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タイトル:609studio No.160◆現代時評 :[仮想敵日本?]  2004/03/30


───────◇◆◇609 Studio メール・マガジン◇◆◇──────
                              2004/3/30 No.160
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【609 Studio 】メールマガジンは「現代社会を斬る!」をコンセプ
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          尹 胄榮(ユン チュヨン)プロフィール

 韓国中央大学校教授、朝鮮日報編集局長、無任所長官、駐チリ国大
使、文化広報部長官、国会議員等を経て引退。1979年以来写真に
専念し、写真展、写真集等多数。1990年、第15回伊奈信男賞受
賞。 
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◆現代時評:[仮想敵日本?]                                ken

◆セ・コリョ新聞ダイジェスト版:2004年3月26日号
   ⇒セ・コリョ新聞のインターネット回線の不具合で原稿を送ってき
   ていません。到着次第翻訳の上、お届けいたします。

◆現代語感:「日米同盟強化」                MK

◆韓国新聞拾い読み:                編集部

◆編集長から:[この1週間]

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◆現代時評 :[仮想敵日本?]                        ken

   Ken氏もしくは現代時評へのご意見、ご要望などは 
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◆◆共同通信 2004.3.15  小泉純一郎首相は15日午後、中国の温家
宝首相が記者会見で靖国神社参拝を強く批判したことについて「日中
関係は良好ですから、これからも私が靖国参拝しても良好な関係を続
けていきたいと思う」と述べ、靖国参拝を継続する考えを明らかにし
た。 途絶えている日中首脳の相互訪問の再開については「中国側も
私の訪問を望めば、私は喜んで行きます」と述べた。

◆◆毎日新聞 2004.3.19  小泉純一郎首相は19日、日本テレビの氏
家斉一郎会長と首相官邸で会った際、自身の靖国神社参拝が原因で中
国を訪問できないことについて「おれなんか行かなくても日中友好は
どんどん進んでいる。出る場面がない」と述べ、訪中を急ぐ考えはな
いと強調した。首相は記者団にも「(日中間には)さまざまな分野の
交流が存在し、いろんなレベルの会談も進められている。中国側が望
まない時に私が行く必要はない」と開き直りともとれる発言を繰り返
した。

■■情報通によれば、小泉首相の靖国参拝に、中国が執拗に反発して
いるほんとうの理由は、江沢民中央軍主席が一貫して日本を仮想敵国
としているからだそうだ。いままでずっと中国は米国を仮想敵国にし
、中国国民を「反米」で引っ張ってきたのが、最近になってその「反
米」に手心を加える必要が生じた。つまり、中国の経済発展は米国と
いう顧客によって支えられる時代がき、さらに対イラク戦で中国の支
持を取りつけたい米国が、中国に擦り寄ってきたため、「反米」の看
板を下ろす必要が生じた。

■■そして代わりに現れたのが「反日」で、1951から60年頃は
抗日戦で中国軍民の蒙った生命の損失は1千万以上と発表していたの
が、いまや中国人民抗日戦争記念館での掲示も、3500万に嵩上げ
され、それを「歴史認識」として日本も認めよ、ということになった
らしい。

■■皮肉な見方をする人々によれば、これという軍功もなく、国民の
圧倒的支持によって地位を得たわけでもない江沢民氏にとっては、い
つも国民を悲憤に駆り立て、中国の国家意識を盛り上げることが自分
の保身に繋がる。そうでなければ、彼の存在が消えてしまう惧れがあ
るというのだ。そしてそのためのもっとも手頃なキャッチワードが「
反米」もしくは「反日」だと、真偽不明のニュースが流れている。

■■まあ、事実のほどは、当の江沢民氏でないと分からぬが、言われ
てみると、「さもありなん」と思いたくなるような話ではある。
「私は日本へ行って、天皇陛下の前でも遠慮せず文句を言ってきた」
と帰国して中国国民の前で言いきれば、それだけで溜飲を下げる中国
大衆もおおぜい存在するのは事実である。

■■ボクらの世代、こうしたばあいの相手のことを、「仮想敵国」と
呼んだ。古風な言葉でいえば「国民精神を作興」し、全国民を時の政
府の思う方向へ引っ張っていこうとするとき、外に仮想敵を作るのが
近道であった。ぼくらの子供のころ、その仮想敵はソ連で、特に帝国
陸軍は恒常的にソ連を敵国に擬し、銃剣術で相手を突く稽古ですら「
露助の身体は大きいから、もっと上の方をめがけて突け」と教えられ
たものだ。

■■もちろん真珠湾攻撃の前ごろは英米も仮想敵国の仲間入りし、「
鬼畜米英」と教えられた。その「鬼畜」の米兵が戦後に進駐して来た
とき、「鬼畜」どころか、お人よしの兵隊ばかりだったのには驚かさ
れたものだ。この場合の米英は「仮想敵」ではなく、思い込みによる
敵、つまりいま流行りのヴァーチャル・リアリティにおける敵であっ
て、仮にそれを「妄想敵国」とでも呼ぶべきか。

