メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.197◆現代時評:[米国世界警察へ協力のとき]  2005/01/18


───────◇◆◇609 Studio メール・マガジン◇◆◇──────
                             2005/1/18 No.197
【609 Studio 】メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプ
 トに論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報と
 して、ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェスト
 版、その他、寄稿記事など話題満載! 
           URL ⇒   http://www.609studio.com
─────────────────────────────────
          ◆609studioから◆

 ◇セコリョ新聞日本語版

 訳者のKil Sang氏が調査旅行中ですので、休載いたします。
 帰国後にまとめて掲載予定です。ご了承ください。

 ◇有木優一君の「インド通信」を掲載します。津波の被害を取材し
  たものです。(取材ビデオ、近日中に公開!。乞うご期待)

  ◇ウェブログ「サハリンからの手紙」を新設しました。編集部に
  届いたサハリンからの手紙を読むことができます。
  サハリンの今が透けて見えます。
  
        http://609studio.cocolog-nifty.com/

  ◇サハリンの韓国語ラジオ放送は今年から番組時間を従来の20分
    から10分に短縮されました。
  
───────────◆◆◆INDEX◆◆◆───────────

◆現代時評:[米国世界警察へ協力のとき]                ken

◆セコリョ新聞ダイジェスト版: 休載です。

◆インド通信1「チェンナイ、トリプリケン地区」    有木優一 

◆現代語感:[戦後60年その2 朝鮮戦争]         MK
  
◆編集長から:[この1週間]

─────────────────────────────────
◆現代時評 :[米国世界警察へ協力のとき]             ken
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                  info@609studio.com   へ!
─────────────────────────────────
◆◆アサヒコム 2005.1.10 ウクライナのクチマ大統領は10日、
約1600人のイラク駐留部隊について、予定を半年早めて今年前半
に撤退を完了させる計画をつくるよう外相と国防相に指示した。ユシ
チェンコ次期大統領も同日、自らのウェブサイトで、就任後直ちに部
隊撤退に着手する方針を明らかにした。イラクでは9日、爆弾処理作
業中のウクライナ兵9人が死亡する爆発事故が起きていた。

◆◆読売オンライン 2005.1.11 フーン英国防相は10日、今月末
に予定されているイラク暫定国民議会選挙の円滑な実施のため、英軍
400人をイラク南東部に増派することを明らかにした。英軍はすで
に9000人をイラクに派遣している。同相は、増派部隊の駐留につ
いて「限定された期間」としている。

■■ついこの間、ブッシュ大統領から「新しいヨーロッパ」の代表選
手として持て囃されたウクライナが、今年前半にイラクから撤兵する
という。 アメリカに義理は悪いが、ウクライナ国民の過半が撤兵を
求め、またそれを主張して当選した大統領だから、とうぜんの成行き
である。

■■先にスペインが撤兵し、オランダとハンガリーもこの3月で撤兵
すると決めた。ブルガリアや韓国などいわゆる小国は別として、いま
や大国で撤兵しないのは、英国と日本だけである。 化学兵器も見つ
からず、テロの親玉連中も居ないと分かり、イラク出兵の大義名分は
無くなってしまった。 日本も自衛隊を引き揚げよう、というわが国
民世論はとうぜんのことである。

■■しかし、巷間すでに噂されるように、米国ブッシュ政権としては
、いまの段階で撤兵するわけにはいかない。 そんなことをすれば、
ベトナムの二の舞で、負けて逃げかえるというイメージが強く、少な
くともブッシューラムズフェルド政権の間はイラクに留まるしか方法
が無い。

■■それは米国の勝手な体面であり、わが国がそれに加担する必要は
ないと、言ってしまえばそれまでだ。が、どっこい、そうもいかない
内部事情が日本にはある。 ある、というより大有りなのだ。そこの
ところを考えて見よう。

■■通俗的な「政治評論家」たちは、何事でもわが政府を批判し、米
国の悪口さえ言っておれば、だいたいのところ評判がいい。
 小泉首相がブッシュの番犬ポチであると揶揄しておれば、それだけ
で、進歩派の評論家ということになり、政府による弾圧などさらさら
無いのが、わが日本の自由なところで、米国などの比ではない。
 反対に政府に同調すれば石アタマの守旧派と見なされる。まことに
簡単、かつ幸せな評論家社会というのが日本の実情である。

