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タイトル:609studio No.225 ◆現代時評:[核の傘の居心地]  2005/08/16


◇◆◇609 Studio メール・マガジン◇◆◇ 
                         2005/8/16 No.225

【609 Studio 】メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプ
 トに論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報
として、ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェス
ト版、その他、寄稿記事など話題満載! 
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            ◇休刊のお知らせ◇

   サハリンへ取材に出かけますので次の各号を休刊いたします。
  
          2005年8月23日号
              同  30日号
          2005年9月 6日号   
      

           ◇「ジャーナリスト・ネット」毎日更新◇

   ブログ形式で複数のシャーナリストがそれぞれの分野の記事を
   発表するプロ集団のWeb新聞。

        http://blog/journalist_net/

───────────◆◆◆INDEX◆◆◆───────────

◆現代時評:[核の傘の居心地]              ken

◆セコリョ新聞ダイジェスト版: 
  
◆編集長から:[この1週間]

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◆現代時評:[核の傘の居心地]             ken
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                 w_m@609studio.com  へ!
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◆◆読売新聞 2005・8・09  平壌発の新華社電によると、北京で開
かれた第4回6か国協議に出席していた北朝鮮首席代表の金桂寛外務
次官は9日帰国し、平壌空港で、「核兵器放棄は我々の戦略的決断だ
。北朝鮮には核の平和利用の権利があり、米国がこれを受け入れるこ
とが今後の協議で成果を得るためのカギになる」と語り、あくまでも
米国に譲歩を迫る姿勢を示した。

◆◆毎日新聞 2005・8・10  カーン博士はウレンコ社から持ち出し
た技術をもとにパキスタンで核兵器製造に成功。一方で核開発技術を
リビア、イラン、北朝鮮に提供したとされる。早い段階で博士の活動
が摘発されていれば、その後の核漏えい問題は起きなかった可能性が
強い。80年代まで米国はパキスタンと強い軍事同盟関係にあった。
特にソ連がアフガニスタンに侵攻した79年以降、米国はパキスタン
を通してアフガンの反ソ連武装勢力を支援。CIAとパキスタンは極
めて密接な関係にあった。米国がカーン博士を「泳がせた」のは、イ
ンドとの対抗上、核開発を急ぐ同盟国パキスタンへの配慮が強く働い
た結果とみられる。

◆◆アサヒコム 2005・8・11 IAEA理事会では、英独仏が封印解
除を見越した形で、(イランの)転換活動再開に「最大限の懸念」を
示す非難決議の採択を目指している。だが活動再開が直接の核査察協
定違反ではないことや、NPTが認める非核保有国の「核の平和利用
の権利」の侵害の恐れがあるとして、一部の非同盟諸国が決議採択に
抵抗。採択は11日以降になる見通しだ。

■■言うまでも無く、わが国は米国の「核の傘のもと」に守られて居
る。しかしボクは、「核兵器」がどんなものか知らないし、すべては
聞いた話か、教えられた話に過ぎない。 ただ知っているのは、広島
・長崎に「核爆弾」が、60年前に投下されたことがある、という事実
だけである。

 もし「核爆弾」を目で見たければ、ウイキペディア、「核弾頭」の画

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Model_First_Nuclear_Bomb.jpg 

をご覧になることをお勧めする。

■■世界の核兵器は約3万発。うちアメリカが1万600発を保有してい
る。誰もが認める核保有国、イスラエルは100〜200発といわれる。だ
が広島・長崎に落された原子爆弾以外には、この地球上で、核兵器が
いままで使用されたことは無い。中近東やアフリカの紛争で、2発や
3発の核兵器がぶっ放されたかも知れぬと錯覚しそうだが、じつのと
ころ、核兵器使用はいままで広島・長崎以外には皆無である。これは
ひじょうに大事なことである。 

