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タイトル:609studio No.272◆現代時評 [安倍新内閣発足]  2006/10/03


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【609 Studio 】メール・マガジン・2006/10/3  No.272
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【609 Studio】 メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプト
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◆現代時評 [安倍新内閣発足]          ken
 
◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2006年9月29日号

◆編集長から

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◆現代時評:[安倍新内閣発足]          ken
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
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◆◆サンケイWEB 2006.9.27 安倍晋三首相は26日夜、首相官
邸で首相就任にあたって記者会見を行い、集団的自衛権の解釈見直し
に積極的に取り組む姿勢を強調した。また、人権擁護法案と皇室典範
の改正法案については差し戻して議論し直す考えを示した。これに先
立つ衆参両院本会議での首相指名選挙で、安倍氏は第90代首相に指
名された。同日夜に発足した安倍内閣の閣僚人事は自民党総裁選での
勝利の功労者を重用し、敵対勢力を冷遇する「論功行賞」色の強いも
のとなった。

◆◆共同通信 2006.9.28 安倍晋三首相は27日、初の所信表明演
説の骨格を固めた。「美しい国創(くにづく)り内閣」を掲げ、官邸
機能を強化してアジア各国の連帯に貢献する「主張する外交」への転
換や、北朝鮮の拉致問題への取り組みを訴える。 演説では外交の基
軸となる日米関係について「世界とアジアのための日米同盟」を目指
す意向を表明。官邸の司令塔機能や情報収集力を強化し、米ホワイト
ハウスと常時意思疎通できる仕組みの構築を打ち出す。(中略) 歳
出削減のために報酬を首相は30%削減し、閣僚も一律10%削減す
ることが明らかになった。

■■安倍新内閣を眺めると、その「論功行賞」が目立ち、新大臣連中
の真面目で面白くも無い風体がクローズアップされ、途端に幻滅を感
じた。 名は体を顕わすというから、近来稀な不器用内閣でないだろ
うか。 それでいて、「美しい国創り」を標榜している。 が、小学
生か、田舎の婦人会でもない限りい「美しい日本」などは正月のカレ
ンダーの表紙ならともかく、この多端な日本を背負うべき新内閣のス
ローガンとしては不向き、としか考えられない。

■■純情可憐風の、安倍新首相の頭脳のほども連想されるし、ボクら
年配者にとって「美しい日本」というのは花恥ずかしく、言えない言
葉の一つである。 たしか昭和16年、大木敦夫の「海原にありて歌
う」という詩の最初が「日本、美しい国だ」から始まっていた。軍国
主義鼓吹の始まりとして記憶している。 似たようなものでは、中曽
根試案の憲法前文に、「我ら日本国民は、アジアの東、太平洋の波洗
う美しい北東アジアの島々に歴代相承け、天皇を国民統合の象徴云々
」があるが、純情と美文にカモフラージュされた「鎧の下」の「戦争
準備」も無いわけではないから用心するに如くは無い。

■■「美しい国日本」は平田篤胤、本居宣長らの国学派を濫觴とし、
戦前の日本浪漫派、保田與重郎や亀井勝一郎たちの日本礼讃用の常套
語であったが、その流れは、戦後の石原慎太郎に至って日本右翼の自
賛文化にまで変貌した。 思想は無くても、国民を鼓舞し、国家意識
の高揚にはじゅうぶん効果がある。 早く言えば、文天祥「正気の歌
」か、佐久間象山の「神州正気の歌」に似ていると言えなくも無い。

■■じっさいのところ、「美しい日本」を主張する前に、今わが政府
が片付けるべき難問は山積している。 ざっと考えただけでも、先ず
「デフレからの脱出」がある。 格差増大を黙過して「経済は成長軌
道に乗った」とも言えぬし、政府の長期債務残高770兆円はまだ増
える一方というのをどうするか。 それに焦眉の急としての年金制度
や持続可能な社会保証制度をどう構築するかという問題が迫っている。
 どれもまだ手を付けられていない。 

■■たとい2011年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)
の黒字化が成功したとしても、なお巨額の財政赤字が残るのは事実な
のに、早くもIT投資減税6000億円は決定したらしい。そのよう
な資本家減税など急がなくても、好況企業はなお好況になるだろうし
、むしろ社会福祉への配分増加の方が先決ではないかと思うが、如何
なモノか。

