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タイトル:609studio No.254◆現代時評:[国家の品格論議]  2006/05/09


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【609 Studio 】メール・マガジン・2006/5/9  No.254
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【609 Studio】メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプトに論
説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、ロシ
ア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェスト版、その他、寄
稿記事など話題満載! 

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───────────◆◆◆INDEX◆◆◆───────────

◆現代時評:[国家の品格論議]                ken 

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:2006年5月5日号

◆編集長から

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◆現代時評:[国家の品格論議]                ken

   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
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◆◆アサヒコム 2005.5.03  3日の憲法記念日に合わせ、各党が談
話やアピールを出した。昨年11月に新憲法草案を発表した自民党は「
機は熟した」と改憲をめざす姿勢を鮮明にしたが、公明党は「冷静で真
摯な議論を求める」と慎重だ。主な内容は次の通り。【自民党】改憲の
機熟した。日本史上はじめて国民みずからの手で憲法を選び取る機が熟
したのではないか。国民誰もが誇りに思う品格ある国家をめざし、守る
べき国柄と伝統をしっかりと見極めた新憲法の制定に取り組む。

◆◆読売オンライン 2005.4.27  「エリート教育が見直されている
」と、教育社会学者の竹内さんは見る(中略) 「教養主義の根底には、
よりよい社会を作りたいという、エリートとしての責任感がありました
。旧制高校生は、選ばれた者としての役目を自任し、階級特有の文化や
品格を習得することを使命とした。圧倒的多数の大衆も、自分たちの代
表であることを期待していた。」

◆◆毎日−MSN余禄 2006.5.01 (北朝鮮は)先に米上院で開かれ
た公聴会で、専門家が行った証言では、国際禁制品のサイの角や象牙は
序の口で、絶滅危惧種に定められた動植物まで取引しているらしい。日
本では「国家の品格」が話題になったが、証言が本当ならこれほど品格
を気にしない国というのも世界で珍しいのではないか。

■■いま、「国家の品格」という言葉が大流行で、ついに与党自民党の
政策アッピールにまで使用された。 直接の発端は藤原正彦氏の新書版
「国家の品格」で、この本の出版部数は三月末で百万部を超えたという
。 教養を自負する人々にとって、「品格」という言葉は耳に快い。

■■数学者藤原氏のこの本に対する賛否は、ほぼ伯仲しているか、都合
によっては大多数がもろ手を挙げて賛成しているかも知れないと思った
が、事実はそうでもないらしい。いま流行りのブログなどでは反対論が
意外に多い。

■■じゃ、どこが反対なのか。試しに人気評論家池田氏のブログなどで
見ると、反対論者の論拠はほぼ決まっている。曰く、「非論理的で情緒
的過ぎる」、「武士道などを持ち出すのは、新渡戸稲造の焼き直しで内
容が薄く、国家論になってない」。「藤原は数学者というが、数学の論
文発表も少なく、そのような男の経済論などは間違いだらけだ」との批
判もある。

■■なるほど、そう言われればそうかも知れぬが、だからといって百万
部も売れたベストセラー・マーケットが存在するという社会の存在をど
う考えるか。それについての説得性が薄いといわざるを得ない。反対の
ための反対であることは、与党に対する野党の立場と類を一にしないだ
ろうか。 ひと理屈捏ねるのに長じている自称論理派ブロガ−たちの見
識のほどもこの程度か、と思えなくもない。

■■考えてみると、「品格」という言葉は昔からよく使われ、論じられ
ていて、いまに始まる話ではない。ただ今回の流行語としては、「品格
」の上に「国家の」という言葉がついているのが僅かに違う程度である
に過ぎない。 しかし、「国家」とは「国民」のことであり、「国民」
とは個々人の集合名詞であるから、何も「国家の品格」といわずとも、
ただ「品格」と簡単に言い切っても同じである。 

■■藤原先生の「国家の品格」という流行書は、つい先般の、中野孝次
先生の「清貧のすすめ」に類する儒教的教養書と同類のものと考えられ
る。 それを「情緒ばかりで論理が無い」などと批評するのは、豆腐を
買っておきながら、「油揚げと味が違う」と苦情を言うに類しないだろ
うか。 著者の「数学者」という肩書きだけで、自然科学書と誤解して
買ったブロガーたちのアタマの悪さを露呈したとでもいうべきではない
か。 

