メルマガ:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学
タイトル:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学 NO.10  2003/01/07


   今週のメルマガ   第 10 号 平成14年11月14日 発行

            タンポポ塾の家造り雑学的総合大学

        建築関係の訴訟・マンション監理・登記実務・家族間の法律等の
      実務事例集と判例解釈のゴチャマガジン。
      全部読んだら、あなたも不動産実務大学の卒業生になれるかも?

    発 行 人    株式会社 ダイヤ設計  建築・行政・法務の総合事務所      
                     メール:kdaiya@f7.dion.ne.jp
                              URL:http://www.h3.dion.ne.jp/~daiya  

     発行人ごあいさつ

    下記の項目について、週に1回の割合で発行する予定です。
    実務家が本音と経験事例で語るマガジンを目指します。
    どうぞ、2回、3回と継続して読んでみてください。一味違うはずです。
    又、トピックとして連載文も掲載してます。

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   今週のメルマガ   第10号 平成14年11月14日 発行

    今週の目次項目 

     ○今週の解説   NO.10  ◎土地登記Q&A  地積関係
     ○これからの投稿予定リストと、いままでの掲載リスト
     ○本の紹介     めちゃ安で建つ 10回目 第七章 

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   今週の解説   NO. 10 ◎土地登記Q&A  地積関係

   
   <Q> 登記簿の面積を実測の面積に合わせたいのですが、どのような手続きを
   必要としますか?
   
   <A> 登記簿上の面積を公簿面積、実際の測量しその成果に基づく面積を実測
   面積と一般に言います。
   公簿上の面積と実測面積は必ずしも一致しません。これはいろいろと原因が考
   えられますが、説明が長くなるので省略します。
   さて、登記簿上の面積を訂正し、実測値を記載する登記には次の三通りのケー
   スが考えられます。
   
   (1)登記上の許容誤差内であれば、分筆後の全部の土地について地積測量図
      を申請書とともに提出して行う全筆求積の分筆登記で行えます。
   (2)許容誤差を超える場合は、地積更正登記、一般に言う増歩申請で行うこ
      とができます。
   (3)登記簿より、実測面積が少ないと場合は、減歩申請を行えばよいでしょ
      う。
   
   (2)の増歩申請に比べ比較的容易な登記です。
   現在の売買は実測面積で行われているようですから、固定資産評価の高い街中
   の土地等実測面積に合わせ地積更生(減歩)するのも節税対策の一つです。
   以上ですが、いずれにしても高度な専門的知識が必要とされますので、表示登
   記の専門家である土地家屋調査士に依頼し、正しい方法で行うことが大切です。
   
   
   <Q> ある建設会社が造成した住宅の一区画を買うことにしました。建物を建
   てる区画の他に私道持分というのがあって、その分も買わねばならないことは
   はじめから説明せれて承知していたのですが、登記簿をみると私道の土地は〇
   〇番でX平方メートルとなっています。ところが会社のいう私道はY平方メー
   トルとだいぶ大きくなっていて、私の持分も胸算用よりも増えてそれだけ高値
   になります。会社は測量図というのを見せて、「実際にこれだけあるのだから
   この価格になる」というのですが、これはどういう訳でしょうか?
   
   <A> 登記簿上の地積と実際に測量した地積と相違することはままあることで
   す。あなたの場合考えられることの一つは、
   
   (1)建築会社が相当の広さの山林なり農地なりを買い取った。
   (2)この段階ですでに登記簿と実際の地積が一致していなかった
     (登記簿より多い場合がよくあります。これを属に縄のびなどという)。
   
   (3)この土地を実測どうりに何個か何十個かに区画していくと、最後に残っ
      た土地の地積は当然登記簿の地積とくい違ってきます。この不一致を訂
      正(地積更生の登記といいます)するのは通常非常に手数と時間がかか
      ります。
   (4)会社は営業政策上この部分を私道に当てたのでしょう(私道の構造およ
      び幅が建築基準法上に合致していれば実測面積と不一致であっても、そ
      の私道に接して区画された土地には家を建てられる)。
   
   私たち土地家屋調査士は、手数と時間がかかっても地積更生の登記の申請を会
   社に進めたいのですが、しかしながら申請するしないは会社の意志なので強制
   することはできません。
   私道の測量図は資格ある者(土地家屋調査士あるいは測量士)の作成であるな
   ら、登記簿上の地積にかかわらず会社のいう持分面積で所有権の移転を受けて
   おくことが大切です。なぜなら、全区画の販売が完了した後、私道の共有者全
   員による地積更正登記の申請が可能であるからです。 
   
   
   <Q> 土地購入の際この土地は元筆だから多少縄のびがあるので得です、とい
   われましたが、縄延びとは何でしょうか?
   
