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タイトル:609studio No.226◆現代時評:[ニューオーリンズのハリケーン]  2005/09/13


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                         2005/9/13 No.226

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◆現代時評:[ニューオーリンズのハリケーン]     ken

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◆編集長から:[この1週間]

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◆現代時評:[ニューオーリンズのハリケーン]    ken
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◆◆国土交通省河川局河川計画課 2005.9.5 8月25 日にフロリダ
半島東海岸に上陸したハリケーン・カトリーナは半島を横断し、一旦
メキシコ湾に抜け、勢力を増した上でニューオリンズ付近の海岸に再
上陸。フロリダ半島を横断する際のハリケーンの勢力はNOAAによる分
類でカテゴリー1(風速33.1m/s〜42.5m/s、中心気圧980ミリバール
以上)、再上陸時点の勢力は一番上のカテゴリー5(風速69.4m/s〜、
中心気圧920ミリバール以下)。

◆◆時事通信 2005.9.7  大型ハリケーン「カトリーナ」が米南部
を襲ってから8日目となる6日、被災地のルイジアナ州ニューオーリ
ンズでは排水作業が続けられ、市街地の水は徐々に引き始めた。ただ
、市内には退避命令にもかかわらず多数の住民が残留しており、ネー
ギン市長は同日、残留しているすべての市民を強制排除するよう警察
に指示した。

◆◆毎日新聞 2005・9.7  ブッシュ米大統領は6日、大型ハリケー
ン「カトリーナ」被害に対する財政支援の第2弾として、新たに40
0億ドル(約4兆4000億円)の緊急補正予算を編成する意向を固
めた。ライフラインの復旧などにあてる。

■■誰が決めたか知らぬが、西太平洋原産のものをタイフーン、東太
平洋および大西洋発生のものをハリケーン、そしてインド洋のをサイ
クロンと呼ぶらしい。 タイフーンの漢字として今ごろは「台風」を
当てているが、たしか戦前は「暴風」「烈風」「颱風(たいふう)」
「颶風(ぐふう)」などに別けていた。 ハリケーンはフロリダの名
物で、多くのばあい「竜巻」を伴う。竜巻を英語で「トルネード」とよぶ
そうだが、雑牛肉を接着剤で固めて、その周辺をベーコンで巻いたス
テーキを「トルネード・ステーキ」というのも、語源はその辺りにあ
るようだ。

■■「カトリ−ナ」という名のハリケーンが、ルイジアナ州、ニュー
オーリンズを直撃したのは8月29日のことである。 人口49万人
のニューオーリンズ市をほぼ壊滅させた。
  もっとも、暴風で壊滅したのではなく、もともと海面下数メートル
の位置にある市街の殆どが防水壁の壊滅で浸水、というより水没して
しまったのである。

■■地図を見ると水没の原因はすぐ判る。ニューオーリンズは、元来
が琵琶湖と同じくらいな大きさのポンチャートレイン湖と、そのすぐ
南を流れるミシシッピ−河の間の狭隘な土地に開かれた都会で、湖と
川をつなぐ排水用運河が街中に数ヶ所ある。水に囲まれた都市と言え
ば聞こえはいいが、市街地の殆どが水面より低い皿状の0メートル以
下の位置にある街だ。今回はその運河が壊決し、フライパン状の市街
地が元の池に戻ってしまったと、いうべきか。その辺りは通称フレン
チ・クオーターと呼ばれる旧市街を含み、盛り場兼貧民街が多く、今
ままで大水害が起こらなかったのが不思議なくらいなのだ。 天災で
なく、人災と謂われる所以である。

■■海抜0メートルの街は、東京の下町や、大阪の東大阪近辺にもた
くさんあるが、ニューオーリンズのは面積がその百倍もあり、おまけ
に平均水位がマイナス8メートルだというから、何事でも米国は規模
が大きい。

■■ニューオーリンズ市のネーギン市長は6日、市内に残留している
数千人の住民を強制的に退去させることにした。
 市内の6割が依然冠水したままで、水が有害物質で汚染されている
ことが理由だ。排水には数週間かかる見通しで、生活が早期に正常化
する可能性はないという。ハリケーンの前日、市長はすでに住民に避
難勧告を出しているが、多くの住民は避難先や避難のための資金がな
いことを理由に自宅に残っていたのである。 結局、総避難民数は4
0万人に達するという。

