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タイトル:609studio No.193◆現代時評:[巨大金額がもたらすもの]  2004/12/22


───────◇◆◇609 Studio メール・マガジン◇◆◇──────
                             2004/12/21 No.193
【609 Studio 】メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプ
 トに論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報と
 して、ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェスト
 版、その他、寄稿記事など話題満載! 
           URL ⇒   http://www.609studio.com
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          ◆609studioから◆

 ◇サハリンの韓国語放送の2004年8月15日放送プログラム
  をUPしました。放送開始番組です。

  http://www.609studio.com/html/broadcasting/onair.html  

 ◇ユジノサハリンスクでの展覧会会場スナップ写真は以下に掲載
  しました。
       http://www.609studio.com/html/news-2

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◆現代時評:[巨大金額がもたらすもの]            ken

◆セコリョ新聞ダイジェスト版: 2004年12月17日号

◆寄稿 [サハリン悲歌  第三章 4]        金 里博

◆20代のぼやき:[インドへ行きます9]          有木優一

◆編集長から:[この1週間]

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◆現代時評 :[巨大金額がもたらすもの]     ken
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                  info@609studio.com   へ!
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◆◆読売オンライン 2004.12.16 広島市内のマンションから、現
金約1億1000万円入りの金庫を盗んだとして、広島県警広島東
署は15日、県立高校生4人を含む少年5人を窃盗容疑で逮捕した
と発表した。(中略)調べに対し、「2000万円ずつ山分けし、
高級ブランド品や貴金属を買い…・。

◆◆毎日新聞 2004.12.15 ゴルフ場経営会社社長の男性から「強
盗に入られ、お金を奪われた」と110番通報があった。県警狭山
署員が駆け付けたところ、1階居間のガラスが割られ、室内から現
金約1億4000万円と高級腕時計15本(約3000万円相当)
がなくなっていた。

◆◆アサヒコム 2004.12.16 当時の役員など11人を相手に、計
約1057億円をヤクルト本社に支払うよう求めた株主代表訴訟の
判決が16日、東京地裁であった。西岡清一郎裁判長は「同社のリ
スク管理体制下での制約に反し、独自の判断で行った取引がある」
と指摘し、元副社長に67億543万円の支払いを命じ…。

◆◆アサヒコム 200.12.15   FA宣言した清水隆行外野手が15
日、巨人と2年契約を結び、残留が正式に決まった。再契約金と2
年目までの年俸の総額4億円のほか、出来高払い。

■■2004年も残すところ、あと僅かになった。 振り返って、
この年はなにが変わっていたかと考えてみる。 先ず、天変地変が
多かった。台風が多く、それが原因とかで、初秋に桜やコブシが2
度咲いた。地震も多く、小地震はいまなお毎日のごとく続いている
。イラク問題もあるし、北朝鮮の拉致問題も解決していない。 い
わば、多事多難の年であったというべきか。

■■他に、身近を見てなにが前年の差かと考えると、あるある。
 先ず、街にジングルベルの音が減った。 神様不在のクリスマス
、つまりどんちゃん騒ぎもだいぶ下火になっているようだ。少しく
大人になったのかも知れない。
 今年は百貨店やホテルの何万円もするオセチが売れないらしい。
去年の今ごろは、猫も杓子もバカ高いオセチの詰合せを買ったもの
だ。 正月料理を造る手間が要らぬからとして、高価な折詰めおせ
ち料理は流行ったのだが、いまどきスーパーもコンビニも正月無休
だから年末に買い溜めしておく必要がないと、遅蒔きながら覚った
わけである。庶民もだんだん賢くなった。

■■ジングルベルが鳴らぬ代わりに、都心の街々に超高級時計やカ
バン・アクセサリー類を売る豪華有名店が急に増えた。これを見る
と、不況などはどこ吹く風だ。やはり日本は大金持ちなのだろうか。