■■ASROC(対潜水艦ロケット)用の核弾頭などはいっとき大量
に製造されたがぜんぜん使用されず、1990年代にすべて廃棄されてい
る。核兵器というのは富山の売薬と同じで、年限が過ぎればすべて賞
味期限切れ(?)で廃棄処分になるらしく、旧ソ連の核兵器なども殆
どが既に廃棄されている。 核兵器を造った人々、国々にとっては不
本意、不効率なこと夥しい、とも言えよう。  

■■にもかかわらず、なぜ核兵器の製造が、いまなお続くかといえば
、それはいわゆる「核抑止力」用だからである。「こちらも核を持っ
ていて、いつでも仕返しするぞ」という、見せびらかしのためなのだ
。結局のところ使用もされない軍事用核の製造は割のあわぬ仕事と、
世界の大方がすでに認めている。 これほど割の合わぬ仕事も近年珍
しいと言わねばならぬ。

■■そうした見栄っ張り用の核兵器など、自分の国で造る程のことは
無い。米国に造らせておいて、その核の傘に隠れて「虎の威」を借り
るという、今の日本のやり方は、じつはひじょうに効率的である。誰
が考えたのか、そうした方式を発案した戦後の政治家、それが日本人
為政者であれ、米国の政治家であれ、今となればわれわれは感謝しな
ければならない。
 要するに、「アメリカの核の傘」の元に生きる日本は幸せである。ど
こからも攻められることはなく、核兵器製造費用も要らず、居心地は
すこぶるいい。

■■但し、全面的に幸せかとなると、必ずしもそうとは言えない。い
い雨宿り場所を借りるには、それなりの席料を支払う必要がある。タ
ダでいい席を借りる、というわけにはいかない。「属国」になる程の
こともないが、ナニかの会合でアメリカが「自分の主張する方へ1票
を投じて呉れ」と言ってくれば、それに従うほどの義理は、席料とし
て必要である。

■■ところがそのアメリカが、自分たちの都合で理屈に合わぬことを
、公の席上で言い出す場合はすこぶる多い。それでも味方しなければ
ならぬことがわが国には多く、「是は是、非は非」などと乙に澄まし
ているわけにはいかない。
 すると他国から「日本はアメリカの属国だ、ポチだ」との評価を頂
戴し兼ねない。損をすることもあるが、やむを得ない。

■■たとえば今回の、わが国が国連安保常任理事国入りを志願したと
きなどがそれだろう。アジア、アフリカかけての中小百カ国は、最初
、日本が常任理事国になるのはとうぜんのことのように賛意を表して
いたと思えた。それがどこかの国が、「日本を常任理事国に指名して
も、結果的には米国の票が一票増えるだけだ」と宣伝すると、とたん
に「それもそうか」となって、わが国の、常任理事国への夢が消し飛
んでしまった、とボクは見ている。これなど、積年の「核の傘のタダ
借り賃」の結果ではなかったろうか。

■■じゃ、アメリカはどのような場合に、世間に嫌われそうな勝手な
ことを言うのか。その典型的な例が、今回の6カ国会議だ。そこでは
、北朝鮮に「核開発は平和的利用の場合も認めない」と強硬に主張し
ている。「イランには平和利用の核開発を認めるのに、なぜ同じこと
を北朝鮮に認めないのか。不平等である」と、北朝鮮は詰め寄る。「
いや、イランはIAEAの監視下でちゃんと平和利用の核研究をやっ
ているが、北朝鮮は前回、勝手に核をいじくった経緯があるではない
か」と、それなりに米国は主張する。そう言われればそうかも知れず
、そこまではいい。

■■ところが、「パキスタンのカーン博士による核兵器開発技術漏え
い問題で、オランダのルベルス元首相は9日、75年にカーン博士が
核技術をオランダ企業から盗み出していることに気付きながら、米中
央情報局(CIA)の要請で博士を逮捕しなかった」という話が公表
されて、「なんだ、アメリカも自分の勝手については随分いい加減で
はないか」と、言われる破目になった。米国も自分の都合では、他国
の核開発にも目をつむるということが露見したのだ。

