メルマガ:ムアン・タイひとり歩き
タイトル:ムアン・タイひとり歩き No.42  2003/03/04


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ムアン・タイひとり歩き 第42号 (発行部数543部) 2003/3/4 (隔週刊)

   タイの人たちの素顔、人情、たたずまいを語る。
   タイ大好きの方々のためのコラム・メルマガ!
   タイ日本合作映画『 a love story 』(千原千樫・脚本監督)の製作推進も目指す!
   ついでに……イタリア・フランス・スペイン・モロッコを巡る旅行記も連載!

   ■ 発行者         : 夢童子 eguchi@mx9.ttcn.ne.jp
   ■ 発行者ホームページ : 夢童子の創作の部屋
                     http://yumedouji.fc2web.com/frame.html
   ■ 提携ホームページ  : 映画『a love story』製作準備委員会公式ホームページ
                     http://www.bd.wakwak.com/~chika/
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◆ INDEX ◆

   ・ ご挨拶
   ・ 今日のタイ・コラム (No.35) by daaw 『タイのコーヒー』
   ・ 光の国・地中海を行く(No.23) by 夢童子
          『闘牛の凄さは実際に見なくちゃ分からない』
   ・ 編集後記

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★ ご挨拶 ★


 こんにちは。

 今回はやや遅れての、変則的な平日の発行となりました。

 タイ日本合作映画『 a love story 』情報をひとつ。
 千原監督によるシナリオ最終稿の執筆が、ついに仕上げの段階に入りました。
 千原監督は執筆小屋に2週間こもって仕上げの作業をされています。

 千原監督の今後の動向に寄り添うようにして、
 当メルマガも近いうちにリニューアルしようかと考えています。
 編集方針の基本が「タイ」「旅」であることに変わりはありませんが、
 新たに「映画」の色を加えたいと考えています。

 「タイ」または「旅」または「映画」に関して文章をお寄せいただける方、
 いらっしゃいませんか。
 単発でも連載でもかまいません。

 いやそれにしても、
 昨日は私の住む東京で「春一番」が吹いたというのに、
 きょうのこの身を切る寒さはなんざんしょ。
 三寒四温というのでしょうか、こういうのを。

 巻末の「編集後記」もお読み下さいね!

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▼▼▼▼▼   今日のタイ・コラム(No.35)   by daaw
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                  『 タイのコーヒー 』 


すこぅし暖かい日もあったりして、いくらかしのぎやすくなった日本だけど、タイはこれ
からがホッテストの季節だね。
日本の真夏になると、暑季も過ぎてしのぎやすくなってるんだけどね。
夕方に決まってさっと降る一雨も、涼しさを運んでくれるし、花や木も瑞々しく緑を鮮や
かにするしね。
おっと、しばらく行けてないもんだから、つい「郷愁」にひたってしまって…。
あああ、暑くてもいい! 行きたい! タイ!

  注:「ホッテスト」=前に「タイの季節はホット・ホッター・ホッテストだと
             言った人がいた」と書いたことによる。

で、本日も、このメルマガを読んで下さってる方って、どんな方なのかなー? 
って、悩みながらお題を考える……。
あ、ついでにお願いしておきますが、いつも気にしてるこのことに関しまして、今後より
楽しんで頂ける様な、あるいはお役に立てて頂ける様なコラムを書くため、下にアンケー
トを付けましたので、是非ご記入の上、ワンクリック(送信)して下さいね。

で…考えたのだけど、おいらの話って、いまいち旅の感動に欠けるかもしれないな〜、って。
あまりに初心者向けな話題では退屈されるんじゃないかなー? 
バカにすんじゃないよ!って、叱られるんじゃないかなー? って、考えるあまりに、
つい話しがマニアックになって、ついでに理屈っぽくなって、それって面白くないよなー
…って反省。
で、今、改めて考えてみると、自分的にはタイの旅初心者の頃にこそ感動や驚きがあって
面白かったんだ、って気付いたんだ。

だから、初心に返ってしばらくは「タイの…」シリーズとか、「お役立ち情報」
「得する情報」系とかで行こうかなー、なんて考え始めてます。

で、本日のお題、『タイのコーヒー』。

おいら、コーヒーがないとダメな派。
何がダメかというと、まず目覚めない。飲まないと起きてからも、ボーとしてる。
それに、のっけから尾篭な話で恐縮だが、コーヒー飲まないとおなかの方もいつまでも
ボーとしていて……つまり、催して来ない…。
そこへもって体質的に、知る人ぞ知る(あ、誰も知らないかも)、体型もおなかも「道」
も細くてさ。
最低一日一回のお通じがないと、もうおなかが張って張って苦しいんだよね。
だからどうしても朝はコーヒーが要るんだ。それも3杯ね。