■■それより、東アジア諸国との友好回復や、ロシアとのいわゆる北
方4島問題については、関係修復のメドすら立っていない。失敗に終
わった米国のイラク問題にも、ただ「日米同盟」とやらで肩入れをし
たままで、お茶を濁しているに過ぎず、政府の早急な対策こそ望まれ
る。

■■新任閣僚たちの記者会見を聞いても、自分の方針を自信もって説
明できる所管大臣は少ない。 ただ、閣僚就任が嬉しく、喜びに終始
しているのは見るに堪えない。 日本国家の将来を担う政治家として
の、気概や理想を持つ大臣が少ないのは、近年の風潮であろう。彼ら
新内閣にとっては、それよりも、来年に迫った参議院選挙の方が重大
事らしい。 なにせ、「木から落ちても猿は猿」だが、「選挙に落ち
た」あるいは「政権から見捨てられた」政治家ほど気の毒なのはない
から、自己保身が先決で、国家の大計などに気が至らぬのも無理なの
かも知れない。

■■もっとも、とつぜん落ちてきた棚ぼた大臣にとって、急に担当す
る省務について、記者会見で抱負を述べよという方が無理、というべ
きか。 担当官僚から記者会見に臨む返事の方法を教えて貰うのに、
せめて10日間程度の日時の余裕を与えてやるのが、武士ならぬ、政
界関係者間の情けというものでは無いか、と思ったりもする。

■■とまぁ、今回の組閣内容と記者会見を拝見していると、政治家の
不勉強について「憤懣、やるかた無し」と言うのが、ボクの心境であ
る。 年功序列、論功行賞による大臣就任もここまで来たか、と思う
ことしきりだ。 これでは、ベテラン官僚の手から政務を取り返すの
はとうぶん無理だろう。

■■もっとも、首相官邸は、新首相と信条が近いメンバーで固め、歴
代の政権に比べて多い、5人もの政治任用人材を配置するそうだ。各
政策ごとに配置された補佐官が時に閣僚以上の影響力を発揮する米国
のホワイトハウスを参考に、官邸機能の強化を図るという。まえの、
各議員毎の政策担当秘書官任命のように、国費で息子やワイフを追加
雇用し、選挙運動秘書を増員した弊に懲りて、首相直属の政策研究官
を増したのは、よき人材さえ得られれば良策であるといえるだろう。
 なにしろ、新閣僚の顔ぶれを見る限り、官僚を抑えて政治主導を貫
く力量のある新大臣など、麻生外相を除けばほとんど居ない。

■■それに今度の新内閣の「抱負」のなかに、「憲法問題」を故意に
欠落させているという重大な事実はどうするつもりだろう。「靖国問
題」も同断である。 国民や近隣国を納得させる名答案が出し難いか
らであろうが、だからと言って最大の論点を避けた新内閣の当初方針
などは信頼できない。 この先の、安倍首相の態度はじゅうぶん関心
を持って見守りたい。

■■新首相の、日本の将来を支える人材育成のために「教育改革を進
める」という方策は、考え方としては結構なことである。 が、こと
「教育改革」ともなれば、いったい誰が、誰を教育するかということ
が先に問題になる。 いままでの教育がなってなかった。米国が怪し
からぬ、文部省がダメ揃いだったなどと、非を他人に押し付けるのは
易しい。 

しかし、そうした過去の非によって教育されてきた本人自身が、いま
や国家の大臣や政務官に就任する時代なのだ。 先ず、自分を責め、
自分たちの何処が間違っているかを反省するところから「教育改革」
を始めてもらいたい。 

■■間違った教育を受けた政治家たちが、自分のことを棚に上げ、今
後の子供達を立派に教育する手法を、果して作り上げられる可能性が
あるかどうか、教育はいま迷路に立っている。 それを端的に示すの
は、最近の政治家たちの「金権体質」と、「選挙制度」における熾烈
な勝ち抜き競争である。 権謀術数による現行選挙制度の覇者として
の幸運な政治家が、果して「美しい日本」を創る適格者であるかどう
か、大いに疑問が残る。 