■■「そのような米国の属国になっている日本を、安保常任理事国に
推薦しても意味が無いではないか」と言われると、日本も返事のしよ
うがない。いざぎよく、常任理事国志願を諦めるしかない。
 「アメリカの核の傘」の下の居心地は、所詮、いまのところその程
度のものなのだ。 少々世間体が悪いのを辛抱した上での「居心地良
さ」である。

■■それとも心根を入れ替えて、いまから核保有国を志願したらどう
なるか。戦後60年、誰も、どこの国も使用したことの無い、ドブへ捨
てるだけの核兵器を高いコストを払って製造すべきか。そう考えると
、いかに皮肉られても、米国の「核の傘」の下に居る方が、だいぶ得
策であることは言うまでも無い。

■■「いや、損得の問題でなく、国家の威信の問題だ」と、主張する
人も居る。しかし、情緒に溺れてカネ勘定を忘れたら地獄の門へ直行
することになりかねない。周辺に、そうした性向を持つ国があるから
、反面教師として見習う必要もあろう。

■■いままた、核の平和利用か、兵器開発かで、イランとIAEAが
揉めている。兵器開発でなくて、何のための核平和利用研究か。その
辺をイランはもっと具体的に諸外国に説明する義務があろう。今まで
が今までだから、疑られるのもやむを得ない。 

■■もし、石油に代替するエネルギー開発ならば、核開発よりも石油
エンジンの改良研究のほうが効率がいいのではないか。周知のように
、ガソリン・エンジンの現状における熱効率は15.5%といわれて
いる。つまり、1リットルのガソリンのうち15%ぐらいしか動力に
転換されていず、残りの85%は燃えて熱となって大気に拡散されて
いるという。この壮大な無駄使いを効率化する研究が先決だ。その点
、モーターは電気により71%が動力に変換されているそうだ。ガソ
リン・エンジンに比べると凄い高い効率である。ただしこの電気が、
原油基準で38%くらいの電気変換率らしい 燃料電池は変換率が高
く、期待されているが、まだ高価なため普及が遅れているという。

■■そういえば、拙宅のイタリア製有名ブランドの電気オーブンも、
夏あいだ、一時使用中止している。あまりにも熱効率が悪く、使用す
ると、キッチン全体がサウナ風呂のようになる。それでいて「良品な
んとか」という会社のカタログでは、もっとも良いオーブンとして推
薦されている。料理には好都合なのだろうが、熱効率の悪いこと、天
下一品である。

■■ついでに言えば、最近また「スピン磁気量波動エネルギー」利用
による半永久的動力の可能性が議論されはじめている。ボクのような
素人に原理は理解し難いが、かならずしも昔の「永久動力」や「錬金
術」のように荒唐無稽な議論ではないらしい。
 
http://www.nidsci.org/bios/puthoff.php

 核の研究で喧嘩ばかりするより、こうした新しい物理学的研究に首
を突っ込む方が、寝苦しい真夏の夜の夢を見るのに、よりロマンティ
ックではなかろうか。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版]  2005年8月12日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事、は関連Webへ → http://www.609studio.com
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サハリン州知事、州議会長から韓人たちへのメッセージ

親愛なる同郷人の皆様!

サハリンに居住している数千人の韓人たちは毎年8月15日に軍国主
義日本からの解放日を記念する行事を行っており、当行事は島全体住
民の記念日にもなっています。歴史家たちは終戦後サハリンとクリル
列島の開拓に韓人住民が大きく貢献していると指摘しています。貴方
たちの勤勉性と生活力こそが厳しい気候の中でも農業生産率を高め、
野生植物の貯蔵を可能にし、道路や橋を建て、また石炭を採掘したの
です。
  ペレストロイカ以後、国際交流と韓民族文化及び言語発展の門が開
け、民族伝統公演や韓国語放送、民族スポーツなどなどでサハリン住
民の文化生活の質を高めることもできました。また、韓人企業家たち
はサハリン州経済に大きく貢献しています。開放記念日を迎え、サハ
リン及びクリル住民を代表して心からお祝いを申し上げると共に今後
の更なるご発展をお祈りいたします。
            ―サハリン州知事イ・ペ・マラホフ
            ―サハリン州議会長ヴェ・イ・エプレモフ

