メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.240◆現代時評: [ 雪また雪、大雪の日]  2005/12/27


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【609 Studio 】メール・マガジン・2005/12/27  No.240
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【609 Studio 】メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプ
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◆現代時評: [ 雪また雪、大雪の日]          ken

◆セコリョ新聞ダイジェスト版:訳者出張のため休載します。

◆編集長から:[この1週間]

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◆[ 雪また雪、大雪の日]               ken
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 office@609studio.com  へ!
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◆◆神戸新聞ニュース 2005.12.20 午後八時現在の積雪は、青森市
・酸ケ湯で215センチ、岐阜県白川村で200センチなど。 記録
を更新した40地点は北海道から北陸、近畿、中国地方の広い範囲に
わたった。このうち、19日に更新したのは19地点で、群馬県みな
かみ町藤原185センチ(過去の記録165センチ)、福井県大野市
・九頭竜189センチ(同188センチ)など。

◆◆アサヒコム 2005.12.22 23日午前6時までの24時間に予想
される降雪量は、いずれも多いところで北陸、近畿北部、山陰、甲信
地方で70〜80センチ▽東北の日本海側、関東北部、東海地方、山
陽で40〜60センチ▽北海道、東北の太平洋側、九州北部・四国の
山沿い、近畿中部・南部で20〜30センチ。同庁によると、島根県
飯南町では22日、最大積雪が125センチに達し、1981年の観
測開始以来、最高となった。鹿児島市でも11センチの積雪があり、
1892年の観測開始以来、12月の積雪としては最高となった。

◆◆北日本新聞 2005.12.21 21日の(富山)県内は、上空に寒気
が停滞したため、曇り空となった。富山地方気象台によると、21日
夜から24日にかけて、輪島上空5千メートルに氷点下40度の強い
寒気が再び入り込み、大雪となる見通し。22日朝9時までの予想降
雪量は平野部で5ー10センチ、山間部で10ー25センチ。雪は2
4日まで降ると予想されるが・・・。

◆◆アサヒコム 2005.12.22 22日午前8時50分ごろ、近畿地方
の約70万軒で停電が発生した。関西電力によると、大飯原発からの
送電線で雪によるとみられるトラブルが起き、大阪、京都、奈良、滋
賀の各府県で一時停電。大飯原発の1、2号機も原子炉が自動停止し
た。

■■今朝の拙宅付近(阪神間)は数年ぶりの雪だった。「着雪」とい
う言葉もあるが、今朝のはだいぶ積もったから「積雪」というべきだ
ろう。めったに雪など見ない土地柄だから、大人のボクもナンとなく
嬉しい。子供たちはさっそく、雪達磨を作り、雪合戦をしている。

■■旧幕時代、江戸に初雪が降ると、諸大名が馬を馳せて将軍家に、
一斉に「雪見舞い」に参上する習慣があった。その記録が徳川260
年に渉って残っているので、その間の江戸の初雪の日が判る。
 これは世界で日本だけの実際記録だから、気象学者にはいいデータ
になるという。もっとも「雪見舞い」は清少納言の「枕の日記」にも
出て来るから、少なくとも平安朝以前からの優雅な習慣らしい。
 東北地方のある地域では「雪問い」とも言うらしいが、これは、な
おさら優雅な言葉である。

■■昔、ボクの台湾現地法人の女性が、「日本が好き」というので、
「日本の何処がいいのか」と訊ねると、即座に「雪が降るから」と答
えた。彼女に、「雪」への強い憧れがあったのだろう。 豪雪は事故
に繋がり、交通途絶もあるから、そう結構なものとも言い難いが、そ
れさえ考えなければ「雪」は美しく、優雅なものの代表例だ。「雪の
ように白い肌」とか、「白さも白し富士の白雪」と汚職疑惑の某大臣
が見栄をきった事もあるし、どちらかと言えば「雪」は好感を持たれ
る部類だろう。台湾の女性が雪に憧れを持つのもとうぜんと謂える。