■■その金持ち日本を象徴するような事件がここのところ不思議な
ほど多い。きょう1日だけでも数件、ニュースで報じられている。
 それが上に書き出したネット・ニュースである。

■■金額がすべて荒い。ある1日のニュース記事を取り上げただけで
もこの通りだから、驚くほかは無い。 このように際立って高金額
化する傾向は、去り行くこの1年の特に目立つ現象ではなかろうか。 

■■しかもこれらは、ごくありふれた巷のニュースから拾った高額
分であり、もしそれらをより広範な社会事件から取上げると、数字
は簡単にもう一桁か二桁撥ねあがり、いわゆる天文学的数字になる
。 その代表が、例の球団買収騒ぎのときの話である。 無名でノ
ーネクタイの最初の青年が資産515億円と説明し、その次ぎに現
れた楽天という会社の経営者が、さらにその数倍あると、こともな
げに言いきった。

■■驚くわれわれ庶民を前にして、さらにそのあと名乗り出たダイ
エー球団買収希望のオーナーは「資産2兆円」と、いともはっきり
と穏やかに言う。そうなると、既成球団の経営者側は取りあえず「
待った」をかけた。いささか慌てたのである。ぼくら庶民のみなら
ず、彼ら著名の経営者連中もまた内心で驚いたに違いない。うろた
えたというべきだろうか、無理も無い。
 あとで誰かが調べると、これら3社の総資産は、1兆4212
億円(ソフトバンク)、2618億円(楽天)、 687億円が(
ライブドア)ということになった。

■■まあこの3社は今をときめくIT産業での成功者組だから、羨
みこそすれ、行為に非の打ちどころはない。ところが問題なのは、
市井のささやかな一刑事事件に過ぎない少年の窃盗事件である。 
 ぐうぜん一度に盗んだおカネが1億円を越す大金だったという話
だ。盗んだ子供達も驚いただろうが、ボクだって驚く、「なぜ、ど
うしてそのような大金を個人宅に置いていたのだろう、その必然性
は・・」ということになるのはとうぜんではないか。

■■だいたい世間で見ていると、盗みに入られた家庭というのは、
いつも多額のカネを自宅に置いている。 反対に言うと、ボクら庶
民のところへは盗人が入る確率が少ない。月給取りが給料日の晩に
数十万円置いているのは、不用意とはいえ、セキュリティ世界随一
の日本のこと、あり得る話だ。 しかしそれ以上の金額になると、
自宅に置いているというのは、不用意を通り越して、たぶんに胡散
臭さを感じる。 まして1億を越すカネを自宅で泥棒少年たちにな
んなく盗まれたというに至っては論外である。気の毒というよりは
、そこに、同類の狂言盗難ではなかろうかとの思いがする。

■■極言すれば、盗んだ子供たちは所詮出来心、盗まれた大人の方
になにがしかの犯罪の可能性を感じるのはとうぜんだろう。
 「この親にして、この子あり」、あるいは「この大人ありて、こ
の子供あり」ではなかろうか。

■■といって、ボクは、億というカネを自宅に保管している大人た
ちに対して、確固たる罪の証拠を握って非難しているわけではない
。問題は、そのような大金を偶然にしろ、あるいは一時的にしろ、
私的占有することを許される社会構造にあると、ボクは睨む。
 そして、そうした社会構造の裏側にある不自然さを考えなければ
ならならない。

■■第2次大戦後の米国に主導された、米国流の「カネ儲け主義」
、つまり「サクセス・ストーリー」や、、「賞金獲得ランキング」
といった風な、口に出すさえ恥ずかしく、そしてラディカル過ぎる
言葉を臆面も無く社会に持ち込んだ金儲け主義の日本。
 その日本が、それによってようやく成功し、世界の成り金国家に
なったいま、どこかにその歪みが出て来たのではないかと、反省し
てみる必要がある。と、そこのところをボクは言いたいのである。
 世相が悪くなった、子供たちの犯罪が増えたなどの根本に、こう
した「拝金思想」、あるいは「カネ儲け万能」の風潮があるのでは
なかろうか。