チェコTV記者来島

 チェコのTV局NOVAの記者団が8月2日〜15日間サハリンに
滞在しながらサハリンの韓人と北方少数民族の生活実態を取材してい
ることがわかった。3日、同訪問団はセコリョ新聞社を尋ね韓人の歴
史の調べる他、韓国からの青年交流団の公演や1世たちの姿を熱心に
撮影した。

追加予算割当

 先週ロシア連邦政府は地方政府に合計50億ルーブルの追加予算を
割当てるとの決定を下した。これによりサハリン州にも2億5百万ル
ーブルの予算が割当てられる。

サハリン韓人1世3人永住帰国

 さる11日、サハリンから3人の韓人1世が永住帰国した。一人は
テチャン養老院で、二人は仁川サハリン同胞福祉館で安寧な余生を送
ることになる。

社会発展戦略のための人事異動

 さる10日午前11時に州知事が記者会見を開いた。ここで州知事
は2005年1月から研究中の島の発展戦略構想が年末には完成する
と伝えると共に、その実践のために政府構造改革を余儀なくされ人事
異動が不可欠であると明らかにした。

市政府関係者と韓人たちとの懇談会―上半期経済発展報告

 さる4日、ユジノサハリンスクの第9東洋語文学校で第1副市長、
経済部長、社会部長、韓人問題補佐官、金・ボクゴンさんと韓人たち
との懇談会が開かれた。経済部長の報告によると、過去半年間、市経
済は安定しており、人口はサハリン州全体の3分の1に相当する18
万1200人である。その中の8万7千人が就業しており、サハリン
全体の就業者の45%に達する。また、工業企業は生産目標の44%
、住宅建設は59%の目標を達成している。また、市内には7社の運
輸企業があり(6社は民間企業)、電話会社4社、移動通信会社3社
がある。
 市政府は今後中小企業の育成と土地と市政府名義の不動産の効果的
利用のために予算を割当てると共に商品の競争力を高め、インフラ構
築にも力を入れる予定である。また、このような計画の効率的進行の
ために既に工業品生産者評議会も設置されている。また、都市の環境
問題や住居環境改善にも万全を期していると政府関係者は伝えた。
 最後に金・ボクゴンさんは懇談会の参加者数が少ない(50人)こ
とに対し問題を提議しながら10月2日に行われる予定の市長と市議
員選挙キャンペーンに同胞たちが積極参加するよう訴えた。

無事に母国研修を終え帰国

 今年で8回目を迎えるロシア同胞3世母国研修に41人の中高校生
が参加し、2週間の日程を無事にかつ成功裏に終え18日帰国した。
青少年たちの正しい国家観と倫理観、そして海外同胞青少年や他民族
との交流を通じて正しい世界観や自国文化観を育成することを目的に
1996年設立された(社)東北アジア青少年協議会の招待で、サハ
リンから1997年以降、毎年約40人規模の学生たちが母国を訪問
し、母国語や現地生活体験、産業施設見学などをしている。2001
年以後2回目に同団体を引率して行った私は今後の発展のために以下
のことを提案したい。一つ、14歳以上の韓国語学習経歴2年以上の
ものを選抜すべき、二つ、日程のガイド役は韓国語教師が行い、通訳
としてサハリン国立大学韓国語科学性たちを活用することなどが実現
できるのなら一層効果を高めることができると思う。 
          (サハリン国立大学韓英科教授朴・スンウイ)

