609studio　No.180◆現代時評:[軍靴の足音が聞こえてくる] 2004/08/31

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タイトル：609studio　No.180◆現代時評:[軍靴の足音が聞こえてくる] 2004/08/31

◇◆◇609 Studio　メール・マガジン◇◆◇ 　　　　　　　　　　　　　　　2004/8/31　No.180 【609 Studio 】メールマガジンは「現代社会を斬る！」をコンセプトに論説委員Ｋｅｎ氏の論説「現代時評」をはじめ、サハリン情報として、ロシア唯一の韓国語新聞サハリンの「セコリョ」ダイジェスト版、その他、寄稿記事など話題満載！　 URL ⇒ 　http://www.609studio.com ───────────────────────────────── 　　　　　　　　　　　◇◇◇from 609studio◇◇◇ 　　　　　　　　◆サハリン韓国語放送に応援メールを!◆ 　既報の通り、ロシアではじめての韓国語テレビ放送が始まりました。　少ないスタッフと資力土・日を除く毎日のラジオ放送と両立させる　ことは、至難の業です。読者の皆さんの励ましが何よりのスタミナ　源。応援メールをお送りください。　　　　　　　日本語の場合：info@609studio.com 　　韓国語・英語・ロシア語の場合：BokSoun@gtrk.sakhalin.su 　◇ ───────────◆◆◆ＩＮＤＥＸ◆◆◆─────────── ◆現代時評:[軍靴の足音が聞こえてくる]　　　ken ◆セ・コリョ新聞ダイジェスト版：２００４年８月２７日号 ◆寄稿　[サハリン悲歌　　第一章　①]　　　　　　　　金　里博 ◆寄稿サンチャゴレポート１６：[野良犬天国]　　　塩田悦三郎　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ◆２０代のぼやき：[華氏９１１]　　　　　　　　　　有木優一 ◆編集長から：[この１週間] ───────────────────────────────── ◆現代時評：[軍靴の足音が聞こえてくる]　　　ken 　　　Ｋｅｎ氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは　　　　　　info@609studio.com 　へ！ ───────────────────────────────── ◆◆アサヒコム　2004.8.22　防衛庁は、年末までの新たな防衛計画大綱策定に向け、現在の自衛隊法で「付随的任務」と位置づけている自衛隊の海外活動を「本来任務」に格上げし、陸自に国際活動の専門部隊をつくる方針を固めた。本来任務にした場合、これまで正当防衛に限定されてきた海外での武器使用権限も、「任務遂行」に必要な範囲に拡大することも検討しており、海外での武力行使を禁じた憲法との整合性も問題になりそうだ。 ◆◆アサヒコム　2004.8.24 小泉首相は、９月２１日に予定されているニューヨークでの国連総会での演説で、現在の憲法のまま、安全保障理事会の常任理事国入りをめざすと表明する方針を固めた。小泉首相は、常任理事国は国際紛争の解決に武力行使も求められる可能性があると見て現行憲法下では消極的な姿勢をとってきたが、自衛隊がイラクなどで国際貢献の実績を積み重ねてきたことから、方針転換に踏み切った。小泉首相が常任理事国への意欲を明確に示すのは初めてになる。 ■■ぼくの子供のころ満州事変が起こり、ついで荒木というハチ髭のいかめしい軍人が文部大臣に就任し、巷に軍服姿が急に目立つようになった。　子供心にも軍靴の足音が聞こえてきそうな雰囲気をひしひしと感じたものである。そして望まぬまま第２次大戦に突っ走った。それから七十数年が過ぎ、いままた軍靴の足音が聞こえてくる。