■■「妄想敵国」ならば、より典型的なのがインドとパキスタンであ
る。我々第三者から眺めると、どう考えても核戦争など起こりそうも
ないインドとパキスタンが、今にも相手方から核ミサイルが飛んでき
そうに双方とも思い、そして大層なカネを注ぎ込んで核開発競争をや
った。被害妄想など、個人レベルでも国家レベルでも、どこでも割合
簡単に起こるものらしく、それはそれで悲しき人間の性(さが)とし
て半分諦めるしか手がない。

■■だが最初に述べた「仮想敵」の方は、悲しき人間の性(さが)と
は言い難く、ときの政府や国家が積極的意図で作り上げた目的物であ
る。
 今日、中国側が被害数をだんだん増加させ、「中国は三千五百万人
が死傷し、六千億ドル以上の経済的損失を受けた」と、日本を仮想敵
に仕立て上げるのもまた意図があってのことと考えると、ここで我々
が、「その数字は理論的に見ても大き過ぎる」と弁明しても効果は無
い。

■■「妄想敵?」のばあいは、いろいろ弁明し、釈明に努めればいく
らかの効果もあろうが、「仮想敵」にされた場合は、その目的が無く
ならない限り施す術(すべ)もない。
 ところがそれを比較的うまくこなしているのが最近の小泉首相だ。
 無作法なマスコミ連中が、「靖国問題で来るなと言われたが、どう
するつもりか」と質問したとき、小泉首相は答えた、「来るなといわ
れて行くほどのことはない。おれなんか行かなくても日中友好はどん
どん進んでいる。(日中間には)さまざまな分野の交流が存在し、い
ろんなレベルの会談も進められている」。
 ボクはこの言葉で、小泉首相を見直した。偉い、と。

■■かたわら、小泉首相は、靖国神社への参拝は続けるつもりと明言
している。とうぜんのことで、自国内のいわば些細な内政問題か、ヴ
ァーチャル・リアルティ上の慣習を他国から云々されて怯む必要など
毛頭ないのだ。

■■外国から何か言われるたびに弁明しようとするのは、近来のわが
国政府の悪しきクセであり、弁明がつぎの非難を生み、またそのつぎ
の弁明が必要となる。相手の声高の非難に辟易して、それから黙ろう
とすると卑怯だと言われる。

■■それより、わが国には昔から「沈黙は金」といういい諺があり、
その手を用いる方がずっと穏やかで、結果的には有効である。
 世間では「日本人は黙っているから誤解される。もっと自己主張す
べきだ」という説があり、近年それがいいことのように言われる。 
 しかしボクはその説に同意しない。

■■われらの近くに、議論好き、主張好きの国がある。彼らは「主張
し、話合ってこそお互いが理解し合える。黙っていては誤解を生むば
かりだ」と言う。なるほどそうかと、こちらが主張しはじめると、た
いていこじれて喧嘩になる。それもそうかと謙虚に引き下がってくれ
るような人はめったに居ない。
 喧嘩は上品なものではなく、口喧嘩に勝って、後味が悪くなるのは
考え物である。だからボクは、「沈黙は金」で、たいていのことはこ
れで済ませる。

■■こうしたばあいに対応するいい言葉がある。
 「どうしても自分が理解できないことについては、それはそれなり
に存在理由があるのであろうとし、時間をかけて眺めることにして来
た。眺めているうちにたいていのものは溶けて無くなってしまってい
た」。たしか故堀田善衛氏の言葉だったと思う。
 言い得て妙で、あれほど喧嘩腰になった問題が、いつのまにか消え
てしまっていた、というようなことは、ボクの周辺にいくらでもある。

■■靖国問題や、「歴史上の共通認識」なども同じで、日が経てばケ
リがつく。半世紀も経てば、鬼畜米英とでも軍事同盟を結ぶときがく
る。日本もむかし元という国に攻められてたいへんだったときがある。
だからといって今ごろ中国にそのときの苦情など言おうものなら、ア
タマがおかしいのでないかと思われるのがオチだ。総ては歴史の蓋然
性が決めるところへ落ちつく。急ぐことはない。その意味で言えば元
寇はすでに風化してしまってい、反対に、いわゆる日中戦争からの6
0年は、まだ怨念が燻っている現代であるらしい。
 「喧嘩は、生きているうちに決着をつけようと思うから起こる」、
という言葉をどこかで聞いたこともある。
 何事も急がず焦らず、冷静に時間をかけてやるのがいい。

■■尖閣諸島に他国の人が数名上陸し、警察がそれを捕まえた。
「中国との間がまた揉めませんか?」と、マスコミが聞いた。 小泉
首相は答えた「できるだけ、お互い冷静になることが大事だ、冷静に
・・・」と。最近の彼は国際問題にこの「冷静に・・」を連発する。
 たしかにそうだ。小泉氏は大きく成長した、日本国家のために慶賀
に耐えない。