   <A> 明治政府が租税徴収を目的として地租改正を行いましたが、その時代に
   作成された図面に基づいて台帳上の面積が決まり、その後、幾多の変遷を経て
   現在の登記簿になりました。
   当時は測量技術のレベルも低く、また直接担当した人々が税徴収対象の国民で
   もあり、いろいろな思惑も介入し、実際の面積よりも少なく計測された経過が
   あるようです。

   また、この一因に縄延びという現象もあります。
   縄延びという言葉は測量の際使用した測尺が現在使用している鋼テープのよう
   な制度を望むべくもなく、特別製の縄などに一定間隔の結び目を付けてこれを
   測尺代わりに用いたと文献に期されています。
   縄の場合強く引くと多少の延びが出てしまうことにもなり、またこの結び目の
   感覚を多少長めにして用いたケースが多いといいます。
   さて、このようにして測られた土地は当然実際の面積より余分にあることにな
   ります。従って正確に測量し、いくつかの筆に分けていくと、残りの土地にそ
   の誤差がしわ寄せされます。

   つまり、「元番は登記簿上の面積よりは多少広いので得ですよ」という言葉も
   出てくるわけです。しかし、このことは耕地整理事業、土地改良事業、土地区
   画整理事業等の行われた土地ではあてはまらないでしょう。また、必ずしも面
   積が余分にあるとは断定できません。
   将来問題を残さないよう必ず実測面積による売買をしていただきたいと思いま
   す。
   
   
   <Q> 昭和38年に実測をしない土地を買い、家を建てて現在まで住んでおり
   ましたら、最近、隣地の測量があり、境界確認の依頼がありました。その時、
   私の土地は300平方メートルあるべきところ、約50平方メートルも少ない
   と言われました。非常に損をしたような気がするのですが、何か良い方法はな
   いでしょうか?
   
   <A> 登記簿面積と比較して実測面積との差はよくあることですが、ご質問の
   ように300平方メートルのうち50平方メートルの差は例の少ないことです。
   
   いろいろな原因が考えられますが、その一つは、もともと求積に誤りがあった。
   その二には、境界石が動いてしまった。その三には地震などにより地形が変わ
   ってしまった、ことなどが考えられます。
   いずれにしても登記簿と実測の違いについては、地積更正登記が必要とされま
   すので、お近くの土地家屋調査士にご相談いただき、その土地について原因を
   歴史的に調査し解決することが必要と思われます。 
   
   
   <Q> 私の所有する山の一部の土地を娘の家を建てるために分筆して贈与した
   いと思います。該当地は杉林でかなりの傾斜地です。これの測量は可能ですか。
   また面積は傾斜面を地坪とするのでしょうか?
   
   <A> 傾斜地で杉の木もかなりある山林の測量とのことですが、平坦で見通し
   のよい土地よりも少し時間がかかるだけで、測量はもちろん可能です。
   面積は水平投影面積といって、傾斜部分は全部水平面積に換算して測量します
   から、ちょうど飛行機の上から真下を眺めたのと同じような測量図面ができる
   わけです。
   当然のことながらその傾斜面積よりも測量された水平面積の方が小さくなりま
   す。
   その傾斜地にお宅の娘さんが家をお建てになるときは、たぶん敷地部分を水平
   に造成するでしょうから、その分筆図面と同じ区画形状の敷地ができることに
   なります。 
   
   
   <Q> 
   私は、若い頃から町・反・畝・歩とか坪を使ってきて、平方メートルといわれ
   ても、今だにピンとこない古い人間です。一般に一坪は3.3平方メートルだ
   と聞きますが、これの換算について教えてください?
   