■■論理を精密に記述するのが数学という「科学書」であるならば、「
品格」を論ずる書物は、美意識とか情緒を論ずる「文学書」の範疇にい
れるべきである。 そこには精密な論理など不用で、ただひたすら「心
ばえ」の優美さを論じさえすればこと足りる。

■■いずれにしろ、衣食足り暖衣飽食気味の、いまの日本に求められる
のは「品格」であることに疑問の余地はない。 まだ飢えた人々が大半
を占める隣国北朝鮮や中国とは違い、無作法な自己主張を臆面も無く繰
返す低開発国ではないのだ。 

■■しからば「品格」とは何か。 それは心の余裕であり、穏やかさで
あり、もの腰の上品さである。 そしてそれを端的に表現するものは、
日常の居立ち振舞いや、言葉の奇麗さであろう。 儒教で言う「衣食足
りて礼節を知る」ことこそ、せっかく経済で世界一とやらになったわが
国の、次ぎの目的へのステップである。 粗暴とか、あらわな敵愾心な
どが、その反意語であることは、近隣のいまなお貧乏に喘いでいる国々
の様子を垣間見れば理解出来よう。

■■試みにそれをボクらの生活社会における卑近な例で見て見よう。 
「吉本」のァチャラカ振り、みのもんた、島田紳助らがいかに能力ある
タレントであろうと、そこに「品格」を感じるわけにはいかない。 端
的に言えば彼等は「下品」なのだ。 彼らがTV画面に出たとき、あわ
ててチャンネルを切替える視聴者も多いハズだ。 ところがそこへ、か
ってはいくらか軽蔑していた隣国韓国の、ヨン様なる俳優がわがTV画
面に登場した。 ワッと中年女性が飛び付いて、早速ヨン様が茶の間の
アイドルになった。 ボクはこの現象を、上品で美しい男に憧れるわが
中年女性による「吉本」「もんた」「紳助」たちへの反動と見る。

■■もちろん、ヨンさまにほんとうの知性や教養があるかどうかボクは
知らない。 だが、彼のTV画面の姿をみるかぎり「品格」や教養があ
ると直感させられる。 誤解を恐れずに言えば「品格」は姿かたち、つ
まり「居立ち振舞い」で顕わせる。 ヨン様に教養や品格を感じた日本
の中年女性たちは、わが俗悪テレビ俳優たちに長らく感じていた卑俗へ
の潜在的不満を解消すべく飛び付いたと、言えないだろうか。

■■藤原正彦が「品格」を論ずるとき、それを武士道で表現したのは新
渡戸稲造を真似たのであると、ブロガ−たちは非難する。そうかも知れ
ない。 しかしそのばあい、昔の武士が仮に苛斂誅求の代理人であった
としても、われわれの内在的理想にそうした事実は存在しない。われわ
れ日本人は、たとえむかし百姓町人の子孫であろうと、すべてがかって
は武士道の立派な実践者だった侍(さむらい)の末裔であるとの錯覚を
恣意的に持つことにしてきた。 それは、いわば庶民のささやかなヒロ
イズムかも知れない。が、そうした日本人の武士道を通じた「品格」へ
の憧れは誉めるべきである。しかもそれを考えた上での新渡戸稲造であ
り、藤原正彦の著述であった。

■■いまポスト小泉は誰であるべきかが論じられている。われわれ日本
人の誇るべき代表であるつぎの首相は誰か。 マスコミの人気調査によ
れば、安倍、福田、麻生の順であるという。 しかし実際は、たぶん福
田康夫氏だろう、と噂されている。 なぜそのような噂が出るのか。

