メルマガ:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学
タイトル:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学 NO.16  2003/01/07


   今週のメルマガ   第 16 号 平成14年12月22日 発行

            タンポポ塾の家造り雑学的総合大学

        建築関係の訴訟・マンション監理・登記実務・家族間の法律等の
      実務事例集と判例解釈のゴチャマガジン。
      全部読んだら、あなたも不動産実務大学の卒業生になれるかも?

    発 行 人    株式会社 ダイヤ設計  建築・行政・法務の総合事務所      
                    メール: kdaiya@f7.dion.ne.jp
                             URL: http://www.h3.dion.ne.jp/~daiya  

     発行人ごあいさつ

    下記の項目について、週に1回の割合で発行する予定です。
    実務家が本音と経験事例で語るマガジンを目指します。
    どうぞ、2回、3回と継続して読んでみてください。一味違うはずです。
    又、トピックとして連載文も掲載してます。

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   今週のメルマガ   第16号 平成14年12月22日 発行

    今週の目次項目 

     ○今週の解説   NO.16  ◎減震工法についてよくある質問

     ○本の紹介     めちゃ安で建つ 今週はお休みです。

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   今週の解説   NO. 16 ◎減震工法についてよくある質問


   始 め に
   
   耐震・減震・免震工法であれ何であれ、建物や工作物に地震力(主として水平
   力)が加わった場合に、その地震力=エネルギーを建物の架構部材やその他の
   物で、運動エネルギーや仕事に変換すれば建物は地震から守れる訳です。
   
   例えば、魚釣りの釣竿をイメージして下さい。
   釣竿を地面に立てた場合、かなり大きな地震に対しても釣竿は破壊することは
   ありません。
   釣竿は、ユラユラと揺れて地震力=エネルギーを運動エネルギーに変換するこ
   とにより、破壊から守っている訳です。
   この場合、もし釣竿の材質がガラスであれば、簡単に破壊することは容易に想
   像がつきます。
   ガラスでは地震力=エネルギーを運動エネルギーに変換出来ないからです。
   
   又、建築後数百年の五重の塔が現存する事例を見ても納得出来ることです。
   五重の塔は、現在の建物の様には釘を使用しておりません。部材の組み合わせ
   だけで造られています。ある意味で釣竿に近い構造形式(柔構造)を、古人は
   知っていたのでしょう。
   
   我々建築士のする建築物の構造計算も、一見微分・積分を使った高度な理論の
   ようですが、その本質はこのような考えを変形や仕事により、地震力=エネル
   ギーを変換させる方法を基本にしております。
   
   しかし、スジカイ工法はこの考えと異なり、スジカイにより地震力を完全に抵
   抗させる工法といえます。
   

   1.免震工法とは?
   
   建物が地震力を受けた後、ほとんど完全に建物と内部の人間ともにその地震力
   に抵抗出来る工法を、免震工法と定義づけて良いとおもいます。
   その理由として、外部地震力が建物本体にはほとんど伝わらない構造にしてい
   るからです。
   免震の考え方とその技術は、建物だけではありません。
   
   最近では、この技術を構造物の永続性を要求されるお墓に取り入れ、先祖のお
   墓を地震による倒壊から防いでいる例もあります。(私は墓地を散歩するのが
   好きですが、傾いていたり、倒れていたりするお墓を見ることは、心が痛みま
   す。)
   そして最近では、小規模な住宅建築にもこの免震工法の技術が取り入れられつ
   つありますが、コスト面とメンテナンス等の問題で、主に公共的に重要な建物
   や高級マンション等に設置される場合がほとんどです。
  
  
   2.減震工法の特徴と耐震工法について?
   
