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タイトル:609studio No.273◆現代時評:[日本における最近の景況感について]  2006/10/10


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【609 Studio 】メール・マガジン・2006/10/10  No.273
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【609 Studio】 メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプト
に論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、
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◆現代時評:[日本における最近の景況感について]    ken
 
◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2006年10月6日号

◆編集長から

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◆現代時評:[日本における最近の景況感について]    ken

   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
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◆◆共同通信 2006.10.02 日銀が2日発表した9月の企業短期経済
観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)
は、大企業製造業でプラス24と、前回の6月調査に比べ3ポイント上
昇し、2・4半期連続で改善した。  2006年度の設備投資計画は、
大企業全産業が前年度比11・5%増で、6月とほぼ同じ。9月調査と
しては1990年度以来の高い伸び率となった。中小企業は3・1%減
だった。 DIは業況が「良い」と答えた企業から「悪い」とした企業
の割合を差し引いた数値。大企業非製造業のDIは前回調査と同じ20
だった。中小企業は、製造業が1ポイント低下の6、非製造業は2ポイ
ント低下のマイナス8と振るわず、大企業との格差が広がった。

◆◆アサヒコム 2006.10.03 尾身財務相は3日、閣議後の記者会見
で、「今の段階でデフレ脱却宣言をやらないのは何となく不自然だ」と
述べ、政府として早くデフレ脱却を宣言するべきだとの認識を示した。
好調な企業収益や労働市場の人手不足の顕在化などを理由にあげた。 
尾身氏は「物価などの一つ一つの指標にとらわれて、全体の経済が良く
なっているにもかかわらず、デフレ脱却宣言をしないのはどうか。(デ
フレ脱却が)普通の常識的な見方だ」と指摘した。 

■■ごく最近、ヨーロッパ調査旅行から帰路の大学の先生がボクの家へ
立寄った。 東京の某大学内にある平和戦略研究所とかに所属していて
、世界情勢を見るため、しょっちゅう海外を回っている人である。その
先生に、「いま大阪は不況でたいへんです」というと、怪訝な顔をして
「いまの日本は好景気じゃないんですか」とのたまう。 経済学専門の
先生ではないし、ボク自身も年金生活者で、いまさら日本経済を論じて
も始まらぬので、好不況の話は短く切り上げただけで、先生との会話は
終わりにした。 

■■が、後で考えて見てどうも釈然としない。 仮にも世界情勢に詳し
く、敏感な筈の「平和戦略」専門の先生が、ボクの「大阪は不況」とい
う話に、「怪訝なことを聞いた」という風情なのである。 察するにど
うやら先生は、「いまの日本は好況」と、今まで信じて疑わなかったら
しい。 それをボクが「不況」だというから、訝ったのだろう。 が、
そうなると、ほんとうに日本は不況かどうか。ボクは間違っていないの
だろうか、という幾ばくかの不安感がボクに残るから釈然としないので
ある。 これでもボクは長年、ものごとを客観的に見る習慣を付けて来
た、という自信がある。 その自信が揺らぎかねない事態なのだ。

■■で、取り敢えずボクの周辺の連中に聞いてみた。 ボクはこれでも
数十年間、経営者の端くれだったし、周辺のほとんどは経営者か、かっ
ては経営者だった人が大半で、そうした経済団体にいまもなお名前だけ
は残している。 ところが、そのような友人のほぼ総てが「不況だ」と
言う。 ボクの住居も阪神間の、いわゆる高級住宅地だから、友人知己
は大阪だけでなく、神戸にも多い。 そしてそれらが異口同音に「不況
である」という。 にもかかわらず、東京の大学で社会学関連の講座を
担当している教授がボクの不況説を訝り、何度も聞き返したのだから、
不思議といえば不思議な話である。 彼は「いま日本は好景気」という
のを信じて疑わぬ口振りだったのだ。

■■じゃ、いったいどこで、そうしたいわばファンダメンタルな意見の
食い違いが起こったのか。 それを考えていた矢先、今日のニュースを
見て、ふと思い付いた。 迂闊な話だが、問題の発端は意外なところに
あった。 つまり「大企業」と「中小企業」の現状認識の差にある、と
いうことである。

■■試みに、総務省の「中小企業総合研究機構」という役所が発表して
いる「事業所・企業統計調査」というのを見ればよい。 そのなかの「
非農林水産業」における企業数全体1.607.810に対して、うち
中小企業1,595,834(但し2001年調べ)になっている。そ
して、その従業員数全体が58,033,153人に対して、うち中小
企業従業員数は51,277,693人になっている。 要するに、日
本の企業も、その従事者数も、殆どが中小企業であって、大企業は微々
たるものである。

■■にもかかわらず、そうした事実を無視して、10月2日付けニュー
スではいとも簡単に、さらりと報告している、「日銀が2日発表した9
月の短観によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企
業製造業でプラス24と、前回の6月調査に比べ3ポイント上昇し(中
略)大企業全産業が前年度比11・5%増で(中略)1990年度以来
の高い伸び率となった。中小企業は3・1%減だった」と。

