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タイトル:609studio No.181◆現代時評:[戦い終わって…オリンピックの行方]  2004/09/07


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                              2004/9/7 No.181
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◆現代時評:[戦い終わって…オリンピックの行方]      ken

◆セ・コリョ新聞ダイジェスト版:2004年9月3日号

◆寄稿 [サハリン悲歌  第一章 2]        金 里博

◆寄稿 サンチャゴレポート17:[チレニスモはおもしろい]      
                                                 塩田悦三郎
                         
◆20代のぼやき:[キャッチ・アンド・ノーリリース] 有木優一

◆編集長から:[この1週間]

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◆現代時評 :[戦い終わって…オリンピックの行方]      ken
   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
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◆◆サンスポ 2004.9.02  メダルを獲得した国・地域は75で、前
回シドニー大会の80、96年アトランタ大会の79カ国・地域を下
回った。米国は金メダル35個を獲得し、3大会連続トップと面目は
保ったが、アトランタの44、シドニーの40に及ばず、減少傾向に
歯止めをかけられなかった。一方、08年北京五輪を控える中国は金
メダル32個と米国に肉薄。前回の3位から2位に上昇した。各競技
でレベルアップしており、4年後は米国を抜いて1位になる可能性も
ある。
 
■■オリンピックは終わった。勝負ごとの嫌いなボクも、周囲の熱気
にあふられて深夜に起きてTVにかぶり付き、お蔭で昼寝るという日が
二週間も続いた。 最初、小国のギリシャが果たして開催日までに設
備が出来あがるのだろうかと、心配の声も挙がっていたようだが、難
なくこなして、まずは目出度くお開きとなった。

■■例によってゴシップ種が飛び交い、ハプニングの続出だったが、
それがまたオリンピックの面白いところでもある。 

■■最初、五輪再興の目的は、スポーツ教育を通した、青少年の精神
・肉体的向上だった。「オリンピックは、高潔な理想と純粋な道徳を
学ぶ場となり得る。しかしそれは君らが、肉体が達成するものと同じ
レベルにまで、道義心と公平無私な思想を高めることが出来たらの話
だ。未来は君らにかかっている」と、107年前にクーベルタン男爵
は言った。

■■しかしいまや時代は変わり、カネが飛び交い、アマとプロの境目
は廃止された。日本では「それがいけない」という人達も多いが、プ
ロが侵入して以来、オリンピックはより面白くなった、と、ボクは思
っている。 その適例が「長島野球チームの負け」である。 カネに
飽かした職業球団の精鋭を集め、「間違いなく金メダル」と思ってア
テネまで遠征したものの、いわば草野球のオーストラリアに、あっけ
なく2度も負けてしまった。 ボクはこの一事を見て、アマ・プロの
区別をなくしたのはじつによかったと思い、また野球には実力以外に
偶然というものが存在するから面白いと、今更ながら思わされた。 

■■所詮、スポーツはスポーツ、偶然で勝ったり負けたりする、富籤
のようなのがいいと、かねがねボクは思っている。ところが生真面目
な大方の日本人はそうは考えない。 ナンでもすべて道徳とか訓練と
かといった方向へ持って行きたがる。そこから柔道、剣道、茶道、華
道など、いわゆる「ナンとか道(どう)」が生まれる。つまりアマチュ
アらしく精神主義なのがいいとし、オカネが絡むのはいけないとする
。そのうち、オリンピック道というのが生まれるかも知れない。それ
でいて、茶道や華道が金銭の泥に塗れているのはどうしたことか。精
神力や、研鑚した結果としての技術力で勝敗するのも悪くはないが、
スポーツはそれ以前に楽しむことが大事だ。

■■偶然性やハプニングで、観衆をして楽しませてくれるオリンピッ
クは面白い。アマチュアは所詮カネ塗れの職業集団には勝てぬと誤解
した結果のプロ排除だったが、そのプロ中のプロである「長島チーム
」が、アマチュアと侮っていた豪州チームに負けたのだから、ボクは
バンザイといいたいのだ。