■■まぁ、つい先ごろまではそれでよかった。ところが情勢が俄かに
変わり、米国や日本政府の悪口を言うだけでは済まない時代がやって
来た。米国のイラクにおけるゲリラ戦の敗北が明瞭になり、それに追
い討ちを掛けて米国経済の落ち込みが激しくなったのだ。 いまや、
米国は世界経済上の三流国家に成り下がり、紙幣の増刷、つまり米国
政府証券の日・中・台湾への安売り以外に資金調達の方法がなくなっ
たのである。(現行米国債の金利は4.5%前後であり、日本政府の
外貨運用は名目上高利回りになっている。) 

■■経済で三流の米国は、いまや軍事超大国ということだけで辛うじ
て世界における一流国家の体面を維持し、世界に睨みを効かせている
のである。 米国と武力で戦っては負けるという全世界の国々の恐れ
こそ米国による世界警察成立の唯一のレーゾン・ディトールである。
 わが日本などは、そうした米国による世界警察の傘のもとで戦後の
偸安を貪って来られたのである。 後ろに米国という警察が控えてお
れば、ややもすればわが国に脅しを掛けたがる国家群も、実際の武力
行使にまで至らない、というのがわが国の現状である。

■■いい例がかってのソ連であり、現在の中国であり、さらには北朝
鮮の今の状態である、と言えば語弊があるかも知れない。が事実は残
念ながらそうなのだ。 60年前の補償はどうしてくれるかと、ことあ
るごとに脅しを掛けてくる国々も、我々の後ろに世界警察、つまり超
軍事国家米国が控えている間は、何ということもない。が、もし米国
が居なくなれば、あるいは米国の軍事力が張子の虎であると評価を落
したときどうなるか。
 台湾はひとたまりも無く大陸中国に併呑されてしまう可能性を否定
できないし、北朝鮮に至っては「日本人拉致問題はこれで終り」と宣
言するのではなかろうか。

■■かって吉田茂や岸信介首相は、傭兵として米国を雇ったのである
。米国の下僕になったわけでは無かった。ボクの見解では、いまの日
本と米国は軍事同盟国の間柄でない。もしほんとうの軍事同盟である
ならば、わが自衛隊がイラク出兵するのに丸腰で行くハズはなく、完
全武装で共に戦う用意をして行くべきだ。 その点「憲法第9条」は
有難い。この条例により日米軍事同盟は根幹から骨抜きになっている
。 軍事同盟に似せてはいるが、いわば片務的な警備保障契約を交わ
した国家関係に過ぎない。 ただ米国としては、国際世論の手前、日
本も派兵しているとPRしたいから、「丸腰でいいから、派兵してい
る形式にしてくれ」と頼んでいるだけである。武器も持たず、「戦争
はしません」と宣言して手ぶらで行く日本というのは、まさに奇妙奇
天烈な参戦だが、国際的に見てこれほど有利で手前勝手な立場はめっ
たと無い。 こんなことを許してくれる軍事同盟国米国に感謝しなけ
ればならない。
 小泉さんがブッシュの愛犬ポチではなくて、米国が日本のポチ、す
なわちガードマン会社なのである。

■■これは日本にとってひじょうに有利な片務的軍事同盟であり、そ
の相手の米国が苦戦しているいま、わが丸腰自衛隊が撤兵などしよう
ものなら、せっかく契約しているガードマン会社の信用を貶めるだけ
で、わが国として得策ではない。 たといウクライナやオランダが撤
兵しようと、わが自衛隊だけは、最後まで踏みとどまり、米国に協力
する恰好をみせるべきだ。 米国による世界警察の権威を落さぬよう
、最後まで付合うのが日本の国益であり、そのためのわが丸腰自衛隊
派兵なのである。
 米国の軍事力が、もし「張子の虎」であると認定されれば、即刻、
日本に対して高圧的になる近隣国があることを、ゆめゆめ忘れてはな
らない。

■■最近になって、理不尽にもイラク侵攻をし、落ち目になっている
米国を袖にして、近隣のもう一つの超大国「中国」と手を結ぶべきで
ある、という言う論者が急に増えてきた。
 なるほど、今世紀前半には、中国は経済、軍事両面で米国をしのぐ
超大国になる、との予測はある。中国自身も、「今世紀半ばに『中華
民族の偉大な復興』を成し遂げる」との国家目標を掲げている。
 「偉大な復興」とは、米国にも対抗できる超大国として、かつての
中華帝国のようにアジアに君臨するイメージなのだろう。

