609studio　No.190◆現代時評:[「ヨン様ブーム」と韓流大流行]　 2004/11/16

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タイトル：609studio　No.190◆現代時評:[「ヨン様ブーム」と韓流大流行]　 2004/11/16

───────◇◆◇609 Studio　メール・マガジン◇◆◇────── 　　　　　　　　　　　　　　2004/11/16　No.190 【609 Studio 】メールマガジンは「現代社会を斬る！」をコンセプトに論説委員Ｋｅｎ氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェスト版、その他、寄稿記事など話題満載！　 URL ⇒ 　http://www.609studio.com ───────────────────────────────── 　　　　　　　　　　　◇◇◇お知らせ◇◇◇ 　　　　　　　　　　◇◆Sakai SWC Club発足◆◇ 　ＳＷＣってご存知ですか？６×６ハッセルブラッドのワイド専用カメラです。そのカメラ愛好家のクラブが大阪・堺市に誕生しました。　　　　　　詳しくは　http://swc-club.hp.infoseek.co.jp/ 　　　　 ◆中古カメラ売ります！!◆ Coffee shop シオンでは　カメラを売り始めました。なかなか味の　あるアナログなカメラです。一度覗いてみてください。　　　 http://www.609studio.com/shion/camera.html ───────────◆◆◆ＩＮＤＥＸ◆◆◆─────────── ◆現代時評:[「ヨン様ブーム」と韓流大流行]　　　　　ken ◆セ・コリョ新聞ダイジェスト版：２００４年１１月１２日号 ◆寄稿　[サハリン悲歌　　第三章　１]　　　　　　　　金　里博 ◆２０代のぼやき：[インドへ行きます　７]　　　　　　有木優一 ◆編集長から：[この１週間] ───────────────────────────────── ◆現代時評：[「ヨン様ブーム」と韓流大流行]　　　　ken 　　　Ｋｅｎ氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは　　　　　　info@609studio.com 　へ！ ───────────────────────────────── ■■「韓流」という言葉が巷にあふれている。　洋風や和風といった同連の表現による「韓国風」、つまり「韓国式」のことかと思ったが、もう少し広い意味があるらしい。　なんでもシンガポールや台湾辺りが震源地らしく、そこで急に広がった韓国文化一般についての流行を指すらしい。　もっともその場合、「韓」はカンではなく、「ハン」と発音するのだそうだ。　「韓」を「カン」と発音するのは日本独特の発音で、台湾はもちろん、中国でも韓国でも、この「韓」と言う字は「ハン」と発音するのが一般的である。いつからこの字をわが国だけが特別に「カン」と発音するようになったかは詳らかでない。 ■■とにかく、先ず最初に韓国映画と韓国料理が台湾辺りで大流行し、それがシンガポール、ついでバンコクと伝播し、いまや日本にも押し寄せてきたのだと、識者は言う。なるほど、拙宅の２軒隣にもつい最近、韓流喫茶店ＴＡＭＯＡというのがオープンした。ＴＡＭＯＡが何の意味かはまだ聞いていない。 ■■とまれ韓流について、ボクが気付いたのは例の「冬のソナタ」からである。主演の「ヨン様」こと、ペ・ヨンジュン主演の映画、およびＴＶドラマ「冬のソナタ」が予想外の大好評で、その写真集の発売に希望者が殺到したそうだ。ついには「スタートを予定しておりましたぺ・ヨンジュン写真集予約販売が、普段の４０倍を越える同時アクセスが集中し、サーバと回線がダウン致しました」というセンセーショナルな広告が出た。　