その点、タイは助かる。コーヒーはどこにでもあるし、安いし。
例えば、日本で田舎のロケに行ったりして、民宿とか○○旅館なんて所に泊まると、コーヒー
が飲めないことあるからね。
朝から本格的なご飯で、美味しい土地のものを振る舞ってくれて、お茶も美味しいんだけど。
ある時などは、申し訳なさそうに「インスタントでよければ…」って言って、ネス・カフェ
を淹れて下さったんだけど…。

実はこれがタイでは高級なコーヒーなんだよね!

もともと大規模ではないが、タイでもコーヒーは栽培されていて、古くから飲まれて来た
らしいんだ。「古くから」としか聞いてないが恐らく日本の「文明開花」期より50年も
100年も前からだと思うな。
だって、日本が鎖国してる時、アユッタヤー王国なんてヨーロッパ人やアラブ人で溢れ返
ってたって言うんだから。
でも、インド文化圏と移民による中国文化の影響を色濃く受けたタイでは、
naamchaa(ナムチャー=お茶)が平常の飲み物としては多く飲まれたようで、いまいちコーヒー
はメジャーになれなかった様なんだね。
でも、どんな田舎のレストランでも屋台でも、タイでは気軽にコーヒーは飲める。有難い。

また日本と違って、ご飯の時にはこれでなくちゃ、みたいな決まりがない、って言うか、
そういった硬直的な発想の嫌いな民族性ゆえ、naamtaohuu(豆乳)とか菊花水(元気が出るっ
て言われてる=まぁハーブティー)とか、あらゆる種類のフルーツジュースとかコークとか、
おまけにコーヒーに似たオーリアンとか…。
まぁ、食事と一緒になに飲むか? って聞いても答えはまちまちで選択肢も十指に余ると
言う…まぁ、これも、タイの豊かさなんでしょう。

ジュースなんてさ。日本じゃフレッシュ(生)と、缶または瓶入りがあったら、当然フレッシュ
の方が「高級」だよね。イメージとしても値段的にも。
でも、タイやヨーロッパじゃ、ジュースと言えばフレッシュのことを指すのであって、
高級も低級もない。缶とかに入っていたらそれは別の飲み物なんだよね。
そして、タイでは、ありふれてあるフルーツを絞ったような飲み物、つまりフルーツジュースは、
何ら高級なんてイメージはない訳さ。
むしろ、あ、いや明らかにだけど、缶とか瓶に入った飲み物の方が、珍しくもあり高級な
感じがしてるんだよ、タイ人には。
ちなみにファンタのストロベリーを、naamdeen(赤い水)、メロンだっけ?
緑色の奴を、naamkhiaao(緑の水)と言う。まんまで、分かりやすいことこの上ない。

で、話しをコーヒーに戻すんだけど、コーヒーもさ、栽培して実を収穫して、干して、
選別して、焙煎して、挽いて、淹れたコーヒーよりもさ、サッとお湯を入れれば出来上が
りの正にインスタントでチープなアメリカ的発想の飲み物、ネスカフェ(スイス法人かも
しれないけど発想はアメリカ的かな?って)がさ、
日本と同じ頃(60年代初めではなかったかな)、猛烈なTV-CMと共に上陸して、
瞬く間にタイ全土を席巻したって訳さ。
当初は高くもあったんだろうな。
ま、何でも、自然にあるものを採って加工すればいいってものは、貨幣経済の埒外にある
から、とにかく現金が必要なものは当時の全国レベルで考えれば、なんでも「高い」みたい
なイメージになったと思うんだけど。

で、どうなったかと言うと、タイ人は、
ホテルのレストランなんかで、胸をそらせて、
「コーヒー。ネスカフェでね!」
なんて…。
やがて、ネスカフェは屋台のコーヒー屋にも置かれるようになるが、今でも、座って、
「一杯お願いね」
って言うと、ネスの瓶を指差して「これだよね」って、ニッコリ。
「いや、ガフェータイ」
って言うと、何だろうこの人は…? って、怪訝な顔されちゃうんだよ。