■■その中国と、われわれ日本の間合いをどうとるべきか。東アジア
さらには地球規模の新秩序を構築するうえで、今のところ、「中国」
は余りにも大きな不確定要素の国である。 米国による世界警察の傘
から、中国によるアジア警察の傘に移るには、その前に先ず、彼ら中
国が台湾をどのように遇してくれるかを見届けねばならない。
 台湾が、もしチベットのように中国の一部として併呑されてしまう
ならば、これは問題である。 まこと、台湾をどう扱うかは中国にと
って「キリシタンの踏絵」となろう。

 米国の世界警察に頼るのはいや、中国のそれに従うのもいやという
とき、残る選択はただ一つ、国連の傘下に庇護を求めるだけである。
 しかし、国連はみずからの内部で惹起した金銭的不正事件、つまり
イラク石油の行方に対する数億ドルの疑惑も解明できず、罰すること
すら出来ないでいる。刑事罰条項の付いてない道徳基本法にも似た国
連、それは国際赤十字ど同様に、善意の相手方には有効だが、それが
いくらかの野心を持つ国家間の争いに付いては無能力としか言い様が
ない。つまり国連は庇護が期待できる刑事警察たり得ないのだ。

 国際赤十字最大の敵は、つねに国家権力であるという。非常時に多
い行政機関の強制介入こそ、全世界の赤十字社が持つ永遠の頭痛の種
であり、「国連」という理想団体にも、同様のことが当てはまるのは
否めない。
 われわれが「国連警察」による庇護を期待するのは、残念ながら当
面、「木に寄って魚を求める」に等しいと考えなければならない。
─────────────────────────────────
◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版]  
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事、は関連Webへ → http://www.609studio.com
─────────────────────────────────
 訳者の都合で休載いたします。
─────────────────────────────────
◆「インド通信 1 チェンナイ、トリプリケン地区」   有木優一
─────────────────────────────────
何処が被災地なんだ。

12月29日。

  チェンナイ駅。津波がこの町を襲って、僅か4日しか過ぎていない
。ところが、オートリクシャーが縦横無尽に行き交、タクシーの運転
手が客引きをしている。駅前の露天では、チャイやコーヒーを啜る人
が、何か話をしている。そこには、よくあるインドの街並みがあった
。とりあえず、重い荷物をホテルに預けてから、状況を把握するため
に、下見がてら、マリーナ・ビーチの様子を窺いに出かけることにし
た。
 
 オートリクシャーを捕まえて、走る事10分程度。このときにビー
チと中心地は3キロほど離れている事を知った。いざ、ビーチまで来
るとさすがに警察が交通整備をしていた。一般人は入れないようにし
ていたのだ。その検問を潜り抜け、何とかしてビーチ手前のオフィス
ビル内に潜入した。4階まで上り詰めて、ビーチを見渡した。とてつ
もなく大きなビーチが目の前に広がった。12月26日AM8:30
頃以前を知らない僕には、この場所のまたどこが被災地なんだ、と疑
問を抱いてしまうほど、綺麗な砂浜が続いていた。良くみると、ビー
チの手前側から海まで店が続いている。その距離、大体200mはあ
るだろう。すべてぼろぼろだった。これは、酷い。しかし、道を挟ん
だこの建物の敷地内は、無傷だ。取材を進めていくと、ビーチ沿いの
道までしか、津波はやってきていないそうだ。他の建物の敷地内も何
の影響も受けていないようだ。遠目からでは、あまりはっきりしない
。しかし、中に入ろうにも厳重な警備が僕を退けた。