■■江沢民中央軍主席に仮想敵にされているという日本が、中国側の
反応に一喜一憂する必要はない。冷静に、そしてわが道を、小泉首相
の靖国参りのように無言で歩めばいいのだ。
 もう一つ、ついでに冷静になって考えれば、われわれの靖国神社参
拝は、ヴァーチャル・リアルティ上の、悪くいえば妄想による崇拝行
為であるかも知れない。
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◆[セ・コリョ新聞ダイジェスト版]  2004年3月26日号  
              発行 ユジノサハリンスク市 翻訳 Kil Sang
◇詳細/写真、記事、は関連Webへ → http://www.609studio.com
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⇒セ・コリョ新聞のインターネット回線の不具合で原稿を送ってき
 ていません。到着次第翻訳の上、お届けいたします。
 お知らせの上、お詫びいたします。なお韓国語PDFは掲載して
 おります。
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◆ 現代語感:「日米同盟強化」                MK 
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 「同盟」とは辞書によると、「 1)(国家・団体・個人が)共通の
目的を達成するため、同じ行動をとることを約束すること。また、そ
の約束によって生じた関係」とある。最近の「日米同盟」などがそう
だ。米軍のイージス艦が日本海に展開するという。その費用1兆円を
わが国が「気前よく」ぽんと出す。無論、「北方の某ならず者国家」
のミサイルを迎撃するための追尾措置だ。国民の寝ているうちに、日
米同盟は着々と強化されている。国民の税金がそのたびに、たいした
論議も経ぬまま使われてゆく。

 「日米同盟強化」は右傾化の免罪符か。
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◆[韓国新聞拾い読み]               編集部
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 【社説】ジャンパー政治、テント政治(中央日報)

 政党の建物が突然みずぼらしくなった。建物といえるものでもない
。「開かれたウリ党」(ウリ党)が青果市場内の共同売場の建物に移
ったのに続き、ハンナラ党はテント・コンテナを党舎にした。大統領
選資金捜査で表れた政界の腐敗像に対する国民の怒りを意識した結果
だ。われわれは政党のこうした変化を一方では肯定的にとらえながら
も、もう一方ではこうした方法しかないのだろうかという印象を受け
ている。派手な党舎、肥大した党組織、水を使用するように使う選挙
資金などは、韓国政治の後進性を象徴する‘笑い物’だった。共同売
場の党舎やテント・コンテナの党舎は、こうした不合理と腐敗政治に
対する自浄努力の象徴と受け止めたい。 (後略)

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 このニュースに最初接したとき、筆者は「低俗な政治ショー」だと
感じだ。案の定、中央日報の社説も「韓国政党がこうした低級な政治
ショーで、また国民を惑わすのではないかという疑問も拭えない。黄
色いジャンパーを着ながらもその中にはりっぱなスーツを着ていたり
、みすぼらしい党舎で会議を終えた党役員、国会議員、秘書らが高級
車に乗って行く姿は、コメディーにもなる」と断じている。

 しかしよその国のことを笑っていられるのか。わが国でも選挙のた
びに、「学歴詐称」や「金権政治打破」を叫びながら買収する政治家
が後を絶たない。中央日報の社説は言う。「ジャンバーを着たり、テ
ントに座ったからといって、国民がいい印象を持つのなら、その国民
も情けない国民である」と。

 もって他山の石としたい。 
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◆[編集長から]             Michio Katayama
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 29日発売の米誌ニューズウィークが行った世論調査によりますと
、ブッシュ米大統領のテロへの取り組みに評価すると答えた人が1カ
月前に比して8ポイント下落したとか。反対に評価しないと答えた人
が10ポイント増えて38%だということです。じりじりと小泉さん
も下がってきているのですが、参議院選を控えて、日本も大変です。

 大変といえば、パレスチナ情勢。「一触即発」のムードです。
しかし日本で関心が低いのは、石油が出ないのとアメリカの反応。
それなら日本人は恥かしい位、現実主義過ぎるのではないでしょうか。

◆新潟地裁で画期的な判決が出た。中国人強制連行訴訟で「国と会社
に賠償命令 過酷な労働認定」(毎日新聞)ほぼ原告の訴えを認めた
形だ。この画期的な裁判は他の同様の訴訟にも影響が。国は控訴しな
いで、事実関係を認めるべきだ。

◆韓国の政党本部はテント、コンテナ村。この村に通う高級車の政治
家たち。どこかおかしい、この光景。

◆週刊文春が「記事さし止め」で該当記事を「黒く塗りつぶして」定
期購読者に無償配布。ますます似てきた。戦前の検閲風景に。

◆尖閣諸島・魚釣島に中国人7人、上陸事件。領土問題の難しさ。国
家関係の複雑さ。韓国との間には竹島。そしてロシアとの北方領土。
資源か絡んで複雑怪奇の様相。一刀両断には行かぬものか。

◆テロ攻撃には共同で対抗 EU首脳会議。そのEUは、ヤシン師殺
害に非難。テロとレジスタンスの線引きの難しさ。

◆なんだか最近の小泉さん、アメリカに対しては・・・。

 それもよしこれもよしとてある人の
 その気がるさを
 欲しくなりたり      啄木

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発行     2003年3月30日   No.160
編集・発行  609studio   Michio Katayama
発行     毎週火曜日  購読料無料
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