   <A> 計算法(昭和26年)が施行されてはや47年が経過し世界共通の統一
   単価である「メートル法」が、我が国でも使われ、「尺貫法」や「ヤードポン
   ド法」がしだいに昔語りになってきました。
   昭和41年4月1日以降は、計量法施工法や不動産登記法施工例などの規定で
   不動産登記簿の土地の地積や建物の床面積はすべて方法メートルを用い、尺貫
   法は使えなくなったのです。
   さて、お尋ねの換算について説明します。
     1間×1間=1坪ですね。
   1間はメートルに換算すると1.8181818メートルと際限なく続きます
   が、0.55間(5分5厘)が1メートルで、1.1間(1間1分)が2メー
   トルです。
   そこで11間が20メートルになりますので、11間×11間は121坪、2
   0メートル×20メートル=400平方メートル。ですから400平方メート
   ル=121坪で、これが換算の基になります。
   400を121で割ると3.305785124と割り切れませんが、逆に1
   21を400で割ると0.3025で割り切れます。
   正確な換算は、平方メートル×0.3025が坪になり、坪÷0.3025が
   平方メートルになるわけです。
   特に難しいことはありません。0.3025の数字だけを覚えてください。
   

   今週はここまでです。


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   これからの投稿予定リスト○印と、いままでの掲載リスト●印です。
     (追加、変更あり 順不同)

   ●住宅の登記について(第1号・第2号)
   ●建築訴訟(民事訴訟)は、当たり前だけど正義が勝つとかぎらない(第3号)
   ●裁判籍で半分は勝負あり(第4号)
   ●代位登記について(第5号)
   ●建築訴訟の鑑定書等の作成業務について(第6号)
   ●幻の渓流魚「岩魚」釣の秘伝(第7号)
   ●建物登記Q&A 全般その1(第8号)
   ●建物登記Q&A 全般その2(第9号)
   ●土地登記Q&A  地積関係 (今週号 第10号)


   ○建築訴訟関係
   ○マンション監理関係
   ○欠陥住宅の発生メカニズムと社会的背景・・・建築システムの再構築の必要
    を考える
   ○一級建築士といってもいろいろいるぞ
   ○区分建物とは何ぞや・・・・・普通の建物とどこが違う?
   ○マンションは小さな国家
   ○マンション住民は区分所有法を勉強すべし!!
   ○裁判官は和解好き・・・・・その本当の理由
   ○欠陥住宅と建築士の責任について・・・・・建築士の方必見!
   ○建築士と設計監理者の名義貸しについての判例・・・・・建築士の方必見!
   ○建築訴訟の特徴 
   ○弁護士さんへの依頼について・・よい弁護士さん、わるい弁護士さん、とは
   ○団体で弁護士さんを育てよう
   ○建築士と設計監理者の名義貸しについて・・・裁判の判例と実務のコメント
   ○契約書と念書との違いと効力について・・・・・どちらが有利?
   ○土地の時効取得について・・・・・国有地でもただ取り可能?
   ○土地の境界確認訴訟は形成的確認訴訟について・・・・普通の裁判と大違い

   ○表示登記について・・・・・登記しないとどうなるか、日本国が困る?
   ○「公信力」と「対抗力」について・・・・いわゆる不動産登記のキーワード
   ○保存登記について・・・登記しないとどうなるか、困るのはあなただけ、
               日本国は困らない
   ○区分所有建物登記について・・・・・区分建物とは
   ○抵当権設定の登記について・・・・・田舎の農家以外みな抵当物件なのだ
   ○根抵当権設定の登記について・・・・・ようするに「枠」の支配権なのだ
   ○登記出来る不動産の権利について・・・実務上はもっと利用してもいい権利
                      もあるぞ(例えば地役権) 
   ○相続の登記関係について・・・・・いろいろな所有権の移転登記
   ○仮登記にも二つある・・・・・一号と二号との本質は大違い、
   ○権利証と権利証紛失と保証証について・・地面師が暗躍する理由
   ○建物滅失登記について・・・・・建物滅失登記くらいは自分でできる
   ○相続関係の法律について
   ○相続人の確定について・・・・・これがなかなか大変な仕事
   ○遺言について・・・・・日本人にはなじみにくい。しかし、、、
   ○公正証書遺言について・・・・・何故有利なのか
   ○遺産分割について
   ○相続人の遺留分と遺留分減殺請求について

    などなど


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   トピック 今週の連載文 本の紹介 第10回  第七章