■■先ず、「福田」対「麻生」。 福田氏は控え目で、いまだに総裁立
候補の意思を表明していない。 それがなぜ「麻生」よりも「福田」が
優先しそうな情勢か。 ボクの見るところ、福田康夫氏の、あのTV記
者会見における知的で穏やかな「品格」もしくは風体(ふうてい)、ま
たはその言葉つきに依存するところが大きい。
 臆せず、淡々とあるがままをTV会見で報告し、激するところが無い。
 与太な政治家ではあるまい。 さすが東大卒で、元総理の御曹司だけ
 のことはあると、視聴者が彼の「品格」に感じ入った。

■■反対に、麻生氏は名うての炭坑王麻生財閥の御曹司であり、ことカ
ネに関したり、そして実行力に関するかぎり温順な福田候補に先立つと
考えられぬこともない。 だが残念ながら麻生氏の雰囲気には「品格」
、つまり上品な挙措動作が感じられない。 どことなく、金持ちの元極
道息子の感じが付き纏う。 つまり、国民は、たとい実行力があっても
「品格」に劣る麻生氏などより、品格がある福田康夫氏につぎの総裁、
総理を期待する。 しかも「品格」には、つねに「知性」の感じが付き
纏う。

■■事実として、ぼくら国民の大半は、麻生、福田両氏の人格・識見・
能力・知性などぜんぜん知らない。 ただ見た目の「品格」において、
福田氏に一歩の長があると感じるのである。 論理でなくて、情緒、感
覚による判断なのだ。

■■じじつ、見た目のみでなく、ニュース記事によれば、福田氏はたぶ
んに穏当な発言を心掛けているらしい。
 「人間の尊厳、非暴力、正義の徹底、寛容、相互の尊重などの考え方
 は普遍的な価値を持つ。今のイスラム問題やイラク問題には、そうし
 た考え方で対処すべきだ」と、最近の国際会議でも訴えている。

■■ところが麻生氏は、5月3日午後、ワシントンの戦略国際問題研究
所主催の講演で、中韓両国が小泉首相の靖国参拝に反発していることに
ついて、「靖国問題が終わったからといって他の問題がすべて解決する
ことはありえない」などと、たぶんに挑戦的と受けとめられかねない発
言をしている。

■■じじつはその通りなのでろうが、こと上品かどうかのイメージにお
いて、温厚発言の福田氏が、きわどい発言の麻生氏に比して有利なこと
は争えない。 なぜなら、「争い」と「温厚」を比較すれば、温厚は「
品格」への一つの大きなファクターなのだ。 

■■このばあい、わが国家の将来にどちらが得策なのかは、とりあえず
の庶民段階において問うところではない。もっとも国民直接の首相投票
システムと異なり、政党総裁の選挙などと言うのは、権謀術数が渦巻き
、「品性」などは後回しに過ぎぬから、実際に誰が自民党新総裁に選ば
れるかは、結果を見なければ分からない。

■■先日のTV討論会において、「小泉首相がなぜ、いまなお50%の
支持率を得ているか」の答えとして、お笑いタレントのビートたけし氏
が言うには、「彼、小泉首相は返答に窮したとき、べランメーの職人言
葉で言い返す。 それが庶民を納得させ、人気を維持している理由であ
る」とのことだ。 なるほど、小泉氏は往々にして床屋の政治談義のよ
うな<いなせ>で小粋な俗語で反論する。 それにはウイットもあり、
生き生きとした発言だが、上品とは言い難く、まして一国の代表として
の「品格」があるとは義理にも言えない。小泉氏は「品格」において落
第に近いが、いちおう国民の人気を得ているのは、そのアイデアや政治
的実力において他の政治家を圧倒しているからであろう。

■■もっともそう言うビートたけし氏ご自身も、「品格」の欠けらすら
無く、卑猥粗雑に近い。 だが彼は最近、正式に「国立芸大教授」とか
に任命されたという。 異能の才子らしいが、それにしても名誉ある芸
大も目的のためには、「教授の品格」など選ばぬ時代になったらしい。
 というか、芸術にはもともと「品格」など不用なのかも知れない。