■■これでは、事業所、従業員数ともに90%以上を占める中小企業社
会はきれいさっぱりと切り捨てられ、大企業のみで成立しているかのご
とくに、「日本国の経済は好況を示している」という報告が大手を振っ
て罷り通り、その恩恵を受けている東京所在の大学の先生が、そう端的
に思い込んでいるのも無理はない。

■■そしてわが大阪、もしくは阪神間などはその反対の、殆どが中小企
業ばかりで喘いでいて、ボクはその喘いでいる側に、何時の間にか追い
込まれている、というわけである。 言葉としては「囲い込まれている
」と表現したいところだが、地図的な面積としては囲い込まれていると
いった小地域ではなく、むしろ人間一人に心も一つと考えれば圧倒的に
大多数なので、囲い込まれているなどの実感は無く、殆どが喘いでいる
大多数部分に属するのだ。 もっともビジネス・ボリュームや企業利益
は、大企業側が圧倒的に多いのだろうが、その大企業の優位性は周辺に
居る中小企業の犠牲の元で成り立っているのは周知の通りである。
 そして、国家市民の「心」というものの数では中小企業側が圧倒的に
多い。 「不況感」は、とうぜん心の個体数に比例して秤量すべきで、
ビジネス・ボリュームや企業利益に比例させていいものでは無い。

■■さらに問題なのは、大企業と中小企業の被雇用者の収入差である。
 これを厚生労働省雇用統計課の「毎月勤労統計調査」で見ると、常用
労働者一人平均現金給与額は、5−29人企業の280,420円に対
し、500人以上企業の503,297円と、2倍近い落差があること
だ。 しかもこの数字は2003年度の統計だから、その後に「同工場
内製造請負」や「派遣労働者」とよぶ低賃金労働者に転落さされた従業
員も多いはずだから、中小企業従業員の実態はもっと低賃金化している
可能性がある。こうなると、中小企業労働者たちの、いまの「不況感」
は想像以上に深刻化していることが頷ける。

■■労働者の90%以上が不況に喘いでいるとき、わが政府およびその
代理人である日銀と、大手マスコミ連中がこぞって「1999年以来最
大の好景気」と報道しているのは、まことにもって理解に苦しむ。その
理由のなかに、「大企業の設備投資については、前年度比11.5%増
となった」として、設備投資の伸びも好景気の原因の一つに加えている
が、ケインズ経済学万能の時代ならばイザ知らず、いまどき設備投資の
伸びで好況を論ずるのは時代錯誤も甚だしい。いまの不況の最大原因は
「製造過剰と需要不足」であることを、ナゼ忘れたのか。

■■ほんの一部に過ぎぬ大企業の好況をもって90%を占める中小企業
労働者まで好況であるように報道するのは、国民大衆に対する欺瞞工作
であるという他は無い。 政府がそうした虚言で以って、社会に偽りの
好況感を与えるには、別の目的があると考えていい。 そして、大企業
のヘッド・クォーターである東京に住む慌て者の人種たちが、その虚報
に騙され、「世はまさに好況」と思い込むことになったのではなかろう
か。

■■だから「不況」を嘆くのは、必ずしも大阪とか神戸という一地方の
人達だけでなく、日本全国民の90%を占める中小企業の人々がみなそ
う思っているに違いない、とボクは断定したい。

■■さて、そう断定しただけでは心の救いにならない。 ナントか対策
を考えなければならぬところだが、安倍内閣を頼りにしても大企業減税
か、緊縮財政程度の目先き政策だけでは困る。 ほんとうの政府の急務
は何か。もしボクが思う通り「物資の過剰生産」が不況の最大原因であ
るとすれば、それに対する対策が要る。 

■■ところが、衣食住のうちの「衣」はタンスに余りかえっているし、
「食」は食べ過ぎて肥満が怖い昨今である。残るは「住」のみだ。が、
この切なくも憐れな「住」への需要を先取りしたのが、この頃流行りの
リフォーム詐欺であろう。

■■たしかに、欠陥住宅や兎小屋並みの住家は街に溢れている。かって
日本が貧乏国だったときの名残りである。 それらを改造したり、広く
したりするための建築需要は確かに存在する。 それと、もう一つ、い
まだに貧弱なのは障害者・老人福祉関係の設備だ。 段ボール2個と限
定された老人ホームへ入る人は多い。もっとも、金持ち老人は、高級ケ
ア・ホームへ入れるが、その値段の高さは、諸外国に比べても法外です
らある。 