      「頑丈で快適なわが家がめちゃ安で建つ」 松田源冶著
 
         尚、目次は、第2号に掲載してありますので、ご参照下さい。
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     第七章 建築士……やっと施主が主役だということに気付き始めた人たち
   
          建築士事務所は田舎の診療所であれ
   
   
    ◎建築士の役割と現実(建築士は施主を守る番人)
   
    施主のあなたは、建築士にどういうイメージを抱いているのでしょうか。建
   築設計事務所の看板は珍しくないし、電話帳にも驚くほどの数が載っているし、
   建築士の数も、一級と二級を合わせたら掃いて捨てるほどに溢れているのです。
   しかしいざ必要に迫られて捜すとなると、あなたには、その溢れている建築士
   が近寄り難く見え、事務所の敷居が高過ぎると感じてしまうのです。

    建築基準法第一章(総則)第一条に「この法律は、建築物の敷地、構造、設
   備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を
   図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする」とあります。もし
   この条文が絵に描いた餅でないならば、建築士は、良きアドバイザーとして施
   主と密接な関係でなければならないのです。建築士には、施主とその家族が安
   全で快適な生活ができるよう、建物の維持管理等について十分配慮した建築設
   計を行い、工事業者の指南役として工事を監視し、建物が完成した後も施主の
   維持管理を助けて建物を保護するという社会的責務・使命が有るのです。

    とは立前で、その条文を忠実に実行できる建築士はおそらく居ません。彼ら
   の本音は、資格を活かしてお金を稼ぐことで、「できれば有名な建築家になっ
   て大儲けをしたい」なのです。なぜなら、彼らがどんなにあがいても、条文に
   忠実に従ったとしても、それで彼らが満足できるようにはなっていないからで
   す。つまり、条文そのものが立前や原則に過ぎないからです。
   
    法律の条文は「常に、必ず、全て、絶対」の類はわずかで、「原則として、
   但し、できる、できない、限り」で溢れています。なぜだと思いますか。こう
   は考えられないでしょうか。法律は例外をできる限り認めようとしている。法
   律は犯罪者を裁くためにあるのではなく犯罪者の罪を消すためにある。法の番
   人である「士」の役割は法の原則を打破することにあって、その実力は法をい
   かに打破したかによって試されているというぐあいにです。現に、建築士の場
   合も、違反建築に見えて違反でない建物をいかに造るか、あるいは違反を違反
   にしないためにはどうするかにエネルギーを集中する傾向にあり、建築士の実
   力は、そうした技量の有無で判断されることの方が圧倒的なのです。

    そこで、ちょっぴり建築士おもいの筆者は、なぜ建築士は業者と施主の両方
   に就こうとはしないのか。
   あるいはなぜ施主に就こうと積極的ではないのか。また施主はそれに対して、
   なぜ無頓着で居られるのか、と考えたのです。

    本来、建築士のあるべき姿は「建築企画・相談=施主と建築士」「設計=施
   主と建築士」「工事=施主と建築士と工事業者」となるはずですが、例えば住
   宅メーカーや工務店に雇われた建築士たちの姿は「建築企画・相談=施主と元
   請業者」「設計=施主と元請業者または元請業者と建築士」「工事=施主と元
   請業者または元請業者と建築士」であり、そこには、彼らが保護すべき施主が
   居ないのです。たとえ雇われ建築士と言えども、「雇われた住宅メーカー」を
   監視する義務・責任を負い、施主の権利・財産を保護する立場にある法の番人
   であり、彼らが守るべきは施主なのです。設計の実務を担っている建築業のプ
   ロが施主に就いていなければ、施主の権利・財産など守られようはずがないの
   です。
   
    「相談無料」の看板を掲げた建築士事務所の所長が「電話を掛けてくる人は
   極めて稀で、事務所に来る人は全くゼロ」と嘆きます。仕方がないのです。彼
   も建築基準法第一章第一条の「・・・国民の生命、健康及び財産の保護を図り
   ・・・」の条文など忘れてしまっているのです。今まで、業者や行政の手先み
   たいになってきた建築士が「景気が悪いから」などと今更慌てても、建築士事
   務所の看板を見た一般市民の反応は「無料なんて言ってるけど、相談すれば、
   何やかんやと不安を掻き立てられて、お金を巻き上げられてしまうんだ」なの
   です。
   