■■小泉首相がいかにいかにクラシック音楽やオペラが好き、とハイカ
ラぶって見せても、彼のべランメー口調には行動力はあっても、一国の
宰相としての「品格」がないことは、とっくに国民は知りすぎている。
 国民を代表する首相としてはもう少し「品格」が欲しい、と国民の多
 数が無意識に感じているところである。 だから、彼のつぎの総理に
 は、「品性」が高い人が望ましいと、国民は内心で求めている。 ち
 ょうど、「吉本ァチャラカ」や、「紳助・みのもんた司会」に不満を
 持つ国民が、スカッとしたヨン様に憧れを抱くような具合に。 

■■ならば「安倍晋三」候補はどうか。対北朝鮮では強硬派でありなが
ら、少なくともTVのまえでは節度があり、「品格」もいくらかあると
感じられる。 だから総裁選への人気投票でも群を抜いている。 とこ
ろが彼にも弱点がある。 そこはかとない「ひ弱さ」の感じである。
 「品格」というのは、人格高潔であるばかりではなく、いくばくかの
 「強さ」も要求される。 武士道が「品格」へ格上げされる大きな要
 素として「雄雄しさ」、つまり「強さ」も必須要件として必要なのだ
 。 ただしこの「強さ」はそう感じさせるだけでいいのであり、実際
 の腕力、暴力的雰囲気は禁物である。 ぜったい抜かない「伝家の宝
 刀」がいいのだ。 

■■その点、安倍氏には、若さの弱点であろうか「強さ」が認めがたく
、結果的には最終段階で福田氏に一歩を譲る可能性が大、とボクは八卦
を見ている。 「凛とした雄雄しさ」、つまり「抜かない宝刀」を持っ
ているぞ、という態度が安倍氏に備われば、総理総裁としての「品格」
はじゅうぶんだろう。

■■わが国の政体は、政党政治の国ではなく、外国流の君主国家でもな
い。 政党マニフェスト、つまり論理の世界でもなくて、世界的にも珍
しい「激しい情緒、情念の国」であるとボクは見る。 じつの所、憲法
も政党マニフェストも要らないわが国なのだ。 要るものは何か。それ
は「品格」という情緒・情念であり、それは不思議なことに憲法にすら
優先する。

■■その「品格」を象徴するのが「天皇家」であるとボクは思う。 い
まのわが国の皇室が「万世一系」であり、過去に瑕疵なき王室であると
は誰も思っていない。 それでいて厳然とわが「皇室」は存在し、天皇
制国家と称している。 なぜか。 

■■日本国憲法第1条には、 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統
合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く、
となっている。 「天皇は日本国の象徴」とは、つまり「日本人の持つ
べき品格の象徴」という意味だと、ボクは解している。 じじつ幸せな
ことに、現在の天皇、皇后の「品格」は、世にも稀なくらい立派である
。 世界中どこへ出しても引けをとらない。 女性問題でポルノ紛いの
ネット情報を流出させて、それを数百万人の人々が見て、なお馘(くび
)にならなかった某国元大統領などと比べると、月とスッポンの違いで
ある。

■■もしこのように「天皇・皇后」の「品格」が立派でなかったならば
、わが国の天皇制などは風前のともし火であるに過ぎなかったであろう
。 日本人の昔からの誇りとする「品格」について、それをほぼ完璧な
までに保守し、実施してきた功績者は誰か。 それは我々全日本人の飽
くなき「品格」という美意識への執念であり、その完璧な象徴として現
天皇・皇后が存在する。 われわれは、「国家の品格」を論ずるとき、
夢にもこれを忘れてはならない。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :2006年5月5日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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メーデー記念集会

 さる1日、寒さにもかかわらずユジノサハリンスク市レーニン広場には
 市民千人ほどが参加したメーデー記念集会が開かれた。集会参加者たち
 は「エジナヤ(単一な)ロシア、正当な生活のために」、「5月1日は労
 働者団結の日」、「労働者に正当な給料を払え」などと書かれたプラカ
 ードと国旗を手にしていた。集会は職盟が主催したが、企業や会社員た
 ちの姿は見えなかった。集会に参加した共産党員らは演説を聞きながら
 支持の拍手を送るなどの反応を見せたが、エジナヤロシア党代表のヴェ
 ・エプレモフ州議会長がサハリン社会経済の発展に伴って労働者たちの
 生活も良くなりつつあるとの言葉に対しては一部の老人(年金生活者)
 が不満を表した。市民達は演説にもあまり耳を傾けず、最後まで残って
 いたのは数人に過ぎなかった。同日他地域でも記念集会が開かれたが、
 ネベリスク市では300人、ホルムスク市では30人、オハ市では70
 人ほどの市民しか参加しなかった。