■■電車の中でよく見かけるが、いちおう大学程度は出たであろう
サラリーマンが「日経新聞」を読んでいる風景がある。 どうやら
彼らは、経済新聞を読むことで、彼らの教養の度合いをデモンスト
レートしているらしい。 「教養ある紳士は経済新聞を読む」、つ
まり「経済すなわち文化教養である」との図式が、日本社会と、そ
してニューヨーク地下鉄にまかり通っている。 こうした風潮には
、一流紙をうぬぼれる朝日新聞もかなわぬらしい。 通常、日本で
は大学の「経済学部」と「商学部」は同じものとの通念があるよう
だ。 経済とカネ儲けと、そして文化教養が同居していて、庶民は
それを疑わない。 ビジネスマンは教養人であり、カネ儲け上手は
インテリ文化人である、となっている。

■■ボクの知る英国やフランスでは、日本でいう「財界人」はすな
わち「商人」であり、社会的ランクは一つ、いや三つくらい落ちる
。 だが日本では「財界人」は先生や政治家と呼ばれる人々より一
段格が上である場合が多い。 いつかららそのようなランキングに
なったのかは、ボクは知らない。

■■ボクらが子供の頃、つまり戦前には、学校で国語漢文の時間に
「昔、カネは阿堵物(あとぶつ)といわれていた」と教えられた。
 「阿堵物」とは「卑しむべきべきもの」の意であり、なるべく口
にしないのをよしとした。 カネは密かにささやかに、最小限に稼
ぐもので、いわば日陰の身分であった。

■■資本主義の世の中、カネを卑しむほどのことも無い。 が、「
カネはいくらかタガをはげるべき危険な存在のものである」という
程度の自制心を持ちたいものである、と、ボクはかねがね思ってい
る。 いまごろ、大儲けをしたような人は、多かれ少なかれ危ない
橋を渡るか、少々アウトロー的な商売をした人と考えてもいいし、
少なくとも脱税・節税の後ろめたさを持った人々であると解しても
、大きく違わない。 だからこそ、億というカネを自宅にしまい込
んだり、査察に入られたりするのである。

■■大赤字で軒並み潰れかかっている球団が、年端もいかぬ少年や
、まだ成熟しているとも言いきれぬ青年に年俸何億円、契約金何千
万円などの大金を、さもとうぜんのごとく支払う。あるいは節操も
無き「実業家」たちが、株主の預託を受けたカネを勝手にデリバテ
ィブとやらで博打を打ち、大損をする。 これらはすべて、カネ万
能の世の中が生んだ鬼子、つまり不幸な人々ではなかろうか。

◆◆そうしたカネ万能の、巨大な金銭感覚が、いつの間にやらわが
日本社会を侵食し、そして昨今のような些細な犯罪にすら、目を見
張るような大金が介在することになったのではなかろうか。
 アメリカでは貧富の格差が、昨今あまりにも激しくなったといわ
れる。日本においても、金持ちと貧乏人の差がだんだん開いてきた
、と統計数字は示している。 
 なるほど、片や「百円均一ショップ」がますますポピュラーにな
り、片や、子供が泥棒に入って1億のカネをなんなく盗み終え、豪
遊する。 といったニュースが同一紙面、同一画面に、同時に流れ
てき、 かくして2004年という年が過ぎ去ってゆく。
 2004年はそうした年であった。 来年はどんな年になるので
あろうか。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版]  2004年12月17日号
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事、は関連Webへ → http://www.609studio.com
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サハリン原住民石油ガス開発に反対表明