■■これをもう少し安価で、設備の整った福祉ホームにすれば、その需
要も多く、建設需要喚起への呼び水にもなる。 差し当たり、ボクが政
府に望みたい施策はそれだ。だが、なぜか政府はあまり乗り気でない。
 頼りにするのは、政府与党の中の公明党だ。 かってと違い、今頃の
公明党は昔のように「国立戒壇設立」などの世迷い事も口走らず、立派
な庶民派政党に成長している。 ならば公明党も、自民党の海外派兵用
の改憲などに協力しないで、障害者や老人福祉の設備改善にもっと力を
入れて欲しい。 そうすれば、国家・国民の景況感の改善にさっそく役
立つと思うが、如何なものであろうか。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2006年10月6日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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州知事が年金生活者、障害者らへの支援約束

 今月3日、ユジノサハリンスク市のチェーホフセンターでイ・マラホ
フ州知事が年金生活者、障害者、戦争老兵らと会談を開き、生活環境改
善のために行ってきた州政府の努力を伝えると共に今後の方針を明らか
にした。州知事は大陸往復旅費の支援を連邦中央政府に強く要請してい
るが実現できない場合は州政府レベルで解決する方針であると約束する
など働けない人々たちに対しての支援を積極的に講じようとする州政府
の姿勢を明確にした。

投票に行こう

 10月8日はサハリン韓人の政治経済文化また生活にも大きい影響を
与えるロシア連邦議員と州議員、自治体議員の選挙が全国で同時に行わ
れる。選挙の重要性を十分熟知のうえ、同胞の皆様方が一人でも多く選
挙に参加するように呼びかけている。

州知事に謝意

 先日、日本側の招待を受け、函館市障害者実態と関連団体との交流を
深めて帰ってきたサハリン州障害者協会のリュドミラ・オブレガ委員長
が2日、サハリン州知事との面談の際、訪問者らの旅費を支援してくれ
たことに対して謝意を表した。同団体の訪日はサハリン州政府が往復航
空運賃を、日本側が滞在費を支援することで実現できた。来年の10月
にも招待を受けて訪日することが決まっている。

市立産院誕生60周年
 
 先日、ユジノサハリンスク市立産院誕生60周年を迎えての祝賀宴が
開かれた。1946年9月28日、7人の医療陣からはじめて以来15
万人余りの新生児を誕生させ、現在320人の人々が働くほどに成長し
た。昨年は6千万ルーブルの国家支援を投入し、建物や設備など大々的
に再建を行うほか、今婦人相談所の建築も進行中である。

不法運送中のイクラ20トン摘発

 最近、モスクワの空港でユジノサハリンスクとカムチャッカ発の飛行
機で2トンの不法運搬中のイクラが摘発され、運搬を手助けしていた乗
客二人と添乗員一人が取調べをうけている。調べによると航空便を利用
して不法運搬は常習的に行われてきたし、送り出している会社は2年前
に既になくなっている幽霊会社であるとのこと。

カード支払可能な税関ターミナル

 ユジノサハリンスク空港とコルサコフ港の税関ターミナルに続いて州
内で3番目のカード支払可能な税関ターミナルがホルムスクでも開設さ
れた。税関カード所持者は関税や罰金などにこれを使うことができ、通
関手続に掛かる時間を大いに節約できる。

農村図書館にパソコン支援

 サハリンエネルギー社とその下請建築会社スタルストロイ社は200
4年からサハリン州発展支援策の一環として農村地域の情報化を進めて
きた。過去2年間はアニワ区域の図書館にインターネットケーブルの設
置を支援したし、今年はそれらの図書館にパソコンやその周辺機器の支
援を行っている。先日、アニワのオゴンキとタラナイの図書館にこのよ
うな支援を行い、年末まで8地域25カ所の図書館にパソコンなど情報化
のための設備支援を行う予定である。

トマリ市成立100周年

 先月の9月16日、トマリ市では多様な民族が一緒になって市の誕生
100周年を盛大に祝うなどの記念行事があった。まず、地域原住民に
当たるアイヌ民族が伝統衣装を着て歌と踊りを披露し、それから日本人
、韓人、ウクライナなど多様な地域住民が民族衣装を着て母国語で挨拶
をしたのち、伝統舞踊や歌などで民族間の交流と相互理解を深めた。夜
遅くまで公演などを楽しみ、花火の打ち上げで幕を閉じた。
                 (トマリ市 許・ナムフン)

会長に感謝

 さる8月、ネベリスクで起きた地震で多くの地域住民が被害を受けた
。その中にはわが同胞も勿論含まれている。先日、朴・ヘリョン韓人会
長が同胞被害者たちに支援を行ったことを広く知らせ、被害者皆を代表
して謝意を表す。(ネベリスク韓人会長カン・ドンス)
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 安倍政権が実質スタート。5日の予算委員会でははや歴史認識などで
修正。カッカするタイプのようで・・。それとも訪中・訪韓への配慮?

▽困ったもんだ。北朝鮮の「核実験宣言」。敵を作るだけなのに。わが
国の保守系の尻をたたいてどーする?

▽民主党・小沢代表退院。しかし一部に不安説。体力勝負の政治家にと
って不安説は命取り。補選を戦えるか?
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発行     2006年10月10日   No.273
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
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投稿      http://www3.ezbbs.net/06/609studio/
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