その写真集が１冊１万４７００円というから、まさに「洛陽の紙価を高からしめる」勢いである。 ■■それほどまでにこの映画が大ヒットした原因は、どうやら主演の「ヨン様」のマスクにあるらしい。典雅な慶州風の顔に縁無しの眼鏡という、さも教養ありげなヨン様のマスクは、じつは昔から日本の若い男女が伝統的に好んだ顔であった。戦前の長谷川一夫や上原謙という、いまは懐かしい映画俳優たちはみなこの手の顔をしていた。　男優のみならず、こうした百済風、もしくは古代慶州風のうりざね顔は、特に女性の顔として明治以後の日本ではひじょうに珍重された。戦後、まだ海外旅行に稀少価値があったころ、海外の米国式一流ホテルの受付カウンターに、なぜかこの顔をした日本女性が必ず働いてい、ボクの友人の中国系実業家などは、この顔をみると、「ああ、東京型美人が居る」と喜んだものであった。なにしろ彼女らはみな英語が出来、一目でさも教養ありそうに見えた。 ■■映画テレビにおける男性タレントの話に戻ると、戦後１０年も経つと、なぜか「個性派」と称して、どうにもならぬあくどい顔、アタマの悪そうな男性タレント顔が流行しはじめた。そしてついには今見るように、吉本一派に代表された、無教養を強調した粗野型男子タレントがテレビ・映画上で全盛になった。その祖型はアクション型香港映画にあったのではないかと、ボクなどは思っている。　　そうした時代の流れに、いままで慣らされて来たように見えた日本の、特に女性観客層も、内心でそうした「汚れて無教養なタレント」にはじつは飽き飽きしていたらしい。そうした内心清純志向のお嬢様社会が、もともとの心を思いだし、いまとつぜん「ヨン様」ブームを興したものと、ボクは想像している。いわば、日本女性の美意識が確実に過去へ回帰したのであろう。　卑猥で無教養なタレントの顔ばかり、毎日のテレビでこれでもかとばかりに見せられてきたボクなども、お蔭でホッと一息つけたわけである。若い女性ならずとも大いに結構なことであると、ボクは思っている。 ■■「ヨン様」の顔。それが教養派を表象していることについては、映画「冬のソナタ」の封切りとともにすぐ報道された。　真偽の程は知らぬがネットで報ずるところに寄れば、韓国で映画俳優として売り出すためには、教養もじゅうぶんでなければならない。とうぜん一流大学卒、そしてスポーツマンとしても肉体的にもひじょうに優れていることが必須条件となっているらしい。　これはわが国の、現状におけるテレビタレントなどの粗雑な出自とちょうど正反対のことのように思える。 ■■まあマスコミ芸能人の個人的な出自や教養などは、いま深く問わぬことにしても、いま急に流行し、日本で絶好調の韓国映画、「冬のソナタ」や「夏の香り」をはじめ、その多くがメロドラマ調で、ひじょうに穏やかであるということが、わが国の、特に女性視聴者層に受け入れられている最大の原因であるらしい。　 ■■概していえば、いままでの韓国映画は激しい闘争や、厳しい責めぎ合いが特色に近かった。　それに加えて激しい対日非難もまたストーリーの中で顔を出すことが多かった。　ところが今回の「冬のソナタ」にはそれが無く、純愛物語に終始していたので、日本の若い女性たちは心置きなく映画のストーリーに耽溺できたのであった。 ■■不幸にもボクら日本と韓国の間には明治以来、激しいわだかまりと、反目が実在した。そしてその原因を造ったのは紛れもなく「閔妃暗殺」以来の日本であることは事実である。　非はたしかにわれわれ日本側にあり、誹は誹としてそれを恥じ、謝らねばならない。そしてそれを激しく糾弾する韓国の人々の心もじゅうぶん理解しなければならない。 ■■しかし人間の心というものは、そうした恨みつらみを目の前で声高に糾弾されれば、心底、面白くないのも事実であり、原因の問題とは自ずから別に感情は起伏する。しいて言えば人間の弱点であろう。　ところが韓国の人々の多くは、「糾弾」こそ、相手をして改心せしめるためのひじょうに有効な手段であると思い込み過ぎているフシがある。