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タイトル:609studio No.278◆現代時評:[ハノイ・APECの会合は目出度く終了?]  2006/11/28


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【609 Studio 】メール・マガジン・2006/11/28  No.278
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【609 Studio】 メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプト
に論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、
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───────────◆◆◆INDEX◆◆◆───────────

◆現代時評:[ハノイ・APECの会合は目出度く終了?]   ken
 
◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2006年11月24日号

◆編集長から

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◆現代時評:[ハノイ・APECの会合は目出度く終了?]   ken
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
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◆◆GOOニュース 2006.11.19 ハノイで開かれていたアジア太平洋経
済協力会議(APEC)首脳会合は19日、北朝鮮の核実験に強い懸念を
示し、核放棄への具体的行動を求める口頭の議長声明を発表して閉幕し
た。

◆◆アサヒコム 2006.11.18 首相や大統領の外国訪問に民間の経済使
節団を伴うスタイルは欧米では多いが、日本では今回が初めてという。
 安倍首相は18日からハノイでのアジア太平洋経済協力会議(APEC
)首脳会議に出席する。

■■The 14th APEC Economic Leaders’ Meeting concluded 
successfully with the second retreat today. In their 
annual two-day meeting chaired by Viet Nam’s President 
Nguyen Minh Triet, Leaders of 21 APEC economies discussed 
the theme “Towards One Dynamic Community for Sustainable 
Development and Prosperity”. 第14回APEC経済首脳会議は
成功裏に終わった、とエーペック自身の公式発表があったのだから、先
ずはお目出度くアジア太平洋経済協力会議は終了したとしよう。

■■が、念のための前提として、APECなるものの性格をここではっ
きりしておこう。 それは「環太平洋地域における多国間経済協力を進
めるための会議」であり、政治とか紛争処理とかに取り敢えずは関係無
い。この前の韓国釜山における第13回会合で、スローガンのごとくに
何度か強調されたのも「経済会議である」ということだった。そうでな
いと、ややもすれば会議は政治や国際紛争に終始し勝ちになる。

■■次に、参加加盟21ヶ国というのは、人口でも経済規模でも全世界
のほぼ50%前後を占め、世界の半分が集まる大会合であり、とりわけ
今回の開催場所と主催国が、もっとも新しい加盟国であるベトナムであ
ったという事実だ。

■■繰り返すが「APECは経済会議」、これははっきりしている。 
そのくせ、アジテーターであるマスコミはその目的を歪曲し、「経済」
を二義的に扱い、「政治」を主にしている傾向があることは事実である。 

■■だから、院外団とも言えそうな遠い国のブッシュさんが出席し、「
APECでFTCの採択を」と演説をぶったのは、「6国会議の早期開
催」や、「北朝鮮の核廃絶」、あるいは日本の「拉致問題」を俎上に乗
せるよりは、目的としては充分理に適っていた。

■■ところが前回の釜山でも、今回のハノイでも、「経済」を棚上げし
て、「政治問題」、というより「政治的紛争」をマスコミが大々的に取
上げたのは本末転倒であった。 わが安倍新首相も、「拉致問題」と「
北朝鮮の核廃絶」を訴えるためにハノイのAPECに臨んだふりをした
のは、間違いとは言いきれぬが、国民に目的外の期待を抱かせたことに
おいてミス・リードしたといわれてもやむを得ない。

■■もっともこれは安倍首相の意図とは別に、マスコミが国民、つまり
大衆を煽りたてたのかも知れない。 がしかしだ。 わが安倍首相はA
PEC会合では、「拉致問題」をAPECのメインテーマにするような
発言を繰り返し、ぼくらもそれに乗せられた。 

■■じじつ、安倍首相は会議の冒頭で「6カ国協議再開の動きを歓迎す
るが、北朝鮮が非核化に向けた約束を果たす具体的行動を取るよう国際
社会が圧力をかけていく必要がある」と強調。続けて拉致問題でも「こ
のような非人道的行為が許されないことを国際社会の総意として北朝鮮
に伝えることが重要だ」と語ったと、マスコミは大きく報道した。