ちょうど満州事変の前のように…。 ■■自衛隊の任務の見直しや専門部隊の創設は、新大綱策定に向けて庁内に設けられた「防衛力のあり方検討会議」でまとめた。自衛隊法では国土防衛などを「本来任務」とする一方、国連平和維持活動（ＰＫＯ）など海外活動については、国賓などの輸送や運動競技会への協力などと並んで、「任務遂行に支障を生じない限度」で実施する「付随的任務」と規定している。だが、イラク派遣など自衛隊の海外活動が拡大している現状を受けて、今後は恒常的に海外に展開することを想定。自衛隊法を改正し、「付随的」としてきた海外活動を「本来任務」に格上げする必要があるとしている。　格上げが実現した場合、海外派遣を専門にする「国際任務待機部隊」を陸自に新設。現状では部隊の派遣準備に半年ほどかかるため…。 ■■以上が、つい先日の新聞記事の内容である。　憲法９条の改正は困難なので、それにかわる方法を政府が具体化し始めた、ということだ。「国連待機部隊」という名目ならば憲法に抵触しない。　と、これは野党の親分小澤一郎氏が既にお墨付を出していて議会は問題無く通過する、もしくは議会に関係無く実行できるという目論見だろう。　チモール島へはすでに派兵しているし、それと同じ流儀で、こんどはオランダやスペインが帰ったあとのイラクへ、正々堂々と自衛隊、つまり日本軍隊を出動させ、ブッシュさんを助けようという筋書きに見える。 ■■ついでに、現在は原則として正当防衛に限られている部隊の武器使用権限も、拡大することを検討しているという。　「本来業務となれば、任務遂行を妨害された場合にも武器使用を認めるべきだ」との考え方で、いつでも武器を使用できるようにするのだから、控え気味だった自衛隊も、もう普通の軍隊と変わり無いことになる。　もともと自衛隊発足以来、半分骨抜きになっている憲法を、さらに骨抜きして、いわば「蛸の骨抜き」の憲法にしようとの魂胆である。ボクが「軍靴の足音が聞こえ、戦争が迫っている」というのも杞憂とは言えない。 ■■由来、わが国は荒唐無稽の理屈が堂々とまかり通る政治的風土がある。満州事変のとき、「満州は日本の生命線」という言葉が、いかにもほんとうらしそうに世論化された。地球上、他国の領土を勝手に自国の生命線に仕立て上げた例は無い。　それが、さもとうぜんであるかのように七十年前のわが国では罷り通った。 ■■いままた、国連のお墨付さえあれば外国での武器使用、つまり戦争しても構わないということにするというのだから、憲法第９条「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とは完全に背離してしまい、憲法違反もいいところだ。それが堂々とまかり通るのだから、「満州は日本の生命線」以上に不思議な政治的風土がいままた再現した。 ■■そうまでして自衛隊を海外の戦争に赴かせようというのだから、それなりのフルーツ、つまり米国からの反対給付があるハズで、それが「国連常任理事国」への昇格であると考えていい。　自衛隊の海外活動を、自衛隊法における「付随的任務」から「本来任務」に格上げするらしいと報道された、その僅か２日後に「現在の憲法のまま、安全保障理事会の常任理事国入りをめざす」と国連で小泉さんが演説する予定とのニュースが新聞に載ったところをみると、この２つのニュースは一対であって、自公二党、および民主が一つに纏まって「戦争参加」予備に踏みきった、と考えられる。 ■■しかもそれを報道した全国紙が、そうした事実を淡々として報じただけで、とうぜん起こすべき「憲法９条を守れ」の国民運動を起す気配すら見えぬのだから、これはもうマスコミ及び全国紙が政府とグルになっているとしかボクには見えない。　「満州は日本の生命線」という、軍および政府のプロパガンダに乗った当時のアサヒや毎日と同じ状態である。 ■■なぜマスコミがそう簡単に政府や政治家たちに同調してしまったのか、そこのところがボクにはいま一つ分からない。