■■別に野球だけでなくても、その他ほとんどの種目別競技で、仮に
もオリンピックに出場しようかというばあい、多かれ少なかれ国家社
会丸抱えのプロが出場していて、それはキューバの野球や、ピンポン
の中国選手だけではない。
 できれば相撲などもオリンピックに加えてもらって、世界中あちこ
ちから出場させれば、野球の「長島チーム敗北」や、かってのへーシ
ングの柔道のように、相撲日本の絶対優位など消し飛んでしまうだろ
う。じじつ、近ごろの蒙古力士の活躍ぶりを見ているとそう思えてく
る。

■■やみくもの精神主義というものを、とにかくボクは好まない。い
い例がマラソンである。 他の種目は見ていて面白いが、オリンピッ
クのマラソンだけはさっぱり面白くない。それはまさしく「死闘の限
り」を尽くしてい、むかしローマかどこかで、奴隷を囲いの中へ入れ
て死ぬまで闘わせたというのと変らない。
 たとい150cmのわが野口選手が優勝したからといっても、あの激
しい争いを見て楽しいというのは、典型的なサディズムではなかろう
か。ある程度走って、体力が限度に近くなれば遠慮なく脱落する方が
、見ていて清々しい。

■■むかし子供のころ、オリンピックのマラソンで孫基禎・南昇龍選
手がそれぞれ一位、三位を〆たとき、「マラソンの日本」を喧伝された
ことがある。 歯を食いしばって走り通した、あのような日韓共通の
頑張り精神は、その後の硫黄島、アッツ島、ガダルカナル、ビルマな
どにおける玉砕の精神に繋がるものとボクは思う。 男子110メー
トル・ハードルと女子1万メートルで、中国選手が金メダルを取った
のも似たような頑張り精神か、もしくは国家的プレッシュアの産物に
違いなく、ボクなどはいま一つ積極的に賛美する気にはなれない。

■■ところがそうした種目に限ってわが日本のアナウンサー諸君が金
切り声を張り上げて実況放送する。出発前に、ああいった風の放送を
するよう命ぜられてきたのか、あるいは、彼らアナウンサーが先に立
って自分自身が精神興奮剤でも飲んできたのではないか、と思いたく
なる。 うわずった大声で「日本勝ちました、金メダルは間違いあり
ません」と、何度もなんども俄鳴り立てる、あの無神経さに激しい嫌
悪感を覚えるのはボクのみでは無かったろう。
「日本勝った」の連呼は、日本への激しいナショナリズムを示す以外
の何物でもなく、いまや時代遅れの行き過ぎた愛国心といえよう。

■■これからのオリンピックは、国家間の勝ち負けを言わぬ方向へ転
向すべきでないかと思う。今ごろオリンピックで国家の覇を競い、国
別に得たメダルの数を賛美するのは、米国、ロシア、中国、日本と、
この地球世界をいまなお争いの坩堝と化せしめている一連の国家主義
的国家群である。 国境を外すのに成功したEU諸国にとっては、いま
やオリンピックに於ける国の勝ち負けなどは大したことで無くなって
いる。
 時代は進み、スポーツの世界もグローバル化している。ハンマー投
げの室伏選手などは、ルーマニアの国旗のもとで金メダルを貰っても
よかったのでないだろうか。

■■オリンピックのムードを盛り上げるためには、アナウンサーのあ
あした金切り声の実況報道が向いているのかも知れぬが、それにして
もいま少し抑制を加えて欲しかった。 あれでは、博打に血道をあげ
る底辺庶民のデモみたいで、静謐な社会の持つ美しさに対する配慮が
皆無であった。 たかがスポーツ、金切り声の連続は見苦しい。

■■「1896年の第1回アテネ大会から107年の歴史の間に、近
代五輪は果たして、クーベルタンが目指したものに進化したのだろう
か」と、オリンピックの堕落を論ずる人は多いが、慨嘆する前に「勝
つことでなく、参加することに意義がある」と言ったクーベルタンの
言葉も思い起こす必要があろう。

■■男子マラソンで首位独走中のリマ(ブラジル)を妨害したアイル
ランド人の元司祭。 この人は、ひょっとするとオリンピックのこう
した問題点に対する抗議の意思表示のつもりではなかったか、とボク
などは思っている。

