メルマガ:片山通夫のnewsletter「609studio」
タイトル:609studio No.187◆現代時評:[座間移転問題と米軍]  2004/10/26


───────◇◆◇609 Studio メール・マガジン◇◆◇──────
                             2004/10/26 No.187
【609 Studio 】メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプ
 トに論説委員Ken氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報と
 して、ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェスト
 版、その他、寄稿記事など話題満載! 
           URL ⇒   http://www.609studio.com
─────────────────────────────────
           ◇◇◇お知らせ◇◇◇

                 ◆中古カメラ売ります!!◆
  Coffee shop シオンでは カメラを売り始めました。なかなか味の
 あるアナログなカメラです。一度覗いてみてください。
       http://www.609studio.com/shion/camera.html
           
───────────◆◆◆INDEX◆◆◆───────────

◆現代時評:[座間移転問題と米軍]                      ken

◆セ・コリョ新聞ダイジェスト版:2004年10月22日号

◆寄稿 [サハリン悲歌  第二章 3]        金 里博

◆20代のぼやき:[インドへ行きます 4]      有木優一

◆編集長から:[この1週間]

─────────────────────────────────
◆現代時評 :[座間移転問題と米軍]                    ken
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
                  info@609studio.com   へ!
─────────────────────────────────
◆◆アサヒコム 2004.10.21  細田官房長官は21日の参院予算
委員会で、在日米軍の再編で、極東を超える地域を統括する米軍の
司令部受け入れは困難との見解を示した。社民党の福島党首が「日
本の中に米軍の司令部を持ってくることは、日米安保条約の極東条
項を超えて許されないのでは」とただしたのに対し、「基本的には
そう考えている」と答えた。

◆◆毎日新聞 2004.10.20  日本の安全保障政策の根幹にかかわ
る問題なのだから、政府は国民に対してきちんと説明しなければな
らない。 米軍の世界的なトランスフォーメーション(変革・再編
)に伴う在日米軍の再編問題のことだ。  とりわけ、米陸軍第1
軍団司令部のキャンプ座間(神奈川県)への移転問題が浮上し、日
米安保条約の極東条項との整合性に疑問が出ているだけに、議論を
十分に詰めたうえで国民に説明する必要がある。

◆◆毎日新聞 2004.10.20  小泉純一郎首相は20日の参院予算
委員会で、在日米軍の再編問題に関連して「日米はどう協力して世
界の平和と安定に資するかという観点から、日米協議を進めていき
たい」と述べた。世界規模で日米協力のあり方を検討することで、
在日米軍の駐留目的を「日本と極東の安全」と定めた日米安保条約
6条にとらわれない姿勢を重ねて示したものとみられる。自民党の
舛添要一氏への答弁。

■■急に、そして今更ながら、米第1軍団司令部が座間へ移転した
いと言出した。これには流石の小泉首相も困るハズだ。なぜ困るか
って…、それには先ず第1軍団なるもののアウトラインを知る必要
がある。

■■いま米軍は4軍団を常備軍団としている。先ずヨーロッパ駐在
の第5軍団、つぎに米本土防衛の第3軍団。そしてイラク戦争、湾
岸戦争、朝鮮戦争を担当し、その昔対日戦争も担当した第1軍団で
あり、あと一つは機動的な第18空輸軍団である。
 第1軍団の兵力は現役陸軍兵士約2万人と、ほぼ同数の陸軍予備
軍と、全米50州兵からなる予備部隊で構成されている。朝鮮戦争
のとき、第1軍団司令部はプサンに移され、71年までそこに留ま
ったが、冷戦後はフォートルイス基地に移され、今日に至っている。

■■フォートルイス基地はワシントン州タコマ市近郊にあり、25
,000人の兵士と民間労働者がヤキマ・トレーニング・センター
と称する324,000エーカーの演習場周辺に駐屯している。
 (http://www.lewis.army.mil/About_FL.shtml)
その守備範囲は、米本土の西海岸からアフリカの東海岸にまで及ぶ。