だがそうとばかりはうまくいかない場合が多い。 ■■例えれば似たようなことが、日本国内にも存在した、というより、いやまだ存在していると言うべきことがある。国内における民族内差別問題がそれであり、いまなお事態の紛糾を長引かせている。　そうしたことについては、状況をさらりと流して、事態をうまく処理した大物政治家も、歴史上に居ることは居た。「暴に報いるに徳を以ってする」と言った蒋介石氏であり、われわれは彼にいまなお感謝している。 ■■かって作家の司馬遼太郎氏は書いている、「いつの頃からか、そしてなぜか知らぬが、かの国の人々は、事実よりも意識において激しく興奮する」と。　さすがは文筆家の司馬遼氏、言い難いことを上手な言葉で説明している。　韓国の人々のなかには逆効果を怖れず、激しい口調で他人を非難するばあいが比較的多いようにボクも感じている。　もっとも「これは非難ではない。正しいことを正しいと主張しているだけであって、喧嘩するつもりはさらさら無い」と、その人達は言う。　そうかも知れない。しかしそのように激しく苦情を言われると、折角に和解の機会があっても、その機を失うことが多いという事実も知ってもらいたい。　 ■■あり難いことに今回の「冬のソナタ」から始まった日本の、いわゆる「韓流」の大流行は、あの映画の中ではすべてにおいて非難調・糾弾調が無く、それに最近の韓国の若者の風潮として、激しい非難言葉が減ってきたため、一気に日韓親善が若者たちの間で実現しかかったのでは無かろうか。　そしていまや日本中、少なくとも若者の間で「ヨン様」ブームとともに「韓国ブーム」が押し寄せてきた。　これは恐らく日本政府にとっては予期しない朗報であり、儲けモノであろうことは疑い無い。　 ■■こうした韓国映画が上映される前から、観光とか産業面においてすでにある程度の韓国との友好は芽生えていた。　しかしそれは、利益もしくは興味という別途目的に支えられた相互交際に過ぎなかった。　しかし今回の「ヨン様」ブームは、そこに「様（さま）」という言葉が付く通り、明らかに尊敬と憧れの感情が表明されていて、いままでのブームとは大きく異なっている。われわれはこうした流れを大事にすべきである。　たんなる友好だけではなく、ほんとうの意味における親善にとって、相互の尊敬こそひじょうに大事な要素なのである。　そしてそれがいままさに訪れようとしている。　 ■■そしてそのためには、韓国の人々も、ここいちばん、旧怨を少なくとも肚に納め、＜事実よりも意識において＞激しく興奮しないようご努力願いたいものである。　なぜなら、いまのような良き韓流ブームは、ひとたび去ると、また巡ってくるのが先のことになってしまう可能性を恐れるからである。 ■■とはいえ、いまネット上の電子掲示板を眺めると、ある種の野蛮な日本人若者たちによる在日韓国・朝鮮人に対する激しい差別言辞が、ひじょうに多く投稿されている。このような粗野で無教養な投書はもちろん日本の恥であり、表立ったマスコミに載ることは無く、ただただ統制のきかないネットの弱みであり、間違いなく「民主国家」というものの弱点である。 ■■そうした中に在って、いまや日本社会のなかに、際立って優秀、かつ尊敬されるべき韓国系の人々が多く輩出している。東大の姜尚中教授や、マイクロソフトの孫正義社長。あるいは某政令指定都市の首長さんなどであり、それらの人々の態度、挙措動作およびその見識、言動なとは群を抜き、まことに端正かつ温厚である。もちろん司馬遼氏のかって言ったような心配などはさらさら無い。ボクはひじょうに尊敬している。見習わなければならない。 ───────────────────────────────── ◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版]　２００４年１１月１２日号　　発行　ユジノサハリンスク市　翻訳　Kil　Sang ◇詳細/写真、記事、は関連Webへ →　http://www.609studio.com ───────────────────────────────── サハリン州知事と職業同盟指導者たちとの面談　先日、イ・マラホフ州知事は産業別職業同盟指導者及び職業同盟委員会長らと面談を行った。