■■ところが会議終了時の議長声明では、「拉致問題」はお座なりのリ
ップ・サービスで、ごく軽く触れれただけなのにわれわれは落胆した。
 「経済会議」での「拉致問題」言及だから、結婚式における身内の病
状説明と同じで、場所にそぐわぬのは重々承知の上だが、期待していた
日本にとっては落胆以外のなにものでも無かった。安倍首相としては、
それも計算の上、何はともあれ機会や場合はフルに利用しようとの魂胆
だったろうから、彼の非をとやかく言うべきでない。 が、決議とまで
はいかぬにしても、もうちょっと出席21カ国の反応が大きいと期待し
ていた我々が甘過ぎたのだろう。

■■しかし、「経済」だけで「政治は議題に非らず」としても、寄って
たかって「六カ国協議」と北朝鮮への「核非難」だけは議長声明か議長
談話か知らぬが、充分行われたようだから、米国の意向はじゅうぶん押
し通せたわけである。

■■けれども、「経済問題」に一応の的を絞りきり、最終的な議長談話
にまで漕ぎつけた議長国ベトナムの腕前は大したものであった、と感心
すべきだ。 彼らはだいぶ気を遣っただろう。

■■そこでそのベトナムだが、冒頭に述べたように21カ国の最後にA
PECに参加した国、つまりAPECにとっては最新参者の主催だった
。しかもそのベトナムたるや、周知のように米国と10年間戦い、つい
に米国を逃げ帰えらせた世界唯一の国であり、さらにその後の中越戦争
でも中国軍に勝ったという、恐るべき、世界無類の戦勝国なのである。 

■■中越戦争のばあいは、事実は古色蒼然とした軍備の中国軍に対して
、旧ソ連の最新兵器を駆使したベトナム軍隊だったから、後から考えれ
ば勝つのが当然の戦争ではある。が、何にしろ「恐るべき中国軍」と、
「世界最強の米軍」の両者に対して勝利したのだから、これはもう称賛
、というよりは脅威の「ベトナム社会主義共和国」というべきだろう。

■■それが社会主義そのままの国家体制で、改革開放路線である「ドイ
モイ体制」を始めてから僅かに15年で、かっての仇敵米中両大国も含
めた21カ国のAPEC経済会議の主催者国になり、うまく合議を取り
つけ、議長談話という成功にまで漕ぎつけたのだから、驚くべき手腕、
才能、国家としての実力を持っていることに、我々はもっと驚き、称賛
してもいい。

■■かっての怨敵、米国大統領ブッシュ氏、および中国主席胡錦涛氏ま
で出席したのは、時代の趨勢もさることながら、ベトナム社会主義共和
国の国際交渉におけるお手並みは端倪すべからざるものと解釈すべきだ
。 前回の釜山APECのときの中国による台湾忌避問題などと比較し
て、いかに水際立ったベトナムの腕前だったか。 ボクはひじょうに称
賛したい。

■■しかもそのベトナムの、いわゆる「ドイモイ政策」に至っては、社
会主義国であるという建前は微塵も動かさず、それでいて、いま流行の
市場主義経済はちゃっかり取り入れ、年率で数10%という脅威的な経
済成長を為し遂げているのは、マジックとも謂えようか。

■■それが、中国に学ぶわけでもなく、米国の指導を仰ぐのでもなく、
すべてを自力、内部で決定し実行し、他国の指図をいっさい受け付けな
い、その芯の強さには驚かざるを得ない。おそらく、社会主義において
も市場主義においても、世に言う「原理主義者」をいっさい排除し、市
場主義(資本主義?)のいいところと、社会主義のいいところをうまく
取上げたのだろう。 いわば近い例としての、戦前の日本における「社
会改良主義」か、「政府統制主義」を採用しているのではないか、と思
う。

■■だからこそ、今回のAPEC主催国として、困難な国際情勢の中で
、どこからも苦情や批判はされず、すんなりと成功裏にAPECを終了
せしめたのは、一にかかってベトナム国の才覚と力量に他ならない、と
考えられる。 今回第14回APEC成功で誉められるべきはベトナム
。 そしてちょっぴり不本意で、意に添わなかったのはわが安倍首相、
という考課表を呈してもいいだろう。

