰が下手人かは兎も角、世間の噂
、とくに女性関係スキャンダルが好きなマスコミと、それに飛び付いた
政界反主流派が組めば、楽しいスキャンダル・ニュースのみでなく、倒
閣運動という政争の具の、両方が協力しあって一気に世を騒がせるのは
自然の成行きである。つまり、「あの税調会長は不道徳な男だから辞め
させろ」という、造られた「与論」になる。

■■しからばそう言った騒ぎを起し、「怪しからぬ」と息巻く人々はい
ったいどういう種類の人々か。 昔から言われている通り、国会議員の
殆どは地方選出で、彼らが東京という政治偏在の地にあって活動するた
めには、とうぜん一年の半分以上の東京生活を余儀なくされる。そのた
めの必須不可欠として、東京在住用のワイフ、もしくはそれに似た存在
のベターハーフが必要であり、そうした政治家の東京生活パターンは、
ほぼ半公認のまま、長年の習慣としてわが国に定着している。なぜなら
、本妻は地元選挙区に張り付いて冠婚葬祭等の挨拶回りが必須で、亭主
と共に東京常駐という訳にはいかないのだ。つまり、「東京ワイフ」で
あるか、短期契約女性であるかの違いはあるにしても、地方出身の過半
の国会議員がそうした女性と東京で共同生活するのは、議員としての宿
命みたいなものである。 そのような生活をしている政治家たちが、今
回の元税調会長の、親しい女性との公務員宿舎での同居を非難する資格
など無い筈である。聖書がヨハネ8章7節で説く、「なんじらの中、罪
無き者まず石を擲て」だ。

■■そう言えば批判者たちは「いや、女性のことを言っているのではな
い。そうした非公認の女性と政府の公務員宿舎に入るのがいけないのだ
」と反論する。ならばと、元税調会長氏はさっそく公務員宿舎を立ち退
き転居した。すると、「だが一度は国民の信頼を裏切ったのだからいけ
ない」と、済んだ話に追い討ちをかける。政治とは争いだから、政敵の
弱みは何であろうと理由として執拗に利用する。

■■で、結局、あたら有為(?)の政府税調会長は詰め腹を切らされた
。わが国の風潮として、ある種の仕事にたとい優秀であろうと、その前
に先ず人格高潔という条件を形式的に要求する。 確かに人格高潔は結
構だが、世の中の多く、とくに政治がらみの仕事はそうした条件だけで
出来る職業でないことは決定的だ。 とくに、こと女性がらみの生活で
は、ワイフ一筋で純心無垢と言えそうな政治家などはめったに居ない。
 
 政治家の仕事などは、ヤクザの鉄火場と似て、斬った張ったの争い商
売である。 脂ぎった精力家で、とうぜんカネや女色にも強い者が選ば
れる職業であることはいまさら言うまでも無い。社会正義とやらが望む
人格高潔と、ちょうど反対の性格の実務家の相拮抗する場こそ、まさに
政治の世界である。

■■むかし、市川房枝という国会議員が居て、清廉潔白、長年の政治生
活の間、ただの一度なりとも法定費用以上を選挙運動に費やさなかった
。 だがしかし、国民の誰もが彼女を首相にしようとはしなかった。清
廉潔白だけで政治家が務まるとは有権者の誰もが思わなかったからであ
る。有権者もその程度のことは知っている。

■■そうした事実は、今回、辞任に追い込まれた政府税調会長の場合に
も当て嵌まる。 理想社会が夢見る修身教科書的な「人格高潔」と、政
治的「俗世間的能吏」との乖離の場に彼は存在し、そして失脚させられ
た。もし元税調会長が安倍首相の負託に、真に堪えられる人物であった
とすれば、彼の不本意な辞任は国家の損失と言わざるを得ないだろう。 
 そして、政争としての「女性問題」で彼をいびり出した者たちには罪
がある。

■■易経に「苦節 貞(かた)くすれば凶なり」という言葉がある。
「どんなに正しく立派なことでも、無理に守り通そうとすれば凶、つま
り碌な事はない」、という意味だ。 近年、世界中で問題を起している
「原理主義」というのがその適例である。 イスラムの原理主義や、最
近の米国の「リアリスト」たちが惹起するトラブルがそれに該当する。
 理論上、いくら立派でも、原理原則を無理やり守ろうとすれば、どこ
かで破綻を招来する。

■■本妻でなければ公務員宿舎に住まわせるな、などというのはそれに
類した、原理主義者の石アタマ的主張であるに過ぎない。本人が住んで
おりさえすれば、その身の回りを世話する女性が、共に住んでいて何処
がいけないのか。いまどきは、妻帯カトリックを神父に叙任している例
すら出現し始めた。