彼らは賃金、特権、予算、動力運輸、炭夫たちの移住、政府と地方自治体間の関係樹立などについて話し合った。予測によると、来年度サハリン州政府収入は３０億ルーブルに相当する。州知事は、今後住民の福祉に一層力を入れる方針であり、教師と公務員の給料を２０－２５％引上げる予定であると明確に伝えた。地方自治体は来年から州支援予算をもって図書館職員と医師、看護婦、教員、若い技術者など収入の少ない専門家を対象に手当を支払う予定である。又全ロシアでは８％のインフレを予想しているが１５％のインフレを予想して教育と保健機関を対象に融資を拡大する計画である。又、コルサコフ－オハ間道路建設、シャフチョルスク港、空港近代化、鉄道料金引下などに力を入れる予定である。天然液化ガス工場の増設可能性示す　イ・マラホフサハリン州知事は、アジア太平洋地域の電力消費量の益々の増加が予測される市場状況を考えた上、２００７年度完成予定で推進中であるプリゴロドノエ部落の液化ガス工場建設に加え、必要に応じ第３の生産工程ラインの建設ができるように新たに敷地を提供したとことを明らかにした。昨年１０月、メキシコと１６０万トン液化ガス供給契約を結び、最近は日本の東京電力と２２年間に渡って年間１５０万トンの液化ガス提供契約を結び、まだ生産もされていないのに５００万トンを販売していると州知事が伝えた。今後サハリン州には相当の収入増加が予測される。社会経済発展拡大会議　さる５日、ユジノサハリンスク市政府会議室で州中央都市２００４年９カ月間社会経済発展現況報告会議が行われた。会議には州政府代表、企業と機関指導者、市と州議員たちが出席し、報告はエフ・シドレンコ　ユジノサハリンスク市長と市財政管理局のテ・ウムノワ局長が担当した。同局長によると、過去９カ月間ユジノサハリンスク市はロシア連邦政府に４１億ルーブルの税金を収めており、その中から１１億ルーブル（２６％）が戻ってきた。経済人口の０．３％が失業状態にあり、平均賃金は１２８６０ルーブルであり、昨年同時比２９％が増加した。年金は平均２７４７ルーブル、最低生活費は１２．８％増加した４３４１ルーブルである。集会問題で会議　さる５日、サハリン州韓人協会事務所で今月１９日に予定している駐ユジノサハリンスク日本総領事館前でのデモ組織準備会議が行われた。会議にはコルサコフとアニワなど地方からも関係者が駆けつけた。会議では１１人からなるデモ進行委員会結成し、委員長として朴・ヘリョン会長が選ばれた。１０日進行委員会は別に会議を行いより詳しいことを討議した。デモは１９日（金）１２時から始まる。日本国会でサハリン問題議論－より確かな措置を取るべき　日本国会での鳩山由紀夫議員がサハリン韓人関連の発言をおこなったことを知って、サハリン州韓人協会朴・ヘリョン会長が鳩山由紀夫議員宛に書簡を送った。書簡の内容は次のようである。　尊敬する鳩山由紀夫議員！我々の問題に理解を示し解決のために努力しておられる貴下に深く謝意を表します。第２次世界大戦の時、樺太に縛られ、その後は冷戦体制下の政治家達の過ちで数十年間祖国と連絡も出来なかった我々サハリン韓人の運命は複雑かつ悲劇的であります。終戦後、１９４６年３月１６日付＜サハリン残留日本人帰還　米ソ協定＞により、日本政府は１９４６年１２月５日から１９４９年９月２２日まで日本民族の血をひいている日本人３０万人余りを帰国させながら、日本国籍であったサハリン韓人１世たちは放棄しました。このような行為について、日本は時効を問わず道徳的、物質的、政治的責任を負うべきであります。終戦後５０年以上の歳月が過ぎてようやくサハリン韓人団体の要求があり、サハリン韓人名誉回復のための取り組みが行われ始めました。我々はこれらの措置を軍国主義日本がサハリン韓人に対する罪を償おうとする努力であると理解し又有難くも思っております。