■■結局、ボクが今回のAPEC会議を横目で眺めた感想は、APEC
は所詮、環太平洋の国々の経済フェスティバル、つまり「お祭」以上の
何物でもなく、そこへ政治や国際紛争を持ち込む必要や効果は何も無い
ということだ。 国家経費の節約から言えば、APECから日本が脱退
しても、大きな損害は無いのではなかろうか。じじつ最近の中国などは
「上海協力機構」、「中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)」、
「アジア・アフリカ首脳会議」などにに力点を移動させているように見
える。

■■残念ながら米国の驥尾に附している日本としては、いまのところ国
家間紛争を処理したり、経済の相互発展を議するためには、個々の国々
と直接交渉した方がより効率的ではないだろうか。 そのためには、A
PEC会議に便乗して安倍首相が経団連に話をつけ、御手洗会長以下、
100人に上る経団連メンバーをベトナムへ帯同したのは、ある意味に
おける巧妙な経済外交だったと謂えるかもしれない。 

■■ただ、いまの日本は、工場の海外移転で、日本国内の中小企業やそ
の産業労働者の不景気が甚だしく、国内産業が空洞化しているという問
題がある。 労働賃金が安いからといって、ベトナムへ工場進出する前
には、こうした問題もよく考慮してから行動すべきであろうう。

■■ベトナム戦争、中越戦争、「ドイモイ政策」以来のベトナムの進歩
はまさに驚きだ。 この調子でいけば、近い将来、国際間紛争の調停役
としての役割をベトナム社会主義共和国が受持つ時代が到来する可能性
がじゅうぶんある。 いまそれを、北欧の国々がやっているようだが、
白人国にはそれなりの弱点があり、必ずしも適役とは言い難い。 もし
ベトナムという有色人国家がその役割を果すようになれば、まさにうっ
てつけの調停者ということになるかも知れない。 

■■スイスやスエーデンを消極的平和中立国とすれば、ベトナムは積極
的平和中立国というべきで、そのベトナムにわが日本はすでに9000
億円ものODA援助をしている。 この膨大な援助は、ただにベトナム
社会主義共和国への援助というにとどまらず、世界平和への白馬に乗っ
た救援者を創出するための援助であったと考えてもいい。ベトナムの将
来に対し、大いなる期待をもって見守りたい。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2006年11月24日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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ナホトカ駐在朝鮮民主主義人民共和国総領事来島

 さる23日、ナホトカ駐在朝鮮民主主義人民共和国総領事ほか2人の
職員がサハリン州政府を尋ねた。赴任したばかりのシン・クグリョン総
領事は真っ先にサハリンを訪問した。シン総領事らを迎えたヴェ・ニキ
チン副知事はサハリンの社会経済発展について説明を行った後、両国の
経済分野での協力について話し合った。また、シン総領事はサハリン州
にナホトカ総領事館の分館を設立する予定であると伝えた。(詳しい内
容は来週掲載)

サハリン州地域天然ガスの効率的利用のために

 先日、ヴエ・シュパコブスキ副知事とサハリン地域における天然ガス
の効率的利用問題に関する実務グループ委員らとの会合があった。同グ
ループはイ・マラホフ知事がサハリン沖開発事業に参加している日本企
業三菱と三井の両社にサハリンの天然ガスと石炭利用についての研究を
勧めた故に2004年秋に組織されたもので、今回の研究結果は700
ページに及ぶ詳しい事業案の形で完成された。そこには採取したメタン
ガスを用いての化学ガス生産をはじめ、電力のガス化、火力及び電力エ
ネルギーの共同生産、石炭輸出のための港建設などについての分析が行
われており、その実践のための詳しいプロジェクトまで提案されている
。日本側の代表は「現在、日本はオーストラリア、中国、インドネシア
、そしてロシアから石炭を輸入しているが、ロシアからの輸入量は全体
7%に過ぎない。しかし、地理的な点からロシアからの輸入は日本にと
って有益である。しかし、鉄道や港などインフラ構築が課題として残さ
れている」と輸送設備の近代化を求めた。三菱と三井両社の専門家たち
は今度サハリン訪問の際、サハリンの関連企業の専門家らと、事業方向
及び協力方案について話し合う予定であるとのこと。
                      (州政府情報管理局)

