メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.247 ◆現代時評:[日本は検察ファッショの国?]  2006/02/28


─────────────────────────────────
【609 Studio 】メール・マガジン・2006/2/28  No.247
─────────────────────────────────
【609 Studio 】メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプ
 トに論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報
として、ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェス
ト版、その他、寄稿記事など話題満載! 
           URL ⇒   http://www.609studio.com
─────────────────────────────────
         ◆609studio NEWS◆
                
                お知らせ
  セコリョ新聞日本語版の訳者が2月末まで海外調査に出かけてい
  ます。日本語版はお届けできません。ご了承ください。
  帰国後、まとめてお送りいたします。 

     ─────────────────────────
                  ジャーナリスト・ネット ホームページ

                      http://www.609studio.com  
          ─────────────────────────
         ◎片山通夫写真集「サハリン」好評発売中!!◎

   写真集「サハリン」が未知谷から発行されました。是非書店
   もしくは609studioでお求めください。
 
          四六判160頁 1,600円(税別)
           ISBN4-89642-138-8 C0072

      未知谷 HP http://www.michitani.com/index.html
      もしくは  office@609studio.com

───────────◆◆◆INDEX◆◆◆───────────

◆現代時評:[日本は検察ファッショの国?]             ken

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:訳者出張でお届けできません。

◆編集長から

─────────────────────────────────
◆現代時評:[日本は検察ファッショの国?]             ken                 
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
─────────────────────────────────
◆◆毎日新聞 2006・2・22  ライブドア事件は、粉飾容疑の立件で
一つの区切りを迎えたが、再逮捕された前社長の堀江貴文容疑者(3
3)らの疑惑は依然、山積している。(中略)  それでも、法務・
検察幹部は「影響力のある人間を逮捕して『この程度か』と世間に言
われるようではいけない。逮捕されてしかるべき、と感じてもらえる
までやる義務がある」と全容解明に意欲を見せる。

◆◆アサヒコム 2006.2.23  堀江前社長ら5人は、LDの04年9
月期の連結決算で約53億4700万円の粉飾をした疑い。約3億1
300万円の経常損失が発生していたにもかかわらず、(中略) 経
常利益を約50億3400万円とした有価証券報告書を提出したとい
う。関係者によると、堀江前社長は特捜部の調べに対し「粉飾はして
いない」と否認。

◆◆読売オンライン2006.2.24 堀江被告らは英語をほとんど話せず、
海外とのパイプもなかったため、野口元副社長の知人で、香港に人脈
を持つ投資顧問会社「バリュー・リンク」(東京都千代田区)の社長
に依頼。香港の証券会社を通じ、投資組合に入ったライブドア株を市
場で売却する仕組みを作った。(中略) 堀江、宮内両被告らは、ス
イス系金融機関出身の会社役員にも同金融機関の香港法人への仲介を
依頼。香港法人でプライベートバンキング部門を担当する日本人が中
心となり、投資組合に入ったライブドア株を、タックスヘイブンの英
領バージン諸島に本店登記したペーパーカンパニーへいったん移し、
売却したという。この会社役員は日本の大手証券会社に勤めた経験も
あり…。

◆◆共同通信2006.2.23 米証券取引委員会は22日、米事務機器大手
ゼロックスの粉飾決算問題で、監査を担当した大手会計事務所KPM
Gの会計士3人が最大で1人当たり15万ドル制裁金を支払うことで
合意したと発表した。 会計士個人に対する制裁金としては過去最高
額。

■■ほぼ総ての市民が予想した通り、ライブドアのホリエモン氏は2
2日の再勾留期間が過ぎると「別件」で再逮捕された。検察の作成し
た「自白書」にサインしなかったから、先ずは「とうぜん」の再
逮捕で、誰も不思議とは思わない。

■■考えてみると、これは不思議な話である。 なぜなら、ならば裁
判所による「勾留」に期限が限られているのは単なる形式に過ぎない
のか、という事になる。

■■ボクは、問題の根本は二つあると思う。 一つは「自白書」の裁
判における過当評価であり、もう一つは検察に対する裁判所の迎合、
もしくは癒着である。

■■「自白」が裁判で最大の証拠になるという習慣は、かってのあか
らさまな拷問時代から続く伝統であり、お雇い法学者ボアソナードが
「あまりにも酷い拷問」と言った明治初年から今日まで連綿として続
くわが国裁判制度の恥部である。 つい先日も、米兵の刑事事件で、
在日米軍が当該被疑者を日本側に引き渡すのを渋った原因も、日本の
検察による被疑者への苛酷な扱いを米軍当局が心配したのであった。 