第12回サハリン犠牲死亡同胞追悼式

 さる4日の朝10時、韓人社会団体代表たちの一般住民が見守る中
、ロジナ会館前で祖国の地を2度と踏めずサハリンで亡くなった同胞
たちの冥福を祈る追悼式が行われた。ロジナ会館前の慰霊碑の建立を
推進し、1992年から毎年追悼式のためにサハリンを訪れている韓
国の(社)海外犠牲同胞追悼事業会の李・ヨンテク会長は慰霊碑参拝
の後、「未だに祖国へ帰れずにいる同胞たちを見ると心が痛む。しか
し、韓人会を中心に同胞たちが一致団結して努力すれば近々問題解決
の日も来るでしょう」と参加者を激励した。

韓人たちに愛された韓国青年たち

 韓国文化観光部傘下民族文化団の青年たち20人が7月25日から
2週間サハリンに滞在しながら芸術公演や交流活動を活発に行った。
帰国前の6日には経済法律情報大学の講堂で同胞たちを招待し手作り
の韓国料理と芸を披露した。青年たちは体の不自由な年寄りの手を握
って丁寧に席まで案内するなどして参加者たちを感心させた。滞在中
お世話になった方々へのお礼を兼ねた晩餐会でお別れを惜しむ涙が多
かった。同胞たちに愛された青年たちは8日帰国した。

光復60周年を記念して−少年が体験した8・15

 これは1945年8月中旬頃、サハリンのある炭鉱部落で起きたこ
とである。ソ連軍が北緯50度のソ日境界線を突破して大変な勢いで
南進している時、日本は無条件降伏を宣言した。住民たちは樺太庁の
緊急疎開策に従い荷造りを急いでいる時に起きたことである。

「日本の敗戦と教師の死」
8月15日、日本の天皇が無条件降伏宣言をしてから数日が経ったあ
る日、私たちはいつものように学校の広場で遊んでいた。夏休み中だ
ったけど学校から近くに住んでいる私たちは暇の時は学校で遊ぶのが
習慣となっていた。学生たちは4−5年生が殆どで上級生たちは勤労
奉仕や勤労動員などで鉄鋼所をはじめ、様々な職場に動員されること
が多かった。日本軍が難航不落のシンガポールを陥落した時に記念に
下った野球ボールほどの大きさのゴムボールで私たちは遊んでいた。
インドネシアを占領した時もゴムボールを配られたことがあった。夕
方頃に当直の先生から呼ばれて校舎玄関に行くと、社宅に行って剃刀
を持ってくるようにと言われた。社宅の門を開き中に入ると奥さんと
幼い娘さんが綺麗な部屋で静粛に迎えてくれた。奥さんは剃刀を預け
ながら危ないから絶対袋を開けないようにと注意した。
 翌日学校に軍服姿の青年達が集まっていた。聞くと在郷軍人と青年
団員たちとのお別れ式が行われていた。その時、当直のその先生が自
決したと知らされた。自殺現場は東側の校舎だった。玄関から廊下に
上がる階段に血の跡が見えた。剃刀で手首を切って自殺したと言われ
て私は震えまた複雑な心境だった。それから60年が過ぎた。
 当時のことを思い出すたびに私は思う。その先生は自ら命を絶つほ
ど意志の強い方なのか、さもなければただの卑怯ものなのか。彼は一
時期中国戦線で八路軍と戦った陸軍下士官だった。(記録によると1
971年まで明らかになった割腹自殺者数は93人、しかし手首を切
って自殺した人はその先生以外は不明である)