   減震工法を説明する前に、ごく一般的な建物である耐震工法について説明する
   ことにします。
   耐震工法にも大きく分けて3種類の形式があります。又、これらの工法を併用
   する場合もあります。 
   
   (イ)スジカイ工法
 
     地震力(水平力)を建物に設置されたスジカイに負担させて抵抗する方式
   
   スジカイは構造計算上は変形や粘りを無視するため、スジカイが破断した場合
   (スジカイの耐力よりも地震力が上回る場合)には、その建物は崩壊すること
   になります。
   柱や梁の断面を小さくすることが可能なために、地震力に抵抗させる方法とし
   て一番コスト的には安価といえます。
   よくある工事現場のプレハブ事務所の、外部から見える鉄筋のスジカイをイメ
   ージしてください。3階建のプレハブ建物が、わずか数ミリの鉄筋スジカイで
   設計されています。
   
   (ロ)ラーメン工法

     比較的大きな断面と、曲げモーメントに抵抗する部材(断面係数の大きな
     部材・梁と柱)の接合部分の接点部分の剛性によって地震力に抵抗する
     工法です。
  
   このような剛接合を、ドイツ語でラーメンといいます。昨今はやりの激旨ラー
   メンとは関係ありません。
   この場合、梁と柱で構成される架構自体の変形によっても、地震力に抵抗し
   ます。
   相対的にスジカイ工法よりも、地震力に対してはより粘りのある工法であり、
   鉄筋コンクリートや鉄骨の建物に多く見られる、一般的な工法といえます。
   従って木造の建物は柱と梁との接合部分が剛接合ではないので、ラーメン工
   法になり得ません。


   (ハ)壁式工法

     地震力=水平力に対して、建物の壁によりその力に抵抗させようとする
     工法
   
   (イ)でのべたスジカイを壁に置き換えたものです。
   ツーバイフォー工法や、5階建位の鉄筋コンクリートの団地・マンションに
   採用されている例が多くあります。
   
   
   3.減震工法の種類は? そして設置コストは、どの位かかるのですか?

      主な工法として<SN減震工法>と<減震くん工法>があります。
   
      それぞれのコスト比較

    <SN減震工法> = 通常の住宅(延べ坪=35坪)で110万円位です。
   
   
    <減震くん工法> = 上記と同じ条件で、80万円位です。
   
   

   4.新築時と既存建物にも設置可能ですか?
   
    <SN減震工法>

     この工法は建物の基礎の下にコンクリート耐圧板を施工する為、新築時に
     計画するのが普通です。既存建築物にこの工法を施工することは不可能で
     はありませんが、既存建築物を曳き屋工事により持ち上げてから耐圧板を
     施工するために、曳き屋工事コストが上乗せされることになります。
     コスト面からは新築時に計画するのが一般的です。
   
    <減震くん工法>

     この工法の場合も、コスト面からも新築時に施工するのが一般的ですが、
     完成後の既存建物に施工する場合、SN減震工法に比較し施工が容易であ
     るといえます。
     特に建物の外壁等がサイディング張りなどであれば、減震くんを設置する
     部分のみの補修で施工できるメリットがあります。
   
 
   5.公庫住宅にも適用されますか?
   
    <SN減震工法>

     公庫住宅の確認申請時に、特記仕様書等を添付することにより可能です。
     公庫住宅の認定を受けています。
   
    <減震くん工法>

     通常の建築基準法と公庫の基準に減震装置を追加的に設置する工法ですか
     ら、より公庫の基準よりは安全側になるだけで、なんら問題ありません。
   

   しかしどちらの工法も、建物自体のスジカイ等の建築基準法で規定する基準を
   下回る様に設計することはできません。
   
   
   6.<SN減震工法>と<減震くん工法>の両者の特徴について?
   
    <SN減震工法>

     この工法を簡単に説明するならば、たとえば、南極の厚い氷の上に(氷と
     建物とは、接続・一体化していないとする)家を建てた場合をイメージし
     てください。南極に地震があるかどうかは分かりませんが、仮にその場所
     に大地震があったとしたら、この建物はどのようになるのでしょうか?
   