■■醜い政争を勝ちぬいたダーティで好運な勝者たちに「美しい日本
」を創る教育を創造する能力が、いったいあるのだろうか。 もしく
は、新自由主義のもとにおける勝者たちが創る「一掬の涙を注ぐ敗者
復活」のシナリオに、キリストの説く「愛」、儒教の「仁」、そして
仏教の「慈悲」などが通じるかどうか、ボクなどはひじょうに疑問に
思っている。

■■統計数理研究所版の「日本人の望ましい暮らし方」によれば、1
、一生懸命働き、金持ちになる。 2、真面目に勉強して有名になる
。 3、金や名誉を考えずに自分の趣味にあった暮らし方をする等々
以下、6番目の、自分自身のことは考えずに国家・社会のためにすべ
てを捧げて暮らす、までの数項目が掲げられている。

■■同様のことが社会主義の中国でも教えられている。 そして、小
学生では6の、「国家社会のため」が第1位(60%)を占めるが、
大学生ではそれが1%にも過ぎない。 日本でも、高学年、高学歴に
なるに従がって中国と同じ傾向を占めているのは現実であり、政治家
の不道徳は枚挙に遑がない。じゃ、そうした場合、「美しい日本」の
ために何をどう教えようと、安倍さんは考えているのか。 

■■日本外交の基軸は、いまなお日米同盟だ。経済、軍事両面で大国
化した中国に地域の安定と繁栄への貢献を果たすよう促すべき日本も
また、国連常任理事国への望みを大きく抱き、米国の核の傘のもとで
の大国化を目指している。 どちらも目指す「国家の目標」は同じで
、相競っている。 

■■そのような状況下にあって、たかがちっぽけな竹島や尖閣列島の
領有に望みを懸ける近隣諸国の、いわば「貧乏な後発国の悲しみ」を
わが日本は果して理解しているのであろうか。 先取得権のみを論拠
として領有権を主張するわが日本という「先進国」に、果して他を思
いやる「仁恕」の心があるかどうか。 

■■「竹島は漁業権」、「尖閣は石油権」と言われ、それでわれわれ
は争っている。 しかし、魚も石油もおカネで買える。 そして我々
はいま世界第2位の金持ち国である。 もしそれらがカネで買えなく
なる時代が来れば、それを消費しない方法を案出するのが智者として
の道である。 ならば、石油であろうと、漁業権であろうと、彼らに
呉れてやる度量が必要ではないか、とボクは思う。 「金持ち喧嘩せ
ず」は昔からの諺(ことわざ)であり、長者の徳目である。  その
心無くして、ただ利権と覇権を無意識に志向し、先取得権に固執する
日本。 それで「美しい国」になれるであろうか。ボクには大きな疑
問が残る。

■■かって全世界の四分の一を領有した英国。 それがいま、ほぼ総
ての海外領土を無償で開放し終わり、なおかつ、G7に名を連ねる大
国であり得ている。 この事実を我々はいったいどう見るか。 英国
の叡智を見習いたい。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2006年9月29日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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「サハリン韓人の日」を迎えて

 サハリン同胞の皆様方と共に、「サハリン韓人の日の制定」とその
日を迎えたことを心から喜んでおります。悲劇的なわが同胞たちの過
去を歴史として残すために、又多民族社会のロシアで他民族との共生
を図りながらもわが民族の伝統と文化を守りより発展させていくため
に、今年から9月30日を「サハリン韓人の日」として制定し公布す
ることに至りました。親愛する同胞の皆様、そして尊敬する多民族社
会サハリン州およびロシア連邦の国民の皆様!そして尊敬する韓国の
国民の皆様!韓人の日の制定を支持し歓迎してくださったことに心か
ら感謝しながら皆のご幸福とご健康を祈ります。
                ―サハリン州韓人会・老人会より