 サハリン原住民たちは現在進行中の原油ガス開発事業に集団行為
で反対の意思を貫こうと第5次サハリン州少数民族代表大会で決め
た。開発事業が原住民の生活基盤を壊す他、環境汚染も深刻である
ためと原住民側は主張している。  
  開発が進む中で原住民が長期間住んでいた地域を立ち去らざるを
得なく、又彼らが伝統的に利用してきた自然資源地帯の縮小現状が
起こっているにも関わらず開発関係会社の指導者たちはこれを認め
ようとしないと原住民たちは抗議している。原住民側はサハリン北
部で建設中の原油パイプ、橋、道路建設を妨害するなどの強硬な手
段を用いると警告している。北方民族が一致団結して12月20日
から工事の道路と橋を遮断することで彼らの意思を貫こうとしてい
る。サハリン州議会の原住民代表エ・コロルリョワさんとサハリン
北方原住民協会のア・リマンジョ会長が原油ガス会社指導者たちと
会談を行っている中。

「日本産経新聞はサハリン同胞を侮辱している」
              とサハリン韓人会大反発

 (2004年10月25日、日本の産経新聞はサハリン韓人社会
に対する日本の支援に反対する記事を載せた。セコリョ新聞は同記
事全文を翻訳して載せると共に、この内容が韓人の歴史を歪曲侮辱
するものであるとの朴・ヘリョンサハリン州韓人会長の批判の記事
を掲載する)

 産経新聞2004年10月25日字に掲載されたサハリン韓人ら
に対する戦後処理関連記事内容はサハリン韓人皆を侮辱する記事と
断言する。多くの良心的日本人、特に朴・ノハクと彼の奥さんの堀
江和子さんを含めた一般人、国会議員、法律家、学者たちの並々な
らぬ努力の末、ようやくサハリン残留韓人の念願であった家族再会
、永住帰国が実現できた。そして、解決は初の段階に来ていると言
える。「日本側が64億円も費やしたのだからもう十分だ・・・2
−3世が買出しに行く観光旅行化した一時母国訪問だ。理由の見え
ない効果もない支援をやめろ・・・」などで被害者と良心的日本人
の努力を誹謗しており、サハリン韓人らの一生の憎みを知らない人
々だからこそ歪曲の記事を書いて1億2千万人の日本国民に誤った
知識を伝えようとしている。一部のサハリン韓人の発言や尊敬する
堀江和子さんの言葉は絶対多数の韓人被害者を侮辱するもので事実
を歪曲するほか何物でもない。1944年8月11日付日本内閣決
議に基づき3200人の韓人炭坑夫が九州や東北の炭坑に徴用され
たまま生死の確認もできていない現状を正しく理解しなければいけ
ない。一生祖国に残した家族との再開や帰国を待ちつづけながら異
国で悲惨な人生を送っていた1世たちはようやく余生を祖国の地で
送ることができたが、未だに帰れない人々が3500人もいる。よ
うやく始まったばかりの韓人問題解決に終止符を打てというのは許
せないものである。日本の責任と補償義務は当然のものであり、現
在日本の経済力と国際社会においての立場からみて問題解決の能力
は十分ある。 
 日本が世界の平和に貢献したいならばまず第2次世界大戦の戦後
処理をする勇気を持つべきであり、そうすることによって国際社会
に模範をみせるべきである。
               サハリン州韓人会長朴・ヘリョン

州知事、医療診断センター閉鎖に反対

 閉鎖が決まっているユジノサハリンスク市医療診断センターがサ
ハリン州知事の閉鎖反対により存続の可能性が見られる。同センタ
ー内科課長のエル・ゴンチャレンコさんが州知事に直接会って詳し
く事情を説明したのが原因と言われる。州知事はユジノサハリンス
ク市長との話し合いでセンターの臨時執行指導者の任命を決めた他
、センターの所有権問題などついて新たに検討されることになった


科目コンテスト

 今月6日から2日間サハリン国立総合大学で諸々の科目のコンテ
ストが行なわれた。韓国語コンテスト部門では20人余りが競争し
た。14日に結果発表と授賞式が行なわれたが韓国語部門では4先
生の李・タチアナが最優秀賞、同級生のベ・スヴォトラナと李・ア
ナスタシヤが優秀賞と奨励賞を勝ち取ったのである。