「サハリンー2」毎年ロシアへ3億ルーブル支払

 Shell副会長(金融政策担当)マアールテン・ヴェトセルラアル氏の
国際フォーラム「ロシアの原油:現在と未来」での発言によると、「サ
ハリンー2」プロジェクトでロシア側に既に5億ルーブルが支払われた
が、もしプロジェクトが完了すれば毎年3億ルーブルの補償額がロシア
側に支払われることになる予測。

道路及び交通安全対策会議

 さる22日、ヴェ・ニキチンサハリン州副知事が道路及び交通安全対
策を講じるために会議を招集し、自家用車運転手の交通ルール知識、児
童の交通事故減少、乗客輸送における問題点、鉄道踏み切りと道路の修
理など諸々の交通関連問題の解決について議論した。

韓国留学生会誕生

 11月15日ウラジオストクで沿海州韓国留学生会が発足した。初代
会長には極東大学ロシア語学科在学中の朴・ミンギュさんが選ばれた。

市民たちの不満

 ユジノサハリンスク市22A住宅区住民たちは最近市政府に手紙を出
した。手紙の内容はこのようなもの。即ちサハリンスカヤ通りとウクラ
インスカヤ通りのアパート団地に熱パイプ修理のために掘った大きい溝
を修理後そのまま放置したため、住民たちが大変な不便を被っていると
のこと。苦情をうけた市政府は修理工事を行った会社に今月26日まで
原状回復を命じ、命令に従う場合裁判に訴えると警告した。

美術学校開校40周年

 今月15日、ユジノサハリンスク市美術学校が開校40周年を迎えて
の記念行事を行った。テ・シュリ社会発展担当副市長とペ・アルボロフ
市議会長をはじめ多くの関係者が参加して先生や生徒らに祝賀メッセー
ジを贈った。5歳から入学できる同学校には現在282人の生徒が勉強
している。卒業生の多くはロシアの美術関連の有名な大学に入学し、そ
の後画家や学校の先生として活躍している。

電気供給制限

 先週、サハリン電力会社が水道公社に電力供給を制限すると伝えた。
理由は水道公社が130万ルーブルに及ぶ電気料金を払っていないため
。先月も700万ルーブルの滞納金のために電気供給と中断されたこと
がある。電力会社に料金を払っていない企業所が40社にのぼっており
、その総額は930万ルーブルに達している。電力会社は料金を払わな
い機関には電力を供給しないと過去に数回警告している。

ゴーリキー通り開通

 先日、ポベダ通りからプルカエフ通りまでの区間の道路舗装修理が終
わり、それを祝う開通式が行われた。式典に参加した州知事は「3カ月
間2億50万ルーブルの州予算を費やして修理を行った新しい舗装道路
の寿命を専門家たちは5年間保証すると言っている」と市民たちを安心
させた。

第2回在外同胞言論人研修

 今月6日から10日間、韓国で在外同胞言論協会主催の第2回在外同
胞言論人研修が行われた。世界各国から45人の言論機関代表や記者ら
が参加し、母国の新聞社や放送局の仕事の現場見学やセミナー参加、伝
統文化関連施設訪問など忙しい日程を送るほか、朴・クンヘハンナラ党
元代表や金大中前大統領の接見もうけた。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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  晩秋という言葉が身にしみる?季節です。一昨日、和歌山県の和歌山
県伊都郡かつらぎ町四郷地区へ取材に出かけた。かつらぎ町は花岡青洲
のふるさととして有名。その山奥の集落(標高400米)で串に刺した
干し柿を作っている。

 この串柿は正月用の鏡餅に使われる串柿。正月を一カ月あとに控えて
今が旬。柿は現地では足りないので青森や静岡などから仕入れるのだと
いう。鏡餅は「三種の神器」を表しているのだという。だいだいは玉、
串柿は剣。そして餅は鏡。だから鏡餅なんだそうな。いずれにしても
壮観な景色が山の中腹の集落に見た。
写真はhttp://www.journalist-net.com/に。
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発行     2006年11月28日   No.278
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
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