12月30日。

 撮影開始。ビデオカメラ片手に再びビーチを訪れた。今日はビデオ
カメラを持っていた事とプレスカードを提示すると、ビーチ内へ入れ
てくれた。昨日遠目でみた景色が僕の目前に映る。津波の脅威を感じ
ずにはいられない。コンクリで作られた塀が倒され、鉄の車輪がへし
ゃげている。少し歩くと、人だかりができていたので、声をかけてみ
た。穴の中に人が入り込んで、何かを掘り出していた。その穴の脇に
は、その収穫物らしいものが皿の上に並べられていた。
 「これをどうするのだ。」と聞くや否や、「100Rs」と言って、売
りつけてきた。売りつけられた貝殻には、「HAPPY HOME」と
書かれてあった。津波が店の売り物を全て砂の中に埋めてしまった、
とその男は言い出した。「FORGET NOT ME」という貝殻
も差し出してきた。彼らの所有物かどうか、定かではないが、商品を
砂の中に埋めてしまった事においては津波の脅威には変わりない。海
へと続く、瓦礫と化した店の道を下っていくと、壊れた店を回収に来
ていたおじさんと出くわした。彼は、当時の状況を「膝まで水に浸か
りながら必死になって逃げたよ。」と使い慣れてない英語とボディー
ランゲージで教えてくれた。海までたどり着くと、子供が二人付いて
来ていた。ハンドラ・シェカール(15歳)とムトゥ・クリシュナム
(15歳)だ。彼ら二人にも当時の状況を聞いてみた。彼らは、その
日が日曜日と言う事もあって、朝からクリケットをしていたそうだ。
すると、津波が襲ってきた。必死になって逃げた。「僕の友達も死ん
でしまったよ。」と寂しげな表情で答えてくれた。

 その後、この二人の子供に彼らの友人が住むトリプリケン村に誘わ
れた。高架橋を潜り、クーム川とアディヤール川とを結ぶバッキンガ
ム運河を渡る。この地区は、カーストが「漁師」という家族がほとん
ど占めていた。そして、バッキンガム運河沿いの空き地でたむろして
いる二人の友達という若者の輪に入れてもらった。彼らにも津波が襲
ってきた当時の状況を聞いてみた。「その日はビーチでクリケットを
していた。突然津波が襲ってきたので、思いっきり走って逃げたよ。
」と話してくれた。空き地には、バレーボールのネットが掛けられて
ある。このネットはもともとビーチにあったらしいが、津波の影響で
この空き地に移動させたそうだ。

12月31日。

「ジョウトウ、ジョウトウ」
 どこからか変な日本語が聞こえてきた。ここトリプリケン村での生
活状況について、取材を進めていこうと、再びこの地域を訪れていた
のだ。次に英語が聞こえてきた。彼は英語が話せるようだ。ここタミ
ルナドゥ州は、タミル語を話す。このタミル語はヒンディー語とは全
く違う。たとえば、ヒンディー語の挨拶は「ナマステ」だが、タミル
語は「ワナッカム」となる。文字の作りも違えば、文法も異にする地
域で、今まで取材した人々はタミル語しか話せないでいた。この怪し
げな日本語を使う彼の名前は、シャンムガン(60歳)。流暢な英語
と怪しげな日本語に誘われ、彼の家にお邪魔した。彼の家は、まだ裕
福な方だろう。小奇麗な洋服、そして、腕時計。そして、英語教育を
受けている、という点で確信した。コンクリートの三階建ての三階が
彼の住まいのようだ。この建物には、シャンムガン氏の兄弟が生活し
ている。一階が長男、二階が次男、そして三階がシャンムガン一家と
いう事のようだ。この三階は、2LDKでシャンムガン氏と妻プシュ
マガンダ(50歳)と長女夫婦と未婚の息子の5人で生活している。
部屋に通されるとコップ一杯の水を手渡された。この水の出所を尋ね
ると、どうやら井戸水らしい。そして、彼に津波の影響についても尋
ねると、「私は漁師です。津波が襲ってきて、全て失った。船、網、
そして糸。ここの地域の人々はみんな漁師です。みんな同じように、
船や網を失いました。」と、悲痛な面持ちで僕に語りかけてきた。シ
ャンムガン氏はすでに現役は引退しているそうだが、娘夫婦の夫K・
ムラリ氏は、現役の漁師だ。彼は、職を失い、日々趣味のサッカーや
チェスに明け暮れているそうだ。