■■女子シンクロのロシアチームには、ロシア・バレエを思わせる優
美さ・美しさがあった。アメリカチームは、ディズニーランドの明る
さ・楽しさが横溢していた。ところが日本チームは、フジヤマ・武士
道といった日本への印象におもねった演技で、リズム感が無かった。
あれでは所詮銀メダルが限度である。日本を表に出し、日本を世界に
売り出そうとする卑俗なナショナリズムの演出は頂けない。

■■今度のアテネ・オリンピックをみていると、走り競技に黒人選手
が圧倒的な強みを見せた反面、陸上のある種の範囲では白人選手ばか
りで、有色人の顔が見えなかった。高価なスポーツクラブで暇に任せ
て練習する競技では、貧乏な有色人はお呼びでない、ということらし
かった。こうしたプチブル的種目と、卓球やマラソンのように貧乏人
向きのスポーツがあるというのは、見ていてナンとかならぬものかと
、聊かの焦燥感を覚えさされた。 米国、オーストラリア、日本の金
メダルの数は、つまりは金銭的余裕の産物かも知れない。

■■次ぎのオリンピックからは野球とソフトボールを外す、と伝えら
れるが、ついでにIOCスキャンダルも廃止してほしい。
 大阪が立候補して北京に負けた、先きのオリンピック開催地争奪合
戦では、ボクの知人が誘致委員長を命じられていた。彼の話によれば
、大阪市長が提示した誘致費用は、中国のそれの十分の一にも満たな
かったそうである。巷間伝えられるところでは、それでも全世界で十
八票は取れると計算していたが、フタを開けて見ると六票しか取れず
、なおかつ、「自分は大阪に投票した」と称する委員が十二人は居た
、という。まさにカネまみれのオリンピックである。

■■オリンピックでどうしても排除できぬのがある、ドーピングだ。
 いまの注射によるドーピングは取締れそうだが、さらに進んだ遺伝
子組み込みによる体質改造が、技術的にほぼ完成に近付いたというか
ら、もう致し方ない。 遺伝子組込みを禁止すべき方法は無い。
 いっそ、すべてを自由化すべきかもしれない。プロの参入を許した
と同じように…。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版] 2004年9月3日号  
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事、は関連Webへ → http://www.609studio.com
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社会団体連合問題で葛藤続く

 最近、サハリン韓人関連社会団体の連合問題をめぐって、韓人会と
他団体との間に意見が合わず対立が続いている。先月27日もサハリ
ン州韓人協会事務所で関係者たちが集まって議論したが、朴ヘリョン
現韓人会長によると、一部の人達が朴ヘリョン会長を連合体の成立に
おける障害物と指摘し、退陣を要求しているが、朴・ヘリョン会長は
激しく反発しており、そのような要求を受け入れる気は全くないと明
確に伝えたとのこと。韓国赤十字社は諸団体間の葛藤を招いている連
合体組織には難色を示しており、今の状態が続くのなら来年からサハ
リンへの支援の窓口を韓人会一つに絞ると、現韓人会組織を支持する
方針を明らかにしていると朴ヘリョン会長は伝えている。

9月3日−終戦日

 9月3日、日本軍国主義者たちから南部サハリンとクリルが解放さ
れた日であり、第2次世界大戦の終戦日である。終戦59周年を迎え
、これと関連して州中央都市で多様な記念行事が予定されている。

州知事、社会保険ファンド副主任と面談

 イ・マラホフサハリン州知事がロシア連邦社会保険ファンドのヴェ
・リンニク副主任とサハリン及びクリル列島の社会保障問題について
話し合ったことがわかった。主な内容は児童たちと戦争参加者など社
会的経済的に疎外されている住民たちの休養問題。知事はサービス対
象の拡大とサービス内容の改善の必要性を述べた後、政府と社会保険
ファンドからの支援の必要性を訴えた。又、リンニク副主任は国民健
康向上のためのプログラムは一時的事業でないことを強調した上、サ
ハリン州に対する支援を検討するとの肯定的反応を示した。

ロシア移住140周年記念学術大会

 ロシアへの韓人移住140周年を記念して、ハバロフスク行政部と
ハバロフスク韓人会、韓国壇国大学が共同で学術大会<ロシア韓人移
住史と地位>を、8月16日から二日間ハバロフスク国立教育大学で
行った。同大会で壇国大学の金・ソンユン教授は「在露韓人の移住と
適応、そして韓露関係発展への寄与」というテーマで講演を行い、ユ
ジノサハリンスク市古文書保管局のア・クジンさんは「ロシア極東地
域への韓人移住と関連した史料及び編纂」というテーマで発表を行っ
た。