しかし、我々は占領当時の犠牲者たち、軍事施設に強制徴用された被害者たち、非法的かつ暴力な行為を受けた一般人の名誉回復問題の解決を強く要求します。私達は鳩山幸雄議員の支持と理解に基づき、サハリン韓人達の名誉回復が実現し、正義と人道主義、民主主義が勝利を収める日が来ると信じながら次のような具体的問題を解決してくれることをお願いしたいのです。－皆が（例外無く）満足できる永住帰国－日本により精神的物的被害を被った在サハリン・ロシア・独立国家連合のサハリン１世たちに対する十分な補償　第２次世界大戦の時、発生したサハリン韓人の悲劇はそれから６０年の歳月が流れても続いています。日本はサハリン韓人１世に対する非道徳的行為を反省し、この悲劇に一線を引く勇気を出してくれることを信じたいのであります。日本国民の支援と鳩山議員の積極的参与によりサハリン韓人問題が解決できると我々は信じております。　貴下のご健康とさらなるご発展をお祈り致します。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００４年１１月２日　　　　　　　　　　　　　　　サハリン州韓人協会長　朴・ヘリョン＜国会での議論＞（２００４年１０月１３日：日本国会第１６１会議、衆議員第２会議）鳩山由紀夫の質問：シベリア抑留と関連してもう一つ質問したい。私の祖父一郎が物質的支払問題を解決しようと努力したが未だに解決できていない。関係者は皆高齢者である。政府は戦時強制徴用及び抑留で被った損害について物資的補償をするとの民主党の提案法律が受け入れられるように協力すべきである。それと同時にサハリン韓人問題の解決のためにより確かな措置を取るべきである。問題解決を巡っての具体的案を総理に聞きたい。小泉総理：歴史的観点に基づいて人道的次元からサハリン韓人問題解決に協力している。今後も協力を続けるつもりである。サハリン道路大修理整備　先週サハリン州政府主催の会議で村と部落の町整備問題を巡っての議論がなされた。会議に参加したイ・マラホフ州知事によると、コルサコフ－ユジノサハリンスク－オハ間道路の大々的整備を行う予定であり、同建設事業に来年度に約７億ルーブルの予算が割り当てられる。他にシャフチョルスク港の整備を通じて石炭供給を円滑にし、連邦から１億５千ルーブルの支援金をもらう。又、ユジノサハリンスク空港の現代化、滑走路の整備などインフラ整備に積極的努力が費やされる。あれこれ「パン製品質調査」　最近、サハリン国立食パン監督管理局が州内食パン生産所を対象に製品の質と衛生状態調査を実施した。調査結果によると、殆どの食パン生産所が衛生規則を守っており、製品の質も良好である。「一日２８件の犯罪」　さる４日、サハリン州内では２８件の窃盗事件が発生した。住宅侵入のほか、人の多い市場でのスリ事件も多く、車庫、店などにも泥棒が入っているので十分注意が必要である。 ───────────────────────────────── ◆寄稿　[サハリン悲歌　　第三章１] 　　金　里博 ───────────────────────────────── 稚内。日本の最北端宗谷海峡を臨む都市。今では宗谷本線、天北線、国道４０号線・２３８号線の終点札幌までの空路が通じ西海岸は利尻礼文国定公園区域でもある。東の宗谷岬西の野寒布（のしゃっぷ）岬その両翼を抱える天塩山地北部・宗谷丘陵の海岸段丘上を南北に伸びている不凍港・商業都市－海山、河港を凍てつかせ屍さえ枯らせ、生命に血の沈黙を強いる極寒も春の兆しには席を譲り北の最果てに去らざるを得ない自然の摂理が有るが狂信的な強権と抑圧と蔑視には季節もなく、「年季明け」も無くそれらが当然のように神仏と共にしながら黄河が流れるように大阿蘇が噴火し続けているように一時の切れ目も無く針の先ほどの目こぼしも無く不断に続けられた闇黒と暴虐と残酷のあの時代！－そう、確かに一年三百六十五日春うららの日も炎天の夏の日も爽快な秋晴れの日も雨の日も風の日も雪の日も訪れた夜明けと夕暮れをもたらし町も村も都も鄙も蠢いた。