ハンキョレ新聞、サハリン韓人社会取材のために来島

 今月13日―16日の間、韓国有力全国紙ハンキョレ新聞の愉・
シンゼ記者が安山永住帰国者福祉センター鄭・チョンス所長を同伴
してサハリン同胞社会の取材のために島を訪れた。二人は1世たち
が強制連行され悲惨な生活を送っていたブイコフ炭坑と望郷の街コ
ルサコフ、ホルムスクなどを訪ね取材した。又、出発の前日には同
胞社会の懸案を調べるためにサハリン韓人会事務所で社会団体関係
者らにあって話しを聞いた。

あれこれ

「ネズミが増えた」
 気温が下がるとネズミたちがアパートの建物の中に侵入し衛生問
題を起こしている。特にユジノサハリンスク市、ホルムスク市、ネ
ベリスク市、コルサコフ市の被害が大きい。ネズミたちは人間を怖
からず3階まで登っている。病院や学校では資金不足で消毒もでき
ず困っている。今のまま放置しておくと深刻な問題になる恐れがあ
ると専門家たちは警告している。

「シベリア横断トンネル開通」
 先週シベリア横断のタルマツカンスキトンネルが開通した。トン
ネル工事は約13年もかかり、総工事費は30億ルーブルに達する
。トンネルの長さは2Km以上で複線となっている。1916年に建
設された旧トンネルは博物館として利用される予定である。極東鉄
道管理局は20個以上のトンネルを再建する計画を立てている。極
東鉄道再建は中国と日本などのアジア太平洋地域との貨物輸送量の
増加に繋がる。

「連邦会議、ビル法の立法支持」
 さる9日、ロシア連邦会議は公共場所でのビル販売と飲酒を制限
する内容の新しい法律「ビル法」を支持した。大統領が同法案に署
名すればその30日後から効力を発することになる。
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◆寄稿 [サハリン悲歌  第三章  4]               金 里博
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雨降る釜山港を発つ「釜関連絡船」は
地獄行きの船
悪魔の手の内だった。

賄賂を握らせ
ようやく得た
警察の『渡航推薦状』で
船も列車も
切符は全て往復券を
無理矢理握らされ
脅して買わされ
微かな希望を抱かせたが
有効期間の短さに
「関係者」は
ニヤリと笑い
内心、「また儲けた!」と満足顔だった。

殆どの朝鮮人は
復路の切符を使わないまま
天、地、海、地底に怨みを残し
「内地」の
土となり
海に投げ込まれ鮫や魚の餌食となった。

徴用の最初から
復路の道などなかったのだが
その往復切符に
朝鮮人は微かな、微かな希望を抱き
夢を見なければ
悲しみと憤りを
握りつぶすことが出来なかったのだ。

元々釜山は静かな漁港だったが
大日本帝国の強権で整備され
1876年韓国最初の近代港となった。
そのお陰で
釜山港は
朝鮮屈指の貨客船の出入港となったが
「徴用」された者も
「応募」で行った者さえ
出港は朝飯前に出来ても
帰港はラクダが針の穴より入るより
もっと難しく、殆ど出来なかった。

今とは違って
日本の敗戦前までは
飛行機で樺太に渡ることなど
天皇「陛下」でも出来ず
樺太行きの朝鮮人は皆
悪魔の手の内の
行き先の違う
三航路の連絡船に載せられた。

サハリンの一世たちは、
徴用で連行された者、
二重徴用された者、
応募の甘言に乗せられた者たちは
その後ずっと
一日として空けることなく
涙と血
蔑視と差別と
虐待の中で
生きてきたが
釜山港のカモメの群れの白さ
下関の「イノモセキ」の罵声
青森の空の色
函館の海の色
そして
稚内の風の抉り
大泊の水のえぐさを
忘れてはいない、
いや、忘れることは出来ないのだ!