■■仄聞すれば、日本の検察は、昔のようなあからさまな暴行による
自白は求めないらしいが、精神的拷問は、いまなお通常だそうだ。
 「落せましたか」「いやまだ落せませんが、今日中には落せるでし
ょう」といった、検察内部での日常会話がそれを証している。「落す
」とは、無理やり自白させることの部内隠喩である。

■■アメリカには、自己に不利な供述をしなくてもいい、というミラ
ンダ法というのが1966年以来存在する。被疑者を訊問する前に必
ず告げなければならない言葉で、典型的なのは「You have the right
 to remain silent. If you give up that right, anything you say
 can and will be used against you in a court of law. You have 
the right to an attorney and to have an attorney present during
 questioning. If you cannot afford an attorney, one will be 
provided to you at no cost. During any questioning, you may 
decide at any time to exercise these rights, not answer any 
questions or make any statements.」だ。自己に不利な自白はしな
くてもいい、という説明である。米映画によれば、被疑者自身が聞き
取れないくらいの速さで言ってのけるから、まぁ、お義理で言ってい
るだけかも知れない。

■■がしかし、日本の警察・検察における「落す」という俗語とは正
反対の語感や精神であることだけは確かだ。 といって、被疑者を鄭
重に扱って取り調べても、ことが捗らぬことは事実である。 日本語
を解しない外国人被疑者を通訳入りで取り調べえも、「ハカがいかぬ
」とこぼす刑事の話を聞けば、なるほどとも思う。罵詈雑言による精
神的圧迫は、被疑者自白への最短路である。

■■今回のライブドアのホリエモン氏逮捕、勾留の件は、いわゆる「
行政犯」であって、「自然犯」ではない。 「行政犯」とは、行為自
体は反社会性を持つものではないが、行政目的のための命令・禁止に
反し、結果的として反道義性や反社会性を持つ犯罪である。「自然犯
」とは殺人や強・窃盗などのように、時代や社会情勢に関係なく起こ
す犯罪である。 ホリエモン氏の今回の行為などは、行政「犯」を構
成するかどうかが、今後争われるだろう。

■■「行政犯」と「自然犯」は、被疑者の扱いにおのずから差をつけ
るべきは言うまでも無い。特に今回のライブドアの立件は、20万人
にも及ぶ株式購入者に損失を与えたとかいうが、いわば株投機を楽し
んだ「賭博行為者」にその場を与えたのと、証券取引業法違反という
微罪容疑であるに過ぎない。 反対に得をした者は東証であり、言う
なれば同罪である。

■■微罪といえば、23日のニュースで、ゼロックス社の粉飾決算事
件に関与した公認会計士、いままで最高の15万ドルの罰金刑に処され
ている。「行政犯」についての刑罰とは、要するにその程度のもので
あって、「自然犯」との扱いは大きく異なるものであることを知らね
ばならない。

■■ホリエモン氏には偽計、風説流布などに該当しない可能性もあり
、そのときは税法や外為法違反で無理やり犯罪者に仕上げようという
意図が検察には明白なようだ。「財産権侵害として自然犯的な性格」
を持たせようとし、そのために、「詐欺の意思」がホリエモン氏にあ
ったとして、「長期勾留」という心理的拷問で供述書に氏のサインを
要求している。 が、当のホリエモン氏には明確な「詐欺の意思」な
ど無かった、というのは事実だろう。

■■仮にもかっての優等生で、東大の学生でもあったホリエモン氏に
は、明確な「詐欺」の意思などありようハズも無く、「法にさえ違反
しなければいい」といった程度の、米国流の企業倫理感が災いしたと
考えていい。 マスコミが挙ってパッシングする彼の、「カネで何で
も買える」という説も、いわば「青年の大言壮語」か、旧来の企業意
識に対するアンチテーゼとして表現してみせたものであろうし、それ
を若者の無軌道ぶりとして批判する守旧派のウイットやセンスの無さ
こそ、批判されるべきであろう。

■■いっぽう、検察はなぜそのように執拗にホリエモン氏を追詰めよ
うとするのか。 おそらく、月光仮面か正義の護持者ぶって大衆に媚
び、「一罰百戒」を求めるつもりであろうが、それならもうとっくに
目的を達し終えていて、東証も政府も証券法改正を真剣に考えつつあ
る現状だ。 

■■問題は、そうした抜け穴だらけの証券法、会計法の震源地である
米国だ。彼らにとってライブドアのどこがいけなかったのか、日本が
なぜそんなに騒いでいるのか。今頃、理解に苦しんでいるだろう。 