この範囲には、米国が締結している7つの相互防衛条約のうちの5
つ、つまり米比、ANZUS(米、オーストラリア、ニュージーラ
ンド)、米韓、東南アジア集団防衛(米、仏、オーストラリア、ニ
ュージーランド、タイ、フィリピン)が含まれる。もちろん、イラ
クもイランも含まれている。簡単にいえば地球の約半分が守備範囲
なのだ。  

■■そのフォートルイス基地を、「訓練のみではなく、住宅・修理
施設・演習場などのインフラ、そして兵士たちの生活の質の向上の
ために十分でなく、そのために座間に移したい」というのが米側の
、今回の意向である。 座間がなぜフォートルイスよりもいいのか
、については米・日両方の当事者とも黙して語らない。 そこで邪
推が起こる、「座間の場所的利便性よりも、米軍の司令部が日本に
あるということ自体が重要らしい」と。

■■過去わが自衛隊は、最新兵器を使用する本格的な軍事演習をず
っとフォートルイス演習場で、米軍と共同で実施してきた。ボクの
親戚の若い自衛隊員も、毎年ミサイルの発射演習のためフォートル
イスへ行っているらしい。 これを俗な例えで言えば次ぎのように
なる。

■■長年、恋人の日本女性がフォートルイスの男友達の家へやって
来て狎れ親しんだ。もう年月も経つから、米国のボーイフレンドも
座間の女性宅に来て「押かけ亭主」として同居したいと思う。そう
すれば、二人の間柄が世間に認知してもらえるし、女性の両親に否
応は無いハズだ」というわけである。先方男性側の理屈はじゅうぶ
ん成り立っている。

 ところが女性の家族の方はそうもいかない。「親しくし、身を守
ってもらたのは感謝するが、それは相手側青年の勝手な好意であり
、こちらとして身を許すつもりは無かった」というのが、いまの日
本の立場である。 相手にすれば、「そんな勝手な話などあるハズ
がない」というわけだ。 だから小泉首相は、今回の米国のトラン
スホーメーションこと、座間移転には返事のしようもない、「困っ
た」の連続である。

■■いうまでもなく、在日米軍の存在理由は「日本国の安全に寄与
し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため
、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施
設及び区域を使用することを許される」というのが日米安保条約6
条である。 その範囲は96年に日米両国首脳が署名した日米安保
共同宣言で「アジア太平洋地域」と決められている。

■■さらにその地域を拡大したのが、97年に合意した「日米防衛
協力の指針」である。 それによれば、日本の平和と安定に重要な
影響を与える事態を「周辺事態」と呼び、わが政府はそれを「地理
的なものでなく、事態の性質に着目したもの」と説明し、だいぶ柔
軟に、なし崩し的にイラク戦争への協力まで拡大してきた。ところ
がここで、もし第1軍司令部の「座間移転」が実現すれば、その範囲
は地球の半分をカバーすることになってしまう。 第1軍団司令部
の作戦は、わが政府のいう「周辺事態」の範囲にとどまる、とはと
うぜん考えられないからだ。

■■すでに在日米軍基地からアフガニスタンやイラクにも部隊が派
遣されている現実があり、安保条約6条がすっかり形がい化してし
まったとの指摘もある。 が、果たしてそうした諦めと成行きだけ
でいいのかどうか。

■■最近の政治風潮では、何でもカでも拡大解釈が流行り、「自衛
隊」とは名のみ、中東までわが軍隊が出兵する時代になっている。
行きがかり上やむを得ないと言うべきか、かっての吉田・岸内閣の
「安保タダ乗り」論のツケが回ってきて、えらく高いものについて
しまった、と言うべきだろうか。

■■しかし今回の「第1軍司令部座間移転」だけはゼヒとも止めね
ばならない。 さもなければ、少なくとも今後百年くらい続くであ
ろうイスラム圏と米国の争いに、日本は、つねに米軍の一部と見な
されることになるからである。

■■ならば、米国にどう言って今度の「座間移転」を断るか、理由
は一つしか無い。 「戦争放棄を謳った憲法に違反する」という国
民感情を拠り所にするしかない。 政治家にとって「国民感情」と
いうのは便利のいいものだ。 こうした計量できないが激しく曖昧
な国民的情緒を利用して、中国や韓国は日本からの援助を強要し、
ロシアは北方四島を日本に返さない。 