多くの血が流されうめき声と慟哭が鈍く響き渡り「内地」異国での枯れ涙と無言の野辺送りが繰り返された－その日から光を復り戻したその日からどこからか、老人が一人晴れた日には左半身に夕陽を浴び風と雪が吹き荒ぶ日には襟を立て風と雪を遮り雨の日にはカッパに傘姿で遥の北コルサコフ（大泊）を睨むように臨んでいた。喉を木剣で潰され拳で左目を凹まされ軍靴で右脚をへし折られたその姿の存在を多くの人々が知ってはいたがその老人が誰なのか何の目的でどのような執念で一日も欠けることなく通い立ち恐ろしいまでの殺気を漂わせ錐先のような目で凝視しているのかを知る人は、敗戦の日から今日まで頑として過去を語らず宗谷岬の片隅に庵を結び住んでいる勤行三昧の老僧一人となった。短くも長かった半世紀「真」と「心」はまだ重く固い蓋をされたままだ－老人は何処から来てそして何処に帰るのか誰も知らない。人々が知っているのはいつも深夜まで宗谷岬を立ち睨んでいた事いつの間にかいなくなって翌日の夕刻にはまた立って睨んでいる姿だけだ－猛吹雪のその日老人はその場に凍てついたまま立ち往生を遂げた。「ファテ！、ファテ！」と叫んで息を引き取ったのだがその最後の叫びを聞き胸に抱き涙を流しながら最期を見取ったのは庵の老僧だった。老僧もまた数十㍍先の樹齢五百年の松に隠れ老人が立ち始めたその日からずっと彼に知られず行動を共にしていたのだ。老僧の名・杉野格（すぎのいたる）日本人、元樺太憲兵少尉数千人の連行朝鮮人を拷問し廃人にし、障害者にし、屍にし転向させた鬼と言われた大和益荒男。その障害者にされた朝鮮人の中に目の前で立ち往生した老人がいたのを老僧ははっきりと記憶していた。老人の名本名・裴一松（ペイルソン）日本名・非衣一松（ひごろもいちまつ）。彼は共に「国家総動員法」の名の下に連行され咎無く暴行され、虐待され障害者にされ、廃人にされ、殺された友人・知人に生きながらえた自分の人生を捧げ詫び続けていた。そして罪の無い友人・知人に無限の暴行と虐待と拷問を重ね多くの命を奪った日本人憲兵・杉野格を怨み続け復讐の思いを滾らせ往生のこの日まで宗谷海峡の向こう旧大泊を鋭く凝視していた。－老僧は立ち往生の老人を熱く抱きすぐに氷糸となる涙を流しながら「すまなかった！非衣（ひごろも）、非衣… 罰は受ける、子孫代々罰を受け謝罪し償う」と詫びて詫びきれず償って償いきれない罪を告白し謝罪した。－韓国・朝鮮の諺に「打たれた者は脚を伸ばして眠れるが打った者は脚を伸ばしては眠れない」がある。老僧はこの半世紀脚を伸ばして眠れたことはなく心に鉛の塊を痼り持ったまま読経三昧に耽っていた。罪を犯したとはいえ悲しく不幸な日々だった。その数ヶ月後老僧は自らの庵に非衣の墓を西に向け建てサハリン（旧樺太）で犠牲になった朝鮮人の慰霊塔を老僧の墓と並べて建てた。慰霊の法要を終えた数月後老僧は一段落付いたと思ったのか鬼籍に入り老僧の霊は裴一松の霊と朝鮮人霊の仁王となって昼夜彼らを守っている。風光明媚な豊かな町・稚内だが、稚内の罪はまだ購われていず罪は依然として残っている。 ───────────────────────────────── ◆２０代のぼやき：「インドへ行きます　７」　有木優一　 ───────────────────────────────── 　先日、ある人の誕生日会に誘われ、梅田の某沖縄料理店へ行った。表に「泡盛」と書かれた大きな赤提灯のある店だ。扉を開け、暖簾の向こうにはカウンター席が見えた。縦に長く伸びるＬ字型のカウンター席に目もくれず、誕生日を迎えた当人と二人で店員の案内に従い、二階のお座敷の部屋に通された。部屋にはまだ誰も来てはいなかった。　人も予定時刻に近づくにつれ集まりだし、誕生日会約１５分遅れの乾杯。９人で始まった誕生日会は、徐々に人も揃いだし、開始２時間後には予約どおり１２人が揃った。そして、一つ提案がなされた。「有木君の壮行会をやるんやけど、いつにするか。」