原油・ガス国際会議

 今までイギリスで行われていた「サハリン原油・ガス国際会議」が、
第10回目を迎える今年ははじめて産地のサハリンで行われた。27
−28日の2日間の予定でユジノサハリンスク市サフヒンセンターで
開催された同会議にはロシア、米国、日本、中国、インド、英国など
の原油ガス関連会社と銀行などから300人余りの代表が参加した。
会議を主催したイ・マラホフサハリン州知事は記者会見で、「予測を
遥かに上回る参加者数で驚いた。参加者たちは関連施設の見学を強く
要望しており、私たちが期待した以上に関心が高い」と評価したうえ
、サハリン州が極東地域原油ガス開発事業の中心にあり、これらの事
業によるメリットも大きいと指摘、現在、サハリン原油ガス開発部門
には約3万人の専門家が参加しており、その中の2万人がロシア人で
、ロシア人の中の1万3千人がサハリン住民だと強調した。会議参加
者たちは29日、プリゴロドノエ液化ガス工場建築現場を見学する予
定だ。

州知事百科辞典に載る

 2005年度のロシアの発展と繁栄に寄与した人物としてイ・マラ
ホフサハリン州知事が選定され、「百科辞典―素晴しいロシア人」の
2006年4月26日発行の第5版に彼の名前が載ったことがわかっ
た。今月の25日、州政府会議の前、州知事に百科辞典編纂委員会か
ら送られた記念メダルと証書の伝達式が行われた。

札幌市にサハリン州代表部設置

 先日、北海道・札幌市内中心地にサハリン州代表部が設置された。
代表部設置記念式にエン・ノヴィコワ副知事、州水産業管理局のエス
・ジデンコ局長、州文化管理局のヴェ・ベドジュイソフ局長を含め水
産業、石油関連会社代表らとルスキ・テレム芸術団が参加した。また
、代表部設置を祝う宴会にはロシア総領事館職員、北海道庁代表者ら
、金融関連会社代表らも参加した。代表部責任者はア・クトヴォイさ
んが任命された。

2007年はサハリン州成立60周年

 サハリン州記念行事組織委員会は、来年の2007年度をサハリン
州成立60周年の年と決めた。しかし、すべての記念行事は気候の関
係で9月に行うことにした。

ゲームセンター取締強化

 ユジノサハリンスク市政府が市内の89カ所のゲームセンターの実態
を調べた結果、規定違反が多いことがわかった。一般商品を扱う店と
して営業許可を得てからゲーム機を設置して娯楽業を行っているとこ
ろも多く、また学校や公共機関の近くでは設置が禁止されているにも
かかわらず許可の出ている場合など法律違反事例が多い。又、営業中
止命令に従わない店も多い。市政府は政府会議を通じて、このような
店に対しては賃貸契約の延長を禁じるなど強硬な対策を講じる方針で
ある。

米国ビザ申請インタネットのみ

 今年の10月25日から、米国政府はロシア人の渡航ビザ申請をイ
ンタネットを通じてのみ受け入れることにした。モスクワ駐在米国大
使館は「手続きをより安全かつ効率よくするため」と変更理由を説明
している。しかし、英語を読めないロシア人も多いことで近々ロシア
語のサービスも準備していると大使館は説明している。

日本から大量の密輸品

 サハリン税関はネベリスク港で、大量の日本製品を船に隠し入港し
ようとしたオメガ船舶を発見した。船には家庭用品、自動車部品、食
料品、タバコ、アルコール飲料など100種類の日本製品が隠されて
いた。商品は全部押収され、船員は取調べを受けている。

コルサコフ韓人とデウ建設職員たちとの親善競技

 今月24日、コルサコフ市のヴィドニク競技場で、地域韓人とプリ
ゴロドノエ液化ガス工場建築に参加しているデウ建設職員との親善ス
ポーツ大会が行われた。彼らはサッカーや短距離マラソン、足球試合
、腕相撲など多様な競技を通じて、民族同士の絆を確認し、強める機
会を得た。また、昼には地元韓人婦人たちが手作りの料理を用意する
など地域全体がこのような交流を歓迎する雰囲気であった。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 安倍内閣が発足した。その新首相の所信表明演説を充分理解できた
日本人は何人だったろうか?

 「ワンフレーズ首相」の次は「カタカナ語首相」。美しい日本の美
しい日本語はどこへ?

▽古来「巧言令色、少なし仁」という。聞けば安倍首相のルックスが
良いとか・・・。カタカナ語とルックス・・・。
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発行     2006年10月3日   No.272
編集・発行  609studio   Michio Katayama
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