■■論語にもこんな話がある。父親が、道に迷った羊を拾ってきて隠し
ていた。すると真っ正直な息子がその事をお上に訴え出た。道に落ちて
いるものを隠してネコババすることを「攘(ぬすむ)」という。これを
聞いた孔子は言う、「父は子の為に隠し、子は父の為に隠すのがとうぜ
んだ。われら孔子一門は、どんなことがあろうと父を訴えたりはしない
」。其父攘羊 而子証之 孔子曰 吾党之直者異於是 が原文である。

 もしネットなら、「攘羊」のキーワードで検索されたい。「物事は、
真っ正直だけではいけない」と、孔子も2000年の昔に説いている。

■■今回辞任した元政府税調会長の女性なども、いろいろ事情があった
上での公務員住宅に於ける共同生活らしかった。性急にそれを単なる色
恋沙汰の不貞行為と断じ、辞職を強要するというのは、成熟した国家社
会における政治家たちの思慮ある行為とはいい難い。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2006年12月22日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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州知事就任1100日目

 今月、イ・マラホフ州知事は就任1100日を迎える。これと関連
して州指導部は18日―21日まで、1100日間の業績の跡を辿る
「巡回取材班」を組織した。州政府の支持の下で記者団は、今年州予
算で再建及びリフォームされた文化施設と教育機関、即ちオクチャブ
リ劇場、博物館、図書館などをみて回った。

反テロ委員会の会議

 イ・マラホフサハリン州知事が指導しているサハリン州反テロ委員
会がさる15日、会議を招集した。州知事が出張中であったため、副
委員長のロシア連邦保安管理局ユ・コセンコ局長が会議の進行を担当
した。反テロ委員会委員らは2004―2007年間テロとの闘争関
連事業案の実効性を再考し、又関連機関との連携関係構築問題などに
ついて審議を行ったのち、2006年度事業評価と2007年度事業
案を承認した。

在外同胞の移住を支援

 サハリン州知事が、大統領令の「2006―2012年の間にロシ
ア連邦への自主的移住を希望する外国居住ロシア人同胞支援対策」の
実行のため、サハリンへの移住を希望する外国居住ロシア人を受けい
れられるプログラムつくりをサハリン州経済委員会に命じたことがわ
かった。プログラムを作るための実務チームが部門別に組織され、年
末までその結果を州政府に報告しなければいけない。

バス深夜料金制導入

 1月1日からユジノサハリンスク市では夜9時からバス料金が25
ルーブルに引き上げられる。夜8時以後運行するバスが少ないために
、深夜料金制の導入を余儀なくされた。バス運行者らには悪い話では
なさそうだ。

養豚業発展問題で

 さる5日、サハリン州ヴェ・ナゴルヌイ副知事が養豚業発展問題で
州農業総合体企業指導者らを集めて会議を招集した。副知事はそこで
、「今年、企業の豚肉生産量は増加した反面、個人の生産量が減少し
たのは心配だ」と指摘した。個人畜産業者らの豚肉生産量は14%減
ったが、総生産量に影響するほどのものではない。しかし、対策は必
要であるというのが政府の考えである。討論参加者らは、個人畜産業
者らの生産量減少の原因は肥料、電力、潤滑油などの大幅の値上げだ
と指摘した。又、生産者らは直接販売を行う直販場が何よりも必要で
あるとの主張し、州農業管理局はユジノサハリンスク市政府と直販場
設置問題を論議することにした。来年2―3月頃、ロシア農業銀行サ
ハリン支部が設けられる。同銀行からの融資で資金不足問題は大いに
解決されるであろうと副知事は確信している。

朝鮮人労働者ら殺害

 今月10日、ウラジオストクで朝鮮民主主義共和国の出稼ぎ建築労
働者3人が不良たちから攻撃を受け、重傷を負った。中の2人は数日
後死亡した。イタルタス通信によると二人は30―40代の平嬢出身
者。13日、極東地域ロシア大統領代表カ・イスハコフさんは「多民
族社会の当地域でのこんな事件は軽く考える問題ではない。事件調査
は直接指揮する」と強硬な対策姿勢を見せた。

ロシア人口減少を続く

 ロシア経済発展省の報告によると、2007年度のロシアの人口は
更に70万人が減少した1億4170万人。その中の労働能力のある
住民は8、980万人で、最低生活費以下の収入の人々は14.3%
と予測されている。ロシアの人口は2005年1億4,310万、2
006年1億4,240万人。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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  日曜日は「クリスマス・イヴ」でした。・・・といっても無信心の
筆者にはあまり関係はありませんでしたが。

 18日から稚内で取材をしていました。「とんでもない」といえば
失礼だと思いますが、樺太へ2度密航した経験をある方からお聞きし
ていました。樺太生まれの樺太育ち、ソ連邦の攻撃の中を脱出してこ
られた彼の生き様は昨今の「戦争を知らない政治家ども」に聞かせて
やりたい話ばかりでした。
 彼へのインタビューは近々掲載いたします。

 何はともあれ今年も暮れようとしています。
本年のご購読、有難うございました。良いお年をお迎えください。
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発行     2006年12月26日   No.282
編集・発行  609studio   Michio Katayama
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