あ、ついでに発音レッスン。

コーヒーは、 kafee  
「カ」の無気音(手の平を口の前に持って来て「カー」って言った時、息を手に感じない
言い方の音)だから、ほとんど「ガーフェー」または「ガフェー」に聞こえる。

ホットなら、 roon(巻き舌のローン)
アイスなら、 jen(ジェン) を付ける。
「タイの」って断る時は、 thai(タイのタは有気音だから、手の平に息の跳ね返りを感じ
る様に発音)を付ける。

間違っても日本っぽい発音で、「コーヒー」とは言わない様に、ねっ。
これ、有名な話しだから書かなくていいと思うんだけど、ひょっとして知らない人がいる
とナンなので、念のため書いておきます。

khoo   下さい:欲しい
hii          つまりその…なんですよ。女性の…です。
ホテルのレストランでウェイトレスにいきなり、
「○○○○くれ」
って言ったら、そりゃもう、のけぞっちゃいますよね。

あ、そのくせボクは、北部の市場で肉(なんと! 象の肉を売っていた)を売っていたお
ばちゃんが、いきなり、
「thok hii !」
って叫んだのを聞いたことがあります。

thokと言うのは「落ちる:落ちた」って意味なんですが…。
その時は、トタン屋根の天井から、錆びたトタンのひとかけらがいきなり彼女の目の前に
落ちて来た時だったんですが、驚いた時に言う台詞の様ですね。
「ビックリした!」(普通「thok  cai !」(心を落とした)と言います)の北部版なの
かおばちゃん版なのか…? いまだ調査未了です。
あ、モチロン、女性だけの台詞でしょうね〜。

                        (次号へつづく)
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今日のタイ・コラムのためのアンケート
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 (お答えを余白に書き込んで、この部分のコピー&ペーストで、下記のメアドまで
  メールして下さい。)

1.あなたはタイに行ったことがありますか? 
  あれば、何回くらい?
  述べ滞在日数は何日くらい?


2.タイに関することでお聞きになりたいことがありましたら、お書き下さい。


3.自分は知ってるけど、こんなネタが面白いのでは? ってネタは何?


4.このコラムの作者とこのメルマガの発行者たちが今、タイで撮る映画の準備に
   入っているのですが、興味ありますぅ?
  (あるってお答えになった方には、製作に関するニュースが出来上がったらお送
   りします。一回だけ。うるさがられると嫌だから。)


メールの送り先: daaw19@hotmail.com

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 ◎ タイ・日本合作映画『 a  love  story 』製作準備委員会公式ホームページ ◎

            (脚本・監督 千原千樫)


     こんな愛も あったということをどうか 覚えていて下さい。

              a love story

              それは―――

            タイを舞台にした愛の物語。

       『ネットによる劇映画作り』がここから始まる――― 



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           E−mail : alovestory@zc.wakwak.com  


 「サポーター」を募集しています。
 「サポーター」と申しましても義務が生じるわけではありません。
 この映画製作にがつがつと参加していくことを希望される方から、
 黙ってニコニコと眺めている方まで千差万別です。
 よろしければHPの「サポーター」からサポーター登録を行って下さい。
 「サポーター」にはならないよという方も、
 ご意見・ご感想をホームページの掲示板にお寄せ下さい。

 なお、近日中に「リンク」のページを新設します。
 映画やタイ関連で「こんなサイトとリンクするといいよ」というご助言もお寄せ下さい。

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☆    光 の 国 ・ 地 中 海 を 行 く   (夢童子)
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     23.闘牛の凄さは実際に見なくちゃ分からない 


 今夜1泊させてもらうマドリッド在住の親戚D氏に連れられて、夜7時、闘牛場へ行く。
 夏のスペインは昼間は猛暑で外出などしていられない。闘牛も夜7時にならないと始ま
らない。夜7時といっても日差しはまだ強烈ではあるが。