「社会の木鐸」と言われた昔ほどに無いにしても、大新聞などはいまなおいくらか世論リーダーとしての誇りを持っているものと、つい先日までボクは思っていたが、予想に反した事実を見ていささか驚いている。 ■■それはダレス特使および故吉田首相以来、歴代首相が米国と交わした再軍備の密約であり、いまさら変更するわけにはいかない。しかも、今になっては米ドルによる国際基準通貨制を維持するための、やむを得ない道程であると、国際問題専門家は説く。ボクにはそれを否定する証拠も、そして論理も持ち合わせない。　ただ結果として、日本が戦争に巻き込まれることだけはほぼ明白だ。 ■■もっとも「国連が望むならば」海外派兵してもいいという条件付だから、それなら大義名文も立ち、世界平和に貢献するとしてＯＫしているのかも知れないが、その国連が立派なものかどうかはたぶんに疑問なのは周知の事実である。　はやい話が、最初、国連を創めた５大国がそのまま核兵器を保有し、あとの国々の「核保有はいけない」などという現状は、万国共通の平等的権利をすでに放棄しており、しかも、ロシアが黙認したインド、米国が黙認したパキスタンの核保有はそれでもいい、と言うに至っては、国連の権威を失わしめる事実以外の何物でも無い。 ■■いまの趨勢でいけば、武装派兵可能な日本は、おそらく米国によって「国連安保常任理事国」になるであろう。が、その後、米国からイラクへ行って呉れ、イランへ派兵してくれと、とうぜん頼まれるであろうし、そのとき国連が米国に楯突いて、「行くな」と命令するほどの見識と能力を持ち合わせているとは考えられない。 ■■もう日本は、米国との運命共同体になってしまったと考えて間違いない。強いて好戦的というほどの日本でもないが、とにかく、わが日本に軍靴の足音が聞こえてき、戦争の危険が迫っている。　そのことを今回の「自衛隊法改定」と、「国連総会に向けた小泉演説」の草案ニュースによって、ボクははっきりと思い知らされた。　ボクのように昔の軍隊経験があり、戦争の怖さを知っている老人は、もう消え去るべきときが来たのであろうか。「日本が東洋のスイスになる」という、戦後初めて持ったわれわれの理想は、幻想のままここに崩れてしまった。 ───────────────────────────────── ◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版]　２００４年８月２７日号　　発行　ユジノサハリンスク市　翻訳　Kil　Sang ◇詳細/写真、記事、は関連Webへ →　http://www.609studio.com ───────────────────────────────── 韓国赤十字社の李・セウン副総理サハリン訪問　さる１９日～２３日間、韓国赤十字社の李・セウン副総裁と李・チョングン南北交流局長、金・サンユ在外同胞課長と権・クスン幹事が、２０日の韓国文化センター着工式と光復記念行事に参加するためにサハリンを尋ねた。彼らはサハリン州副知事とユジノサハリンスク市副市長と公式会談を行い、今後の両国の連帯関係とサハリン韓人問題の解決をめぐって話し合う他、韓人団体と教育、言論機関を訪問し実態把握に勤めた。故リ・パルフトジノフ元サハリン州知事の半身像除幕式２０日、州政府小公園で故イ・パルフトジノフ元州知事の半身像の除幕式が開かれた。韓国赤十字社の李・セウン副総裁も式に参加した。像を彫刻したのはロシア功勲美術家ヴェ・チェボタリョフさん。式は事故で亡くなった方々への黙祷から始まり、イ・マラホフ現州知事は、「亡くなった方々の遺志を実現するために一致団結しようと」という言葉で追悼の念を表した。州郷土博物館で追憶の展示会　２０日、故リ・パルフトジノフ元州知事の半身像の除幕式が開かれる一方、州郷土博物館では彼の遺品展「彼はどんな人であったか」が開かれた。展示品は事故当時身につけていた家族写真と所持品。