   
    ◎忍びのままの建築士に明日はない
      (建築士事務所は地元地域の診療所であれ)
   
    広辞苑によれば、「士」とは、学徳を修め、敬重すべき地位にある人とあり
   ます。
    不快かも知れませんが、今日の建築士に、「士の心を」を期待できる建築士
   はどれほどいるのでしょうか。正直、彼らの多くは行政(建設省)に雇われた
   忍者の如しです。もちろん彼らばかりではなく、公認会計士は大蔵省に、税理
   士は国税局に、行政書士は官公署に、社会保険労務士は労働省に、不動産鑑定
   士は建設省に雇われた忍者です。今日の士は、政・官・財の権力を支えるため
   の士であって、建築士のそれは、建築基準法第一条の目的を果たせる「士」に
   はほど遠いように思うのです。

      筆者が思うに、会計士、税理士、行政書士、不動産鑑定士などの仕事は、役所
   がコンピューター化して情報開示をキチンと行いさえすればそれ程必要なくな
   ってしまうだろうし、建築士の仕事も、既に簡単な間取り図が描ければコンピ
   ューターがある程度の詳細図面(施工図)を作ってくれるように成っているし
   、アメリカのようにインターネット上で建築の確認申請などができるようにな
   れば、役所には用無しになってしまうかもしれないのです。事実、役所がコン
   ピューター化に手間取っているのは、彼ら既得権の圧力と失業による反乱を恐
   れているからで、IT革命などと騒いでいるが、情報技術が最も遅れているの
   は役所なのです。
   
    だからと言って、建築士に未来がないわけではありません。なぜなら、住宅
   が私たちの生活に絶対不可欠なものであり、施主に個性がある限り住宅もまた
   個性を持ち続けるだろうからです。よく資格と手に職は一生ものと言われます
   が、これから先、資格の方は相当あやしいとしても、建築士は、その一つと同
   じ答のない個人を相手にする技術者であり、忍者を廃しても市民のための士に
   成り得る技、コンピューターにはできない技をも持っているはずなのです。

    そこで言わせて項きます。阪神淡路の大震災から四年が過ぎた年に、わが町
   (市)でも期間限定、戸数百戸限定の耐震診断が無料で実施されました。気に
   入りません。何がって、「無料診断に漏れた人は15万円払え」と言うのです。
   おかしいと思いませんか。百戸分の診断費用も無料ではありません。「百戸分
   で1500万円」は無いにしても、市は百戸分の診断費用を、既得権を操る建
   築士の誰かにバラ巻いたのです。とは思いたくないのですが、何をするにも「
   予算」をわめき散らす行政に「出費ゼロ」は有り得ません。また、横浜市では、
   診断した在来木造住宅の70%近くが「対策を講じないと崩壊の危険アリ」と
   いう結果が出たそうです。それが何を意味するかというと「在来工法は地震に
   弱い」ということを市民に植え付けてしまったばかりか、在来木造住宅に住む
   70%の人たちに耐震工事を強いたのです(診断を受けていない人も含めて)。
   
    耐震診断は分かります。でも、わが国が地震国であることは小学生でも知っ
   ています。つまり、筆者の疑問は、建築基準法や建築士が何のためにあるか、
   市の行政が誰のためにあって、15万円という金額がどこから出てきたのかと
   いうことです。先に、建築士の責務は地震に倒れない建物を設計し、その工事
   を監視し、完成後も施主の財産保護・維持に士力を尽くすことだと言いました
   が、それが間違いでないなら、地震で倒れる建物が存在するということは、建
   築士が責務・使命を怠ったということであり、彼らにその責務・使命を与えて
   建築を許可した行政から「無料参断に漏れた人は15万円払え」などの言葉が
   出てくるはずがないのです。つまり、市民の共有財産である市民の税金は、市
   の正義として使われなければならず、その15万円は、市民の耐震補強工事に
   充てるべきであり、たかが診断に15万円も掛かるはずがないのです(15万
   円もあれば、相当な耐震補強ができてしまう。建築士の診断費用は一日の日当
   分で充分=チェックシートがあれば素人でも診断可能)。
   