「そして、彼へのカンパ一口１０００円。ＤＶテープ購入に使いたい。テープだけはあればあるほどいい。」　先日、別の日にある人物とお会いして、その壮行会でのカンパについて、お話したら、その方に、「それは、大変なことやわー。親や親族から貰うカンパとは違って、そういう人たちから貰うカンパは、その人たちが納得いくものを、片足を失ってまでも、見つけてこなあかんってことになるしなぁ。」と、脅された。　確かにそうかもしれない。たとえ、五体満足で帰国しても、その人たちが、納得いかなければ、評価はされないだろう。これは、レジュメを予めお渡しした上で、壮行会に臨み、カンパしていただけるかどうかを問うものだが、それくらいの覚悟は必要かもしれない。　しかし、僕は今その様なプレッシャーを不思議と感じないでいる。僕の考えを試してみたい気持ちの方が大きいのだ。レジュメにインドで僕が何を撮ってくるのか、思いの丈を書き連ねた。さらさらカンパを期待して壮行会に臨むわけでもないが、レジュメをじっくり読んでいただき、僕の撮りたい映像に本当に満足をしていただいた上で、そのカンパ提供を請いたい。 ───────────────────────────────── ◆[編集長から]　　　　　　　　　　　　　　Michio　Katayama ───────────────────────────────── 　過日、岡山・愛生園へ出かけました。愛生園は、瀬戸内海に浮かぶ風光明媚な長島にあります。折からの秋晴れで、カキの養殖いかだが点々と海に浮かんでいて、平和な気分になったのですが、それもつかの間、その海から「患者専用の桟橋」で「強制連行」された患者が上陸させられたとか。在日韓国人の金・泰九さんが「過去のこと」として淡々と説明してくれたのが印象的でした。　写真は　 http://www.609studio.com/html/gallrey_file/sampomichi/nagashima/nagashima.html ◆「自衛隊が活動する地域が非戦闘地域だ」民主党との党首会談での小泉首相の弁。すごい論理。しかし岡田代表も、国民が一番聞きたいことを「時間切れ間近」に聞いて終わりとjは・・・。　戦略がなっていない民主党。 ◆ファルージャのイラク人記者報告「人々は飢えに苦しむ」　英ＢＢＣに電話レポート。 ◆Humanitarian aid barred from Falluja ーAn Iraqi Red Crescent convoy blocked from entering Falluja by US forces has asked the United Nations for help. ⇒アルジャジーラに掲載された記事。赤十字が国連に救援を。米軍が病院も押さえて活動を禁止した結果。　ナイチンゲールは米軍にだけ微笑む? ◆日本高校生の江原道訪問が増加（朝鮮日報）　冬のソナタ・韓流ブームはオバサマたちだけのものではない。豊かな日本と飢えるイラクや北朝鮮の市民。 ───────────────────────────────── 発行　　　　　２００３年１１月１６日　　　No.１９０編集・発行　　609studio 　　Michio Katayama 発行　　　　　毎週火曜日　　購読料無料配信まぐまぐ配信システム ID:0000052236 MailuX配信システム ID:MM3E1B97842E020 Macky! ID:609studio e-mail info@609studio.com website 　　　http://www.609studio.com 投稿　　　　 http://www.609studio.com　掲示板へ購読購読解除は websiteへ　　　　　　　　　　　◇禁・無断転載◇ ─────────────────────────────────

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