■■「避難命令といっても、自家用車も持たず、飛行機の切符も買え
ぬ貧乏な市民たちを、バスも汽車も動かさず、ただ脱出せよとの命令
のみではどうにもならない。対イラク戦から飛行機を取り戻し、避難
民に提供したらどうか」と、連邦政府の無能と不手際が非難され、ブ
ッシュ大統領を苦境に陥れている。息子への非難に耐えかねたブッシ
ュ・ママが「だが、政府の誘導で他州へ避難した貧困層は、前の生活
に比べて優遇され過ぎている」と発言し、そうした彼女の言葉がまた
非難の的(まと)となった。

■■ボクの知人の家族がヒューストンの石油企業に勤務している。情
報によれば、その1社だけで1500人もの避難民を受け入れ、世話
しているとのことである。自社従業員と同じ食物を提供しているらし
い。
 巨大企業がボランティアとしてそうした大規模な避難民を引き受け
るなどは、日本では想像も出来ぬことだが、米国は米国なりにいい習
慣があるようだ。 阪神大震災に遭遇したボクなど、大企業が被災者
を集団として預かった話など聞いたことも無い。と同時に、おカネが
無くて避難命令に応じられなかったという話も、わが阪神大震災では
聞かない。
 緊急避難の事情も、国や地域によって大きく異なるようである。

■■ニューオーリンズは、1718年にフランス海外植民地ルイジア
ナの橋頭堡として、オルレアン侯爵家の命令で、いまのニューオーリ
ンズ市フレンチ・クオーター地区が建設されたのが始りとされている
。市の水害の歴史は古く、先ず市政府成立の翌年に最初の、そして翌
々1722年にも、ハリケーンによる大規模な市街水没が記録されて
いるから、いまに始まったことではない。最初から水害の好適地(?
)だったわけである。

■■ミシシッピ−流域開拓の前半は、米東海岸地区から中部地域へは
アパラチア山脈に阻まれて徒歩または馬車による移動が不可能に近く
、正確な地図すら無かった。最初の独立13州のみが米国との認識も
あり、山脈から西は広漠たるインデアン居住地に過ぎなかった。 そ
のころ、舟行、とくに大洋を航行する航海技術は、全世界に渉ってほ
ぼ完成されていた。 が、陸路長距離旅行の技術は全世界ともひじょ
うに遅れていた。唯一の例外は中国・ヨロ−ッパ間の、いわゆるシル
クロードであった。 

■■北米大陸で、東海岸から中部地帯へ行くには、大西洋を南回りで
メキシコ湾岸に至り、そこからミシシッピ−河を遡行するのが一般的
な通路だった。その河口にニューオーリンズの町が発達し、流域にセ
ントルイス、セントポール、シンシナチ、ピッツバーグのような商工
業都市が数珠繋ぎに発達したのはとうぜんの成行きであった。つまり
、米東海岸と、ミシシッピ−流域は隔絶した、別の世界であったわけ
だ。

■■ミシシッピ渓谷は、最初、5大湖方面から南下したフランス人の
勢力と、ニューオーリンズから北上したフランス人たちによって支配
されていた。ルイジアナの地名はフランス王ルイに起因するが、それ
も今のルイジアナ州だけではなく、ミシシッピ−・ミズリー河一帯の
広範な地域の汎称であった。 

■■1803年、米国がフランスからニューオーリンズを買収するに
際して、米国はニューオーリンズとその付近だけの予定だったのが、
英国との争いに負け続けのナポレオンは戦費に困り、今のうちにニュ
ーオーリンズのみならず、カナダ国境に至るまでの広域を米国に売り
飛ばす方が有利と考えた。 そして、いまのモンタナまでを一轄して
1500万ドルで米国に売却する提案をし、交渉にあたったジェファ
ーソン米国大統領自身も驚いた、といういきさつがある。 ナポレオ
ンもジェファーソンも、ミシシッピ−流域の地図などぜんぜん知らな
かったらしい。