1月2日。

 この日、英語が話せるという点で、シャンムガン一家に付いて、取
材を重ねていく事を決心し、その旨お願いに出かけた。その途中、バ
ッキンガム運河沿いの道を彼の家目指して進んでいくと、小さな貝殻
を紐で繋げて、家の飾りにしているものを解いている女性達に遭遇し
た。何をしているのか聞いてみると、「仕事がなく、収入が途絶えて
しまったために、この貝殻を売って、生活の足しにする。」と教えて
くれた。「真珠はいらないか。」とある男が詰め寄ってきた。彼も生
活の足しにするため、家財道具を売っているんだと、必死の表情で僕
に教えてくれた。少し歩くと、家の軒先で女性が魚の干物を売ってい
る。いつ捕れた魚か聞いてみると、10日前に捕れたものらしい。ま
た少し行くと大きなタンクが目前に現れた。その脇で、女性が井戸水
を壷に汲んでいた。これを飲むのか、と尋ねると、やはり飲むらしい
。タンクについても尋ねたが、ただ「No」という言葉が返ってきた
。給水車は確かにここに来ていた。そこの水を飲む人もいるが、供給
量が圧倒的に少ないのだろう。5000Lと書かれたタンクが、50
m間隔に置かれてあったが、ここトリプリケン村の人口は約6000
人。そのタンクの量では賄いきれないのだろう。そのほとんどが、漁
師を職業としているのだ。この津波は、この村に大きな衝撃を与えた
。そして、津波によって、この村では13人の命を失った。その内、
7人は子供という事だ。村を歩いていると、両親を亡くした兄弟と遭
遇した。シャルミラ(14歳)の女の子にプレム[12歳]の男の子
だ。当時の状況を聞こうとしたが、二人の寂しげな表情がその言葉を
喉の奥へとしまいこんでしまった。現在、祖父母の家で生活している
。その二人を後にして、シャンムガン氏の家に辿り着いた。彼は、出
かけているようだった。3時には戻ってくるようだったので、仕方な
くその家を後にして、再び村の様子を伺いに出かけた。

 津波の被害を感じる反面、村人達は、なぜか明るい表情を僕に見せ
てくる。確かに彼らのほとんどは、津波によって仕事を失った家族が
大半のはずだ。女達が、輪になっている。覗いてみると、中央には、
太目の女性がガスコンロに丸い鍋を乗せ、何かを揚げていた。女性達
が勧めてくるので、少し分けて貰った。ほんのりカレー味の芋の唐揚
げだった。それを食べ終えても、まだ勧めてくる。何とか言い訳をつ
けて、断ったが、間違いなく彼女らの生活は津波によって大きな痛手
を受けている事には変わりない。どこが、被害者なのだ。そんな彼女
らの人格がそう思わせたが、彼女らは底抜けに明るかった。一方、男
達の方はと言えば、輪になってトランプをして遊んでいた。彼らは、
津波が来て以来、漁に出られないため、その憂さ晴らしとでも言うか
、賭けトランプに明け暮れているようだ。本当にこの村は津波の被害
を受けたのだろうかと、少し疑問さえ抱いたが、それを払拭させる人
々に出くわした。

 それは、ボランティアで配給を行っている青年達だ。彼らは、チャ
ーハンのような炒めた米を鍋一杯に拵え、それらを各家庭に配るため
に、袋詰めにしていたのだ。配給を執り仕切っていたデウェラワジ氏
(24歳)にこれをどうするのかと、尋ねてみると、「各家庭の子供
や女性に配るんだ。」と答えてくれた。
 彼は、政府関係の人間ではない。単なるクリケット選手だ。今後、
彼が配給する姿はみた事がないが、即座に食料を配給するように動
出した行動力は、政府をも圧倒する。その配給を配り終えた後、そ
のチャーハンのような米を口にしている人々の表情は、なんとも朗
らかで忘れられない。やはり、ここは被災地なんだ。

 再び、シャンムガンの家を訪れた。家に入るや否や、これからポ
ディシェリーの親戚の家まで行って、お葬式に出席してくると旅の
準備をしていた。着いて行くと言ったが、頑なに拒まれた。僕の要
望を聞いてもらってからの事だったので、少し残念だったが、仕方
がない。