その中にはダイアリーもあったが、メモは８月１９日で終わっていた。そして、事故関連の放映番組も展示されている。大聖堂、追悼客絶えず　カムチャッカヘリ事故で亡くなった方々の追悼礼拝と参拝が行われた大聖堂では、手に花を持った悲しみに満ちた一般参拝の行列が絶えず、警察が警備に当っているほか、救急車まで待機させた。又、遺族と関係者は事故現場を尋ね、そこでも追悼式を開いた。本社のニュース　スポーツソウルと姉妹関係結ぶ　２０日、本社はサハリン文化芸術協会の金・ヨンジュ会長の司会、韓人団体代表の立会の下で韓国スポーツソウル新聞社と姉妹関係を結んだ。スポーツ新聞社代表リ・ボンジン事業局長ら関係者６人は光復記念行事に参加する他、民族文化の優秀性を海外同胞に広く知らせると共に同胞たちの生活と文化を支援、発展させるために姉妹関係を結ぶに至った。スポーツソウル新聞社は海外で民族の伝統と文化を維持・発展させるに当ってのセコリョ新聞の貢献を高く評価し感謝状を本社に送った。光復５９周年、ロシア韓人移住１４０周年、　　　　　　　　　　韓露国交樹立１２０周年慶祝行事　２１日先週の土曜日、ユジノサハリンスク市で光復５９周年、ロシア韓人移住１４０周年、韓露国交樹立１２０周年を祝う市内行進と運動会が開かれた。市内行進は朝鮮時代の王様の狩猟行列の再現という形で行われたが、同行進は韓国スポーツソウル新聞社が主催した。行進は市役所を出発して記念行事場コスモス競技場までのコース。朴・ヘリョン韓人会長は「移住１４０周年を記念するというのは、我々韓人を公式的に認めることを意味するものである」とその意義を強調したのち、両国のさらなる友好関係構築を願う言葉を述べた。又、ヴェ・ナゴルヌイ副知事は祝辞の中で、サハリン韓人の勤勉性と努力、伝統文化を維持発展させようとする取組みを高く評価しながら、韓人が如何に重要な存在であるかを強調したのである。李・セウン副総裁は永住帰国事業１５周年を迎えているが、未だに問題が完全に解決されていないと反省の言葉を述べた後、両国政府の一層の協力と努力が必要であると伝えた。雨のため、運動会は中止となり、公演などいくつかのプログラムのみが予定通り行われたのが残念であった。しかし、雨は二度と母国に帰れず、夢にもみていた家族との再会ができずサハリンで亡くなった１世たちの涙のような気がしたのである。日本外務省の発表文紹介－サハリン韓国文化センター着工式の実施に関して　　　　　　　　　　　（平成１６年８月１７日　北東亜細亜課）１．サハリン韓国文化センターの着工式は８月２０日（金）ロシア連邦サハリン州ユジノサハリンスク市で行われる。２．同センターは日本赤十字社と韓国赤十字社からなる「在サハリン韓国人支援協同事業体」が建設するものであり、この着工式には日本赤十字社コノエ・タダテル副総裁、韓国赤十字社李・セウン副総裁が出席する。又、他の日韓両国政府関係者も出席する予定である。３．同文化センターは在サハリン韓国人１世の高齢化が進む中で、人道的観点から以下の目的を達成するための施設であり、来年１２月下旬に完成される予定である。＊サハリン残留者の望郷の念を癒す場所の提供＊サハリン残留者に言語と文化を伝える活動場所を提供し固有の文化活動をしながら生活できる環境をつくるため。＊サハリン残留者の中で高齢者と若者、そして、他現地住民などの活動の場を提供する。４．在サハリン韓国人支援共同事業体については、日本政府からその活動資金が拠出されており、本事業も日本政府から供出した資金で建設が進められている。（解説：文化センターの話が出てから１０年が過ぎた。１９９１年、訪問したサハリン州老人会代表がこの問題を提議したとの日本語新聞の発表があった。１９９４年から今日まで、サハリン州老人会と韓人会が数次にわたって、文化センター問題を含めての要望書を日本政府に提出した。昨年、日本の雑誌＜世界＞に掲載された高木健一弁護士の文の中にこう書かれている。