新しいアパート団地建設

 ユジノサハリンスク市の東北地域に<エデム>という名つけた新ア
パート団地建設が始まって話題を呼んでいる。サハリン・インジュイ
ニリング設計・建築会社が設計建設中の同団地は、6階建て10棟と
9階建て2棟の合計11棟のもので地震対策も徹底するほか、年中の
冷温水供給設備、下水道網などに新技術工程を導入しており、昼夜間
カメラ警備システム、敷地内の現代式スパ、カフェ、地下駐車場、サ
ウナなどを備えた最新設計となっているとのことである。

社会問題

 2004年6月1日、現在サハリン総人口は53万5700人。年初
より2、420人が減少しているが、中の1、152人は移住者である
。2004年1〜5月間、出生者数は2、446人(昨年同時期比96
%)、死亡者数3、723人(昨年同時期比101.9%)、結婚届け
数は1、238件(昨年同時期比−10%)、離婚は1、263件(昨
年同時期比20.4%)である。

あれこれ

「不法漁労摘発」
 ホルムスク区域警察は6月〜7月の2カ月だけでも150件の不法漁
労を摘発した。同期間中の不法漁労量はマス310KGに及ぶ。ホルム
スク警察は海岸と川沿いのみならずホルムスク−ユジノサハリンスク間
の道路も監視している。マスの産卵期が終わり鮭の産卵期が入ろうとし
ている今、不法漁労取締りを一層強化する方針である。

「青年たちが自発的に」
 チェーホフ市青年たちが元製紙工場内のスポーツ室を自発的に修理整
備することになった。青年たちの提案をチェーホフ食品生産コンビナー
ト指導部が支持し、7500ルーブルを支援することを決めた。又地方
実業家は安い価格で資材を販売するなどの協力を約束している。

「ドリンスク市成立120周年記念」
 先週末ドリンスク市で都市成立120周年を祝って、詩朗読会、ゲー
ム、舞踊など多様な行事が開かれた。又、「私達の青春時代」という写
真展示会が開かれ、観覧客は多くの同郷人に会う機会を得た。
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◆寄稿 [サハリン悲歌  第一章 2]                金 里博
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何故なのか?
ようやく、サハリンが語り始め
老人達が語り始め
閉じられた歴史が自ら開き
青年たちが考古し考現する−

「人類の憧れ」
「労働者階級の祖国」
「民族解放運動の擁護者」
「反帝国主義・反侵略・反戦争の城塞」
それら全ての
頭脳であり
司令部だった
おお、音をたて崩壊したソ連よ!
お前にも罪が有る
お前にも罪が有るんだ!

「日本人と区別がつかない!」
「日本のスパイがいる!」と
朝鮮人を
家畜のように
いや、家畜以下に扱い
中央アジアの広漠たる草原に
強制移送させ
「生きるのも、死ぬのも自由だ!」と曰った
おお、スターリンよ
汝に罪が有る
汝にも罪が有るんだ!

久しく、久しく
朝鮮語と朝鮮史と朝鮮地理・風土は
押さえられ、押さえられ
虫の息で残ったのは
変えられなかった朝鮮人顔と
変えたくなかった姓と
骨の髄まで染みこんでいた望郷の情と
改めたくなかった生活習慣と美風良俗だけ!

サハリンは遠い
玄界灘を渡ればなお遠い。
ウラジオストックから
「積み出せば」
少し楽だっただけの話だ。

「タバーリシチ」だって?
とんでもない!
ロシア語の複雑さ。
名詞の格変化単複各々六
形容詞の格変化もそれに従属の各々六
それでも
生きるために、生き延びるために
「タバーリシチ」と呼ばれたいために
故郷を思いつつ
置いてきた妻を思いつつ
我が子を思いつつ
祖国は
「赤」だと棄民し
日本は「日本国民ではない!」と
けんもほろろの知らぬ存ぜぬの終始だった。