■■もっとも台湾にも雪は降る。 台北北郊の公園、陽明山頂には、
たまに雪が降ることもあるらしいが、「着雪」と表現するまでにはな
らぬようだ。 先日、北海道旭川商工会議所の高丸会頭が「旭川空港
拡張計画に、九州の空港のように、海外からの観光客が一巡して閑古
鳥が鳴くようになったら困るとの説があるが、旭川の強みは「雪」に
あり、台湾・香港・シンガポールの人にとって、将来の北海道は日本
人に於けるハワイと同じで、観光資源としての旭川空港に客が減るこ
とは無い、と主張して、ようやく拡張が決定した」とのことであった。

■■ところが、新千歳から旭川駅までの車窓で、高く伸びた大木を殆
ど見受けなかった 聞けば、北海道は豪雪地帯で、樹木が少し高くな
ると、雪の重みで先が折れ、樹幹の太さに比して樹高が短いのである
、と誰かが答えた。ならば、冬の交通に難渋するだろうと思うと、同
席した旭川の菅原市長が「市内の除雪設備は完璧で、雪の旭川では真
冬でも、雪で車のスピードを緩める必要がない」、と説明する。なる
ほど、それなら旭川の観光資源としての「雪」は立派なものであると
思った。

■■わが国政府による「豪雪地帯」は、年間積雪量5000ミリ以上
と指定され、新潟、富山、石川の各県は全域、長野県は全面積の74
.0%が豪雪地帯に指定されている。
http://www.t-hrse.go.jp/number/pdf/p1-2.pdf

■■われわれ降雪の影響を受けるのが少ない地方に住む者は、寒いと
ころや、より北の地域によく雪が降ると思い込んでいるが、実際には
、寒いのと降雪量が多いのとは必ずしも一致しない。 早い話が、攝
津・播磨の海岸地域では、ものの半日も雪景色をみることは殆どない
が、瀬戸内海を隔てた香川県の内陸部、つまり徳島・高知寄りでは、
都合によると2メートル近くの積雪も珍しくない。熊本県は、山陽、
近畿南部よりも平均して降雪量が多い。

■■むかし、北欧スウェーデンに旅行したとき、ストックホルム空港
にちょうど雪が降っていた。これでは飛行場からストックホルム市街
までのバスはタイヤがスリップして運行出来ないかも知れぬと危惧し
ていたが、難無く時速100キロメートルで走り続けた。見ると、大
雪なのに地面が白くならない。
 不思議に思い、道路面に、目を近寄せて見ると判った。 降った雪
は地面に到着と同時に消えてしまうのである。 

■■メリケン粉をこぼしたと同じ要領で、フッと息を吹っかけると、
降った雪が空気中にパッと散って消えてしまい、水にならないのだ。
 「水にならない雪」というのを、このときボクは初めて見た。 ボ
クらの常識としては「異様な雪」である。 少々雪が降っても、大気
が乾燥しているからすぐ気化してしまうのである。 粉雪(こなゆき
)というよりはメリケン粉に似ている。 だから、あれだけ緯度が北
にある国でありながら、スウェーデンでは雪による交通途絶は皆無で
、バスはすいすいと走る。

■■伊吹山測候所が1927年2月14日に観測した積雪の最深記録
は、11、82メートル。世界山岳気象観測史上第1位とされている
。この年の冬、山頂は10メートル以上の積雪が2カ月間も続いたと
いう。ちなみに、2位は1923年の9メートル91センチ、3位は
1945年の8メートル50センチ。 冬型の気圧配置が強まり、雪
雲を運ぶ上空約1500メートルの風が西〜北西になった時に伊吹山
は大雪に見舞われる。若狭湾から伊勢湾へ抜ける雪雲が、真正面から
伊吹山に当たるからだ。 JRには「関が原付近で雪のため列車は運
休」というのが多いが、これが伊吹山付近の積雪のことである。

■■ということは、寒さと雪の量には直接の相関関係がなく、それよ
りも「大気中の水蒸気が多いか少ないか」と、風を受ける「風下の山
が背後にあるか無いか」が、積雪量の決め手になる。 寒いロシアや
シベリアには遮る峻険な高山は少ないし、空気が乾燥しているので、
雪は降っても、高く積もることは無い。「焼けゆくモスクワを退却す
るナポレオンの軍隊」の絵を見た人も多いだろうが、あの絵の、ロシ
アの平原には雪は少ない。 