「サハリンに永住する人々に対する補償問題については１９９８年外務省がサハリン交流文化センター建設費用として５億円の予算を計上し共同事業体に拠出した。これは以前から議員ら（サハリン韓国朝鮮人問題懇談会）が要求してきたことであり、１９９４年＜サハリン残留韓国朝鮮人問題と日本の政治（議員懇談会編集）＞の出版記念パーティーで当時亜細亜局長を勤めていた川島ヒロシさんが、韓国に永住帰国者用施設の建設問題は解決されたが、サハリン残留者に対しても同等レベルの支援対策を日本政府は考えていると発言したのが現実となったものである。このようにサハリン韓人文化センターは国内外の多くの方々の長年の努力の結果であり、日本政府の理解と誠意の結果と言える。　　　　　　　　　　　　　　サハリン州老人会全・サンジュサハリン文化センター着工式　－韓日露相互理解の象徴　とうとう２０日、ユジノサハリンスク市でサハリン韓人文化センター着工式が行われた。韓国、日本、ロシア、この３国関係者が見守る中で完成を祈る祈願祭が行われた後、３カ国代表がスコップを入れることで着工が始まった。完成予定は来年の２００５年１２月下旬。設計も建設も日本とサハリン共同、設計は山下設計（日本）とサハリングラズダン・プロジェクト設計研究所が、建設はタイセイ（日本）とグレナダ（サハリン）が行う。　完成される予定のセンターは２階建てで、３００席のコンサートホール、パソコン室、図書館、カフェと宿泊施設、スポーツ室などの設備を備えた近代的もので、ロジナ文化会館の東側に立つ。 ───────────────────────────────── ◆寄稿　[サハリン悲歌　　第一章　①] 　　　金　里博 ───────────────────────────────── 語りたくなんかない！語ったところで何の意味があろう… 「無かった」と主張する者や「知らない」と言い切る者や「俺も被害者だ」と泣き言を並べる者の中にいてどうして語られよう語ったところで何の意味があろう－それなら寧ろ凍りきった刃先を持った極圏の風に骨肉を抉りとらせ鋼鉄の強度を纏った土に五尺五寸の体を打ち砕かれたほうがずっと気が楽だ－樺太島が好きだったからか？南樺太が気に入ったからか？いや、岡田嘉子と杉本良吉の北緯５０度線越え、小林多喜二の「蟹工船」を等を読めば決して、決して樺太島が好きだったから、南樺太が気に入ったから等とは言えないだろう。目を閉じようそして、胸に手を当て心を鎮めリマン海流と対馬海流の流れを聞こうではないか。今でこそ船で行くなどは時間と費用の浪費だが当時は飛行機で行ける一般人など一人もおらず全ての朝鮮人は大根や芋の置き場と変わらない三等船室（船底）に載せられ故郷を離れさせられた。「アリランアラリヨ行く船樺太極寒地獄の地故郷は打たれ地獄生き地獄同じ地獄なら鬼畜の少ない樺太地獄へ－」稚泊連絡船９０海里（１６７㌔）！時６０有年が過ぎ老婆・老人すでに少なくロシア名を持った新世代の世紀に入っている。海に四季があり海流に緩慢があってもサハリン韓人・朝鮮人の血と肉と骨には重い年輪、まだ解けない怨念が鼓動している－ ───────────────────────────────── ◆寄稿：サンチャゴレポート１６「野良犬天国」　　塩田悦三郎　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ───────────────────────────────── 　サンチャゴの街には、犬が多い。犬といっても飼い犬でなくて野良犬が多い。どんな繁華街でも2,3分歩けば、１頭や２頭の野良犬と出会う。多い時にはその数が10倍にもなることがある。チリで働くことになって、「狂犬病の予防接種」をすることを求められた。「今時、狂犬病だなんて。」と思ったものだが、こちらに住み始めるとすぐ納得した。街の中に「野良犬」が沢山いる。日中は、歩道の真ん中で横たわっていることが多い。