■■賢い外国の為政者たちは自国の国民感情をうまく利用するため
「国民感情」の醸成すら謀っている。 例えば米国にもそのフシが
ある。ネオコンとリアリストとの反発を誇大にPRしたり、CIA
と国防部による真相不明の戦いを外交政策に利用している。 とこ
ろが日本の与党指導者たちは、いわゆる「護憲派」を敵に回し、叩
こうとするばかりで、「国民感情」派として有効に利用しようとし
ない。「私たち与党は貴方の意向に添いたいのだが、国民世論が強
硬でどうにもならない」といえば、うまく遁れられることが外交で
は多いものだ。
 いまこそ、「座間移転」問題のときこそ野党、すなわち「護憲政党
」をうまく利用して、米国に対して「せっかくですが…」と、断る
口実にすればいいのである。失礼ながら弱小国のフィリピンですら
、米軍のクラーク基地、スービック海軍基地を、世論を理由に米国
から取返したではないか。 それを、「米国に盾突けばたいへんな
ことになる。日露戦争のあと、米英を裏切ったから大東亜戦争で痛
め付けられたではないか」などと、「風が吹けば桶屋が儲かる」の
類いの、古い理屈をつける自称外交評論家も、わが国にはたくさん
居るが、こちらから喧嘩を吹っかけたり、石油資源が見付かったり
しない限り、米国が過去の恩恵をかさに着て、わが日本に戦争をし
かけたりする心配はない。                                                      

■■それよりも問題なのは、あまりにも親し過ぎる様子を誇大広告
した小泉さんの、ブッシュさんとの間柄をどう処置するかだ。換言
すれば、どのようにして小泉さんがブッシュさんに「手のひらを返
す」か、その具体的な方法である。
 大統領選に勝とうが負けようが、いまやブッシュさんが「負け犬
」であることは明瞭といえる。 考えてみると、米国という国には
恩義はあっても、ブッシュさんには、わが日本も小泉さんも恩義が
無い。 むしろこちらが恩義の貸越になっていて、負け犬ブシュ政
権と共に墓穴を掘るべき義理はさらさら無い。ただ、小泉さんが個
人的に、とうぶんの間ブッシュさんに体裁が悪いだけである。
 ならばどうするか。

■■私案では、郵政民営を否決されたとかの理由でもいいから、こ
こでいちど小泉さんが首相の座を降りることだ。そのあと後継首相
がどんな対米政策を採用するかは自由である。 シラク寄りや中国
寄りで無くてもいい、ただ「座間移転」だけは勘弁してもらうこと
だ。国民感情が許さぬから、と言えばそれで済むことである。

■■「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という古い諺がある。小泉
さんが政権からいったん離れても、破廉恥犯による辞職でもない限
り、もう一度政権にありつく機会はじゅうぶんある。
 近年の軽量首相たちは、いったん政権を投げ出せばみな過去の人
になってしまうが、第何次内閣というのを内閣改造でなく造った大
物首相は過去にいくらでも居る。憲法でそれを禁止しているワケで
はさらさらない。 ブッシュさんが居なくなった後で、小泉さんが
もう一度、日本国首相に返り咲けばいのである。 今ごろの歴代首
相のなかでは、小泉さんは比較的に骨のある首相と評価してもいい。
─────────────────────────────────
◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] 2004年10月22日号  
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事、は関連Webへ → http://www.609studio.com
─────────────────────────────────
イ・マラホフ州知事とロスネプチ社長との面談

 原油採取分野に従事している職員たちの福祉問題を巡ってサハリ
ン州知事イ・マラホフ氏とロスネプチ社エス・ボグダンチコフ社長
が面談を行った。エス・ボグダンチコフ社長によると州知事の署名
を得て審議中に住宅と名づけられた政策(5年間の実行期間)予算
(14億ルーブル)の半分はロスネプチ社が負担することになって
おり、来年オハとノグリキで住宅が建設される予定である。又、5
年のうち、僻地の住民をオハとノグリキを含めて北の島々の大きい
街に移住させることも検討している。そして、ノグリキに新しい病
院が建てられ来月オープンする。