■■1893年、ベルリンを出発して500日、シベリアを単騎横断
して帰国した福島中佐の物語りの中にも、寒くて困った話は出てくる
が、大雪で通行不能だったという話は出てこない。 シベリアだけで
なく、お隣の朝鮮半島も、雪の量は、われわれ日本のように多くはな
いらしい。これは、サハリンや、カムッチャッカのような、より北の
国でも同様で、桂川甫周の「北槎聞略―大黒屋光太夫ロシア漂流記」
にも雪で困った話は記述されているが、だからといって通行止めの話
は無い。要するに日本は、世界でも数少ない豪雪の国で、だからこそ
雪による「通行止め」も多いのだ。

■■じっさい豪雪の被害を、毎冬経験している日本という国では、そ
の対策を抜本的に講じる設備がもっとあってもいいハズだ、とボクは
いつも思う。国交省近畿地方整備局豊岡河川国道事務所のHPには、
「散水融雪設備があり・・、また、環境に配慮したクリーンエネルギ
ーの無散水融雪システムを八井谷チェーン着脱場に導入し、自然エネ
ルギーの有効利用も進めています」と記されている。じっさい、北但
の道路をドライブしていると、地下水による自働融雪のためのポール
を道路脇で見ることが多い。
http://www.kkr.mlit.go.jp/toyooka/road04.html 

■■また留萌市HPには「融雪設備資金貸付制度」として、「玄関前
の雪を処理するために融雪設備を敷地内に設置する市民に、必要な資
金の一部を貸付しています」と明記している。
http://www.e-rumoi.jp/rumoi-hp/benrityou/b-0300/b-0306/mm87.htm

■■つまり、除雪・融雪については、一応の技術が確立されていて、
その気で設備さえすれば、まだまだ積雪被害は減少できるということ
だろう。 ただ、1000兆円の負債を持つ日本政府としては、いま
すぐ完全な除・融雪設備を全日本の豪雪地帯に施す資金的余裕など無
かった、とボクは理解する。

■■それよりは、グリーンピアとか有料道路とか、ナにがしかの事業
収入のようなものが取れ、希望的観測ながら「儲かる仕事」を始める
ことが、つい先頃までの日本の役人・準役人諸公の腕の見せ所であっ
たのだ。 つまり、実業家や産業人と同じく、「金儲けを企画実行で
きる者が能力ある役人」である、とする風潮が長く続き、除・融雪設
備を企画する役人などは珍重されなかったのだ。

■■雪、それはいまわしき災害をもたらす自然の猛威という認識より
は、「真白き富士の嶺」で象徴される、日本人の清浄主義の権化であ
ると解釈する方がいいかも知れない。 清少納言の例の「香炉峰の雪
は簾をかかげて見る」の出典は白楽天の詩だが、それはひょっとして
日本のみならず、中国を初めとする東洋人の雪への憧憬かもしれない。

■■それが童謡になれば、「雪やこんこ あられやこんこ 降っても
降っても まだ降り積もる 犬は喜び庭かけまわり 猫はこたつで丸く
なる」となる。 雪を喜び、雪を愛でる精神が優先すると、少々の雪
による災害など吹き飛ばしてしまう のが、われわれ日本人の精神的
原風景ではなかろうか。だからこそ、降雪による不便さをいっとき忘
れても、なお降雪地帯に生涯を送ろうとする日本人が多いのである、
と言えなくも無い。事実、札幌は地球上でもっとも北にある人口18
0万人の巨大都市である。

■■むかし、ボクの子供の頃には「雪の日の朝は、間男(まおとこ)
もキン○○の皺伸ばし」という俗語があった。 「つねにひやひやし
て暮らしている間男も、アサヒのさす雪の朝だけは、身体も心も束(
つか)の間の安らぎを覚える」、という意味だが、下司っぽいが言い
得て妙である。