今では
向学心と勤勉とで
多くのサハリンカレイスキーは
「ガスパジン」と呼ばれている。

日本の三十六年は確かに数億倍の地獄だったが
ソ連の三十六年もまた地獄だったのだ− 

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◆寄稿:サンチャゴレポート17「チレニスモはおもしろい」
                                               塩田悦三郎                         
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 「日本には日本語があり、チリにはチリ語がある」。きわめて分かり
易い文章である。しかし、チリではスペイン語が使われているのでこの
文章の内容は正しくない。チリ語というのはないが、チリ人だけが話す
スペイン語がある。これをチレニスモ(Chilenismo)という
。手許の西和辞典で「チレニスモ」を引くと、「チリのスペイン語の表
現(語法)」とある。今回は、「チレニスモ」の一部を紹介して皆様に
ちょっぴりチリ人になっていただこうと思います。

 来智して最初に出会う「チレニスモ」は、数え方ではないだろうか。
「一つ、二つ、三つ」をスペイン語では、「ウノ、ドス、トレス」とい
う。「チレニスモ」では「ウノ、ド、トレ」という。語尾の「ス」を省
略した簡潔な言い方だ。2千ペソ(ペソ=貨幣の単位)はドミル、3千
ペソはトレミルといえばいい。日本語で「ひー、ふー、みー」という数
え方があるが、それと似ている。ただ違うのは、「チレニスモ」は数え
方だけでなく、いろんな場面で語尾の「ス」の発音を省略することだ。

 スペイン語は英語と同様、名詞に単数複数の区分があり、複数は語尾
に“S”をつける。これが「チレニスモ」だと“S”が消えてしまい、
日本語と同じように単複同形となる。この点はたいへん親しみ易い。厳
密にいうとチリ人は“S”の代わりに気息音の“H”を発音していると
言われているが、なかなか聞き取ることができない。日本人にとって都
合のいい点は、他にもある。多くの日本人が英語の発音で苦労する“T
H”の発音は“S”でOKだし、“L”と“R”の区分も例外があるが
日本語の発音でも通用する。多くの西和辞典が、スペイン語の発音を発
音記号と並べてひらがなやカタカナで示している所以でもある。

 「わかりますか?」というのを「カチャイ?」という。これはどうも
英語の“Catch(理解する)”からきているようだ。欧米語を取り
入れると格好いいと思われる傾向は、この国にもあるようだ。しかし、
英語の動詞の原形(Catch)を少し変えてカチャール(Cacha
r)とし、スペイン語の通常の動詞と同じ様な活用をさせて使っている
のだからすばらしい。

 「チレニスモ」では、語尾に「ポ、プ、プエ」を付けることが多い。
「ポッポ、ポッポ」と軽快に聞こえ楽しい。日本語で語尾に、「ネ、サ
、ヨ」を多用した場合の聞き苦しさとは大違いだ。

 スペイン王立アカデミーの編纂によるスペイン語辞書には、600語
におよぶ「チレニスモ」が載っているという。チリ特有の言葉を「チレ
ニスモ」というならば、先住民の言語であるマプチェ語やイースター島
のラパヌイ語(パスクエンセ)も「チレニスモ」の仲間になるのかもし
れない。

 中南米で使われているスペイン語は、スペイン語の方言とも言われて
いる。そのなかでも我が「チレニスモ」は変わった存在だから、「方言
の方言」ということになる。正式にスペイン語を学んだ人からみれば、
チリの言葉は「悪い」とされているが、私のようにスペイン語=チリ語
の者にとってはそうは思えない。私の周囲には「きちんとしたスペイン
語」を学ぶように薦めるチリ人がいる。そう言われても、「チレニスモ
はおもしろい」からやめられない。
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◆20代のぼやき:「キャッチ・アンド・ノーリリース」   有木優一 
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 先日から、友人の誘いもあって、高校以来の釣りを始めた。ブルーギ
ルやブラックバスなど外来魚のリリース禁止を含む「滋賀県琵琶湖のレ
ジャー利用の適正化に関する条例」が2003年4月1日に施行されて
からは、始めての釣りだ。この条例に関して周知の通り、賛否両論があ
る。「バスフィッシングは、ブラックバスやブルーギルを釣ることを目
的としたスポーツ、リリース禁止はスポーツマンシップに反する。」と
いう意見や「子供と釣りに来ているのに目の前でブラックバスやブルー
ギルを殺して教育上いいものか。」と言う人もいる。この条例は琵琶湖
の固有種を保護することを目的に定められたものであるが、条例を反対
する人たちは、この条例の本当の意図が見えていないのではないだろう
か。