土曜清掃に1万人の市民参加

 さる4月29日の土曜日をユジノサハリンスク市政府は「大々的都市掃
 除の日」と決め、学生や企業の社員など1万人あまりを動員して雪とゴ
 ミを処理した。市政府の広報活動や準備作業に全力を尽くしたことと、
 暖かい天気のため、例年より参加者が多く満足な成果をあげることがで
 きた。

市長と身体障害者代表との会談

ア・ロブキン ユジノサハリンスク市長が身体障害者団体の代表らと会談
を行った。代表らは2004年に市政府に提案した身体者専用歩道設置な
どの願いが受け入れられたことに対して感謝の意を伝えたのち、新築建物
に障害者用のスロープ設置を義務化してほしいとの新たな要望を提出した
。市政府は車椅子で乗り降りできるバスを既に購入している。

市韓人会母の日に

ユジノサハリンスク市韓人は5月8日の母の日を迎えて高齢の韓人老人1
06人の家を訪ね、補助金を渡すことにした。又、老人たちの憩いの場で
6日、土曜日に祝賀披露宴を開く予定である。

回想記:「文化センター建設は既に10年前に要請したこと」―サハリン
州韓人回・老人会代表団初の日本公式訪問

サハリン老人の前会長朴・へリョンさんが1992年に日本へいったこと
があった。しかし、その時は日本政府からの公式的な招待を受けての訪日
ではなかったために関係者との面会は実現できず誰か知り合いに頼んで持
っていた要請書を日本政府に渡した。1995年7月4日、サハリン韓人
会と老人会代表団(団長金・ホンジ)がはじめて日本を公式訪問した。目
的は朴老人会長の要請書が日本政府の手に渡ったかどうかの確認と日本外
務省や赤十字社を訪ね直接新たな要請書の提出しその内容を説明すること
だった。最初の日、我々は日本外務省の東北アジア課のベッショ課長を訪
ねた。そこで私達は要請書を次のような内容の要請書を提出した。1.家
族同伴(子供達)の永住帰国保障、2.永住帰国した子供達の教育と就業
問題解決、3.サハリン残留者たちにも永住帰国者と同等な補償の要求、
4.韓国親戚訪問の支援、5.行方不明者の生死確認調査実施、6.未清
算賃金と郵便貯金の支払。

又、金・ホンジ会長は要請書を提出しながら、100人収容可能な老人福
祉館(仁川)と500世帯アパート建設は問題解決の第一歩に過ぎないと
指摘しながら他の諸々の問題解決のためにも努力が必要であると強調した。
ベッショ課長は要請書を受け取りながら永住帰国者と残留者、両者の立場
を考慮しながらすべての問題を検討すると共に、サハリン韓人たちの意見
を尊重し又政策に反映できるように努力し、日本が出来る限りのことはす
るように努めると約束した。しかし、その約束が守られなかったことはあ
まりにも遺憾である。翌日、我々は赤十字社を訪ねた。当初、我々は副総
裁と話し合う約束だったが、出張で留守だったために国際救援課長と話し
合うことになった。彼にも用意していった要請書を提出し、いくつかの質
問をした。パイロットプロジェクトは何を根拠に作られたのか、今後のサ
ハリン韓人事業は何を計画しているのか、残留者達に対する補償はどうす
るのか等など。質問に対し課長はこのように答えた。「すべてのことは政
府が決める。だから私達には答えることが出来ない」即ち、赤十字社は何
も知らないし、政府から言われたことをするだけであるとのことだった。
今日、ユジノサハリンスク市に韓人文化センターがオープンを間近にして
いる。同センター建設問題は我々がはじめて日本を訪問した時に提案した
ものである。日本訪問の際、我々は日本総理官邸で五十嵐官房長官にあい
、サハリン残留者たちの民族教育と文化保存のための文化センター建設の
必要性を訴えた。官房長官はいい案だと同意しながらロシア側が意見を聞
いて議論を続けようと約束したのである。このような経緯で文化センター
が設立することになったが、最初は文化センター建設に強く反対する社会
団体もあった。なのに、今となってはそのような人たちが文化センターを
自分らのものにしようとしている。 文化センターは必要ないのか。それ
は違う。如何なる民族でも自分らの言語や伝統を忘れてしまうと多民族に
同化され最後は民族性を無くしてしまう。民族の歴史や風習、伝統、文化
は守らなければいけない。ロシアの韓人社会は民族性を失いつつあるのが
事実である。これは民族的悲劇である。このような現実を考えると文化セ
ンターは絶対必要である。ところがこれは、我々が日本政府や韓国政府を
説得し勝ち取ったものであることを忘れないでほしい。
                                   (州韓人顧問成・ジョンモ)