釜山港は
故郷と繋がっていただけに
なに物にも代え難い熱いものがあり
だからこそ
離れる悲しみは更に切なく
後ろ髪引かれる思いはなお辛く
出来るものなら
釜山港のカモメになれれば…と思った
最後の港だったのだ。

彼らサハリン一世の
脳裏と心に残っている釜山港は
今は跡形も無くなっているが
波と波の合間
天と地
風のそよぎの間には
今も残っている。

永住帰国を強く望む
彼ら一世を
今は所有してはいない
復路の汽船と列車の切符を使わせて
帰れるよう便宜を謀って貰いたいものだ。

嘗ての面影の無い設備のよりフェリーで
コルサコフから
稚内へ
無くなった青函連絡船の
波の下を通過する
函館から
青森へ
そして
フェリーの
下関から
釜山へ−

釜山、釜山(プサン)
ああ、釜山(プサン)− 
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◆20代のぼやき: 「インドへ行きます9」    有木優一 
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 インドへ向けて出発する日が決定した。12月20日(月)だ。
そして、この「インドへ行きます」シリーズ並びに、「20代のぼ
やき」も今回で終了を迎える。この半年間ほぼ毎週書き続けてきた
が、今、読み返してみると、これから先、この半年間は人生の尺度
で考えるとほんのごく一部に過ぎないのだが、この半年間いろんな
経験をさせてもらったなぁ、などと物思いに耽ってしまう。

 まず、名刺作りだ。この名刺を作ることで、僕が具現化された気
分になった。しかし、本当の「僕」というものも、その名刺が鏡と
なって僕を写し出し、僕に教えてくれたように思う。そして、処女
作の制作。つい最近のことの様に思える。映像制作の基本講座を編
集したことで、何度もその講座を耳にすることになり、制作の基本
を習得した。それから、インドへ行くための資金を得るための「夢
工場」勤務。この「夢工場」で過ごした半年間も辛かったが、楽し
い「仲間」に出会えた。夢を追いかける者の生き様や社会の実態が
垣間見えた。そういえば、松根油に纏わるルポルタージュを書くに
あたり、一週間ばかり、取材のため広島へ赴いたこともあった。こ
の広島取材では、ある会社に名刺一枚で体当たり取材を敢行したが
、全く取り合ってくれなかった苦い思い出がある。そして、周りか
ら取材を進めていこうともしたが、全く糸口すら掴めなかったのだ
。しかし、まだ諦めてはいない。この経験は、「インド」でもきっ
と役立つだろう。

 しかしながら、ここでは、僕が「20代のぼやき」で書き綴った
様々なエッセーよりも、より書かねばならないことがある。それは、
この「20代のぼやき」をほぼ毎週書き続けてきたことであるだろ
う。毎週何かを書き続けることは、日々刻々、起きる事象に対して
、絶えず注意を払うことを怠れない。この緊張感を持つことで、少
なからず洞察力を養えたと思う。そして、末筆ながらも、毎週僕の
ぼやきを読んでいただいた皆様に心から感謝すると共に、こういう
場を設けていただいた編集者には心からお礼を申し上げて、この「
20代のぼやき」を終わらせていただきたいと思います。約10カ
月間と短い期間でしたが、ご愛読ありがとうございました。また、
違った形でお会いできることを心から楽しみにしております。

  それでは、インドへ行って来ます。
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◆[編集長から]              Michio Katayama
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  長い間、お休みを頂きました。サハリンは寒かったです。おかげで
写真展のほうは無事に終了しました。

◆「日本人の韓国への好感度が過去最高」と韓国・中央日報報じる。
韓流の勝利か。この状況が続くことを祈る。

◆「米、北地下施設破壊ミサイルを韓国配置」と。これは6カ国協議
をさらに難しくさせる。

◆サハリンの石油・ガス開発が北方少数民族の生活基盤を奪う。無論
自然破壊も。
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発行     2003年12月21日   No.193
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
              MailuX配信システム         ID:MM3E1B97842E020
                Macky!                    ID:609studio
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