暖房季節スタート

 10月初めからシネゴルスクとベレズニャキ部落のアパートにも
温水が供給されはじめ、今はユジノサハリンスク市でも暖房季節が
再び戻ってきた。現在熱供給システムは正常に動いている。

道路修理に資金割当

 ロシア連邦政府は、来年のサハリン州内道路建設と修理整備資金
として2億8600万ルーブルを支援することにした。サハリン州
政府も3400万ルーブルを出す。この資金で南クリルとゴロフニ
ノ間自動車道、ユジノサハリンスク−オハ−モスカリヴォ自動車道
路間にあるアイダ川に橋を建設する予定である。又、来年にはネベ
リスク−ホルムスク−ウゴレゴルスク−ボスィニャコボ自動車道路
間のソワ川、オゴンキ−ネベリスク自動車道路間のネクラソブカ川
に橋が完成する。政府はサハリン及びクリルの道路の建設や修理整
備のために2億ルーブルの追加予算を拠出することを決めている。

知事ペルヴォマイスク村訪問

 先週スミルヌイフ区域のペルヴォマイスク村を訪ね、農村学校と
スポーツ施設の現場をみたマラホフ知事は、当校に校舎修理とスポ
ーツ用具購入費として95万ルーブルを支援することにした。校長
のエス・セムキナさんによると、当校は1967年以来一度も校舎
の修理を行ったことがないとのことである。

州議員28人当選

 サハリン州選挙委員会の発表によると、10月10日のサハリン
とクリルで行われた州議員選挙の結果、第4期州議員は我が祖国は
サハリンとクリルブロクから4人、エジナヤロシアとロシア連邦共
産党から各3人、ロシア自由民主党から2人、すばらしい生活と社
会公定性のためにのブロクとロシア年金党から各1人、7選挙区か
ら各2人の14人、合計28人の州議員が誕生したのである。

サハリン州国境地帯と国境規則について

(サハリン州政府決定2004年8月3日付No.116−パを略した
もの)
 1993年4月1日付「ロシア連邦国境について」第4730−
1号とロシア連邦法第16条(2003年6月30日付連邦法第1
96−の修正)により、サハリン州政府はロシア連邦国境保護の条
件として次のように決める。

1.コルサコフ、アニワ、ホルムスク、ネベリスク、トマリ、ウゴ
レゴルスク、スミルヌイフ、アレクサンドロフスク−サハリンスキ
、オハ、ノグリキ、ポロナイスク、マカロフ、ドリンスク等の区域
、そして南と北クリル全体地域領内でロシア連邦海岸線から5キロ
メートル内の地帯を国境地帯とする。しかし、次の地域は除外する。

2.
 1−1 コルサコフの居住点、コルサコフ区域のプリゴロドノエ
、ホルムスク、ネベリスク、オハ、ノグリキ、アニワ、ポロナイス
ク、マカロフ、アレクサンドロフスク−サハリンスキ、ウゴレゴル
スク、ウゴレゴルスク区域のシャフチョルスク、トマリ市の行政地
域。
 1−2 <サハリン−1> <サハリン−2>プロジェクトによ
る原油ガス管建設地域は工事が終わるまで。
 1−3 住民たちの大衆休憩場であるアニワ区域のペスチャノエ
村からタラナイ村までの区間、コルサコフ区域のスヴォボヅヌイ岬
からオホーツクコエ村までの沿岸地域。
3. サハリン州地域に隣接しているロシア連邦内海全水域に国
境規則を当てはめる。

国境地帯通行証発給手続き

  サハリン州に居住しないロシア連邦国民と外国人、無国籍人は国
境地帯通行証発給のために次のような書類を提出しなければいけな
い。

*パスポート又は身分証明証
*入国ビザ(無ビザ協定を結んでいる国の国民とロシア連邦に居住
している無国籍者は除外)
*移動カード(ロシア連邦に永住している外国人と無国籍者は除外)
*通行証発給申請書
*通行証発給所 
#ユジノサハリンスク空港経由−2067号軍部隊管理局
#オハ、ノグリキ空港経由−本住民居住地国境守備機関代表達
#サフチョルスク空港経由−ウゴレゴルスク国境守備隊
#ジョナリノエ空港経由−2067号軍部隊管理局、オハ又はノグ
リキ国境機関代表たち、アレクサンドロフスクーサハリンスキ国境
統制部、ウゴレゴルスク国境警備隊
#ホルムスク港経由−ホルムスク国境管理局、或いは2067号軍
部隊管理局
#コルサコフ港経由−コルサコフ国境管理局或いは2067号軍部
隊管理局