たいてい寝ている。人間は彼等をよけて歩く。犬公方の再来だ。　詳しいデータを持ち合わせていないが、手許にあるＷＨＯの作成した狂犬病の流行地域の地図（２００１年版）を見ると北米・中南米はほとんどが流行地域になっている。流行していないのがはっきりしているかまたは流行状況に関する情報がないのは、日本とヨーロッパの一部・中央アジアやアフリカの一部にすぎないのにはいささか驚いた。　元来犬が嫌いではない私は、彼等をよく観察してみた。日本でたまに見る野良犬とは段違いの体格だ。やせっぽちはいない。犬の種類はくわしくないが、シェパードとか羊見たく毛が多いやつとか野良犬にしておくのはもったいないくらいだ。どうしてこんなに多いのかと例によってチリ人に尋ねる。みんなそれぞれ勝手な理由をいう。もっともらしいのは、野良犬をいじめると罰金をとられるからだということだ。こちらでは動物愛護の精神が浸透している。　サンチャゴ市内の野良犬は、事程左様におおらかに育っている。多分、厳しい訓練を受けている警察犬やしつけのやかましい主人に飼われている犬よりはのんびりと育っているだろう。ただ注意しなくてはいけないのは、地方に行った時である。夜間になると徒党を組んで歩っている。犬に咬まれたという話はあまり聞かないが、暗い道で彼等と遭遇したらやはり気味が悪い。　お隣のボリビアで実際にあった話である。若い日本の青年が二度ほど続けて犬の群れに襲われた。若いからだろうか、一生懸命応戦した。幸い犬には咬まれなかったが、あとの処理が大変。若者はけがをしていた。犬に咬まれたわけではなく,応戦中にころんですり傷を負ったのだ。すぐ現地の病院に行って、治療を受けた。医者はてっきり狂犬に咬まれたものと診断して、ありとあらゆる薬の処方箋を書いた。出された薬は、飲み薬、塗り薬、注射液合わせて何と２０種類近く。当然、副作用がでる。関係者の判断で、日本で治療を受けることになり急遽帰国。全治２カ月。現在では再び任国に戻り、元気に業務に励んでいる。これは、野良犬がきっかけではあるが、根本的にはボリビアにおける医療ミスの問題でもある。ボリビアは、野良犬の数はチリより圧倒的に多いとのこと。　チリの野良犬の話に戻ろう。彼らが日中、道路の真ん中でどうどうと寝ていることは先程述べた。横になり、４本の脚を伸ばしきってしかも目をしっかりととじている。まさに死んだようになって寝ている。なぜ道路の端とか軒下で寝ないのか不思議でならない。「邪魔だからどいて」と言いたくなる。でも、チリ人が言わないのに外国人の私が言ったらそれこそ白い目で見られるのは必至だ。「触らぬ犬に祟りなし」。 ───────────────────────────────── ◆２０代のぼやき：「華氏９１１」　有木優一　 ───────────────────────────────── 　　先日僕は、今話題の映画、上院議員への直撃インタビューが印象的なマイケル・ムーア監督が贈る“考える”エンターテイメントと題される「華氏９１１」を鑑賞した。そうだ、まさにエンターテイメントだった。コミカルに編集されたその映画はドキュメンタリーとはいい難いほど、編集のオンパレードだった。時折、ブッシュ大統領の顔と西部劇の映像とを合成した部分さえ登場し、会場の笑いを誘った。これはマイケル・ムーア監督のユーモアがそうさせていたのかもしれないが、日本式のドキュメンタリーとは幾分かけ離れた代物だった。　映画監督井筒和幸氏は東京スポーツ２００４年８月１９日付けのコラムで≪「華氏９１１」は実にくだらんかった　映画サイズのワイドショーや≫という見出しで、その映画を批判している。確かにブッシュ大統領関連の映像、過去のニュースの映像等を持ってきては、繋げるという繰り返しが目立ち、そのタッチは「ワイドショー」を彷彿とさせる。しかし、この映画では、ビンラディン一族とブッシュ家の石油利権に関する癒着やテロの脅威を世論に植え付ける事で、イラク戦争を正当化しているという事実を詳細かつ明快に説明していた。