    などと言うと、やり手の建築士に「バーカ、そんなきれい言でおまんまは食
   えないよ」とドヤされます。しかし筆者は知っています。それを言う彼らこそ
   が、施主不在の建築を得意とする住宅メーカーや不動産業者のポロ儲けに加担
   し、行政の無駄使いに加担して来た人だということをです。そして、過去にそ
   れと同じようなことを言った建築士の中に、いま、慣れない施主の獲得に四苦
   八苦している人が、意外に多く居るということをです。

    そう言う筆者はひょっとして、建築士に対する施主の不信を拡大させて、ま
   すます建築士事務所の敷居を高くしてしまったかもしれません。しかし、「正
   直者はバカをみる」と言いますが、建築士は士の正義・使命・責務を実行する
   ことでしか施主を振り向かせることはできないのです。つまり事務所の敷居を
   高くしているのは建築士自身で、、無料看板に何の音沙汰もないようにしてい
   るのは、バカをみるほどの正直な建築士がいないから、建築士が自分の正直を
   解放していないからです。
   
    そこで筆者から建築士にお願いです。人の身体は健康保健証をもって近くの
   診療所や病院に駆け込めば良いが、住宅には健康保険の類もなく、駆け込みた
   くても、ろくすっぽ診察もしないで直ぐ切り開きたがる外科医ばかりが多く、
   キチンと診察してくれる診療所が無いのです。だから、建築士事務所を、地域
   住民がいつでも気軽に駆け込めるように、ドアを開け放した「田舎の診療所」
   にして頂きたいのです。そして、「建築士に最も必要は施主」だということや、
   住宅建築における施主はどうあるべきかの真実を(特に、建築業者が開放した
   がらない施主の責任やリスクについて)素直にさらけ出した上で、住宅建築に
   建築士の仕事が欠かせないものだということを知らせて欲しいのです。
    最近、そのように頑張つている建築士の声がチラホラ聞こえて来るようにな
   っていますが、これまでの癖が抜けきれなくて、施主の理解を得るために相当
   四苦八苦している様子です。
   
   
    ◎「設計無料」はデタラメ(建築士のお得意さんは「下請任せ」の元請業者)
   
    ちなみに、建築業者が言う「設計無料」は全くのデタラメです。なぜなら、
   建築には建築確認というものが義務付けられていて、原則として、建築士の絡
   まない建築はないからです(新築は必ず)。もちろん建築士でなくても確認申
   請はできますが、わが国では、それは皆無と言って良いぐらいに「建築確認=
   建築士」が常識になってしまっているのです。

    もっとも、確認費用の額は知れていますが「確認無料」を言う業者はいませ
   ん(役所が絡む費用は請求し易い。一般住宅で10万円前後)。つまり、ここ
   に言う「設計」とは、工事を実施するための実施施工図(図書=図面集)のこ
   とで、「設計無料」は、単に諸経費とか他の工事費に化けているだけなのです。
   例えば住宅メーカーの場合、契約した工事を下請業者に丸投げ(一括発注)す
   るには、キチンとした実施施工図を作るしかなく、その施工図を作るために建
   築士を社員に雇ったり、下請の建築士に依頼したりと、メーカーは数多くの建
   築士を抱えているのです。また、彼ら建築士の設計料は、住宅で、工事請負契
   約の額から元請業者の利益・経費、設計料を差し引いた実施工事費の5〜7%
   (設計管理を含む)、施工管理を入れても8〜10%が相場で、高くても12
   〜13%、つまり実施工事費が1000万円なら50万〜100万円と、実施
   施工図を理解できない人にはいかにも高いのですが、メーカーにとっても大変
   な出費で、それを無料にできるほどの太っ腹なメーカーなど存在しません。
    つまり「設計無料」は、設計料は高い、建築士の報酬は高い、と思っている
   顧客心理を突いた施主獲得のためのまやかしなのです。
   
    尚、設計料が高いか安いかは、本書を読み終われば判断できることですが、
   実施施工図をキチンと作っていながら、施主に手抜き工事を見破られまいとし
   て、施主への実施施工図引き渡しを曖昧にする元請業者が多いので、請負・売
   買契約をする際は、その業者がいかなる大手メーカーであっても、実施施工図
   と工事工程表の引き渡しだけは必ず受けて頂きたいのです(実施施工図は保証
   書より保証書なり)。

    第7章 終わり

   
   今週はここまでです。次号をお楽しみに!


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