■■米中部の領有権については、フランス・米国とも確固たる認識が
無かった。いわばミシシッピ−流域についての「入植優先権」といっ
たふうなものを、フランスが米国に売り渡しただけである。 後世、
それを米国では「ルイジアナ・パチェース」と称し、歴史上偉大な取
引として誇っているが、その発端はミシシッピ−河口に近いニューオ
ーリンズという、通商の要衝を買収するだけの目的だったのである。 

■■もっとも、ニューオーリンズ港そのものは、ミシシッピ−河口に
はない。河口より200Kmも遡った内陸の、ミシシッピ−河畔の数
キロメートルに渉る砂地に設けられた港であった。 ミシシッピ−の
水が遥か遠く、メキシコ湾に注ぐ辺りは「ベニス」という地名の大湿
地帯であり、ミシシッピ−そのものは流れ出る砂によって、いまなお
南に伸びつつある。

■■300年の昔すでにミシシッピ−は、北アメリカにおける交通輸
送の大動脈だった。 低部が平らなフラット・ボートとよばれる河舟
によって、木材や穀物が緩やかに川を流れ下った。この渓谷の広大な
土地に産する各種の産物がニューオーリンズに集まり、そこから輸出
された。
 ボートは通常、ニューオールリンズで解体され、材木として売却さ
れ、船主である農夫や商人は、売上代金を抱えて徒歩や馬で元の上流
へ帰っていった。 絵に残っている巨大な外輪蒸気船が出現したのは
その次ぎのことである。1811年にはミシシッピ−に外輪船定期航
路が開設された。
          
■■ニューオーリンズ付近は、土地が低く水位が高いのに加えて往年
の名画「雨のニューオーリンズ」が象徴する通り米国でも有名な多雨
の湿地帯で、昔は、黄熱病が流行った。 ニューオーリンズを買収し
た合衆国政府は、排水のため運河を掘り、世界最大の排水ポンプを敷
設するなどして、都市の改造発展に努めた。結果、一時は人口70万
人を数え、ガルフ・ミシシッピ−における最大の都市にまで発展した
。そのとき開かれた運河が、今回のハリケーンで潰決したのである。

■■ニューオーリンズは都市としては発展したが、集まったのは殆ど
貧民労働者で、その傾向は今日なお継続している。2000年の国勢
調査では、白人28%、黒人67%、ヒスパニック系3%、アジア系
2%で、ネイティブ・アメリカン、つまりアメリカン・インディアン
は0.2%に過ぎない。 特筆すべきは、18歳以上の男子80人に
対し女性が20人であることだ。 

■■また別の統計によれば貧困層30%。さらに子供の半数と、65
才以上の老人の20%が、貧困を通り越して、極貧層と格付けされ、
それらの人々が今回のハリケーン災害で逃げ遅れた、と推定されてい
る。

■■CNNの調査では、「ニューオーリンズは復興出来ないだろう」
と答えた人56%に対し、「復興すべきだ」が65%になっている。
表向き復興出来たとしても、市域の殆どが海面ゼロ・メートル以下の
土地であるという事実は変わらない。さらに、巨大なハリーケーンの
通路であるという気象上の悪条件も、未来永劫に続く。

 いたずらに復興を叫ぶよりも、この際、英断を奮って、ニューオー
リンズという都市のすべてが移転すべきだ。幸いにして、米国は国土
、すなわち土地は広く、日本などの比ではない。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版]  2005年8月12日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事、は関連Webへ → http://www.609studio.com
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 セコリョ新聞日本語版は訳者が海外へ調査旅行中でお休みです。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 長い間、休みました。再開です。

 ようやく秋の気配が感じられる時が日増しに多くなってきました。
サハリンではもう冬支度・・・。

◆自民圧勝の総選挙。波乱の幕開け。右傾化の加速。

◆ハリケーンがアメリカを襲った。イラクに眼を向けている間の油断。
9・11の被害者家族からも「テロとの戦い」を進めるブッシュ政権に
疑問の声しきり。
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発行     2005年9月13日   No.226
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
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