資料:1995年日本訪問団員:サハリン韓人会長金・ホンジ、老人会長
朴・ヘドン、補償永住帰国推進委員会長金・ビョンス、サハリン韓人会顧
問成・ジョンモ

インタビュー:新しくできた自動車整備工場の金・ヨンジュ社長―韓国の
設備と技術に経験も

ユジノサハリンスク市に韓国の設備と技術を導入した新しい自動車整備工
場が誕生した。

質:大規模の工場設立おめでとうございます。営業はいつから。
答:今年の4月12日に開業式を行い、その日からやっている。

質:ロシアで工場を設立するには大変な苦労が伴ったと思うが・・・。
答:本当に大変だった。特に自動車修理設備を韓国から持ってくるのに税
関通過が最も難しかった。

質:自動車工場を設立した動機は。
答:私は果物を韓国等海外から輸入して販売する仕事をしているが、最近
は小売商に直接渡してしまうために倉庫が要らなくなった。1年近く空い
ていたが、そこを活用できる新しい事業を構想していた。サハリンは冬が
長く道路が悪いために自動車事故や故障が多い。その点に注目して整備工
場の設立を思いづいた。

質:今も自動車サービス工場が多いと思うが・・・。
答:市内に約14箇所ほどある。又、個人的にやっている(闇商売)所ま
で含めると20箇所くらい。従来の修理工場を訪ね実態を調べてみると設
備が古く、修理期間も3週間から1カ月もかかる。自動車修理部門ではあ
まり知識がないために韓国や中国を3−4回訪れ整備工場を見学するなど
して多くのことを学んだ。

質:準備に時間も資金もかなりかかったでしょう。
答:工場設立準備に約9カ月がかかった。レッカー車の税関通過だけが残
っている。レッカー車は今までサハリンへ入ったことがなくてどの法律を
適用したらいいのか関係当局もわからなく、今コルサコフ港税関倉庫で搬
出を待っている状態である。モスクワと緊密に連絡を取りながら協議中で
あるが、恐らく週末には貰えると予想している。

質:技術者たちはどんな人を。
答:韓国と中国で20−30年間の経験のあるベテラン技術者たちを呼ん
できた。例えば、工場長の張・セフンさんは40年の経験をもっている熟
練技術者で、モーターの音だけでどこが問題なのかわかる。

質:部品はどこから供給されるのか。
答:ユジノサハリンスク市でも自動車部品販売を行っているところがある
が、種類が少ない。日本車が多いために日本から必要な部品が入ってくる
まで何週間も何カ月も待つ場合がある。我たちは日本の代理店から直接部
品をもらっており、時間のかかる場合は臨時運行できるような処置をする。
普段1カ月もかかる修理を私達は2−3日で終える。お客さんたちの反応
はとても良い。

質:社員は何人か。
答:現場技術者は12人。他に部品管理者、顧客管理担当者、営業、経理
などを担当する社員たちがいる。

質:顧客管理者とは。
答:修理後アフターサービスを行うためである。修理後トラブルはないの
か、又車を安全に長く乗るために必要な適切な点検なのについての情報を
与えるなどのサービスを行う社員を雇った。