1月4日。

 この日は、朝からシャンムガン氏の元を訪れた。すると、州政府
の役人が救援物資受給者の点呼を行っているから、一緒に行こうと
誘われた。
 この確認を済ませると申請用紙を配布される。この用紙を提出す
る事で、2000Rs、油10l、そして数キロの米と交換できるク
ーポンを手にする事ができるらしい。このお金だけで、失った船や
網は購入できるのか尋ねると、「とんでもない。」3〜5人乗りの
小型の船(エンジン付き)一艘で30万円するらしい。この小型の船
というのも、長さ10m、幅1m強、木造で外装にはプラスチック
のような材質でコーティングされた一般の船の値段だ。エンジン付
きでなくても15万円はする。それに、船だけではなく網も必要に
なるだろう。
  網の値段は大きなサイズで15万円する。それから、糸。この
糸も1万5千円ほどする。インドで普通に生活する人々の平均月収
が6千円らしいので、この金額がどれほど莫大な金額で、どれほど
莫大な被害を受けたか伺えるだろう。6−8人乗りの大きな船にも
なると、一艘450万円する。これは遠洋漁業用の船だろう。網も
3万円かかるそうだ。「これを、自分と息子とでローンを組んで返
済しなくてはならないんだ。」と、悲痛な面持ちで僕に訴えた。

─────────────────────────────────
◆ 現代語感:[戦後60年その2 朝鮮戦争]    MK
─────────────────────────────────
 東西冷戦の最前線の一つとなった朝鮮半島で第二次大戦終了と同
時に、アメリカを中心とする資本主義陣営とソビエトを中心とする
共産主義陣営は世界各地で対立。その最前線となったのが、38度
線を挟んでソビエトや中国に後押しされる朝鮮民主主義人民共和国
(北朝鮮)とアメリカが支援する韓国の戦争。1950年6月25
日二勃発。休戦協定が成立したのは1953年7月27日のこと。

⇒朝鮮半島以外にも南北ベトナム。東西ドイツなど分断国家が冷戦
の申し子として存在した。それより前に降伏した日本は朝鮮戦争特
需で敗戦の痛手を癒した。また警察予備隊、保安隊、そして現在の
自衛隊と「再軍備」に大きな影響を与え、サンフランシスコ条約の
早期締結など戦後の復興に大きな影響があった。

 朝鮮戦争では両陣営合わせて19国が参戦し、現在もなお休戦状
態にあり、事実上の国境になっている38度線では緊張状態が続い
ている。
 北朝鮮を巡る東アジアの情勢は今年も予断を許さない。拉致問題、
6カ国協議、クーデターの可能性、脱北、貧困と飢餓・・・などな
ど枚挙に暇がない。もし金正日政権が倒れたら・・・。朝鮮半島は
おぞましい状況となってくる。戦争、難民・・・。悪夢の再来。
─────────────────────────────────
◆[編集長から]              Michio Katayama
─────────────────────────────────
 寒い日が続いています。新聞はスマトラ沖地震と阪神・淡路10
年でおおわらわです。南海沖地震や東海地震などまた直下型地震の
予測や警告にも。津波の恐ろしさが本当に理解できるようになりま
した。
 準備に万全を期さなければ。 

◆NHK特番問題:「政治圧力受け番組変更せず」NHK(14日)
しかし・・・。中川昭一経産相は「NHK側があれこれ直すと説明
し、それでもやると言うから『だめだ』と言った」と答え、その後
も「(番組でとりあげた)模擬裁判につき、NHK教育テレビで放
送するとの情報があった。NHKより番組について説明があった。
公正中立の立場で放送すべきであることを指摘した」とするコメン
トを発表していた。(同日・朝日新聞)
 
⇒前言を翻す大臣と否定するNHK.涙の会見をしたNHK現役の
プロデューサー。これはもう勝負はあった!?
 誰が真実を話したか。今後の取材を待とう。
 
◆日韓国交正常化40周年の今年、天皇の韓国訪問に両国政府とも
に否定的。今が最良の時期だと考えるが。一昨年だったか、天皇誕
生日の発言「光仁天皇の第一皇子で、母は百済系渡来人の高野新笠
」もあって。

◆有木君から「インド通信」が届きました。この記事をお読みにな
った感想などを編集部までお寄せください。 info@609studio.com
─────────────────────────────────
発行     2005年1月18日   No.197
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
              MailuX配信システム         ID:MM3E1B97842E020
                Macky!                    ID:609studio
e-mail        info@609studio.com
website    http://www.609studio.com
投稿      http://www.609studio.com 掲示板へ
購読 購読解除は websiteへ

           ◇禁・無断転載◇
─────────────────────────────────

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。