 ベンタス闘牛場は、アルカラ通りをタクシーで郊外へ10分ほど行ったところにあった。
東京の神宮球場を大きくしたような赤煉瓦色の闘牛場の建物の前は、多勢の人たちでざわ
ついていた。ぎらぎらとした強い日射し、切符売場の埃っぽい雑踏、ダフ屋の男たち、闘
牛士のポスターを売る露店……。
 たしかこれと同じ場面が、スペインを舞台にしたヘミングウェイの長編小説『日は昇る』
に描かれていたような気がする。
 「ここで待っていて」
 と言い置いて雑踏の中に姿を消したD氏が、チケットを手にして戻ってきた。
 「行列にきちんと並んでいたら、いつまで経っても切符は買えないんだ。値段はちょっ
と高めになるけど、こうやって買わないとね。日陰の席のチケットなので随分ふっかけら
れたけどね。でも本当に日陰の席かどうか、だまされることがあるからな。あ、こういう
場所はスリがいるから気をつけるように」
 座席の日向(ソル)と日陰(ソンブラ)の違いをしきりに気にするD氏だった。

 入口で小さな座蒲団を手渡されて場内に入った。案内された座席は場内を一望できる位
置の日陰席だった。
 「日向の席は、暑くてとても座っていられないよ」
 場内の半分近くを占める日向席にも、所々に観客が座っている。裸になって座っている
が、それがかえってむき出しで暑そうに見える。日陰席のほうはびっしりと人で埋まり、
スペインにおける闘牛の人気の高さがうかがえる。
 競技場の正面、私たちの位置から見ると右上方に、特別扱いのボックス席がある。
 「あそこに、きょうの試合の主宰者が座るんだ」
 とD氏が説明してくれる。
 「主宰者はその土地の名士がなるものなんだ。財界人とか市長とかね。ただひとりだけ
主宰者になれない人がいる。国王だ。国王だけは主宰者になれない」

 場内にトランペットのファンファーレが鳴り渡った。勇壮な中に哀愁の漂う、これぞス
ペインという響きだ。
 ファンファーレとともに、濃いピンク色のカポーテ(布)を持った闘牛士(マタドール)
や、装飾された馬にまたがったピカドールたちが登場する。ドン・キホーテの時代を思わ
せる装束のかれらは、場内を一周し、主宰者に向かって一礼して退場していく。その行
進は、カラフルで、ユーモラスですらある。いよいよこれから祝祭が始まるぞ、といった
はじけるような雰囲気がある。
 闘牛は、そもそもは祝祭だった。牧畜農業の豊穣を祈願して、神に牝牛の死を捧げる供
犠(くぎ)の祭りが闘牛の起源という。

 やがて、1頭の黒い牝牛が場内に放たれる。
 牝牛は最初、自分がほうりこまれた場の状況が理解できないようで、おどおどとしてい
るが、数人の男たちが眼の前で交互に振りかざすピンク色のカポーテに刺激されて、徐々
に興奮してくる。
 鼻息を荒げた牝牛が、カポーテめがけて突進し始める。
 男たちがクモの子を散らしたように板壁の影に身を隠す。
 勢い余った牝牛が、板壁に激突して砂埃を上げる。
 「ランセ」と呼ばれるこの場面が終わると、今度は馬に乗ったピカドールが登場する。
 馬の上からピカドールが牝牛を槍で突ついて、ひとしきり刺激する。
 ピカドールが退場すると、バンデリリョと呼ばれるひとりの男が登場する。
 バンデリリョはカポーテで牝牛をさらに興奮させていく。頃合いを見はからって真っ直
ぐに牝牛に接近していき、両手に1本ずつ持った2本の銛(もり)を、牝牛の背中に軽く
突き刺す。それを3回くりかえす。
 牝牛が興奮して身を揺する。揺すれば揺するほど、背中に刺さっている六本の銛が躍り、
赤い血が背中にあふれる。

 さて、ここでまたトランペットが高々と鳴り響き、いよいよ闘牛士(マタドール)が颯
爽と登場する。闘牛士が赤いムレータ(布きれ)を巧みにあやつって牝牛とやり合うここ
からの場面が、スリルと緊張のみなぎった最高の見せ場となる。
 牝牛のほうも、はっきりと意識しているのかどうかは別として、死を予感して必死の形
相になっている。
 対する闘牛士も、わずかな計算の狂いから、牝牛のツノに突かれて命を落とさないとも
かぎらない。現に、年に何人もの闘牛士が死んでいるという。
 闘牛士も牝牛も、同じ死のぎりぎりの淵に立って、瞬間瞬間の華麗な「死の舞踏」を演
じ始める。
 手を伸ばせば届く至近距離の位置で、獰猛な牝牛と真正面に向かい合って静止する沈黙
の瞬間。前足を踏んばってぎゅっとにらむ牝牛の強烈な眼差し。闘牛士が背筋を弓のよう
にそりかえして見えを切る。