■■ボクは昔いっときフィリッピンに住んだことがある。 毎年、年
末が来るとホテルのロビーなどに「キリスト誕生」のシーンを模した
飾り物が造られ、それには純白の綿による雪が飾られる。 かれらの
「雪」に対する憧れは驚くばかりである。 ヒョットすると「雪」こ
そ、全世界にまたがる人間の清純な心を願う最大のオブジェではなか
ろうか。

◆◆波瀾と戦争と、そしてあらゆる不幸・災害に塗れた2005年もこれ
で終わりになる。「現代時評」の名のもとにボクはこの一年、ありと
あらゆる社会的な「不正と汚辱」を題材にして文を綴り、読者諸兄の
目を汚してきた。 頴川(えいせん)の水で穢れた耳を洗った孔子の
例もある。 ボクもせめてこの年末だけは、清らかな「雪」を話題に
して稿を終わり、心機一転してよき新年を迎えたい。 読者の了承を
乞う次第である。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] :
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事は関連Webへ → http://www.609studio.com
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訳者出張のため休載しますが、2・3日のうちにお届けできる予定で
す。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 今年も最後のメール・マガジンになりました。セコリョ新聞日本語
版のお届けが遅れています。2・3日のうちにお届けいたしますので
ご了解ください。
 来年は3日に発行いたします。どうぞよいお年をお迎えください。

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 「国際交流」が地方の町でさまざまな形で実現しつつある。八重山
毎日新聞は「那国町の外間守吉町長は24日から27日まで台湾を訪
問し、姉妹都市の花蓮市で、蔡啓塔(ツァイ・チタ)市長と会い、与那
国町花蓮市事務所の設置や災害相互支援協定の締結などを提案する」
と伝える。一方北の端稚内市はサハリンに稚内サハリン事務所を構え
て、経済交流、情報収集に腐心している。また対馬では徳川幕府時代
から朝鮮通信使の交流の窓口として、釜山に事務所を置き李朝朝鮮と
の交流にその力を思う存分発揮した。現在も無論韓国・釜山との交流
に。国際航路を通じた交流に余念がない。東の端、北海道納沙布岬を
持つ根室市は、北方領土返還のめどが立たないまま、望郷の地として
元島民たちやその子孫が「ビザなし交流」を続けて、地道な活動を続
けている。

 一方、小泉首相は「日米同盟」の重要性を説き、まるで他の国、特
にアジアには国が存在しないかのように振舞った一年だった。たとえ
ば、この11月、米ブッシュ大統領が京都を訪れたときのこと。大手
マスコミ・大新聞各紙の論調から見る限り「日米同盟」一本槍の記事
で埋まっていた。無論日米両首脳が「日米同盟」の重要さを喧伝した
のだから、それが記事になるのは当然といえる。

 しかし「日米同盟」とはいったい何なのかという問いかけや、その
法的根拠を解説した記事には(知る限り)お目にかからなかった。こ
こでも「小泉劇場で踊るマスコミ」しか読者は見ることが出来なかっ
た。
 筆者が知る限り、「日米同盟」の法的根拠は日米安保条約という「
軍事同盟」でしかないはずである。小泉首相は、あたかも日米同盟と
いう幻をみているのではないか。もっとも産経新聞や読売新聞の論調
に見られるように、小泉首相の言う「日米同盟を軍事同盟」として機
能させるためには、憲法9条の2項の削除が必要であるといえる。
 ブッシュ大統領訪日の前に自民党は「新憲法草案」を発表した。9
条を廃して、自衛隊を軍隊として自衛軍として設置する旨かかれてい
た。

 日米間の蜜月が、とりもなおさず、アジアでのわが国の存在を危う
くしている。小泉首相は「日米間が良好だから中国・韓国との関係も
いい」と言ってのける。しかし、アメリカは本当に「アジアで孤立」
している日本を望んでいるのだろうか。

 グローバル化が叫ばれている。国際化がわれわれの口に自然に上る
ようになった。地方の試みを中央政府は積極的にバックアップしても
らいたいものだ。
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発行     2005年12月27日   No.240
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
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