そういった点は無視できない。　ただし、イラク戦争において、従軍している息子を持つ家族の元を訪れ、その家族を通じて反戦を唱えている映像の中で一カ所だけ解せない箇所があった。それは、米兵をイラクへ「派兵」させる折に字幕に「派遣」という訳が使われていたことだ。この映画の翻訳者がどういう観点から「派遣」という言葉を使うことを判断したのだろうか。残念ながら、その箇所の英語を聞き取れなかったため、どの単語が使われていたのか分からないが、訳に「派遣」という言葉を使われていては、この映画自体疑ってしまう。たとえ、「dispatch（＝派遣）」という単語が使われていても「派兵」という言葉を用いるべきだ。仮に本編で「dispatch （＝派遣）」という言葉が使われていたとすれば、なお更、マイケル・ムーア監督は反戦を唱えるつもりはないのか、ただ単純に共和党ブッシュ政権批判をしたかったのか、ただの民主党支持者にしか過ぎないのかなどと考えてしまう。間違いなく反戦運動を展開している団体ならば、軍を海外へやる際、絶対に「派遣」という言葉は使わない。　多方面において、賛否両論のある「華氏９１１」だが、僕は“考える ”エンターテイメントという位置づけでは賞賛する。それは、日本公開初日にして興行収入１億円という結果は、全国にアフガニスタン・イラク戦争の実態を露見させることには間違いなく成功している。そして今、僕自身が抱く疑問を解消するため、映画監督マイケル・ムーア氏に直撃インタビューを遂行したいものだ。 ───────────────────────────────── ◆[編集長から]　　　　　　　　　　　　　　Michio　Katayama ───────────────────────────────── 　ようやく８月も終わりです。朝夕には虫の声が聞こえてきました。季節は確実にめぐってきます。サハリンはもう秋の装い。 ◆「ヘリ墜落事故の証言保存し共有　沖国大教員らがＨＰ開設」と琉球新報。沖国大のホームページから接続できる。　　　アドレスは、http://www.okiu.ac.jp/ ⇒新聞では見られない詳細な写真や映像などが掲載されている。　その抗議文に「米軍は事故直後から墜落現場を一方的に封鎖し、本学関係者の要請する緊急かつ必要最小限度の立ち入りはもとより、沖縄県警の現場検証さえ拒否するなど「国家主権」が侵害されている異常な事態が続いています」とある。・・・わが国も「戦乱のイラク並み」になった。主権は米軍にあり、首相は夏休み。 ◆その夏休みも終わった。政治の季節が秋とともに。１億円問題もあり、自民党総裁として小泉首相は何らかの・・・。まる投げ名人が火中の栗を拾うわけないか。　しかしスポンサー青木参議院議員もいるぞ。橋本派には・・・。 ◆佐賀地裁（榎下義康裁判長）は２６日、堤防閉め切りと漁業被害の因果関係を認めた上で、「本訴訟の一審判決が出るまで工事を続行してはならない」と命じる決定をした。（佐賀新聞） ⇒画期的なのは「そもそも漁業者らと国の間には人的にも物的にも資料収集能力に差があり、その能力差を無視し、漁業者らに高度の立証を求めるのは民事保全手続きにおいても公平の見地から到底是認し得ない。」としたこと。判決を聞いたある漁民は「泣けてくる」と。　農水省はこの涙に心しなければ・・・。 ───────────────────────────────── 発行　　　　　２００３年８月３１日　　　No.１８０編集・発行　　609studio 　　Michio Katayama 発行　　　　　毎週火曜日　　購読料無料配信まぐまぐ配信システム ID:0000052236 MailuX配信システム ID:MM3E1B97842E020 Macky! 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