国境地帯であるクリル島への通行証はサハリン島空港及び港を経由
してモネロン、チュルレニ島々、他特別の場合、ユジノサハリンス
ク地域別国境管理局ロシア連邦安全保障局が発給する。

国内パスポートでCIS地域訪問不可能

 2005年1月1日からロシア国民は国内パスポートでCIS国
家を訪問することはできなくなる。来年正月からロシアとCIS国
家間は無ビザで出入国できるが、その際証明書として有効なのは外
国用のパスポートのみである。即ち、今まで使われていた国内用パ
スポートや出生証明書、その他機関企業発行の証明書などは使えな
くなる。本措置は不法移動とテロ防止のために講じられたものであ
る。ロシア連邦外務省はCIS地域訪問予定者は早めに海外用パス
ポートの発給を受けるように促している。

あれこれ

「学校放火事件」
 先週、ホルムスク区域のポリャコフ部落にある学校に火事が発生
したが、グスト市長は放火事件とみて調べている。学校は全焼し、
30人の生徒たちは他の学校に転校を余儀なくされている。

「新診療所オープン」
 ホルムスク市立小児科診療所は狭く又建物の老化も酷く数十年間
苦労してきた。年間7千人ほどの子供の診療を行っている同病院に
<サハリンー21世紀>ファンドから巨額の支援を受けて大々的な
修理を行い、来月の7日には新しくなった姿で生まれ変わる予定。
─────────────────────────────────
◆寄稿 [サハリン悲歌  第二章  3]               金 里博
─────────────────────────────────
 『タコ部屋』の話をしよう。
十畳ほどの部屋に二十五人だよ!
分かるか? それが『タコ部屋』だよ−

記録は全て隠滅・焼却されていて
殆ど残っていない
微かに、しかし歴々と残っているのは
老躯の
骨髄の中
血の中
筋肉と筋の中
そして
口と唇と舌の中−

「昭和18年、23歳の時連行されたよ…
親戚の家からの帰り道
二〜三人が両手両肩を押さえられ…
故郷は慶尚北道安東…」
李鐘洛(イ ジョンナク)は重苦しく語る。

「今でも日本人を恨んでいる。
日本人をガツガツ食ってしまいたい。
日本に飛んでいって
墓を暴き
骨を両足で踏んで粉々にしても
気は収まらないよ…

毎日毎日十五時間も
深い炭坑追い立てられ
地獄の牛馬だった
少しの金と貯金通帳を貰ったが
貯金は勝手に下ろせなかった…」

人は
仏の心と鬼の心を併せ持っているという
仏の心は
萬年の氷河すら溶かし
暗黒を白昼に変え
泰山すら平地にするという

鬼の心は
溶けた鉄をも飲み下し
人間を
巨竜のように喰らいかみ砕き
官能を感じながら血を啜るという。

家に帰れば、
家族には
仏の心と顔を見せながら
同じ人間の朝鮮人に対しては
鬼さながら、いや、鬼以上の
暴虐と虐待と抑圧と横暴を
数限りなく繰り返した大日本帝国は
滅んだが
根は今も健在であり
尻尾は落ちていない。

『タコ部屋』。
今では
大きな博物館に行っても見るのが難しいが
在日朝鮮人・韓国人たちには
サハリンの韓人たちには
明らかに存在していたものであり
もはや歴史も隠れ蓑を剥ぎ取られている。