 これはもう、残酷とか可哀そうといった人情とは別の次元にある圧倒的な何かだ。牝牛
をいけにえとして神に捧げる供犠の祭りが闘牛の始源というが、それだけでは説明のつか
ない絶対的な美しさが、ここにはある。
 その昔、ローマのコロッセオで、猛獣と剣闘士、あるいは剣闘士同志の死闘がくりひろ
げられたという。それは確かに血で血を洗う凄惨な見せ物だっただろう。人間の欲望の底
にあるヴァンダリズム(暴力礼賛)を満足させたその凄惨さが、スペインの牧畜の供犠の
祭りと合体することにより、整然としたセレモニーの中で形式化され、美として昇華され
たに違いない。

 闘牛士は、いくつもの勇敢な見せ場で観客を湧かせた後、牝牛の心臓をひと突きにすべ
く、背中から剣を一気にずぶりと突き刺す。
 牝牛はみるみるうちに勢いを失い、前足からどっと崩れ落ちる。
 牡牛の苦悶の時間を最少限にするために、すかさず助手が出てきて、短剣で頭を突いて
とどめを刺す。
 むくろになった牝牛は、あっという間に馬車にひきずられて退場していく。裏には肉屋
が控えていて、すぐに牛肉にさばくのだという。

 私たちふたりは、手に汗にぎる興奮と、死をまのあたりにした衝撃とで、しばらくは言
葉もなかった。
 「闘牛の凄さは、実際に見なくちゃ分からないものね」
 闘牛場を出てから、妻が熱い息を吐いて言った。

                        (次号へつづく)
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▼▼▼  編集後記 (夢童子) ▼▼▼

 映画『 a  love  story 』製作準備委員会のサポーターでもあるWEB小説家の
 「銀の羊の数え歌」さん(HPは http://akita.cool.ne.jp/tsunehira/index.htm )
 が、お知り合いの作家たち9名と一緒に短編小説集を作ろうとなさっています。
 オンデマンド出版で販売もするのだそうです。
 私もお声をかけていただきました。

 締め切りがないと何年経っても書かない「偽WEB作家」の私なので、
 これはいいチャンスだとお誘いをお受けしたのですが、
 その締め切りが、ななな、なんと今月末!!
 お〜〜、ひな祭りも終わってしまったのに、まだなにも書いてないゾ〜〜。
 というか、書くことがぜんぜん思い浮かばないゾ〜〜。
 そもそも短編小説がどんなものなのかも忘れてしまったゾ〜〜。

 よし、まずは誰かの短編小説集でも買ってきて読むことから始めよう!
 さあ、本屋へ、本屋へ。

 と思っていたところへ、本日「WEB同人誌UONOME」第3号が発行されたんです。
 よし、では「WEB同人誌UONOME」第3号を読んで短編小説の勉強をしよう!

 「WEB同人誌UONOME」がどういうものであるかは、
 HP「うおのめ倶楽部」へみなさんが飛んでご確認下さい。
 URLは、 http://www.geocities.co.jp/Bookend/4527/ です。
 いずれ劣らぬ力作揃いの文芸誌です。
 編集長・大江眞輝氏の編集意図もはっきりと打ち出されていて読み応えあります。

 はい、ここから先は私個人の宣伝になります(笑)。

 この「WEB同人誌UONOME」第3号に、
 私の「地獄めぐり」というなが〜い小説が掲載されました。
 その小説、読んだことがあるよ〜、という方、もう一度お読み下さい。
 冒頭だけ読んで、なんだ以前読んだのと変わってないじゃん、という方、
 ちょっと辛抱して読み進めて下さい。

 1月から2月にかけて大幅に改稿したんです。
 この私が、休日は朝9時から22時まで、
 平日だって22時半までは酒を飲まずに改稿し続けたんです。

 ところで「地獄めぐり」の改稿を終えてからもう10日ほど経ちます。
 この10日間で私はまた、ぐーたら飲んべえに戻ってしまいました。

 でも短編小説を書かねばならないんだなあ・・・。
 また酒を控えなければいけないのだなあ・・・。

 いつから気合いを入れようか。
 とりあえず、明日からってことで(笑)

 ♪あしたがあるさ あしたがある〜〜


 (「ムアン・タイひとり歩き」次回配信予定日は2週間後の3月23日です)
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