質:サハリンへ来て何年。
答:12年である。

質:趣味は。
答:スポーツが好きで小さいときからやっている。サハリンではボランテ
ィアで子供達に剣道を教えていた。事業上留守の時は子供達が代わりにし
てくれたが、最近は皆大学や就職のために韓国へ帰っているため留守番を
してくれる人がいなくて、剣道教室をやめた。

質:教会でもボランティア活動をなさっており、サハリン国際芸術文化協
会の会長としてもご活躍なさっていると知っているが。
答:牧師や宣教師たちを支援するのが私の役目だと思うが、最近経済的に
あまり力になれなくて申し訳ない気持ちである。文化協会の仕事は私が純
粋な気持ちで民族文化を紹介したいと思っていることを知って支援してく
れる人たちが多く何より幸せに思っている。

記者の目:「両国のタクシー運転手」

私は韓国やサハリンでよくタクシーを利用する。タクシー運転手たちは乗
客と話すのが好きなようだ。両国の運転手達の話を紹介したい。

<韓国のタクシー運転手たちは乗客とどんな会話をするかー韓国でタクシ
ーに乗ると直ぐにどこから来たかと聞かれる。言葉や服装で直ぐに韓国人
ではないことがばれるみたい。>

1.90年代の不況の時、私達は国のために指輪まで寄贈しましたよ。金
持ちより庶民がもっと一生懸命だったです。韓国は急速に発展した。私達
も昔は苦しかった。昔は女性達が髪の毛を切ってまでして国の経済を助け
ようとしたのです。私達はやろうとしたら必ずやり遂げる民族ですよ。
2.ワールドカップ知っているでしょう。サハリンでも見たのですか。韓
国の選手たちが格好いいでしょう。
3.サハリンから来たのですか。サハリンは凍土の地と聞いたのですが。
日本時代、同胞が強制連行されたでしょう。日本から必ず損害賠償しても
らうべきですよ。サハリンは雪が多いですか。私達はわざわざ雪を見に出
かけるのですが。冬の気温が零下15度くらいですか。日本から損害賠償を
必ずもらうべきですよ。
4.わが国の高校生たちは鼻から血を流しながら勉強しているのです。大
学性たちよりも大変ですよ。勉強だけではない。音楽も、美術も、スポー
ツなど習いことで寝る時間もありません。

<サハリンではタクシー運転手と乗客がどのような会話を交わすのか>

1.あれ、あれ、見てください。又事故ですよ。道路がよかったらもう少
し事故が少なくなるだろうに。新しくい市長が就任しても事情はまったく
変わっていない。
2.税金はどんどん高くなるのにどうして道路事情はすこしも変わらない
のかしら。税金は一体どこへ消えるのか。どうして道路修理をしないのか。
昔よりも悪くなっている。昔は雪が降ると徹夜で除雪をやっていたのに今
はどこで何をしているのか。神様だけが知っているだろう。
3.わが国の国民たちはものを大事にしようとはまったく考えていない。
こわすばかり。玄関をみるだけでも人々の性格がわかる。汚したり、壊し
たりばかりしている。自然もそう。一体次の世代に何を残すことができる
だろう。
4.プーチン大統領が次の選挙には出ないと宣言したでしょう。私は賛成
。今、大統領の人気はとても高い。もしも次の選挙に出馬すると言ったら
人気は落ちるでしょう。
─────────────────────────────────
◆[編集長から]              Michio Katayama
─────────────────────────────────
 先週は何年か振りで中国・南京へ出かけた。上海ほどではない様だが、
目を見張るほどの開発振りだった。その影で、古いものが壊されてゆく。
 旧日本軍の「慰安所」だった建物も。

◇円、一時111円台 7カ月半ぶり円高水準。原油価格も高騰。

◇医師不足が深刻。島根では島を出て出産の事態も。国立大学の医学部
卒業生に僻地・離島への勤務を義務付けられないか。
 職業選択の自由が阻む矛盾。

◇グルジア・ウクライナがCIS脱退の協議開始の報。ロシアが黙って
いまい。エネルギーをどう確保するかが課題。

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発行     2006年5月9日   No.254
編集・発行  609studio   Michio Katayama
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