だからこそ李鐘洛は
「日本人を食ってしまいたいよ」と
吐いて憚らず
その恨みを抱いたまま
韓国へ帰国した一年後に「卒」した。

日本は
いつになれば
どのような時代になれば
仏になるのか… 
─────────────────────────────────
◆20代のぼやき:「インドへ行きます 4」            有木優一 
─────────────────────────────────
  今、シナリオ制作に苦戦している。
  先日、インドへ行くのが12月半ばになったということもあり、
一度全く別の作品を作ってみることになった。以前から、取り上げ
てみたいという気持ちを持っていた企画であるために、インドへ行
くまでの1ヶ月間で完結させるつもりはさらさらない。しかし、来
年の春に短編作品として公開する場まで設けられては、やるしかな
いだろう。そこで、企画を練っていた。取材先の考えに基づく必要
なカットを想定し、面白味のある構成を模索する。作品のシナリオ
が、順調に進んでいった。

 そして、大阪ロケ。本筋に導入する形で必要な映像を撮りに行っ
たのだ。まず、朝の通勤ラッシュ。AM7:50大阪駅に三脚を備
え、カメラを回す。以前に、あるカメラマンのロケに同行させても
らったことがある。そのとき、彼は「カメラマンの仕事はまるで土
建屋やで」と僕に愚痴をこぼしていた。その愚痴のせいか、僕はそ
の日「土建屋精神」でカメラを回し続けていた。そのせいか、周り
を全く気にしないで撮影することが出来た。ある女子高校生は、夜
の道頓堀の橋の真ん中で三脚を広げて水面に映るネオンを撮影して
いる僕に向かって、「度胸あるなぁ」なんて言葉を投げかけていた
。しかし、一つの作品に仕上げる上でそれらは必ず必要となってく
る映像なのだと確信出来ていることが、周りを気にせず撮影出来た
一番の要因だったのかもしれない。

 この気持ちは、僕自身に何を、どういう形で伝えればいいのか、
そして、伝えられるのか、核心が持てているから生まれたのだろう
。しかし、インドの場合はどうだろう。当然、何を、どういう形で
伝えればいいのかは、はっきりしているが、どういう形で伝えられ
るのか、がはっきりしない。現場の雰囲気や撮影対象を知らないた
めになかなか確信を持つことが出来ないのだ。だが、少なくとも僕
が伝えたいことを表現する上で、今回の大阪ロケように必要な映像
がインドの作品にもあることは確かなのだ。それを見つけるために
今は確信を持てないシナリオを書く。

そう、ただ、ひたすら熟考あるのみ。
─────────────────────────────────
◆[編集長から]              Michio Katayama
─────────────────────────────────
 23号。台風の話です。各地に大きな被害をもたらして・・・。大
勢の命を奪って・・。異常気象とか、太平洋の水温が高いとか、温暖
化とかの分析が盛んですが、筆者には「地球が怒っている」ように見
えるのですが。驕る人間に対して。・・・とここまで書いたら、新潟
を中心に大地震。死者24人を超えるとか。
 両被災地の皆さんにお見舞いを申し上げます。

◆第二次小泉内閣の閣僚のお粗末さが目立ってきた。答弁にしどろも
どろの法相。外相の沖縄での墜落ヘリの操縦士は「上手」と。
 認識の甘さか、単なる馬鹿か。国民の神経を逆なでする政治家が多
い。こんなやからに限って「日ごろは威張って、選挙でペコペコ」
 大物がいなくなった・・・。

◆ 米国務長官「極東条項の解釈変更は求めず」と。日本側だけが大
騒ぎなのか。それとも何か含みがあるのか。もしかして「既に日本側
が申し入れた」?なにしろ大統領選の最中。子分小泉としては黙っち
ゃおれん。

◆サマワの自衛隊駐屯地にロケット砲。「まだまだ非戦闘地域」です。
なにしろ「相手が一方的に攻撃しかけただけなので」

 地震の被災地に自衛隊の救援。こんなときは頼もしいのだが。
─────────────────────────────────
発行     2003年10月26日   No.187
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
              MailuX配信システム         ID:MM3E1B97842E020
                Macky!                    ID:609studio
e-mail        info@609studio.com
website    http://www.609studio.com
投稿      http://www.609studio.com 掲示板へ
購読 購読解除は websiteへ

           ◇禁・無断転載◇
─────────────────────────────────

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。