■■ホリエモン氏、およびライブドア社の証券取引法違反、外為法違
反および税法違反は、もしそれが違反であるとする限り、殆どの証拠
は既に挙がっているだろう。「行政犯」に過ぎない今回のライブドア
事件を犯罪として弾劾するつもりならば、裁判所に提出する証拠は、
書類もしくはコンピュータ・データとして集めるに困難は無く、自然
犯のように凶器や自白証拠は不要に近い。ただ、ホリエモン氏らを痛
め付け、日本人庶民にありがちな「苛め好き」に迎合しているだけで
あって、今更、ホリエモン氏を勾留延長する必要は殆ど無い。検察の
欲しいのは「詐欺の意思」の強制的自供書だけだ。 

■■そのためには、検察に媚びる裁判所が、形式的に勾留状にサイン
するだけでいい。 日本の裁判における級審制の、初審が検察にある
ことは、つとに知られる通りで、本来の初審たるべき地裁が第2審と
化しているのは昔からの伝統である。検察の初審気取りは、「起訴猶
予」や「不起訴処分権」を握っているからであり、反対に、いったん
起訴した者が無罪になれば担当検事の履歴汚点として、昇進に響く。

■■遠山の金さんや、維新の川治大警視までは判事と検事を兼ねる風
習があった。それが判・検事同格の制度を生み、それは第2次大戦後
の米英法取り入れに際しても変更されずに今日に至っている。米国な
どに於ける検事の身分は判事に対して著しく劣るが、わが国では判事
と検事が同格、というより、都合によっては勇ましい検事が大人しい
判事より影響力が大きい。 

■■何かことあれば「検察の出動」を期待し、検察に日本の安寧秩序
を求めようとする社会的風潮は「遠当の金さん」映画に喝采を送る庶
民の心情として、いまなお変わらない。 だから、安寧秩序どころか
庶民の倫理・道徳まで検察が「一罰百戒」として取り仕切る小学校長
的役割まで果そうとする心情も、あながち無理からぬ処がある。

■■換言すれば、「検察ファッショ」は日本の悪しき伝統である。裁
判官よりも検察が日本の安全を司り、さくら吹雪の「遠山の金さん」
が、日本の安全を維持しているという、検察および国民の心底こそ「
検察ファッショ」の原点である。それは、検事総長平沼騏一郎が横滑
りして総理大臣になった昭和14年以来、いまなお変わるところは無
い。

■■時代は変わりつつある。別件による勾留期限の延長などによって
精神的拷問を加えようとする検察の態度は、もうこの辺で終わりにす
べきで、それが、日本がほんとうの意味における自由主義国家に脱皮
すべき関門ではなかろうか。 例の佐藤優氏による「国策逮捕」事件
などは、その典型である。
─────────────────────────────────
◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
─────────────────────────────────
 訳者が2月末まで海外出張中です。後日改めてお届けします。
なお韓国語は以下のページで読むとが出来ます。

      http://www.609studio.com/kil_sang.html
─────────────────────────────────
◆[編集長から]              Michio Katayama
─────────────────────────────────
 2月も終わりになりました。あたりまえのことですが、もう3月。
春ですねえ。もっとも、沖縄ではすでに春は来ていますし、北海道で
は・・・。いわんやサハリンの気温はまだ氷点下の報告です。

◇モスクワで雪のため市場崩壊。60人からの死者。30年前の建設。
老朽化?で市場長を逮捕?誰かが責任を取らなきゃ。それにしても殺
生な。

◇責任といえば、民主党の投げた「堀江メール爆弾」は、不発どころ
か自爆!民主党では責任の回避に必死。

◇あのメール騒ぎは、もしかして自民党の陰謀?乗りやすい議員をタ
ーゲットにして・・・。それにしても脇の甘い民主党執行部。

◇脇が甘いといえば、フィリピンのアロヨ大統領が非常事態宣言。
挙句に反政府系新聞を捜索!?脆弱な民主主義。レイテ島の地すべり
で、各国から救援を受けている状況なのに。

◇各国からの支援といえば、イラクの宗教対立。これには外国人は手
を出せない。出せば大火傷。さあ、ブッシュ大統領はどう出る?

◇ブッシュといえば、米国産の牛肉問題。聞けば検査員は全く研修を
受けてなかったって。そりゃ輸出してしまうわな。
────────────────────────────────
発行     2006年2月28日   No.247
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
              MailuX配信システム         ID:MM3E1B97842E020
e-mail        office@609studio.com
website    http://www.609studio.com
投稿      http://www.609studio.com 掲示板へ
購読 購読解除は websiteへ

           ◇禁・無断転載◇
───────────────────────────────

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。