「不意の空爆」
 その年の8月は初めからいい天気が続いた。この日も空には雲ひと
つなく晴れていた。母は長い旅路を控え食べ物を用意していたが、び
っくりして私たちと外に飛び出した。いきなり飛行機の轟音に驚いた
からである。炭鉱部落は綺麗で水量も豊富な川が流れて、南北に山が
東西に低く伸びている山脈に囲まれていた。飛行機は北側の山を越え
て飛んできた。ある人は日本軍と間違って手を振ったり万歳を叫んだ
りしていた。私は可笑しく思った。何故なら、ちょうど1年前、南サ
ハリンの西北地方浜塔路(現シャフチョルスク海岸辺り)に完成され
たばかりの軍用飛行場に行ってみたことがあった。その時、飛行場に
は双発軽爆撃機1機と格納庫に解体された戦闘機しかなかったからだ
。後になって日本の記録を調べたら上敷香(現レオニドヴォ)村にあ
った陸軍第88師団本部も米国陸海空軍の侵攻に備え既に豊原にある
樺太庁博物館へ移動していて、ソ日国境には第125連隊のみを配置
していたのであった。
 一瞬だった。空を黒く染める飛行機の群れ。最初はまるで風に飛ば
される紙切れをみているようだったが、それがすぐに爆弾の落ちる轟
音に変わった。村の人たちは直にトーチカに逃げた。爆弾は発電所を
はじめ炭鉱施設の近くに落ちた。空襲の結果、炭鉱夫たちの風呂や充
電所の一部が燃えた。幸い発電所は攻撃から免れ無事だった。人命の
被害もあまりないと知らされた。日本人女児が破片を受け死亡し、朝
鮮人少年が脚を大きく怪我した以外には(この少年は今韓国安山市永
住帰国者アパートで余生を送っている)。
 ソ連空軍の空爆も止まり村は静かさを取り戻した。しかし、住民た
ちの顔から緊張感が消えることはなかった。昼ごはんを食べてから友
達と学校広場に出てボール遊びをした。 
 暫くして遠くの村の入り口から飛行機のエンジンの音と銃声が聞こ
えたのでその方向に目を向けると戦闘機1機が私達の方へ飛んできて
いるのではないか。広場の東側にある峡谷へ走り身を隠して、息を殺
していた。戦闘機は低く飛行しながら広場に銃弾を落としてから東の
方へ去っていた。その銃弾の跡を探したが、見つからず悔しい気持ち
で家に帰ってきた。(続く)―サハリン州韓人老人会長全・サンジュ

本の紹介
―韓国小説をロシア語で出版したサハリン出身イン・ムハク博士

 サハリンウゴレゴルスク出身の現在モスクワ大学で韓国語翻訳術を
教えているイン・ムハク博士が「韓国近代短編選」と「韓国現代短編
選」2冊を最近出版して話題を呼んでいる。韓国語やロシア語の勉強
をしている人たちのテキストにもなるように韓国語とロシア語両方を
載せているこの本はモスクワ大学出版社から1千冊が発行された。

あれこれ

「鳥インフルエンザ流行」
 ロシア連邦農業管理獣医によると、最近ロシア国内の全養鶏場が鳥
インフルエンザのために厳しい規則の下で作業を進めている。専門家
たち以外には養鶏場の出入が禁止されており、家畜と養鶏場職員たち
の接触も禁止されている。今、ノボシビルスク州の5つの区域14部
落で鳥インフルエンザが広がっているため、専門家が派遣され、実態
と予防策を講じようとしている。

「パン生産量増加」
 ドリンスクパンコンビナートが今年上半期に2400万ルーブルに
相当する1200トンのパンを生産したことがわかった。また、新し
い3つの製品を生産して注目されている。 
 今は冬の準備を急いでいる。事務所の屋根の修理や喚起設備修理、
燃料節約のために蒸気釜を設置するなどをしている。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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 選挙の争点が「郵政改革」のみにしようと言う小泉自民党。そうはさ
せじと懸命の野党。国民の関心は「自民党内の争い」ではせっかくの選
挙がM・O・T・T・A・I・N・A・I!

◆戦後60年。最近の戦後への関心、8月15日を過ぎて忘れるのは、
M・O・T・T・A・I・N・A・I!

◆明日17日からサハリンへ出かけます。その間、休刊となります。
ご了承ください。
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発行     2005年8月16日   No.225
編集・発行  609studio   Michio Katayama
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