     地震による地盤(ここでは氷)の変動は、上下・左右に動くはずです。
     ここで少し専門的になりますが、地震力の場合に上下の力=鉛直力は左右
     の力=水平力の1/2程度なので、無視することにします。
     その理由として、水平力に対してその建物が破壊しなければ、上下の力
     (1/2位であるから)に対しても安全であると考えます。
     しかし地盤と建物が通常の建物のように接続していませんから、地盤の変
     動=エネルギーは建物に伝わりません。建物が氷の上を多少移動するだけ
     です。

     この原理を応用したものが、SN減震工法というものです。氷の代わりに
     コンクリート耐圧板を施工したものです。
     そして、コンクリート耐圧板は氷よりも建物の基礎部分との摩擦係数が大
     きいので、台風程度の水平力に対しては移動しないように、且つ大地震の
     時の水平力に対しては移動するような、特殊な摩擦材(特許)をコンクリ
     ート耐圧板と建物基礎の間に施工します。
     50年に1回か100年に1回の大地震に不幸にも遭遇し建物が移動した
     場合は、移動した建物を油圧ジャッキで元の位置に戻します。
     その費用は、それほど掛かりません。20万円以下で出来ると思います。
   
     このSN減震工法の最大の特徴は、減震工法といっても理論がシンプルで
     ある為、ほぼ完全に建物を地震から守れることにあると考えます。
   

    <減震くん工法>
 
     <減震くん>という工法は、大手自動車部品メーカー(トキコKK)が開
     発した工法です。始めに述べた通り、地震エネルギーの変換をすればよい
     わけです。
     ショックアブソーバーは、車の上下の変動をショックアブソーバーで吸収
     させようとするものであるから、地震力のような横の力も同様にショック
     アブソーバーで吸収させることが出来るはずです。
     ショックアブソーバーを製作しているメーカーならば、その技術を建物に
     も応用できるはずです。
   
     SN減震工法よりも免震工法的要素を取り入れた工法、といえます。
     この装置の最大の特徴としては、建物の新築時だけでなく既存建物にも、
     建物内部・外部を問わず比較的容易に設置できることにあると思います。
     施工実績も100棟近くあります。
   
 
 
   現在比較的に採用されている代表的な減震工法について説明致しました。
   最後に、どちらの工法も一長一短がありますが、要は建築主が目指す目的と、
   施工コスト面・施工時期等々から決定すべきであると思います。
   
   

   7.最後に大地震についての考え方
   
   関東大震災や、最近の阪神淡路地震の2倍や3倍の大地震は果たして起こるの
   か?、という素朴な疑問があります。
   もしその様な建築基準法の想定していない大地震に遭遇したならば、免震工法
   や減震工法などは果たして意味が有るか、という問題です。
   
   結論から言えば、そのような大地震は起こり得ない事になっています。
   何故なら火山性地震等は別として、地震は地球内部の1年間に数センチ移動す
   るプレートの歪(二つのプレートのずれ)がある限度になると、一度に元にも
   どる時に起こる現象と考えられています。
   それが、1年か10年か100年に1回かは別として。
   
   従って、ある程度プレートの歪が大きくなれば、周期的に元に戻るざるを得ま
   せん。そのため、一度大地震が発生した場所には、又同じような大地震が発生
   すると言われる理由です。
   したがって、地震にもそれが地球内部のエネルギーの放出(プレートの歪が元
   に戻る時。地球内部のプレートはゴムのような弾性体ではありませんから)と
   捉えるならば、ある程度の限度(周期)が在ると考えられています。
   
   ちょうど人間のオナラの音(体内内部のエネルギーの放出)にも、大きい・小
   さいの違いはありますが、鼓膜の破れるような大きなオナラなどあり得ないと
   同じことです。
   
                                      
                               以上です。
   


   今週はここまでです。

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   トピック 今週の連載文 本の紹介 今週はお休みです。

      「頑丈で快適なわが家がめちゃ安で建つ」 松田源冶著
 
         尚、目次は、第2号に掲載してありますので、ご参照下さい。
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