 まず、前者の意見の場合、「スポーツ」を正当化するために「リリー
スを禁止することよりも護岸工事を止めることの方が固有種の保護に効
果が見られる」などといい、その整備された湖岸でバスフィッシングを
「スポーツ」として楽しんでいる。確かに護岸工事は琵琶湖の生態系に
害を及ぼすだろう。しかし、ブラックバスも同様に害を及ぼしているた
め、両者共に「固有種の保護」に非協力的であることは間違いない。「
スポーツ」ではない漁師の方からすれば、両者大差ないのではないだろ
うか。

 また、子供の前で殺生する事に難点を示す釣り人には、では、なぜ子
供を連れて「釣り」に来るのかを問いたい。何かを伝えたくて連れてく
るのではないだろうか。リリースすることで動物愛護の精神、命の尊さ
を伝えたいのだろうか。そうすると、「釣り」をすること自体、動物を
釣針で傷つけている。「釣り」のどこに動物愛護の精神があるのだろう
。これは過剰な反応かもしれないが、漁師という仕事は殺生を繰り返す
極悪非道な仕事だ、と間接的に表現してはいないだろうか。

 これらリリース禁止に意義を申し立てる人たちの言い分は、漁業を生
業としている人たちにとっては精神的、物理的ともに死活問題だろう。

 ここに統計のデータがある。近畿農政局大津統計・情報センターが平
成16年5月25日に発表した平成15年度漁業・養殖業生産統計によ
ると、驚いたことにブラックバスの漁獲高も14年度と比べ半減してい
た。ブラックバスが減少することは好ましいことであるが、一概には喜
べない。琵琶湖の漁獲高が前年と比べて増加している魚類は17種中た
ったのウグイ・ワカサギの2種だったのだ。その原因も一概には言えな
いが、先に述べたことも、少なからず関係してくるだろう。

 僕は決して、護岸工事を進めながら、琵琶湖の固有種保護を訴えると
いう矛盾した県政を支持しているわけではない。僕は、ただ微力ながら
も漁師たちの力になりたいがため、リリースはしないのだ。 
─────────────────────────────────
◆[編集長から]              Michio Katayama
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 9月最初のメールマガジンです。暑さもあとしばらくです。

◆「視界ゼロ」。このほど小泉首相が北方領土視察というパフォーマ
ンスをした。本人はそれを言われてご機嫌斜めだったようだが。
 不幸にして国後島は見えなかったようだ。折からの悪天候で。ロシ
アの警備艇が「航海の安全を祈る」という信号旗を。よほどあちらの
ほうが余裕がある。小泉さんは「あっちのほうかね?」とレーダーを
覗き込む。
 あの人、方向音痴かね?

◆その北方領土視察だが、「日朝が閉塞状況の中での」突発的行動。
日朝がだめなら日露があるさ・・・。軽いのう、おぬしは。

◆韓国よ、お前もか。核開発疑惑?朝鮮半島核銀座?!!これで6カ
国協議の行方はますます不透明に。
 わが国の再軍備・憲法改定論者は勢いづく?「冬のソナタだのヨン
サマ」で浮かれておれないぞ!。

◆国際テロ頻発。ロシアでも。しかしふと疑問を感じる。ロシアは、
チェチェンで何をした。いや、しているのだと。何人が死んだのか?
チェチェンで・・・。イラクでも。そしてパレスチナでも。ロシア、
アメリカ、イスラエル、その軍事殺戮作戦がテロを生んだ?

◆チェチェンで何が行われているか?最近一冊の本を手にした。
「チェチェン やめられない戦争」という邦題。著者はアンナ・ポリ
トコフスカヤという女性ジャーナリスト。三浦みどり訳でニッポン放
送出版協会発行のものだ。
 チェチェンで何が行われているか?我々はそれも知らなければなら
ない。
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発行     2003年9月7日   No.181
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
配信          まぐまぐ配信システム       ID:0000052236
              MailuX配信システム         ID:MM3E1B97842E020
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